情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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27話

 

 聖女の間。

 それは、とても荘厳で、神聖なもの、

 ではなく、

 

「これは、なるほどな」

「わかるの、エイン君」

「いや、駄目だ。半分ほどといったところか」

 

 めちゃくちゃ魔術的だな。

 願いも奇跡もあったもんじゃない、合理性と理論の塊。

 そのくせ、外観は無駄に整えられているものだから、違和感が凄い。

 

「やはり、結界とはこういうものなのだな。純然たる、人の知識で作られたもの」

「それでいいの?」

「事実に、いいも悪いもあるか。少なくともわたしにとっては、この目で見たものが全てだ」

 

 そして、メガネは本体をくいっと上げる。

 あ、そのポーズ、夢で見た。

 やっぱそれ、世界共通なの?

 

「・・・・・・中心、渦巻いている、あそこか」

「うーん、一人用だね。本来は複数人でやるものらしいのに、」

 

 この建物、意外と広いのに、完全に個人用に作っちゃってるじゃん。

 あの子、そういうとこあるよなー。

 

「・・・・・・流石に、中には入れないか。だが何か動いている、今も誰か聖女がいるのか?」

「・・・・・・うん、いなさそうだけどね。それに聖女は一応ここにもメートちゃんがいるし、わざわざ学園外から来るのかな」

 

 元々の大人数用の装置も、別にあるみたいだしね。

 それにレリアなら、わざわざここに来なくても、どこでも結界に干渉できるだろうし。

 

「みんなー、じゃあいってくるね〜」

 

 聖女が、聖女のための部屋に入っていく。

 ピンク? メート、君は張りぼての聖女だったはずでは? できるのか?

 

 いや、それとも、ただのポーズ。

 あの女が正規の聖女でないことも、国家の秘密であるのか。

 本人、普通にその辺、皆に話してた気がするけど。

 

「・・・・・・ふむ。あの女がいなくても、何とかならないことはないのか?」

「つまんなそうだね。・・・・・・まあ、どうだろう。今だけかもよ」

 

 マジでレリアがこの国を見捨てた場合って、どうなるのか。

 案外、元通りで何とかなるのか、

 それとも、一度引き上げられた水準は、もう元の下には戻れないのか。

 

 だとしたら、君はやっぱりなかなかの悪女だね、僕は好きだよ。

 

「・・・・・・終わりか。まあ、参考にはなった」

「・・・・・・君が聖女になれそうなくらい?」

「馬鹿いえ。それを言うなら、せめて聖人だ」

「それは、なんかナルシストっぽい」

「ナルシスト? ああ。まあそうだな」

「えーー、」

 

 さて、帰るか。

 僕にとっては、何の面白味もなかったな。

 わかりきった魔術の仕組み。ただ、これを一から構築しろといわれても、僕にできるかはわからないけど。

 

 こんな、大人数を守るための魔法なんて、僕には多分おもいつかない。

 

 

 

「あ、すみません。そこの、セレンさん」

 

 他の生徒が帰っていく中、僕だけはわかめ先生に呼び止められた。

 メガネ君も立ち止まろうとしたが、おそらく職員に、うながされて帰されていく。

 

「・・・・・・何ですか?」

「いえ、大したことではありませんが。魔導国からいらっしゃったあなたには、ぜひここの感想を聞いておきたくて」

 

 ・・・・・・ふむ。

 あ、レコウも職員に止められたな。

 魔導国、って設定の人に聞く、ということは、

 

「・・・・・・綺麗な、場所ですね」

「そうですか、そうでしょう。流石ですよね」

 

 何だこいつ。

 しかし、まあそうか、下手に魔導国の人間なんて入れたら、秘密が漏れてしまうかもしれないから。

 ここに神の奇跡なんてものはなく、ただの洗練された魔術と魔法であると。

 

 口止めする気かな、別にいいけど。

 僕が何かしなくても、どうせそのうちバレるだろうし、ほらメガネ君とか。

 

「それだけですか?」

「そうですねえ。あなたには、是非とも彼女が作ったものがどう見えてるか、聞いてみたかったので」

「はあ、帰っていいですか?」

 

 もう皆いなくなっちゃったよ。

 レコウだけは止められてるけど、あの子もじっとしてるの苦手そうだしな。

 

「いえ、その前に。ちょっと従っていただきたくて、」

 

 きたか、黙っとけってだろ?

