情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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59話

 

 失土、ああ、確かにそうだ。

 空を埋め尽くす液体、もしこれが一斉に落ちたら、大地全てが消えるだろう、

 

 そこにはまるで、最初から海しかなかったかのように、

 

「・・・・・・・・・・・・はは、やりすぎでしょ、」

 

 

 

 (セーシィ♪ 本気で行くぞ、)

 

 

 

 空で荘厳に佇み、水が渦巻く、

 下には降りて来ないんだ、僕への対策のつもりかな?

 

「・・・・・・エンゼ! 来るよ!!」

「っ、あ、ああ、」

 

 といっても、まだ魔力回復してないな、

 もー、レコウは、来るのが早いよ!

 

「『放出』。これ、装置使って、」

「あ、あ、あんなの。エンゼ、」

「もう! 僕がいるでしょ! 君を見せて‼︎」

 

 レコウはそれをじっと見つめて、

 

 僕らの横を指差す。

 

「っ、エンゼ!!」

「ひっ、ぁ!」

 

 そこは、何もなかった、

 空気にすら邪魔されない自由な水は、また一つ大地を消した。

 少し目測がズレていたら、僕らまとめて消し飛ばされてたね。

 なんだよ、本当に失土? なわけないか、

 

「・・・・・・貴様らの選択は、恭順か?」

 

 荘厳な声、心の底から震え上がらせる、竜の声。

 

「エンゼ、早く!!」

「ぃ、あ、むりだ。そうだ、そうしよう。こんなの、エンゼのいのちだけで、」

 

 ・・・・・・エンゼ。怖がらせすぎたか。

 ああ、もう、終わりなのか? 諦めて、このまま流れに従うしか、

 

「・・・・・・・・・・・・ん?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんじゃ?」

 

 なに、魔力、想定外の。

 地上から、これは、大きな、

 

「あ、だめ! これっ!」

「なに、味方? なんで今になって、」

「こんな、エンゼがちゃんと死ぬから、やめて・・・・・・、」

 

 よくわかんないけど、レコウのものじゃない。

 

 なら、良いんじゃないか?

 僕たちにとって、好都合な、

 

「大規模攻撃用魔導兵器。かく、みさいる、」

「・・・・・・・・・・・・ほわいっ??」

 

 なにそれ??

 聞いた事ないあるよ、あはは、実物を見たことはないね。

 えっとー、それって確かー、

 

「な、なにそれ!」

「エンゼもわかんない! そうよばれた設計図があったから、エンゼの魔力をこめたらできちゃったの!!」

「えぇーーーーー!?!?」

 

 核!? そんなノリでできるもんなの⁉︎⁉︎

 いや落ち着け、たまたま似てるだけでまだ本物だと決まったわけじゃ、

 

「あれ使ったら、まわりみんな毒で死んじゃうから、ぜったい使えないよう捨てたはずなのに‼︎」

「毒!? やっぱ本物なの!?!? というかそんなもんこの国の真上に向かってぶっ放す気?!?!」

 

 まず、これ、死ぬ、全員、本当に、

 なんでそんなもの、こんなの、レコウよりヤバい。

 

「無駄な足掻きを! どこだ!!」

 

「ろじ、・・・・・・っ、あいつら! あんなとこにエンゼのかってにかくして!!」

「裏の、そうか、逃げたんじゃなくて、これを取りに行って。っ、あそこ、なんで!?」

 

「そこかっ!!!」

 

 水流が渦巻き、人気のなさそうな路地裏に堕ちようとする、

 あっ、だめ! レコウ、そこには、子供たちがっ、

 

 水流、止まらない、全てを消す、

 きっと、レコウには、遠慮する理由はないんだろう。

 止める、普通には間に合わない、僕、どうする、

 

 もう、僕が、どうしようも、

 

 

 

 

 

 

       『反抗!!』

 

 

 

 

 

 

 水流が、跳ね返る。

 何物も敵わないと思われなきゃいけない絶対が、返っていく、

 それは、

 

 

 

 ————アー、なんなんだキュウに。クビはいっぱいイルし、ソラはおかしいシ、どうすりゃイイんだ??

 

 

 

 遠くで、声。

 なんで、君、そんなところにいるの?

 でも、世界を壊す死の兵器はもう感じない、

 

 どうやら、君が、なんとかしてくれたらしいね、

 

 

 

 

 

「・・・・・・止められたか。それじゃあ、これ以上余計なことが起きる前にの、」

 

 

 

 竜が、空が、哭く。

 もう、本当に、終わらせる気らしい。

 僕は、どうする、

 

 

 

「いい、セシィ、今のでわかった。エンゼは、覚悟を決めた」

 

 

 

 エンゼ?

