情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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43話

 

 魔族って、一人いなくなっても何とかなるもんだね。

 

 あれは不幸な事故だった、そういう事にした。

 実際、見ていたとしても、そうとしか思えないだろう。触れてすらないしね。

 

 しかし、むしろ見られてた方が楽だったな。流石に何もなしって訳にはいかなかったよ。

 

 入院してった隊長の代わりに別の人が来て、それから僕らは、

 

「君たち、絶対顔あげるなよ、」

 

 最前線、送られました。

 捨て駒といえど、最低限の同志撃ちを避けるための研修はあったらしいんだけど、それすら飛ばされました。

 これ、事故に見せかけて、僕らまとめて後ろから殺されるんじゃ、

 

 ——スッ、

 

 『うわっ』、榴弾だ、こんなものまで、

 

「退避!!」

 

 あ、でも火薬じゃなくて魔力じゃん。

 そういや、実は調べてみたら銃弾も魔力を使ってたんだよね。

 火薬が全部、置き換わってる感じ、

 だからこっそり干渉しちゃえ。

 

 あ、そうだ。

 

「な、班長!? なにやってんだよ!!」

 

 みんなー、逃げろー、

 僕が覆い被さって、被害を防ぐからー、

 

 よし。これで魔法使ったのバレずにすむな、

 最初から、運良く不発弾だったって事にしてやろ。

 

「っ、あ、ふはつ、だん?」

「うん。幸運だったね、」

 

 これに懲りたら、みんな勝手にどっか行くんじゃないぞー。

 なんて、むしろ自由にしてくれてもいいんだけど、僕が君たち動かすの面倒臭いから。

 

「それより、頭さげろって!」

 

 危ないなー、当たってたよ?

 でもま、みんな僕と同じくらいの子供達、しょうがないから命ぐらいは守ってやるか、

 とりあえず、レコウが戻ってくるまではね。

 

 

 

 銃を構える、

 僕なら、塹壕越しでも当てられるな。

 でも撃たない、

 

「・・・・・・無駄弾は、撃っちゃダメだよ。ちゃんと、僕の指示があってからね」

「はい!!」

 

 うーん、部下の信頼が厚い、

 しかし、悪いね。こう言ってるのは、君たちに戦果をあげさせないためなんだ。

 だってさ、向こうにいるのも、

 

「それに、的が小さいから当たりづらいし。狙うのは、大将首だよ」

「はい! セレン班長!!」

 

 何で、少年兵ばっかなんだよ。

 いや、理由はわかる、後から知った。

 

 そう、例えば、今僕たちの近くにいる大人の魔族の隊長。

 

「ふん、爆弾程度で怖気付きやがって。何で俺がこんな奴らの面倒見なきゃならねえんだよ、」

 

 こいつは、雑魚だ。

 重要な戦線から移動された、あまり強くない魔族。

 

 そして、銃弾も榴弾も魔法で殆ど防げてしまう、大人の魔族。

 

 でも傷を負わない事はないし、当たりどころが悪ければ死ぬ事もなくはないし、何より気が散る。

 

 つまり、銃を始めとする兵器とは、

 

「まさに、僕らのための武器ってね、」

 

 前に見た魔族は、雷速で動いていた。

 あそこまで出来るのは一握りらしいが、彼らにとってこれは児戯なんだろう。

 速度、負けてるけどね? でも、歴戦の魔族ほど、こんなものオモチャとしか考えていないんだ。

 

 しかしそんな魔族はほんの少ししかいない、だから数を揃える。そのためにおあつらえ向きに生えてきたのが、これだ。

 ・・・・・・ああ、僕の夢。どこの世界も、知識の行き着く先は変わらないらしい。

 

 暴力が簡単になって、巻き込まれる生命が広がる。なんて、効率的で、合理的じゃないんだろう。

 

「っ、なんで撃っちゃいけねーんだよ!?」

「お前、セレン班長の事を信じられねーのか!? 見ただろあの銃の腕前に、さっきの行動も、」

「ただ臆病なだけだろうが!!」

 