 

 はいはい、この国の人にとっては、聖女の結界は絶対ですもんね。

 レリア以外、見ることすらできないらしいし、考えてすらいない。

 疑う人間なんて、いちゃいけない・・・・・・、

 

 

 

 こいつは、何でそれ、知ってるんだ?

 

 

 

「『ワタシに従え、洗脳』」

「『ッ、』」

 

 くそっ、油断した、

 こいつ、この程度の悪意、貴族周辺の連中ならみんな持ってる程度だと思ったのに!

 

 いや違う、こいつにとってはこの程度、悪意をともなう行為ですらないんだ。

 息をするように慣れ親しんだ行動、ちっ、これだから上にいるつもりの人間は!!

 

「・・・・・・・・・・・・、」

 

 だが、この程度の魔術の腕で、僕を従わせられる訳がないだろう。

 ただでさえ、僕はそれなりに魔術を使えるのに、なにより、

 

 僕が、アレン以外に従うわけナイダロ?

 オマエだけは、確実に殺してやるよ。

 

「ふふ、いい子ですね。では、」

 

 クソムカつくが、一応かかったフリをしといてやる。

 さっさと収納してやってもいいが、ここは聖女の結界の中心近く。

 無理やりやったら、この国全体のまで壊れるかもな。

 

 ま、そんなのどうでもいいけど、まずはこうして落ち着かないと、本当にさっさと殺し尽くしちゃいそうだし。

 そんなので許せるか、死なんて楽なもので、オマエには、もっともっと底の底の、

 

 ・・・・・・ふぅ、だめだめ、そんな思考じゃ、

 拷問はゆっくり考えてっと。それにしてもこいつ、自分の魔法がちゃんと効いたのかすら判別できないのか?

 すっかり油断して、どう調理してやろうかなーっと。

 

「そっちの子にも、やらせていただきましょうかね。『ワタシに従え、

 

 ・・・・・・はは、オマエ程度の腕で、レコウに魔術が効くわけ、

 

 ・・・・・・・・・・・・、

 

 ・・・・・・・・・・・・レコウ、魔術耐性、クソ雑魚ナメクジ、五円玉以下。

 

 ・・・・・・・・・・・・あ、

 やっばー、

 

「っ、ま、『反論、いや杖ないんだった!?」

「おや、やはりまだ動けましたか。でももう遅い、『洗脳!』」

 

 っ、まず、だめ、

 空間魔法、もう渋ってる場合じゃない! 今すぐどうにかしないと、レコウが!!

 

「レコウー!」

「お、なんじゃ? どうしたのかの?」

「『そいつをやりなさい、ワタシのしもべよ』」

 

 そして、レコウは、鋭い目をして、

 僕の方へ、高速で、

 

 あ、死ぬ、防御しなきゃ、

 この、軌道は・・・・・・、

 

「よくわからんが、人間が我に指図するなー!!」

 

 僕の横をすり抜けて、

 わかめが、殴り飛ばされた。

 

 ・・・・・・この速度なら、人間大の肉なんて弾け飛んでるはずなのに、相変わらず君は力加減が上手いね。

 なんて、

 

「レコウ、大丈夫なの!?」

「え、何がじゃ? しかし、やっちまったの。人間のこの程度の悪意、ありふれているものじゃというのに、ついカッとなっちまったのじゃ」

 

 問題にならないといいがー、って、正当防衛だからいいよ。

 弾け飛ばせてたとしても、過剰にはならないくらいだ、

 じゃなくて。

 

「レコウ、今、魔法を使われたんだよ」

「え、マジかじゃ、大丈夫かの?」

「いや、僕もだけど、レコウも、」

「・・・・・・うん? 全然気づかなかったのじゃ」

 

 ・・・・・・あー、そーなる、のかなー??

