・・・・・・人間って、一人いなくなったところで、意外とどうにかなるものだね。
というわけで固まったワカメだったモノを放置しながら、放課後。
レコウは先に行ったらしい。
万が一にも怪しまれないように、少し時間をおいてつけていくか。
「(あらー、セシィちゃんの胸の感触、いいわねー。こっちも、やってみたかったのよー)」
「・・・・・・静かにしててね」
まったく。
僕の感触なんて無いだろうに、でも気分がいいから許してやろう、このペンダントめ。
さて、レコウはどこで待ち合わせしてるって言ってたかな・・・・・・、
あ、聞いてないや。
まあ、この学園内で、僕が先に見つけられないこともないでしょう。
それに、いざとなればレコウの掌握した座標から・・・・・・って、これは卑怯だからやめるんだった。
「どこいると思う」
「(そうねぇ、待ち合わせといえば、定番はやっぱり中庭かしら)」
「ふーん、まあとりあえず探ってみるか」
レコウー、後あのピンク、メートー、
あ、本当にいた、もう合ってるのか?
流石に、この距離だとなに話してるかわからないな。もっと近づかないと、
「・・・・・・あれ?」
「(どうしたの?)」
「人いる? 進行方向途中、見つかったらまずいかな」
「(同じ学年クラスの人? だとしたら、あの女にここにいたことがバレるかしらね?)」
というか、近い。
こっち、向かって来てる、避けられなさそう。
にしても、僕がこの距離に近づくまで気づかないなんて、なんて影の薄い、
「あ、クラスメイト、」
「(誰かしら?)」
「えっと、その、ほら。いつも二人組とか、一人あまってそうな子」
「(そんな人、いたかしら)」
ひどいな、仮にも元は同じクラスメイトだろ?
「(いえ、このクラスは学年が始まった時に偶数にしているはず。一人、あまることなんて、)」
え、それは、
一人休んだから、
つまり君がいないからでは、レリア?
君はやっぱりちょっと、クラスの一員っていうか、仲間意識とか薄そうだよね。
「(いえ、始まった時。つまりは編入生が一人入ったのよ、あの女。だから、それが私に成り代わった今、)」
「——っ、」
そんな、なら、なぜ、
まさか、誰かわざわざ奇数で組んでもない限り、そんなこと、
・・・・・・・・・・・・剣術の授業。
二人まとめて、まあ、問題ないか。
・・・・・・あ、これ、僕のせいだ。
「本当にすまん少年」
「(あらあ?)」
「うん、ただの、勘違いだったよ」
ま、まあ、その後で、ダンジョンにも誘ったから、許してくれ。
あー、もう、目があっちゃった。
流石に彼をまた無視していくなんて、僕はできるけど、僕の夢が耐えられなさそうだよ。
「・・・・・・や、やあ少年。奇遇だね?」
「(・・・・・・なにかしら、そのキャラ)」
うぐぐ、確かにあっちの方が年上だけど、夢の経験が疼くから年下な気がしちゃうんだよ。
「少年って、いや、なんでもないです」
不満があれば言っていいんだよー!?
っ、落ち着け、本当にどうしたんだ僕は、
最近なんか、前よりも夢に引っ張られることが多い気がするぞ。気が緩んでるからか?
「・・・・・・それより、あの、あなたに。聞きたいことがあって、」
なになに! 何でも、は、聞くな!!
ふぅ、悪いが、さっさと話を終わらせて、あっちの様子を見にいかなきゃいけないんだよ。
適当にあしらって、
「なんで、男のふり、してるんですか?」
・・・・・・・・・・・・おうふ。
なるほど、君が最初に気づくか?
なぜ??
「そ、その。前に着地するのを見た時、関節の柔らかさが明らかに男性ではなくて、」
・・・・・・なるほど、あの時か、
しかし、関節、つまり股関節の部分だろ。
うーん、
「いや、気持ち悪いね」
「あっ、ごめんなさい、」
「おっと、すまん少年、つい、」
僕だったら、体幹とかで判別するのに。
君、そんな目で人のこと見てるのか、やっぱちょっとムッツリでは?
