情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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22話

 

 

 ・・・・・・はあ、失敗したわ。

 

 

 

「・・・・・・流石は元皇太子妃、縁起もお手のものですねえ」

「そうね、よかったわね、」

 

 何がお手のものだ、全部バレちゃってるでしょうに。

 いや、あの子達が聡すぎるのが悪いのよ。なんで来るなって書いたのに、わざわざ正面切って来ちゃうのかしら。

 

 まあ、いいわ。

 もとより、あの子達とは利害の一致、伝えるべき情報は伝えたんだから、もう私の関与するところじゃないわよね。

 

 もう、私は、あなた達のことを庇えない。

 悪いとは思うけど、早く自分の目的を済ませて、この国から逃げて。

 

「それで。もう一つの演技は、いつ止めていただけるのでしょうね?」

「何かしら。お望み通り、ちゃんと結界は維持してあげたわよ?」

「おやおや、最近は食事もまともに取られていないようで。随分と厚い化粧ですねえ」

「ふふ、私の勝手でしょう? 聖女はね、綺麗な食事しか食べられないのよ」

 

 あんな薬漬けの食事、食べられるか。

 

 ・・・・・・それにしても、こいつらが私の聖女としての力にしか興味が無いのは読めてたところだけど、まさかこうまで直接的な手段に出てくるとはね。

 

 監禁、拘束、脅迫、薬品、洗脳、

 そんなことしたら、聖女の結界なんて繊細な魔法、使えなくなるに決まってるのに。

 私の魔術の腕が必要だから、あくまで自分の意思で協力させるため、表向きは味方面してくると思ってたのだけど、

 

 ああそうか、こいつら、未だにあれが神の力で動いてるものだと信じてるんだっけ。

 私が聖女として強いのは、ただ適した魔力を沢山持ってるから、

 そんな風に、本気で考えてるんだ。

 

 だとしても、それならなおさら無理やり従えたりなんてしたら、力が落ちるって思わないのかしらね、

 思わないのか、最初から結界も聖女も自分たちが管理してる物としか考えてないんだ。

 あいつらからしたら、聖女なんて何も考えない燃料の方が都合がいいものね。

 

 ああ、全く、馬鹿の考えることは、理解できないわー、

 自分に都合のいいことばっかり、簡単に思想も信仰も塗り替える。神様が聞いたら、嘆き悲しむでしょうねー。

 最初から、そんなもの信じてないけど。

 

 祈りなんて気休めだ、合理的に考えないと。

 私にもう味方はいない、私があげられる物はもうないから。地位も、名誉も、財産も、自由も。

 冤罪つけやがったのも、こいつらか?

 

 大丈夫、まだ私には時間がある。

 私の命にはまだ価値がある。

 交渉しろ、この背神者共に、思想をとけ、

 大丈夫、私は、一人でも、

 

「ああそういえば、今日は特別なお客様を招いてるんですよねえ」

「そう、なら残念ね。随分とあなたの玄関、愉快なことになってしまったけれど」

「ちっ、本当ですよ、なんなんだあいつらは・・・・・・! まあいい、いいですよ、どうせもう、いなくなっているのですから」

「・・・・・・それは、」

 

 大丈夫、あの子達なら、それくらい。

 それに、もう私とあの子達とは何の関係ないのよ。来るなって言ったのに来ちゃうから、自業自得よ、大丈夫、

 

「くふふ、そんなことを気にする必要はありませんですよ」

「気にしてないわよ」

「今日は。人を説得、するのがとても上手な先生に来ていらしてるのですよ」

「そう、それは楽しみね」

「ええ。とても高名な魔法使いだとか。お知り合いですか? 随分と乗り気でしたが、」

「さあ、聖女は知り合いが多いよ」

 

 大丈夫、この国に私以上の魔術の使い手なんていない。

 大丈夫、例えどんな魔法を使われようが、私が負けることはない。

 大丈夫、どんな人が来ようとも、私が恐れることなんてない。

 大丈夫、

 

「それに、少し失敗して壊れてしまっても、自分が引き取って面倒を見るとまで言ってくださいましたよ。いやあ、愛されていますねえ」

「・・・・・・そう、光栄ね、」

 

