「ふむふむなるほど。つまり例の大会は、優勝者をそのまま勇者に祭り上げる為の策略と。なんでまた、」
「さあな。だがもしそうなれば、より強い旗の台頭によって、今の国内の均衡は破れるだろう」
それは、君の望むところではないのかな、科学の御旗さん。
少なくとも、僕は到底許せることじゃないけれど。一周回ってもう許せるぞ許せる!!
何だこれごめんうるさいちょっと黙ってて。
「聖国の聖女を呼んだのも、元よりその為だろう。あそこの勇者否定は有名だからな、」
「そんな聖女様が選んだ精鋭に、大会という形で勝利すれば、まあ表立って否定はしづらいよね」
だからといって、肯定する理由になるかはしらないけど。
それこそ、聖国が国力的に死んでて隣国の助命が必要な状況でもないとね。
「でもそんな上手くいくのかな? 勇者だよ、凄くてカッコいいんだよ?? こんな一国程度の大会でねえ?」
何せ、アレンはもう世界を一つ救ってるくらいの超絶イケメン最強のお人だからね。僕の。
キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ♪
「普通は、そうだろうな。だが、向こうには、あのエウスがいる」
「知り合い?」
「いや、まあ、あれは嫌でも目立つ」
ふむ、嘘ではない、でも隠しきれない含みがある。
これは何だろ、嫌悪感?
まあ二つに割れた国の暫定トップどうし、思うところがある方が普通だけど。
「あれの手に掛かれば、そこらの雑兵ですら、立派な救国の勇者に仕立て上げられるだろう」
「ふーん。まあそれで勇者の輝きに縋れるとは思わないけど、一国の英雄くらいは作れるかもね、」
「ああ。まずはこの壁を壊して国を元の形に戻し、嫌でも一国に認められた英雄になるってところだろうな」
うわぁ、そんなところまで行程の内か。
果たしてどこまで真実かは知らないけど、少なくとも筋は通ってるね。
魔術でも強化された壁、実践派の最大の旗であるエウス、彼女が主催したお祭り。
果たして本人に聞いたところで、はぐらかされるだけなのが困りものだ。
「で、君はどうしたいんだい? それを阻止したいのはわかった、そしてこの聖国所属でお祭り運営側の僕に話して、どうする気だ?」
まあ、正直どうでもいいんだけど。
でもレコウが楽しみにしてたからね、祭り自体を中止する案は邪魔させてもらっちゃうかもよ?
「・・・・・・聖国が認めていなかったのは、あの勇者では無く、自国以外から勇者が生まれることそのものだ、」
「あの、最強無敵無欠完璧イケメン様ね、」
「あ、ああ?? ・・・・・・ともかくだから、本来この国が勇者を作り出そうとしていると判明すれば、反対するはずだった」
でも、どっかの馬鹿がやらかしたせいで色々と余裕もないし、ついでに外も受け入れるようになったと。
「事情が変わった。王の交代、何があったかは知らないが、随分と柔軟になったらしい」
「うん。誰のおかげだろうね、」
「誰のせいかは聞かんが、随分と苦労したようだな。信念を曲げてでも、勇者の誕生を認めざるを得ない程度には、」
「さあ。聖国側としては、何も言えないね」
いやまあ、もともとあの聖女様にそんな殊勝な信念ないけどさ。
事情知らなかったら、容赦なく僕のこと勇者として祭り上げてきそうだもん。恐ろしいねー。
で、まあ。勇者の誕生か。
この大会で表向きな目的の一つは、国同士の友好を深める親善戦だ。
そのあとで目的聞かされても、まあ大きく騒げはしないね。国力死んでるし。
そしてそれはこの国もおんなじなんだけど、その後に国を一つに戻す足掛かりもあると。当然協力した方が聖国の得。
確かにこれは、一度計略が通ってしまったら止めるのは難しそうだ。
「だからその前に、あの聖女と交渉する予定だった、」
いつ、こんな遅くにまだしてないのに?
いや機械を拾わせた時点で、機会自体は自由か。それこそ、絶対に寝返らせられる勝算があるなら、計画の一番邪魔になるタイミングにでも。
何の因果かその携帯、僕の手元に握られちゃってるけど、
「元より外交の途絶えていた国、より大きな利点がある方と組むはずだ。そしてその点において、こちらが不覚を取ることはない、」
「科学、だっけ。まあ、大衆に一定品質の生活させるのには向いてそうだね、」
「元の聖国ではそれも不可能だったが、これもそちらが寛容になってくれたおかげだな、」
つまり本来なら、レリアはこうして一国二人の王子様から求愛される予定だったのか。
乙女ゲームみたいだね、仮にも既婚者なのに。
ま、王子ってか旗ってか女だけど、
——それがなにか、関係あるのかしらぁ?
ぴっ、げ、幻聴が聞こえる。
ははは、こんなの非生産的だなー、
——そうかしら、私、女の子同士で子供作る方法考えて、
やめろー!? それ別に本人から聞いてないから、聞いたら確定しちゃう気がするからあえて避けてるんだからーーー!?!?