 恐怖で震えていた少女は、もうそこにいない、

 やっと、これから、始められるの

 

 

 

「エンゼは、余計だ。初めから、いない方がよかった」

 

 

 

「なっ、ちが! 僕は、君にそんな事を言わせたかったんじゃ、」

 

 

 

「いいんだ。とめないで。これが、エンゼの最期の仕事だ、」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

 僕は、その決意に満ちた表情を、止めることができなかった。

 

 

 

 

 

「みんな! 聞いて!! これからは、戦争なんてない、魔王なんていらない、そんな国になるの!! みんなで、協力すれば、きっとできるから、だから、」

 

 

 

 

 

「いままで、ありがとう」

 

 

 

 

 

 ・・・・・・ああ、きっとできるだろう。

 だってここにいるのは、君の呼びかけに答えてくれた味方だけだから。

 だから、君の仕事は、もう、

 

 

 

 

 

 

 

「終わったかの、」

 

 

 

「うん。ありがとう、おまえ、」

 

 

 

「レコウじゃ、内緒じゃぞ——」

 

 

 

 

 ————ヂャ/

 

 

 

 

 そして、竜の手には、彼女の頭しかなかった。

 

 少女は、魔王は、エンゼは、最後まで、その仕事を果たした、

 

 戦争は、騒乱は、少女の首一つで、終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 朝が来た、

 

 

 

 空を覆い尽くしていた終末はすっかり晴れ、元通りのなにもない空間が残った、

 

 

 

 いや、空っぽの中に、一つだけ、

 

 

 

 大きな、虹が、残っていた。

 

 

 

 

 

 国は、変わるらしい。

 彼女が集めた大人たちと、残された子供たちが集まって、新しい社会を作るらしい。

 民主主義。それとなく僕も、伝えておいた。

 

 これは、悲劇だった。

 何代にも渡って伝えるべき、忘れられない、忘れさせるわけにいかない、教訓。

 きっと、もう誰も、間違いを犯すことはないだろう。

 そんな事をしたら、また、怖いドラゴンが全てを壊してしまうから。

 

 

 

 僕は、もう誰もいない裏路地を通って、国を出る。

 僕の部下はしっかり治療して解放したし、ひっそりスープも継ぎ足してきた、

 僕に、この国にできることは、もうない。

 ここには、長く居すぎた、早く行こう。

 

 

 

 ああ、また、君に会いたいな、エンゼ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

 

「ああ、セシィ! 遅かったの、何してたんじゃ??」

「・・・・・・レコウ。どの顔してそれ言ってるの、」

「え、なんで怒ってるんじゃ!?」

 

 

 

「・・・・・・まあ、いいよ。ようやく、エンゼにも良い報告ができそうだからね、」

 

 

 

 ねえ、エンゼ。

 僕、君に謝りたいことがあるんだ、

 

 それは、

 

 

 

 

 

「にゃ、おそい! エンゼ、いつまでこの状態でいればいいの!!」

「いやほんとごめん! おせっかい焼いてたら、思ったより建て直すのに時間かかっちゃって、」

 

 すっかり忘れてた、やっば、

 その間ずっと収納されて首だけ出してる状態でしょ? ご飯とかどうしてたの?

 

「にゃ、レコウお姉ちゃんに食べさせてもらった」

「そうじゃ! いいの〜レコウお姉ちゃんなんて、可愛いのじゃ〜〜、」

「にっ、エンゼの最大の武器。さいきょう、どらごんにもきく、おー、」

 

 うわ、すっかり仲良くなってる。

 レコウお姉ちゃん、だってー、

 

 ぐぬぬ、やっぱ僕もセシィお姉ちゃんって呼んでもらおうかな?

 

「ほれ、セシィもいいぞー! レコウお姉ちゃん〜って、恥ずかしがらずに、」

「レコウさん。あなたがとりあえず全部壊せば上手くいくだろうという短絡的思考をしたせいで、僕がどれだけ国を建て直すのに苦労したと思っているのですか?」

「け、けいご、じゃと、。うわーん、謝るからそれはやめるのじゃー!!」

 

 この脳筋トカゲ、戦争終わらせるために物理的に全部水に流しやがった、

 

「大丈夫じゃ! 子供達には傷一つ付けておらん! 我の完璧な力加減、ふっかーつなのじゃ!!」

「信用できない。というかあの最後のも、あんなに本気でやる必要あったの?」

 

 わざわざ魔法使ってまで、僕に合わせるようこっそり言ってきて。

 リアリティを出すためとはいえ、エンゼちゃんに何も言えなかったのが本当に心苦しかったんだよ!?

