情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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56話

 

「セシィ!!」

 

 走って、逃げて、ああいた、エンゼ。

 

「ぃ、あ、はやく!」

「え、うん。そうだね、追ってこないうちに、」

「城に、運んで、早く!!」

 

 なに? そんなに焦って、見てたの。

 運んでって、いや僕そんな力ないけど、

 

「っ、う、走る!!」

「う、うん。とりあえず靴、」

「に、もう、忘れてた!」

 

 走る、全速力、いや遅いな。

 追っては、来てないけど、どこいったんだ?

 ・・・・・・大丈夫そうか、ほら、エンゼ、少し休んで、

 

「そんな暇、ない、」

「ん、いや、大丈夫そ

「戦線が崩壊したっ! 例の奴だ!!」

 

 え、嘘、例の奴って、

 

「いつ、なんでわかったの?」

「ついさっき、エンゼの管理装置が全て壊された、ほぼ同時に! ・・・・・・それに、」

 

 ・・・・・・なるほど、つまり、魔王は間接的に戦場の終幕を感じとったわけか。

 全て、つまり、少年兵がいたところも、何もかも、

 

「・・・・・・・・・・・・遠くから乗っ取られただけとか、」

「わかんない。本当はあれが一つ壊れた程度じゃエンゼは気づけない。今回のは、おかしすぎて、わかっちゃった」

 

 なんにせよ、より詳しく知るためにはお城にあるちゃんとした装置を使うしかないのか。

 もどかしい、だけど僕らは、走ることしかできなかった。

 

 

 

 お城の中は、騒然としていた。

 うるさい、集中しなきゃ、情報が錯綜、矛盾、パニック、ダメだ意味ない。情報の重要度はわからないんだよ。

 もう連絡が届いたのか? どうやって、どこに、

 

「・・・・・・犯行声明が、あった」

「なにそれ、」

「わかんない、声だけ、ここにいた全員に聞こえたらしい。・・・・・・エンゼにも、結界を通して、届いちゃった」

 

 魔法? 遠くから声だけを、無差別に大声なら僕にも聞こえたはずだ、

 指向性を持った、もしくは心の中に直接?

 ファミチ、ごめん、今考えてる余裕ない。

 

「なんて?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まず、戦線が、崩壊したって」

 

 それは、聞いた。

 だけどそれをわざわざ伝えるなんて、やはり敵の偽の情報の可能性。

 

「・・・・・・さき、事実確認。何も聞かずに、エンゼについてきてくれる?」

「え、うん」

 

 虹の魔力、音を抑える。

 静かだ、さっきから出てたか? なんで、

 

 

 

 走る、魔王のための部屋。

 中継機は壊されたらしいが、そこまでの距離なら、

 

「やっぱり、全部、こわされてる」

「わかるの?」

「うん、反応かえして、周囲の光景も見れるようにしてる。・・・・・・あはは、本当に、そうなんだ」

 

 狭い部屋が、虹の魔力で満ちていく。

 なんだこれ、感情の昂り? 外の音が消されていく。

 

「・・・・・・ぜんぶ、はなす、」

「うん、どうしたの?」

 

 なんだ、震えて、

 いや、こんな状況だ、当然か。

 聞かせてくれ、何を聞いた、僕は何故かわからなかったんだ。

 

「・・・・・・戦線が、崩壊した」

「うん。何度も聞いた。それで、これから、敵が攻め込んでくるの、」

「ちがう!! こわれて、なくなったんだ、なにもかも、」

 

 ・・・・・・何を、

 

「味方も、敵も、すべて、ぜんぶ、なくなった。ひとりのだれかが、すべてこわした」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

 

「あいてのまおうのまほう、すこしもなかった。たぶんきっと、あっちはもう終わった」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フラグ、だったか、

 第三国、ですらない第三者、

 全てを壊す、まさに、本物の魔王。

 

「はんこうせいめい、そいつから、きたっ」

「・・・・・・本当に、信じるしかない?」

「おぞましい、声だった。聞いてるだけで、だれもあらがえない、そんな、」

 

 わからない、くそっ、僕だけが効果範囲の外だったのが悔やまれる。

 なんだそれ、いったいどんな、誰がやったら音だけで魔王がこんなことになる。

 