 大丈夫、大丈夫、大丈夫、

 私は聖女、この国、一番の、大丈夫、

 

「・・・・・・しかし。そうなると、せっかくここまで面倒を見てあげたのに、ワタシが得られるものがありませんね。ふむ、館もめちゃくちゃにされてしまいましたし、少しくらい乱れていても事故ってことになりますかねえ」

「・・・・・・はは、冗談よね」

 

 大丈夫大丈夫大丈夫ただの冗談、

 

 大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫、

 

 大丈夫そんな嘘いや来ないで来るな、

 

「・・・・・・ま、さすがに・・・・・・。いえ、その表情、悪くないですね」

「っ、やめ、ひ、あっ、」

 

 誰か、助け

 

 

 

 なんてない、そんな都合のいいものない、

 私は神なんて信じない。私が信じるのは、

 

『——ッア、』

 

「おや? きふふ、無駄ですよ。ご自分で設定なされたんでしょう? 特定の魔法を阻害するように、」

 

『——ッグ、アア!』

 

「それに、予め複数の聖女にかかり、この館周辺の結界も強化しておきました。あなたを呼び戻したのは、それが済んだからですねえ」

 

『ガアアアアアッ』

 

「あなたがどんな優秀な聖女であろうが、だからこそ対策は欠かせてませんよ。だからこそ、あなたも今まで大人しく捕まっていたのでしょうに」

 

『アグ、ガッ、ギ』

 

「しかし、その表情はつまらないですね。順番は逆になりますが、先に虐めてあげれば、いい顔に戻りますかねえ」

 

『ヴグガ、ジ』

 

「ほら、では、」

 

 

 

 ・・・・・・ああ、もう、黙っていなさいよ、気が散るでしょう?

 

 

 

「『——、ヴル、

 

「・・・・・・は? ——馬鹿な!?」

 

さいッ!!』」

 

 ・・・・・・・・・・・・ッ、

 

 

 

 ・・・・・・はは、間抜けズラ晒して、お似合いよ。

 ちょっと顔面削っただけで、大袈裟よね。

 

 あら、視界が血まみれだわ?

 もう、ひどい顔ね、レディになんて顔させるのよ。

 

 はあ、それにしても気持ち悪いお顔。お陰で、照準がずれてしまったわ。

 

 ああ、目が痛い。

 次、行けるかしら、

 

「——おい、だ か、  のか」

「『ぁ、が、』、ケボッ?」

 

 んー耳と、喉もだめね。

 鼻? どうでもいいでしょ、今さらよ、

 

「『』ァ———??」

 

 人、来たわね。

 何そのナイフ、誰に使う気よ、

 そんなことしなくても、別に、

 

「 うい 、てあし んて くても」

「』————、」

 

 何よ、はっきり喋りなさいよ、聞こえないわ。

 

『・・・・・・・・・・・・/

 

 ・・・・・・はあ。これ。死ぬわね。

 

 私が死んだら、この国、終わるんじゃないかしら、

 皮肉なものね、私がいたから国が存続できて、私のせいで国が滅ぶなんて。

 

 まあでも、

 

「——ぁあ、いっァ

 

 こんな国。

 

 

 

 

 

「・・・・・・それを早く言ってよ」

 

 

 『整理』

 

 

「なら、わざわざ周りに遠慮する必要なんて無かったのに」

 

 

 空間掌握、完了。

 

 

「せっかくさんざん挑発して、先に襲わせようとしたのに、全部無駄になったな」

 

 

 情報過多、全て等しくかの荷物。

 

 

「でも、まあ、かっこよかったよ。聖女様」

 

 

 ここはもう。僕の世界だ。

 

 

 

「・・・・・・ぁ、あた、。なぁ、でっ」

「うん、脳までいってない、なら軽傷だね。『収納』、聖女の血、なんかすごそう。・・・・・・力みすぎだよ、落ち着いて」

「かひゅ! ・・・・・・はあ、なんなのよ」

 

 凄いね、脳を使いすぎて顔中真っ赤になるなんて、懐かしいなー。

 

「な、きさ

「『うるさい』」

「————!?」

「静かにしてろよ」

 