 うーん、聞こえるけどせめて聞こえないようにやってくれ、

 僕、班の中でも一番体格小さいし、他の班員には舐められてるんだよね。

 慕ってくれてるのは、最初からついてきてくれてる・・・・・・、そろそろ名前、聞いとこうかな? いや、知ってはいるんだけど。

 

「そこ、短小君、せめて静かにやれ。」

「な! たんしょう!?!?」

「じゃあ、任せたよ、副君、」

「え、俺のことですか!」

 

 うん、副班長。

 そもそも上から決められてないし、勝手に任命してもいいよね。

 文句言われた時のために、あくまであだ名だけど。フク君、別に副班長って意味じゃないですけど?? って、

 

 さて、後は、

 

「君は、ちゃんと頭は下げてるけど、勝手に撃とうとしないで、ロンリー君」

「・・・・・・は?」

「そしてそっちの君、銃すらちゃんと構えられないの? 雑魚君、は可哀想だから、弱虫君だ、」

「え? ひどい!?」

 

 む、クソムシ君よりマシだと思ったんだけど、

 勝手に単独行動しちゃう子と、塹壕すら一人で登れない子。

 それぞれ別の要因で、生き残らせるのが大変すぎる。

 

「さて、あ耳塞いで、」

 

 榴弾、流石に毎回あれするのは面倒臭いし、撃ち落としちゃえ、

 

「な、ま、まぐれだ!」

「・・・・・・・・・・・・っ、」

「え、うそぉー??」

 

「流石セレン班長! ほら、お前らも見ただろ!? もう班長に逆らったりしねーよな!!」

 

 お、副君、それ良いね、

 僕の代わりに、そいつらまとめてくれる?

 僕、子供の面倒見てるなんて、そんな余裕なかったからさ、

 

 苦手、というか、見捨てすぎて、

 今更なにやってんだろうって気持ちになるんだよね。

 

 

 ・・・・・・ほんと、今もなにやってんだろ。

 相手の子供を殺したくないからって、無駄に戦況長引かせて、

 まあ、いいよ、どうせ今だけの、

 

 何だろうね、僕は、なにがしたかったんだっけ。早く帰ってきてよ、レコウ。

 

 

 

 戦場は地獄?

 どうだろ、確かにね。

 それを認めるとすれば、この世には地獄が随分と多いらしい。

 

 今も、僕の知らない場所で、知らない誰かが死んでいる、殺している。

 僕が全力を出せば、無くせるのかな?

 わかんないや、やる必要も、やらない必要も、

 

 だって、今さら何もなかったで終わらせるには、ここは死にすぎてる。

 

「それに、これ。・・・・・・副君、感じる?」

「え、何がですか?」

 

 見えてないのか、レリアの結界と同じかな?

 魔王の、町にあったやつと同じ、広がった魔力。

 

 しかもこれ、一種類じゃない、

 薄いけど、もう一つ。

 

「戦況の優劣、そのものかな」

 

 これ、空間を奪い合ってるんだ。

 絶えず、おそらく二人の魔王が。

 もし、これが一方に偏ったとしたら、

 

 僕がやってるみたいに、国を丸ごと消し飛ばし、自由に出来るのかも。

 

「そして、僕たちが奪い合っているもの」

 

 ただしこれ、純粋な魔王一人の実力って訳でもないみたい。

 僕たちの後ろ、そしてずっと前。

 それなりな大きさの、魔導具がある。

 

 中継地点、そして補助装置。

 これが無かったら、単純な魔術の複雑さはレリアのより下だね。

 

 そしてこれは、榴弾や、近付きさえすれば子供の力でも、壊し動かすことができる。

 つまり、これのせいで、僕たちは駆り出されているとも言えるかもね。

 

「おい、キサマ。」

 

 ん、隊長? それやめろ。

 

「見えるか?」

「え、はい?」

「ほら、あれだ、」

 

 うん? 双眼鏡? 一応魔法製だね、

 ああ、敵の魔導具でしょ、そんなん無くても見えてるよ、

 というか、君は弾けるから良いかもしれないけど、僕まで頭あげさせるのやめてくれない?

