情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

75 / 124
71話

 

 プリン。

 

 それは、卵と牛乳とお砂糖で作られた、甘くて柔らかいこの世界の異物。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・プリン、を、」

 

「・・・・・・売っていた聖女に、拾わせたはずだったが、」

 

「・・・・・・お前は、誰だ?」

 

 機械音、低く一定な顔の見えない音。

 感情を感じない、淡々とした、まるで僕みたいな話し方。

 

 なるほど、君が科学の町の主なのかな。

 

「人、いや何にでも名前を尋ねるなら、まず先にね、」

 

 といっても、名前くらいはもうバレてるだろうけど。

 これは釣り針だったか、まんまと釣られクマーってね、熊??

 

 ともかくいいよ、ただで引き上げられるほど安いかは君次第。綱引きしようか、僕はどうせ抉り出されるものもない空っぽだけどね。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・マキ、ナ。それ以外の名は、一先ず無い、」

 

 錆び付いた、途切れ途切れの声。

 わざとか? 感情を悟られないようにでも。

 

 少なくとも今の言葉に嘘は感じなかったが、真実も感じない。

 どうだろう、流石に範例が足りないな。もっとパターンを引き出せば、判別できるかも。

 

「そう。じゃあ、セシィでいいよ。僕も、一応それ以外に名前はないから」

「・・・・・・そう、か、」

 

 これは、向こうも僕を測りあぐねて探ってるところかな。

 

 僕にそんなことしたって無駄なのに、だってどうせ表も裏も上も底もない真っ黒な伽藍堂、

 まあいいや、適当に貼り付けた表皮に針を刺してもらって、そのまま全部飲み込んでやる。

 

「あの、聖女とは、知り合いか、」

「そうだね。まあ、それなりに仲良くさせてもらってるよ。君も、仲良くしたいのかい?」

「・・・・・・いや、そう。だな。まあ、聞きたいことはあったが、」

 

 一定の、ボイスチェンジャーでも咬ませてるみたいな声。科学なんてものに手を出してるし、もしかしたら本当にそうかもね。

 

 まあ魔法でも、技術でも、同じことできるけど。ともかくいいよ、君のことが解っていく。

 例えこれが音ですらない文字だけだろうと、選ぶ単語、並べる文脈、入力までの思考時間。思想の匂いは、そう消せるものじゃない。

 

「なに? 僕で良ければ答えようか?」

「・・・・・・・・・・・・ああ、」

「うん。僕も聞きたいことがあるからね、」

「そうか、そうだな」

 

 交換条件、まあ真面目に答える必要もないけれど、

 例え嘘をついたとしても、そのデータは取れるからね。

 

 さて、どっちがより多く中身を取り出せるかなっと。まあ僕は負けようがないズルなんだけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・、はは。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・では、まず、」

 

 流れを感じる、音に確かに何かが乗っている。

 ふむ、これは重要度が高いサインか、それともブラフか、なかなかに重そうな感情を推測できるよ。

 

 初めから大きく来たね、返しで僕の反応を探りたいのか、これは舐められてるのかな?

 うん、この容姿が効率的に出たかな、ありがたいね。さあ、君は何を求めるんだい。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プリン、とは、どんな味なのだ?」

 

「・・・・・・・・・・・・砂糖じゃない?」

 

 

 なるほど、あえて外してきたか、これで僕の動揺を誘う気だな。

 ・・・・・・そうだよね、そうだと言ってください。

 じゃないとなんか、僕がバカらしくならない!?

 

「それは、こう、どんな感じの味だ。甘いのか、美味しいのか、」

「ええ、まあ、個人の意見なら、そうなんじゃ?」

「どういう感じの甘さだ、まったりしてるのか、さっぱりしてるのか、」

「えー、どちらかというと、まったり? ・・・・・・実際に食べた方が早いんじゃ、」

「こう、牛乳と卵を使った、黄色い系の味か。下は黒いのか!?」

「いやもう、そこまでいったら味わかるだろ!?」

 

 こっ。こいつ、

 ズルい!? 一つ質問につき一つ返答っていう暗黙のルール破ってきやがった!

 

 くそぅ、確かに厳密に宣言はしてなかったけどさ。質問をあえてくだらなくすることによって試行回数を稼ぐ作戦か、だとしたらやりおる。

 

 というか、そうであってくれ。じゃないと、本格的にこいつの思想がわからなくなる。

 

「・・・・・・なに、食べたいの? 貰ってきてやろうか、君の家まで届けるよ、」

「・・・・・・・・・・・・いや、いい。今は、食欲がないからな、」

 

 何それ、病人みたい。

 むしろそんな時にこそ、プリンをお見舞いしてやりたいが、顔面に。

 それじゃあ今度は僕の番、って、今のは質問じゃないからな、

 

「それで、君、マキナ? あだ名? まあいいや。単刀直入に聞くけど、君がこの町の変化の中心ってことで良いのかな?」

 

 ・・・・・・無機質な声、どちらかというと低くて男性っぽい? でも話し方は多分、僕と同じ・・・・・・・・・・・・。いや、まだ範例が必要だな。

 

「変化、か。オマエの目には、これはどう映った?」

「・・・・・・・・・・・・む、」

 

 質問に質問で返すなと、うわなんか怒鳴りたい。

 しかし本当にだ、一問一答形式守る気がないのか? まあこの場合は探ってる僕と隠れてる向こうの差か。しょうがない、

 相手が自分が優位に立っていると感じてくれるほど、情報は引き出しやすくなるからね。むしろ好都合さ。

 

「人々が平等に安定した生活を享受しているね。君の思い通りになったかい?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どう、だろう。彼に、聞いてみないことには、わからない」

 

 彼?