 さてと、町中で遊んでたらもうクライマックスすぎて、焦ったよ。

 慌てて掌握したけど、この国なんてどうでもいいって言ってくれなかったら、もう三秒はかかったかもね。

 

「はぁ、けほ。・・・・・・何であなた、ここに来たのよ。わかってたでしょ、もう私にはあなたにあげられるものなんてないの。こんな、私は、願ってない、」

 

 ああ、君は、こんな時でも強気なんだ。

 

「・・・・・・・・・・・・痩せたね、レリアちゃん」

 

 ゆったりした服着ても、意味ないよ。

 

 僕の倍程度の戦闘力、これは本当に、僕たちが行ってから水すら飲んでないのかな。

 流石の僕も、今それやったらきついな。

 

「・・・・・・何故、私なんかを、助けたの?」

 

 そんなの、決まってるじゃ無いか。

 

「うん、レリア。僕達は仲間だから。世界の全てが敵に回っても、僕だけは、君の味方だからだよ」

 

 同じ、真っ直ぐな流れに乗った家族、

 

「・・・・・・ぁ。なん、で?」

「君が、僕と同じだからだ、」

 

 なんて、体はね。

 

 ・・・・・・中身は、まるで違う。

 よく、自分からその状態になるまで我慢したものだね。

 

 僕だったら、とっくに全て殺し尽くして、逃げてるのに。

 

「・・・・・・、逃げられなかっただけよ。・・・・・・ここは何人もの聖女の魔力で強引に封じられてる。あなたみたいに、みんなそんな魔力がすごいわけじゃないのよ」

「何言ってるの、君の方が多いでしょ? こんなの、魔術が得意なら誰でもできるよ」

 

 君だって、そんな状態じゃなきゃできてたんじゃないの?

 それとも知識だけじゃだめか? やっぱ実戦してかないとかな。

 

「・・・・・・あなた、本当に人間?」

「失敬な、」

 

 そういう質問は、せめてまだ来ないドラゴンにでも言ってくれ。

 

 僕は、僕だよ。君と、同じさ。

 

「ふふ、えへへ、そうね。そんなこと、どうでもいいよね」

「うん。等しく、真っ直ぐな線だよ」

 

 l 僕たち⭐︎

 

 ほらだから、そんなに泣いたり笑ったりしてないで、

 

 ちゃんと、自分の足で立つんでしょ。

 

 

 

「——————!??!」

「・・・・・・お前、無言なのにうるさいな。逆に凄いよ、」

 

 さてと、後はこいつか、

 

「人? 来ないよ、もう全部しまっちゃった。君も一緒になりたい?」

「————!?!!」

「うわ、きも。無言なのに恐怖が伝わってくるよ。やりたくなっちゃうじゃん」

 

 正直、僕は貴族という存在が嫌いだ。

 自分の権益のために、他人をモノ扱い、全て殺してやっても良かった。

 

 殺した程度じゃ、納得できないから止めたけど。

 

「それにさ、僕もう、お前を認識してるだけで嫌なんだ。触るのも、嫌。だから、僕はこのまま、君を拘束するだけにしといてやろう」

「————?! ——、」

 

 あ、お前今、安心したな?

 手に取るようにわかるよ、じゃ、

 

「僕は、ね、

「スーパー、淑女キーック!!」

 

 ゴシャッ!!!!

 

 

 

 ・・・・・・うわ、蹴りなんだ。

 てっきり、顔面殴りに行くかと、

 

 執拗に、股の間、蹴ってる。

 あれ、まだ固定してるはずなのに、どんど顔色青くなってる。

 あ、蹴られた部分だけ動かしてるから、痛みが逃がせないんだ。

 

 ・・・・・・うわー、いいなー、参考にしよ、

 

 ・・・・・・う、なんだ、夢が痛い。くそ、無いはずの痛みが想像できる! おえー!?

 

 ・・・・・・まあ、何だ。淑女として、あそこ何度も触れに行くのも、どうかと思うしね、うん。

 

「おらおらー!」

「えっとー、その、その辺にしときませんでしょぅ、いえ、何でも無いですわ」

 

 気が済むまで、やらせてあげよ。

 

 タマヒュン!

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