 

「行けっ、」

 

 ・・・・・・なに? 撃てと? 流石に銃弾で壊すのは、僕なら狙えばいけるか?

 でも、流石に有効射程外、この銃そんなにパワーないんだから、

 

「早くしろ!!」

 

 うわっ、蹴んなよ、避けたけど。

 危ないな、また事故らせちゃうだろ、ここでやったら流石に死ぬぞ。

 

 ・・・・・・それでも、よかったか?

 

 これ、行けってつまり、

 

 死ねと?

 

「・・・・・・一班だけででしょうか、」

「なんだ、文句でもあるのか?」

 

 うわっ、本気か?

 捨て駒、どころか実質的な公開処刑だろこれ。

 流石に素直に聞く気にならないな、元々だけど。

 

 一応、他の班もいる。援護射撃、大して期待はできない。

 みんな子供、まとめて行っても、的が増えるだけか。

 

 せめてお前が一人で行けよ、

 いや、こいつの練度だと、複数から狙い撃ちにされ続けたら普通に死ぬのか。

 じゃあ尚更無理だろ、

 

 流石に、軍規かなにかに、いやこの部隊に人権なんてないのか?

 まずい、本当にやらされるな、この銃弾の中を、五人で。

 いっそ僕一人だけなら、狭間の盾でも構えときゃ問題ないんだけど・・・・・・。

 

「僕たちの班はまだ教習も受けていません。奥まで辿り着いても、魔道具を取り扱えない可能性が、」

 

 そうだあれ、せっかくなら鹵獲しようよ。

 進退するたびに一々壊して作ってたら、大変でしょ?

 

「その場合は俺が行ってやる。いいから黙って行けや!?」

 

 ちっ、くそ、お前が悪いんだからな、

 そのまま蹴ってこい、また不幸にしてやるよ。

 空間魔法が使えるなら、もっとスマートにやれるんだけど、この魔王の魔法邪魔。

 

 バレないようには時間かかるし、しかもこれ一応は味方陣営のだから、壊したら敵の魔法干渉が広がって負ける可能性あるんだよね。

 僕もう、この国がどうなってもいいかなって気分だけど。

 

「セレン班長!!」

 

 副君? おっと、普通に躱しちゃった。

 

「はっ、やっぱただの腰抜けじゃねえか。早く行くぞ!!」

「・・・・・・そうだな、早く、あいつらを、」

「え、ほんとに行くの??」

 

 黙れ短小、多数決取ったら行かないだろ。

 しかし、なんだこいつら、そんなに死にたいならころ、

 ・・・・・・いや、僕の責任になるのか?

 どうでもいい、けど、はぁ、

 

「・・・・・・せめて、何か、遮蔽物とかないんですか?」

「は、そんなもの、自分で用意しろ」

「はい。では、そうします」

 

 万象の杖、バレないように袖に仕込んでっと、

 

 『土壁』

 

「ちっ、魔法か。なぜ使える事を言わなかった?」

「そんな時間もありませんでしたので」

「まあいい、その程度じゃどうせな、」

 

 そうだよ、この程度じゃ銃弾は防げない。

 それに、突撃用には遅すぎる、

 

「よっと。それじゃあ全員、絶対に僕の後ろから出るなよ、」

 

 だから、手に持つ。

 

「っ、セレン班長。その強度では、」

「ま、意外と大丈夫だよ。目眩しにもなるしね、」

 

 ポーズが大事なんだ、何か対策はしてますってね。

 こんなのは、ただの飾り。

 僕には、もっと別の魔法がある。

 

「『さて』、じゃあみんな一緒に行こうか、」

 

 地獄の、その先にね。

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