そんなの、意識して普段から観察でもしてないと、気づかないと思うけど・・・・・・、
「・・・・・・それで? ちょっと、制服が足りなかっただけだよ。別に僕は、一度も自分が男だなんて言ってない」
・・・・・・多分。
だって、日常会話で、性別わざわざ確認することないし。
見た目で、普通・・・・・・、
誰の胸が男だコラー、
「い、いえ、その。・・・・・・最初は、また彼女に男が寄って来たのかと思ったんですが」
「はあ、男みたいで悪かったね??」
・・・・・・この、人の胸見ながらいいやがって。
どうせ見るもんなんてないですよーって、
・・・・・・・・・・・・いや、違う、
こいつ、なに見て、
「どうやら、もっと悪い女みたいですね」
黒、はや、線、
一直線に、僕の心臓、
そこにかかっているアクセサリー。
「『』っ、閉じるよ」
多分聞こえてないな、ごめんレリア、説明する時間もない。
隙間は埋めて、つまりそのまま、僕の心臓、
「っ、まとりーくす?!」
何だそれ、いやそれよりも、これ胸デカかったら当たってたな。
上体逸らし、胸を強調するポーズ、ただただ悲しい。
・・・・・・本当、悲しいよ、少年。
君のことは、僕の夢が気にしていたのに。
「あ、あれ。やっぱり、あなたも、あの女の仲間なんですね」
彼に、黒いモヤが集まっていく。
これは、鎧?
固まって、剣の形状をも作り出す。
・・・・・・ああ、そうか。
君が、
「じゃあ、ボクが、守らないと」
潰してやるよ、偽勇者。
速い、あれについてわかっていたのはそれだけ。
ただ対面してわかった、あの鎧は発動した魔術そのもの。
僕の収納空間のような、既に発動し終わった現象。
「『雷撃』」
「・・・・・・・・・・・・、」
うーん、絶縁体。
焦げすらつかないや、もともと真っ黒だけど。
多分、あれは影のようなもの。
直接的な物理現象じゃ、散らせても消せないな。
「・・・・・・おっと、」
剣が振るわれる、無駄にでかいからまだなんとかなる。
対魔物用の動き、これが対人に特化していたら厳しかったな。
・・・・・・しかし、読みづらい。
これ、常に認識阻害、しかも強力な、
そんなに中身を隠したいのか?
その上こいつ、硬い鎧に見えて、本質は流動体だ。
性質が変化し続けている、本当に把握が大変で面倒臭い、
「『整理』」
「・・・・・・・・・・・・、」
やっぱ弾かれるな。
それに、結界のせいで一々発動まで邪魔が入る、
前より酷いな、屋敷を更地にしたのがバレて設定変更されたか? もう消し飛ばしてやろうか。
・・・・・・レリアの手前、それに近くのあのピンクにばれかねないか。
でも、そんなこと考えてる余裕、いつまであるか、
「・・・・・・おっと、来ないのか」
「・・・・・・・・・・・・、」
幸いなのは、この鎧、動きは速いけど反応はそうでもない。
多分、中の人間に依存しているんだ、
彼の神経は悪くなかったけど、僕には及ばない。
それに、
「『狭間の盾』、それに『狭間の剣』。さすがに、君もこれを喰らうのは嫌らしい」
久しぶりに使った。
空間の入り口を、手に持って振り回す。
円形の盾と、直線の剣。
中身は乱雑に繋げられていて、触れたものは粉々になる。
正直あんまり効率的ではないが、結界に邪魔されてるこの状態では、この方が小回りが効くし消費が少ない。
・・・・・・しかしこれ盾の方はいいが、剣の方をクリーンヒットさせたら、多分少年死ぬな。
剣を振るうが、体を真っ二つにするわけにもいかない。結果的に表面を撫でるだけに留まってしまう。
「・・・・・・その邪魔な飾り、まずは削ってあげたんだけど、」
「・・・・・・・・・・・・。」
意味ないな、すぐに復活した。
あれ全部、消し飛ばさないと意味ないのか?