 何だ、文脈的に特定個人、それなりに感情が乗っていた気がするが、判別は厳しい。

 

「・・・・・・そっちが、この町の旗なのか?」

「旗・・・・・・。そう、・・・・・・いや、どうだろう、」

 

 要領を得ない、裏を探る、どうだろう。

 そろそろ真偽はつくか、いっそ直接会ったら全部わかるかな、

 

「・・・・・・オマエは、それを探して、どうする、」

「うーん。とりあえず、聞いてみたいかな。あんな壁なんて作って何したかったのって」

 

 後はまあ、魔族に銃火器なんてばら撒いた理由ね。

 あんな事して、魔族の相打ち狙いか? 確かにそれなら人間側的思考だが、その矛先は結局こっちにも向くだろうに。

 放任主義の迷惑やろう。悪いけど、それが今の誰かの評価だ。もしくは、君のかな、

 

「・・・・・・そうか。なら、ジブンが答えよう、」

「ふーん? なんか知ってるの?」

「ああ。少なくとも、あれを作ったのは、ジブンだからな」

 

 ・・・・・・嘘、では、なさそうかな。

 結局のところ、どんなに範例を集めたところで、僕の発見器としての機能はそこまで大したものでもないんだけど。

 ともかく、聞くしかないか。

 

「なんで?」

「時間が、必要だった。あのまま決裂が起これば、小競り合いで、ただ一方的に片側が負けていた、」

「ああ。抗争一歩手前まで行ったんだっけ、」

 

 そんな状態で、どうやってあんな大規模なもん作ったのか。

 あれは科学の力だけじゃ説明つかなそうだけどね。少なくとも、向こう側に協力者でもいないと無理だと思うけど。

 何せ、僕でさえ掌握に手間がかかりそうな魔法、魔術。あれも君がかけたんですか、科学の町の住人さん。

 

「それは、向こうが勝手にやった。何かしら、都合がいいことがあったんだろう」

「ふーん、」

「今は、力が拮抗している。こうなると邪魔だ。このまま、取り払っても良いが、」

「うん、まあそれに興味はないけれど。そうだ、じゃあ何で外に銃火器の情報を流布したの? それやっちゃったら、意味ないんじゃ、」

 

 あのおもちゃに全幅の信頼寄せてるなら、まあ人口の差で同じ武器使っても勝てる算段なのかな? 最低でも交渉はできるかって。

 そっちもまあ、興味ないけどさ。

 

「流布? ・・・・・・そうか、オマエは国外から来たのか、」

「そりゃそうでしょ、何せ僕は聖女様のご友人だよ?」

 

 そうそう、魔族のところ行ってたのも聖女様のお導きのままにー、って、

 本人には止められてた気がするけど、些細な情報だね?

 

「だとしたら、すまないな。少なくともジブンは、その件に関与していない」

「国の代表者さんが?」

「ジブンは、少し広める手伝いをしただけだ。考えても、支配してもいない、」

 

 ・・・・・・そう。自販機にカメラ仕込んどいて。

 どうだろうね、結局道具は使うもの次第。本当に他意なく流れ出ちゃっただけの可能性、それが魔族にまで?

 

 一応、嘘は感じない。今のところずっと。

 これは諦めるべきか、それとも本当に表向きの真実を話してると考えるべきか。

 後者だとしたら、僕と同じだな。嘘は真実で塗り固めた方が効果的だ。僕もまだ、嘘は言ってないからね、

 

「だが、外に広める、か、。心当たりは、ある、」

 

 ・・・・・・嘘では、なさそう。

 ・・・・・・・・・・・・今のところ候補に挙げられるとしたら、彼とやらか。

 そっちが、夢なのか? この四角いひび割れたレンズ、夢の世界の産物を通して繋がっているのはただの協力者。

 

 僕が見つけるべきは、果たして誰か。

 

「ふむ? 教えてくれる?」

「・・・・・・そんな事をできて、しそうな奴は、」

 

 言い淀む、平たい隠された声でもなにか、悪い感情が浮かんでいる。

 これは、なんだ、嫌悪感? 一体誰に、何に対して、

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、確信がない。これ以上聞きたいなら、協力してほしいことがある」

 

 交渉、ふむ、こっちが聞きたいタイミングで止める、まるでテレビのシーエムみたいだな。

 まあ普通に考えたら彼か、しかし何やら隠したがり。なんだろう、何かの感情、しかし僕には人の考えることなんてわかんないし、

 

「・・・・・・まあ、先に聞こうか、なに?」

「・・・・・・・・・・・・ああ。聖女に頼もうと思っていたのだがな、まあオマエでも一先ずいい」

 

 交換条件か、うん面倒ならさっさと突撃してしまってもいいな、居場所はわかってるしね。

 一応話だけは聞いてやろう、応えることはないけど。

 

 今のところ、逃げた気配はない。殊勝な奴だ、それとも慢心かな。

 まあ何にせよ、一方的に情報だけ抜き取っておさらば、

 

 

「簡潔に言うと、新たな勇者の誕生を防いでほしい、」

 

「よーしなるほど、詳しく聞かせろ⁉︎⁉︎」

 

 

 っては! しまった、僕の情報漏れてる???

 いや、流石にそんなことはあり得ないはず、落ち着け落ち着け。

 ふむふむ、お願いだっけ? まあ詳しく聞かせなよ。

 

 いや悪いね夢、でも直接関係あるかはわからないからね。

 僕はいつだって、アレン一筋なのさ。

 

 

 

 許してくれよ、僕の————、

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。