学園。授業。今日は。無い。
学生は数日に一度、休むのだ。
自由な休息、僕には何をすればいいか見当もつかない。
強迫観念、理解してなお、不安になる。
だけど、普通の学生は町に繰り出したりするらしい。
なら僕も、それに倣った、
ことにしよう。偽装にもってこいだ。
「・・・・・・なるほどの、それでレリアに、」
「時間はあったんだ、もっと詳しく聞いておけば良かった」
人目を避けながら、大きな屋敷へ向かう、
行き交う人の視線、興味の対象、予測、掌握、見られていてなお、記憶に留まりやしない、
「・・・・・・・・・・・・いや、」
「どうしたのじゃ、」
「うん、行こう。その方が、手っ取り早い」
人を見る、空を見る。
僕の場合は感じると言った方がいいのかな、まあいいさ。
「着いたよ、中に入れるかな」
少し前にいたのに、懐かしさを感じない、
尊大で、嫌いな、貴族の屋敷だ。
そこにレリアはいる。
話を、しよう。
「な、何故じゃ! 何故入れないのじゃ、人間め!!」
あーあ、門前払いされちゃった。
この門番、前から居たっけ、仕事が雑だな。
大男、レコウが殴れば一発で死ぬか。
「まあまあ、落ち着いて。よく考えなよ、ここで騒ぎになったらまずいでしょ?」
「・・・・・・む、セシィ?」
「まず中に入れてもらおうか。その方が、どうせ手っ取り早いでしょ」
・・・・・・何か、怒鳴ってるな?
ああ、うるさい、嫌いなんだよ、やめろ。
「入れろって、言ってるだろ? 君はそんなことも考えられないのか? まあ、いいや、君としてもそっちの方が後々問題ないかもね。教育ってことにしておいてあげるよ」
「・・・・・・あの、セシィ? 我にも説明を」
「レコウ、やって、」
「え、マジでじゃ?! いいのかのー」
鳩尾、一発。
内臓は全部残ってるな、防具の上から一撃。相変わらず、惚れ惚れするような力加減だ。
もうちょっと、失敗してくれても良かったのに、
「行こう、レコウ」
「おー、えー、本当によかったのかのー?」
さてね、
もったく、もう、レリア。
僕ちょっと、怒ってるのかも。
そんなのあるわけないのにね、
「玄関だ、蹴破ろう、」
「あー、ほーいじゃ」
「レコウ、もっと全力でいいんだよ?」
「あ、開いたのじゃから、いいじゃろ!?」
むう、綺麗に鍵だけ壊れてる。
貴族の屋敷の玄関が、吹っ飛んでったら面白いのに。
「さーてレリアー? 話せそう?」
「・・・・・・まじで話してくれないかもじゃの」
どうだろうね、
多分レコウが暴れてくれたし、大丈夫だと思うけど。
「・・・・・・誰も出てこんのー、」
「・・・・・・うん。まあ、貴族には色々準備があるんでしょ。ほら、お化粧とか、」
「うーん、我にはわからん文化じゃのー」
僕もわからないよ、知ってるだけで。
それより、まだかかりそうか?
面倒臭くなってきたな、もう無理に待ってやらなくてもいいか、せっかくだしね。
「じゃあ暇つぶし。はーいレコウ、パース」
「え、なに、壺じゃ?!」
「よ、あ、おもっ、」
「せめて投げ渡すのじゃ!?」
おっと失敗、ついそのままそこに落としちゃった。
まあもう僕アレンのため以外、箸より重いもの持たされたく無いからね。
箸、実際に持ったことはないけど、
「まあでも、この杖よりは軽いのかな?」
「・・・・・・どうしちゃったのじゃ、今日のセシィは、」
・・・・・・うざいかな、なら結構。
効率的だ、こんな仮面被るのは初めてだな。
「というわけで『水球』」
「うお、絵に!?」
「・・・・・・あー、そういえば。レコウってこういうお宝は興味ないの? だとしたら、壊して悪いことしちゃったけど」
「いや、まあ、我は知らん人間の描いた絵を、わざわざ財宝にしようとは思わんが・・・・・・、」
奇遇だね、僕も。
残念ながら、今まで生きてきて、そんな余裕なかったよ。
まあ別に、全く同じもの作ろうと思えば作れるし、気にしなくていいよね。
内容忘れちゃったけど。
「まーだっかなー。流石に、火はまずいと思うんだけど、」
「・・・・・・セシィ。・・・・・・うん」
「電気・・・・・・、いやこれも出火の可能性、」
「おーじゃー! もう我も我慢の限界じゃー!! これ以上待たせたら、我も火ー吹いちゃうぞー!!!」
「レコウ・・・・・・。人間は、口から火を吹けないんだよ?」
「あれえ? 違ったかのー?」
いや、合ってるよ。
人間が口から吐くのは、もっと悍ましい何かだ、
そろそろ、あっちも準備が終わったみたいだな。
・・・・・・残念、もっと早く終わると思ったんだけど、
「・・・・・・何を、してらっしゃるのですか」
レリアだ、やっと出て来れたか。
ゆったりした服着てるな、中は、うん。
さて、なんて言うのかなっと、
「・・・・・・あー、レリアよー? ・・・・・・レリア?」
「あはは、つい手が滑ってね、」
「あええっ、じゃ」
「許して、くれるかな?」
別に、どっちでもいいけど。
この程度、僕何人分だ、興味ない。
「・・・・・・普通の神経をしているなら、許さないんじゃないでしょうか」
「ふふふ、だよね、良かった」
「・・・・・・何故、こんなことを?」
「んー、なんでだろ。多分、君が僕のことを褒めちゃったから?」
全く、なんのためにこんな外見をしていると思っているんだ。
別に、しようとしたわけじゃなくて、元々これなのを利用してるだけだけど。