「ようきゅうはふたつ、」

「交渉してきたの?」

「きょうはく。あしたまで、まもらなかったら、この国もおなじようになるって、」

 

 そんな、ヤバい奴なのか、

 じゃあなんだったんだこの前の、こっちの戦線だけが押されたのは。

 こんなことができるなら、もっと。まるで別の奴がいるみたいだ。

 

「ようきゅう、は、」

「なに。一先ず、飲むしかなさそう?」

「まず、このお城、」

 

 城? 奪う、本当に魔王みたいだ。

 いや、魔王なのか? だとしたら、ここにいる幼女と力の差がありすぎる。

 

「もくてき、はかい、ぜんぶ、」

「うわぁ、魔王だ。お城か、どうする?」

 

 最悪なくても、この国はどうにかなるか?

 差し出す? どうすれば、いや僕が決められることじゃ、

 

「このくにの、しょうちょうを、無くす気なんだ。えへへ、せんそうは終わるよ」

「まあ、敵がいなくなったからね」

 

 ・・・・・・そうだ、もしそれで、この戦争が終わるなら。

 もう、何人死んだ、

 だけど、まだ、ここに生きている人はいる。

 危なかったね君たち、僕らも、あと少しずれていたら。

 

 ・・・・・・命が運で左右される、自分のものですらない、世界の、

 なんて、気持ち悪い。

 だけど、僕は、今更、どうすることも、

 

「・・・・・・にゃ。もし、それで、戦争が終わるなら、セシィはどうする?」

「・・・・・・選択肢はあるの?」

「ないかも。この国の象徴を差し出せば、少なくとも国は残る。うん、えらぶまでも、ないよね」

 

 そうだ、そもそもその条件なら、どちらにせよここは壊れるしかないじゃないか。

 僕は、この国に思い入れなんてないんだ。もしそれで収まるなら、悪いけど、

 

「・・・・・・・・・・・・えへ、だよね、」

 

 ・・・・・・虹の魔力が濃くなる。

 エンゼ? どうして、表情を隠すの?

 

 僕に、見えないなんて、おかしい、

 

「要求は二つ、この国の象徴の破壊、お城と、もう一つ、」

 

 なんだ、なにしてる?

 これ、わからない、エンゼ、なにを、

 

「おまえに、最後の頼みがある。悪いと思う、本当に。でもおまえにしか頼めないことだ」

 

 虹、いやもうそんな綺麗なものじゃない、ヘドロ。

 混ざり合って、黒く濁って、表面だけが不気味に七色に光っている。

 これが、彼女の、本質、

 

 魔王の、本気。

 

 

 

 でも、国を滅ぼせるほどじゃない。

 何故、今これを、見せるの

 

 

 

 

 

 

「エンゼを、殺して、」

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

「説明、なにがしたい、」

 

「この国を守りたい、エンゼの役目を果たしたい」

 

「この国の象徴、そういう事か。なんで、それを僕に頼む、」

 

「エンゼのこれ、自動防御。なにもしなくても、勝手にでちゃう。それで怒らせたら、みんな死ぬ。だから、先に、終わらせて、」

 

 

 

 

 あはは、無茶をおっしゃる、これだから魔王様は、

 そもそもそんなもの、僕だって攻撃したら危ないんじゃないかい?

 

「だから、悪いと思う。でももう止まらない。これ、勝手にエンゼの望むようにする。だからおまえはもうこの部屋から出られないし、エンゼを殺すしかない」

 

 ああそれで、こんなに部屋が酷いことになってるの、

 

「望むこと、ねえ。じゃあなんで、君はまだ生きてるの?」

 

「・・・・・・っ、エンゼが、みじゅくなせい。これもしごと、だから、はやくやれ。でないときっと、」

 

 ヘドロが、蠢く、

 質量を持って、鋭い形へ、

 

「おっと、危ないな。自動防御どころか自動攻撃までしてくるね。僕死ぬかな?」

 

「早くしろ。魔王の命令だ、早く殺せ、」

 

 それ僕に言ってるの?

