魔族って、一人いなくなっても何とかなるもんだね。
あれは不幸な事故だった、そういう事にした。
実際、見ていたとしても、そうとしか思えないだろう。触れてすらないしね。
しかし、むしろ見られてた方が楽だったな。流石に何もなしって訳にはいかなかったよ。
入院してった隊長の代わりに別の人が来て、それから僕らは、
「君たち、絶対顔あげるなよ、」
最前線、送られました。
捨て駒といえど、最低限の同志撃ちを避けるための研修はあったらしいんだけど、それすら飛ばされました。
これ、事故に見せかけて、僕らまとめて後ろから殺されるんじゃ、
——スッ、
『うわっ』、榴弾だ、こんなものまで、
「退避!!」
あ、でも火薬じゃなくて魔力じゃん。
そういや、実は調べてみたら銃弾も魔力を使ってたんだよね。
火薬が全部、置き換わってる感じ、
だからこっそり干渉しちゃえ。
あ、そうだ。
「な、班長!? なにやってんだよ!!」
みんなー、逃げろー、
僕が覆い被さって、被害を防ぐからー、
よし。これで魔法使ったのバレずにすむな、
最初から、運良く不発弾だったって事にしてやろ。
「っ、あ、ふはつ、だん?」
「うん。幸運だったね、」
これに懲りたら、みんな勝手にどっか行くんじゃないぞー。
なんて、むしろ自由にしてくれてもいいんだけど、僕が君たち動かすの面倒臭いから。
「それより、頭さげろって!」
危ないなー、当たってたよ?
でもま、みんな僕と同じくらいの子供達、しょうがないから命ぐらいは守ってやるか、
とりあえず、レコウが戻ってくるまではね。
銃を構える、
僕なら、塹壕越しでも当てられるな。
でも撃たない、
「・・・・・・無駄弾は、撃っちゃダメだよ。ちゃんと、僕の指示があってからね」
「はい!!」
うーん、部下の信頼が厚い、
しかし、悪いね。こう言ってるのは、君たちに戦果をあげさせないためなんだ。
だってさ、向こうにいるのも、
「それに、的が小さいから当たりづらいし。狙うのは、大将首だよ」
「はい! セレン班長!!」
何で、少年兵ばっかなんだよ。
いや、理由はわかる、後から知った。
そう、例えば、今僕たちの近くにいる大人の魔族の隊長。
「ふん、爆弾程度で怖気付きやがって。何で俺がこんな奴らの面倒見なきゃならねえんだよ、」
こいつは、雑魚だ。
重要な戦線から移動された、あまり強くない魔族。
そして、銃弾も榴弾も魔法で殆ど防げてしまう、大人の魔族。
でも傷を負わない事はないし、当たりどころが悪ければ死ぬ事もなくはないし、何より気が散る。
つまり、銃を始めとする兵器とは、
「まさに、僕らのための武器ってね、」
前に見た魔族は、雷速で動いていた。
あそこまで出来るのは一握りらしいが、彼らにとってこれは児戯なんだろう。
速度、負けてるけどね? でも、歴戦の魔族ほど、こんなものオモチャとしか考えていないんだ。
しかしそんな魔族はほんの少ししかいない、だから数を揃える。そのためにおあつらえ向きに生えてきたのが、これだ。
・・・・・・ああ、僕の夢。どこの世界も、知識の行き着く先は変わらないらしい。
暴力が簡単になって、巻き込まれる生命が広がる。なんて、効率的で、合理的じゃないんだろう。
「っ、なんで撃っちゃいけねーんだよ!?」
「お前、セレン班長の事を信じられねーのか!? 見ただろあの銃の腕前に、さっきの行動も、」
「ただ臆病なだけだろうが!!」
うーん、聞こえるけどせめて聞こえないようにやってくれ、
僕、班の中でも一番体格小さいし、他の班員には舐められてるんだよね。
慕ってくれてるのは、最初からついてきてくれてる・・・・・・、そろそろ名前、聞いとこうかな? いや、知ってはいるんだけど。
「そこ、短小君、せめて静かにやれ。」
「な! たんしょう!?!?」
「じゃあ、任せたよ、副君、」
「え、俺のことですか!」
うん、副班長。
そもそも上から決められてないし、勝手に任命してもいいよね。
文句言われた時のために、あくまであだ名だけど。フク君、別に副班長って意味じゃないですけど?? って、
さて、後は、
「君は、ちゃんと頭は下げてるけど、勝手に撃とうとしないで、ロンリー君」
「・・・・・・は?」
「そしてそっちの君、銃すらちゃんと構えられないの? 雑魚君、は可哀想だから、弱虫君だ、」
「え? ひどい!?」
む、クソムシ君よりマシだと思ったんだけど、
勝手に単独行動しちゃう子と、塹壕すら一人で登れない子。
それぞれ別の要因で、生き残らせるのが大変すぎる。
「さて、あ耳塞いで、」
榴弾、流石に毎回あれするのは面倒臭いし、撃ち落としちゃえ、
「な、ま、まぐれだ!」
「・・・・・・・・・・・・っ、」
「え、うそぉー??」
「流石セレン班長! ほら、お前らも見ただろ!? もう班長に逆らったりしねーよな!!」
お、副君、それ良いね、
僕の代わりに、そいつらまとめてくれる?