 

「そ、そうは言ってものー。しっかり本気っぽく見せとかんと、また同じことするかもしれんし」

 

 ふーん、それにしては、ノリノリに見えたけど。

 

「それに、我は最初から言ってたのじゃぞ! 象徴としての魔王を破壊するって!! 殺すなんて一言も言ってないのじゃ」

「それは、無理があるでしょ。ね、エンゼー。あのトカゲ、怖かったよねー」

「うぇーんっ、セシィお姉ちゃーん。あのとき、ほんとに死んだと思ったよー、怖かったよーー!!」

 

 うぐっ、強い。

 僕もう、シスコンでもいいかも。

 別に、悪いことじゃないしね、

 

「いや本当に、悪いと思ったのじゃよ。向こうの魔王は思いっきりおじさんじゃったから、てっきりこっちもそうなのかと、」

「それで、よってたかっていたいけな幼女をいじめたと、」

「・・・・・・まあ、よってたかったのは、セシィではじゃ?」

 

 ・・・・・・・・・・・・は!

 あっ、まって、行かないで、僕のエンゼちゃーん!!

 

「エンゼは、わかった。信用できるのは、自分だけだー!!」

 

 ああ、僕たちの妹がー・・・・・・、

 ・・・・・・ねえ、レコウ、試しにセシィお姉ちゃんって、

 

「やめるのじゃ、不毛じゃ、」

「だよねー? ・・・・・・で、これ、どこに向かってるの?」

「待ち合わせの場所じゃ!」

 

 なんだろうね、レコウを先頭にして歩く。

 いやエンゼちゃんだけ歩いてないね、空間から顔だけ出して、すっかり楽する事を覚えちゃったよ。

 ほら、もう出られるようにしたでしょ、

 

「エンゼ、疲れちゃった、お姉ちゃんたち♪」

「もー、」

「しょがないの〜、」

 

 うわ、幼女、勝てない。

 

「で、約束って・・・・・・、あれ?」

「おー、いたいたじゃ。待たせたのー!」

 

 うーん、なんだろ、さえないおじさん。

 知り合い? まあ予想はつくよ、

 

「にゃあ。あれ、魔王か、」

「もと、じゃ。エンゼと同じでの、」

「やっぱ、向こうでもやってきたんだね、」

 

 はあ、まさか戦争も、

 本当に外からなんも関係のないドラゴンが暴れまわって、全部解決されるとは思わなかっただろうね。

 

「これから身分を隠して田舎暮らしじゃと。これで一日中装置に向かって魔法を使い続ける日々とはおさらばだーって、感謝されたのじゃ」

「え、そんなことしてたの?」

「にゃ。エンゼは一日一回だった、」

 

 ・・・・・・なるほど、よくよく考えたらあの拡げるだけの装置で相手と空間を奪い合い続けてたわけだから、そりゃ常に気を抜けないか。

 エンゼは、魔力流しただけで、それ全自動でやってたけど。

 

 ・・・・・・うん。このことは、あそこで解放された顔してるおっさんには話さないでおこう。

 

「エンゼちゃんは、この後、どうするの?」

「・・・・・・んゅ、エンゼは、できれば、あの国に戻ってみんなを助けたいけど、」

「まあ別に、我は魔王がいないなら、それでいいがの」

 

 ふーん。じゃあ変装でも教えるか。

 レコウは、なんでそれに拘ってるの?

 

「・・・・・・ああ。約束したのじゃ、魔王と。自分の首をやるから、戦争を終わらせて、平和にしてくれって」

 

 へー、あのおっさんとねー。

 

「まあ、少し違うこともしたが、せっかくじゃったからの。あのおじさんも、本当は戦争なんて望んでなかった。人間とのすら含めてじゃ、」

 

 へー、じゃあ全員、なんのために戦ってたんだろう。まあいいか、それを知ってる奴は、全て綺麗になったし。

 平和を願ったものはみんな生きてる、それでいいか。

 

「そうじゃの。・・・・・・それより! あれ、途中の、なんじゃったんじゃ!? 毒って言うから、びっくりしたぞ!!」

「ああそれ! 僕も想定外すぎてどうしようかと思ったよ。しかもレコウ子供達がいるところに攻撃とするし」

「うぐぅ、それは知らなかったのじゃ、危なかったじゃ、」

「後ちょっと遅れてたら、演技かなぐり捨てて僕が止めなきゃいけなかったよ」

 

 本当、あれはいいタイミングだったよ、シファ。

 

 でも君、結局なんで、あそこにいたの?

 

 そうだ、君の目的は・・・・・・・・・・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 ——アーア。ンダヨ、ソウイウコトかヨ、

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