 

 ヘドロの攻撃が激しくなる、

 

 でも、魔法も使わず避けれるな、この程度。

 

「ふーん、それ、僕聞く必要ないよね?」

 

「うるさい、早くしろ、でないと。本当に殺すぞ」

 

「あはは、とはいってもそれのせいで、僕もうまく魔法使えないんだよね。まったくわがままだなぁ」

 

 空間魔法、弾かれる。

 一つだけ、無防備な場所がある。

 心臓、何度も僕らが触れたところ。

 そこにやれと? きっとそこは苦しいよ、

 

「ねえ、つまり君は、僕は魔王より強いと、そう考えてるの?」

 

「・・・・・・そうだ。前は、抵抗もできなかった。おまえなら、エンゼを殺せる」

 

「ははは、そうだね。なら、こうも考えなかったの?」

 

 ちゃんと、言ったよね、僕。

 最初から、ずっと君に、

 

「僕は、この国なんかより、君の方が興味があるって」

 

 なあ、もう一度、君をさらってしまおうか。

 

「っ、やめろ!! そんなことしたら、この国が、」

 

「そうだよ、君は選択を間違えた。残念だったね、僕がいなかったら、懸念はあれど普通に国を救えたのに、」

 

 

 

 

 

「ふざけるな!! エンゼはそんなの、望んでない!!!」

 

「そうだ、望みに意味なんてない。行動が全てだ。自分の意思を通したいなら、グダグダ言ってる前に本気で来い!」

 

「にっ、この、わからずやーー!!!」

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・どっちがだ。

 

 はは、変な思考回路だ。

 

 夢のせいかな、まったく、僕はシスコンじゃないっていうのに。

 

 

 

 まあ、いいよ、

 

 

 

 何人見殺しにした? 知るか、

 気持ち悪い? 元々だ、

 今さら偽善か? そうだよ、

 

 僕は、常に今を生きるので精一杯なんだ、

 

 

 勇者が魔王を倒してハッピーエンド、こんな世界に胸糞悪い自殺なんてあってたまるか。

 

 幼い少女の命一つで世界が救われる、こんなふざけた夢を君に見せるわけにいくか。

 

 僕だって、嫌さ、きっと。

 

 

 

 だから、

 

 

 

「『整理』、」

「っ、『対応』!」

 

 弾かれる、自動防御、

 

 無機質で、最良で、完璧で、効率的な対応。

 

 だからこそ、なにも怖くない、

 

 僕にイレギュラーのないチェスで挑むなら、後攻でだって必ず負かせてやるよ、

 

 せめてメートちゃんみたいに、悪意の一つでも込めるところから出直してきな。

 

「『収納』。悪いね、今回は縛りプレイはしないよ。取れるところから、削り取ってやる、」

「っ、『喰らえ!』」

 

 虹の玉、相手に合わせて変化する必殺の魔法。

 

 あは、ほら、あえて受けてやるよ、

 

「いたた、あら、ちゃんと当たるね、」

「ぁ、ゃ、」

「なんで、攻撃した側の方が傷ついてるの、」

 

 そんなの、

 いやこれは僕が悪いか。でも君も悪いんだよ、いつまでそんな駄々を叫ぶんだい。

 

 僕はとっくに、聞く準備はできているのに。

 

「はい『収納』っと。ほら、前にやった遊びと同じだよ。早くしないと、どんどん不利になる」

「あっ、に、『エンゼ、は』」

 

 僕は、また一つと取られてない。

 それ、弱いよ、

 ほら、せめて足の一本でも取ったらどうだい?

 

「『収納』、『収納』っと。おっと、いま僕は腕を差し出して君の多くを取ったよ? 何故やらなかったの?」

「ぁ、うゃ、『エン、ゼわ、』」

 

 コマは、もうほとんど残ってないよ。

 でもね、このゲームは、コマを取るのが目的じゃないんだ、

 

 ほら、

 

「心臓、誰が薄くて狙いやすいだって? ここを取れれば、一発だよ、」

「『ひっ、やっ、ぇんぜぁ』」

 

 晒して、よく、狙いな。

 

 逆転の一手、もうこんな機会はないよ、

 

 君は、どうするんだい。

 

 

 

 

 

「『エンゼ、は!!』」

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