いやもっと大部分を一気にいけば、効果はあるはず。
でもそれすれば、中身も消える。
・・・・・・いや、僕は、それでも、別に、
「っ、と、」
「・・・・・・・・・・・・、」
「————、やば、」
ちょっと速くなった。
対応、されてきてるか?
いやこれは、中の人間を気にせず、鎧が勝手に動いてる?
はは、このペースで続けたら、中からジュースが出てくるかもね、
「ちっ、ゆるせ少年!」
「・・・・・・・・・・・・、、」
剣が、互いに交差する。
真っ黒な大剣は、僕の盾に吸い込まれて、
そして、真っ赤に光る目が、
・・・・・・ええ、なにそれ?
「————ぁ、」
目からビーム。
そういえば、確かに最初もそんなん撃ってたね。
やば、これ、あたった、
「・・・・・・・・・・・・、」
肩、痛いな、でもその程度、
これ、そこまで熱くない、レーザーじゃなくて、体の一部を針にして飛ばしてるのか。
でも、どっちにしろ摩擦で、止血がすんだな、ありがとう。
悪いね。被害は、大した事ない。
そして僕は、君の肩に、剣を突き刺したよ。
「・・・・・・・・・・・・」
黒い剣が振り上がる、あ、もう生え直したんだ。
これは、直接削りまくっても意味ないかもね、一片でも残ってたら復活しそう。
というか、刺さった状態で動くなよ、抉れちゃうだろ、これ今中身に繋がってるんだぞ。
うわぁ、後ちょっとで、腕取れそう。
「・・・・・・、
剣が迫る。
・・・・・・そう、君を、直接消すのは大変そうだ。今は諦めてあげる。
その外面は、随分と隠すのが上手みたいだね。僕でも把握しきれてないや、
でも今、君?
中身、丸見えだよ。
『収納』
・・・・・・・・・・・・さて、
中身の無くなった影は、霧散した。
そんなこと知るかとばかりに、そのまま襲いかかってくるパターンも想定していたから、なんか拍子抜けだ。
まあ、そんなことになったら、今度こそ遠慮なく全身消し飛ばすまでやってやるが。
「・・・・・・・・・・・・ふう、右腕、上がらないや」
的確に剣の方狙って来たな、盾の方が面積でかいのに、僕が使いたくないのわかってたのか?
性格悪い奴だ、本当に少年が考えてやった? ムッツリだけど、どうだろ。
まあいい、それより情報を。
収納空間を開いて、
「(・・・・・・っ、ちょっと、何が起きたのよ!)」
・・・・・・あ、レリア。
そういえば余裕なくて、君のと同じ空間に飛ばしちゃったっけ。
ちょっと肩ちぎれかけてるから、ビックリしたよね。
「・・・・・・ああ、そうだ。レリアって、聖女なら修復系の魔法とか使えない? さすがに貸してもらった杖じゃ厳しいし、僕のやり方だとちょっと荒っぽくなる」
いくら有効活用だからって、少年も、ワカメの肉片とかいきなり詰め込まれたくもないだろうしね。
他には、糞貴族のとかもあるけど、もっとサイズが合わないや。
「(ええ、できるわ・・・・・・って! セシィ、怪我してるじゃないの‼︎⁇」
「え、うん。いつものことだよ」
「なっ、早く見せなさいっ! ああそとっ、結界邪魔‼︎ 『ぶち壊れ、
「ちょ、僕が中に行くから⁉︎」
いやこの子、僕がせっかく壊さないようにしたのに、なに躊躇なくやろうとしてんの!?
もう、この程度、本当になんてことないのに。
どうせ生まれてから全身置き換わった肉の器に、そんなに動じなくても、
「もう、重症じゃないの、『聖癒! 聖女フルパワーバージョン!!』」
「あはは、」
まあ、心配する分には、その人の自由だよね。
僕に否定する権利も義務も、ないか。