しかし、最初から僕らが、普通の子供二人だったら良かったのにね、
いや、それじゃあ効率的じゃないか、合理的も求めると、本当に面倒臭い。
「・・・・・・ふざけていますね、」
「うん。そう、君もね、」
「・・・・・・やっぱり。帰って、くれませんか?」
「どうしよっかな」
はあ、茶番だ。
聞いてると、どういう気分なんだろう。
もう少し、付き合ってあげても良かったんだけどね。
残念、僕は既に演技しかしてないんだ、これ以上重ねたらおかしくなっちゃうよ。とっくにか、アハ。
はあ、アレン、僕はあそこにしか、
「・・・・・・状況が変わりました、」
「おや、」
「最初から、素性も知れないあなた達に頼むのが間違っていました」
「まあ、」
「報酬の話も、無かったことにしてください。その代わり、学費は既に払ってあるので。学園に戻って、自分の目的を早く果たしてください」
「それは残念、」
・・・・・・そう、そういう流れにするんだ。
僕たちの流れは、とっくに決まってるっていうのに。
「これ以上ここに居座るなら。ワタクシ達にも考えがあります、」
「レリアにも?」
「・・・・・・人を呼びます。この国から、犯罪者を捕まえるため」
「・・・・・・それは、嫌?」
「呼ばせないでください。ワタクシにも、この国にも、面倒なので」
「そっか、」
まあ、そんな大事にしたら、僕の目的も果たし辛くなっちゃうもんね。
しょうがない、嫌だけど、一度引くか、
「じゃあね、また会うかな」
「いえ、もう会わなくていいです。ワタクシ達はもう、互いに必要ありません」
「そう、どうだろうね」
「早く、出て行け、」
「うん。僕も、そのつもりだったよ」
まったく。本当に、どうしてこんなことになったんだか。
こんな予定じゃ、無かったんだけどな、
でもまあ、もう決めちゃったものは、しょうがないもんね。
「さよなら。その君とは、もう会わなくて済むようにするよ」
さて、行こうか、レコウ。
「・・・・・・レリア、元気なかったのー」
「そうだね、それに下手くそだった。こういうの、得意じゃなかったのかよ」
「どうするのじゃ?」
「そうだね。言われた通り、なるべく早く終わらせたいね」
「行くか?」
「いや、来てるよ」
もう、遅いな。
もう少し早くしてくれたら、さっさと終わったかも知れないものを。
僕は、こういうのは苦手なんだ、考えさせないでよ。
「さて。・・・・・・あ、」
「お? ・・・・・・いや、この匂いは、」
・・・・・・やば、めんどくさ、なんで君たちいるのさ、
「ふむ。あいつら、いつもセシィと一緒におる、」
「別にいつも一緒にはいないよ!? あー、くそ、なんでこんな時に・・・・・・、」
「・・・・・・はあ、しょうがないのお。セシィ、ここは我に任せて先に行けじゃ、」
「・・・・・・敵の足止めどころか、仮にも味方寄りの足止めでそれ使うかー、」
ならそちらは任せて、僕もお客さんを片さないとね。
——おーい、そこの獣臭い男どもーじゃ、
それじゃあ、早く元の流れに戻ろうか。
「さて、君たち。せっかくだ、測ってみよう。僕の学園の成果を」
杖を構える、レリアの。
これで十分だな、皮肉じゃなくて、合理的な思考だ。
流石に、いちいち本気でやってたら、疲れちゃうしね。
そっちは、後に取っておこうか。
・・・・・・っ、
声が聞こえる、うるさい。
人間が出す音の震え、どうせアレンの以外、記号にしか認識できない。
「さて、『水刃』。火は、大事になるかも知れないからね」
うん。あんまり痛そうじゃない。
丁寧に作りすぎたな、一度で終わってしまった。まあいい、どうせ聞くこともないし、
まだ、教材はいる。
「おっとナイフ、なんか懐かしいな。投げてはこないけど、」
軽く杖でいなして、そのまま転ばせて、
駄目だよ、そんな地面に向かって頭を振ったら、僕がちょっと力を添えただけで折れちゃうよ。
まあ今は、テスト中だからきちんとやるけど、
「おっと、今度は君たちも魔法? 町中で魔法なんて使ったら、聖女に怒られちゃうんじゃないのかい?」
さて、じゃあ次は、こんなのはどうだろう。
「『反論』。おお、逆位相の魔法をぶつけることで綺麗に消す。できるもんだね、授業の成果だ」
なんて、流石に無理やりすぎるか。
しかし、本当にこの杖は便利だな。
簡単な魔術でなんでも使えるから、相手に合わせた全く同じ魔法も逆の魔法も使える。
これで消すの理論は知っていたけど、あまりにも非効率的で無駄に難易度が高いから、やったことなかったんだよね。
そもそも普段の僕は空間魔法しか使えないし、空間魔法があればもっと簡単に消せるし。うん、本当に無駄な技術だ。
「あれ、もう最後? なら君は・・・・・・、。あ、そうだ、『ふわふわ』、」
これ、ものすごい謎の魔法。
意味がわからなすぎて、逆にやってみたくなっちゃった。
似てるけど、全然違うのしか出せないな。
ふわふわに包まれて、うん、そのまま息を止めるといい。
幸せな最後だろ? どうだろ、わかんないや、
「さてとレコウ? まだあいつらいるのか・・・・・・。しょうがない、先に行こう」
全く、本当に面倒臭い。
思わず空を感じる。
相変わらず、見事な結界だ。
『来るな』、だって。
わざわざ、僕にぐらいしか読まれないところに書くなら、
『助けて』って、最初から書けばいいのに。