 

 何故だ、前提が変わってくる、考えられるものとしては、こいつわかめの腕不足。

 それとも、ドラゴンだから人間のとはそもそも構造が違うってことで、効果がないのか?

 

 うーん、わからない、とりあえず流石ドラゴンヘッド??

 

「今は人間なんじゃがな。それよりそいつ、どうするのじゃ?」

 

 どう、してくれようか。

 まだ考えが纏まってない、

 しょうがない、僕がここで考えても、殺す以外の結論が出なそうだし、

 

「とりあえず、レリアのところにでも持ち帰って、情報抜き出してみるか」

 

 止めてくれる人がいないと、さっさと廃人にしちゃいそうだしねー。

 

 

 

 ————ハハハ、

 

 

 

 ん、なんだ、わかめ、まだ息があったか。

 なにわろとんねん、さっさと締めてやろうか、

 

「————アハハハハハ!!」

 

「うわ、なんじゃこいつ、もっと強くいっても良かったか、

 

「——ハハ。ワタシの愛しのアウレリア。やはり、あなた達が隠していましたか」

 

 

 

 ・・・・・・アウ? ああ、レリアの本名か。

 

 そういや、ちゃんと聞いてなかったな。

 愛しのって、気持ち悪いな。レリアには合わせない方がいいかも。

 いや知り合いの可能性も、あーる、のー、かなーー???

 

「どうするじゃ、」

「殺したい、でもまずいかなー?」

 

「返していただきますよ、『襲いなさい!』」

 

 なに、外から、魔物!

 潜伏、何で悪いやつは皆それ使うんだ、悪いやつだからか、そうか、

 それにこの国は、聖女が常に見張ってるようなものだからね、そりゃ潜伏の一つや二つ、

 

 それで町中にモンスター隠せるって、聖女の結界、やっぱガバガバじゃない!?

 

「これ、ダンジョンのじゃの」

「あ、昨日の犯人もお前か!」

 

 くそ、まあいい、空間魔法。

 ・・・・・・この部屋、魔法阻害されるな、狭い分昨日よりキツイかも。

 

 でも、僕を止められるほどじゃない。

 

「よし、それじゃあ、」

「おや、探し物はこれですか?」

 

 ん、今、会話飛ばさなかった?

 これ見よがしに取り出したのは、あ、僕の、というかレリアが僕に作った杖!

 

「そちらのお嬢さんがここまで動けるとは想定外でしたが、あなたはもう、何もできませんよねえ」

 

 想定外? ああこいつ、剣術の授業とかは見てないからな。

 あと、何をもって僕のことを、その杖頼りの貧弱君だと。

 

 ・・・・・・あー、まあ、学園内の僕しか見てないなら、そうなるのか?

 剣とかの授業もちゃんと見てたら、お前程度、殴り合いでもどうにでもなるってわかるだろうに。

 

「よしレコウ、ごー、」

「おや、いいのですか? ワタシを倒したところで、魔物は消えませんよ?」

「よしレコウ、ごー、」

「彼女はともかく、あなたは自分の身を守れるのですか?」

「よしレコウ、ごー、」

「それに、もしワタシが倒されたら、外にいる魔物が散らばって、他の生徒を襲ってしまうかもしれませんよ」

「よしレコウ、ごー、」

 

 それは全て、僕が気にすることか?

 

「っ、野蛮人が! いいで

「ゴーゴーなのじゃー!!」

 

 ——ゴファ!?

 

 お、いいぞーレコウー、気を失わないくらいだ、ギリギリまでお手玉にしてやれー、

 

「じゃあ魔物は『収納』っと、」

 

 さてと、もはやこいつに聞くことはあるか知らないけど、殺さずに、ちょうどいい拷問はー、

 

 ・・・・・・そういや昨日、なんか見たっけ。

 

「・・・・・・ねーレコウー。レコウって、人の黄金には興味ある? 潰し放題なんだけど、」

「嫌なのじゃ、普通に、」

「だよねー、」

 

 うん、僕らは淑女らしく、

 

 顔面サンドバッグとワカメ刈りで許してやろ。

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