僕、子供の面倒見てるなんて、そんな余裕なかったからさ、
苦手、というか、見捨てすぎて、
今更なにやってんだろうって気持ちになるんだよね。
・・・・・・ほんと、今もなにやってんだろ。
相手の子供を殺したくないからって、無駄に戦況長引かせて、
まあ、いいよ、どうせ今だけの、
何だろうね、僕は、なにがしたかったんだっけ。早く帰ってきてよ、レコウ。
戦場は地獄?
どうだろ、確かにね。
それを認めるとすれば、この世には地獄が随分と多いらしい。
今も、僕の知らない場所で、知らない誰かが死んでいる、殺している。
僕が全力を出せば、無くせるのかな?
わかんないや、やる必要も、やらない必要も、
だって、今さら何もなかったで終わらせるには、ここは死にすぎてる。
「それに、これ。・・・・・・副君、感じる?」
「え、何がですか?」
見えてないのか、レリアの結界と同じかな?
魔王の、町にあったやつと同じ、広がった魔力。
しかもこれ、一種類じゃない、
薄いけど、もう一つ。
「戦況の優劣、そのものかな」
これ、空間を奪い合ってるんだ。
絶えず、おそらく二人の魔王が。
もし、これが一方に偏ったとしたら、
僕がやってるみたいに、国を丸ごと消し飛ばし、自由に出来るのかも。
「そして、僕たちが奪い合っているもの」
ただしこれ、純粋な魔王一人の実力って訳でもないみたい。
僕たちの後ろ、そしてずっと前。
それなりな大きさの、魔導具がある。
中継地点、そして補助装置。
これが無かったら、単純な魔術の複雑さはレリアのより下だね。
そしてこれは、榴弾や、近付きさえすれば子供の力でも、壊し動かすことができる。
つまり、これのせいで、僕たちは駆り出されているとも言えるかもね。
「おい、キサマ。」
ん、隊長? それやめろ。
「見えるか?」
「え、はい?」
「ほら、あれだ、」
うん? 双眼鏡? 一応魔法製だね、
ああ、敵の魔導具でしょ、そんなん無くても見えてるよ、
というか、君は弾けるから良いかもしれないけど、僕まで頭あげさせるのやめてくれない?
「行けっ、」
・・・・・・なに? 撃てと? 流石に銃弾で壊すのは、僕なら狙えばいけるか?
でも、流石に有効射程外、この銃そんなにパワーないんだから、
「早くしろ!!」
うわっ、蹴んなよ、避けたけど。
危ないな、また事故らせちゃうだろ、ここでやったら流石に死ぬぞ。
・・・・・・それでも、よかったか?
これ、行けってつまり、
死ねと?
「・・・・・・一班だけででしょうか、」
「なんだ、文句でもあるのか?」
うわっ、本気か?
捨て駒、どころか実質的な公開処刑だろこれ。
流石に素直に聞く気にならないな、元々だけど。
一応、他の班もいる。援護射撃、大して期待はできない。
みんな子供、まとめて行っても、的が増えるだけか。
せめてお前が一人で行けよ、
いや、こいつの練度だと、複数から狙い撃ちにされ続けたら普通に死ぬのか。
じゃあ尚更無理だろ、
流石に、軍規かなにかに、いやこの部隊に人権なんてないのか?
まずい、本当にやらされるな、この銃弾の中を、五人で。
いっそ僕一人だけなら、狭間の盾でも構えときゃ問題ないんだけど・・・・・・。
「僕たちの班はまだ教習も受けていません。奥まで辿り着いても、魔道具を取り扱えない可能性が、」
そうだあれ、せっかくなら鹵獲しようよ。
進退するたびに一々壊して作ってたら、大変でしょ?
「その場合は俺が行ってやる。いいから黙って行けや!?」
ちっ、くそ、お前が悪いんだからな、
そのまま蹴ってこい、また不幸にしてやるよ。
空間魔法が使えるなら、もっとスマートにやれるんだけど、この魔王の魔法邪魔。
バレないようには時間かかるし、しかもこれ一応は味方陣営のだから、壊したら敵の魔法干渉が広がって負ける可能性あるんだよね。
僕もう、この国がどうなってもいいかなって気分だけど。
「セレン班長!!」
副君? おっと、普通に躱しちゃった。
「はっ、やっぱただの腰抜けじゃねえか。早く行くぞ!!」
「・・・・・・そうだな、早く、あいつらを、」
「え、ほんとに行くの??」
黙れ短小、多数決取ったら行かないだろ。
しかし、なんだこいつら、そんなに死にたいならころ、
・・・・・・いや、僕の責任になるのか?
どうでもいい、けど、はぁ、
「・・・・・・せめて、何か、遮蔽物とかないんですか?」
「は、そんなもの、自分で用意しろ」
「はい。では、そうします」
万象の杖、バレないように袖に仕込んでっと、
『土壁』
「ちっ、魔法か。なぜ使える事を言わなかった?」
「そんな時間もありませんでしたので」
「まあいい、その程度じゃどうせな、」
そうだよ、この程度じゃ銃弾は防げない。
それに、突撃用には遅すぎる、
「よっと。それじゃあ全員、絶対に僕の後ろから出るなよ、」
だから、手に持つ。
「っ、セレン班長。その強度では、」
「ま、意外と大丈夫だよ。目眩しにもなるしね、」
ポーズが大事なんだ、何か対策はしてますってね。
こんなのは、ただの飾り。
僕には、もっと別の魔法がある。
「『さて』、じゃあみんな一緒に行こうか、」
地獄の、その先にね。