「——で、具体的に僕に何をして欲しいのかなっ、」
「お、おお? ・・・・・・まあ、出来ることなら祭りそのものを止めたいところだが、」
「それは無理。君の信用が足りないね、まだそっちと組む利点も確定してないし」
「だから、そうだな、時間稼ぎ。こちらの、科学の素晴らしさは、話だけで伝えられるものでも無い」
ふむ。それは、聖国そのものへの交渉とは違うね。
僕個人か、レリアに直接話せたらまた変わったのか、
どちらにせよ、今のままじゃ交渉は決裂すると思うけどね。
「それで?」
「優勝して欲しい、聖国のものに。同じように勇者に祭り上げられはするだろうが、少なくともすぐにこの国が統制されることはないだろう。それに、そちらにとって損もないはずだ」
「ふーん? 見返りは?」
「情報。話せる限りを。元より、こちらの内情を知ってもらうことは、必要なことだ」
・・・・・・ふむ。
大きなデメリットはなし、メリットは未知の世界の進んだ技術。
聖国の視点として考えれば、特に問題はない取引かな。僕に声かける程度には、八百長なしで優勝目指してるし。
僕個人の視点は、そんなんあるかは置いといてまあアレンの従者的な、夢を持つものとしては、こいつに聞きたいことはたくさんある。
それこそ、交渉無視して今すぐ聞き出したい程度にはね、
「にしても優勝ねえ、簡単に言ってくれるけど、」
「・・・・・・そうだな。こちらも、出来うる限りの協力はするが、」
「バレたら大問題でしょ、みすみす弱みは作らないよ」
武道大会、暫定優勝者は聖国所属のドラゴンちゃん。
あれ? じゃあ問題ないのか??
でもその場合、おだてられて知らない間に勇者として広まっちゃいそうだ。
そもそも厳密には聖国側とも言いづらいしし。
うん。レコウが勇者扱いなんてされちゃったら、いよいよもってどうすればいいか分からなくなっちゃうな。
確かについ最近、魔王を二人ほどクビにしてきたけどさ、
絶対に何かしら問題起きるよね、時間稼ぎとか計略とか、任せるわけにもいかないし。
それに、こんな裏側のゴタゴタなんて巻き込ませずに、純粋に祭りを楽しんでもらいたいな。
「・・・・・・わかった。少なくとも現状、これは僕との交渉ってことでいいんだよね、」
「・・・・・・そうだな。オマエが聖国に伝えてくれない場合は、少々面倒なことになる」
面倒。ねえ、
今から僕がしようとしてること聞いたら、そんなこと言えなくなると思うよ。
ああ、なんで僕がこんなこと、理由は明白だよね。
まったく、見事に僕の大事なところに踏み入ってくれちゃって、
「あの大会って、参加は結構自由なんだよね、」
「・・・・・・ああ。一般参加枠に、いやオマエの方が詳しいか、」
「じゃあ仮に、外から来た人が優勝して、そのままいなくなったりしたらどうなるかな」
あの劇場の支配人さんがどこまで出来るかは知らないけど、存在しない人物をどこまで持ち上げられるかは見ものだね。
「それは、まあ、少なくとも、時間は稼げるだろうな」
「だよね。・・・・・・で、僕実は、祭にまだ選手として登録してないんだけど、」
あんだけ大きくフッといて、今さら戻るのも気まずいしね。
それに多分、シード枠はもう決定しちゃってる。正しく今日の今頃にね、
「・・・・・・・・・・・・っ、オマエ、まさかっ、」
「そう。実は僕、気分的には聖国側だけど、立場としては旅人なんだ。だから、契約するなら、僕としない?」
優勝ね。
ま、流石に簡単に出来るとは言わないけど、一番の強敵は身内だし何とかなるよ。
ちょっと、つい最近それで随分と慌てさせてもらったし、そのお返しも兼ねてね、
「・・・・・・優勝するというのか、何故だ、どうやって、」
「まあ強いていうなら、僕だから。後は、君からの報酬が欲しいからかな、」
「・・・・・・、オマエ、信用、」
「うん。それも含めて、とりあえず前金が欲しいな、」
正直この国の事なんてどうでもいい。
僕は徹底徹尾、僕の世界のために動くつもりだよ。
だからこそ、信用できるってものだろ、
「会って話そうか、マキナさん? お互いに、知りたい事は色々あるだろう」
さあ、交渉開始だ。
今まで間のはほんの世間話に過ぎない、お互いに隠すレンズ越しじゃなく、顔を合わせてこそわかるものもあるよ、
まあ僕にはどうか知らないけど、そもそもこっちだけ顔を見られてるのも、ズルいしね。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、だな、」
「じゃあ、待ち合わせ場所はそこの民家でいいかな。僕から向かわせてもらうよ」
返事も聞かずに歩き出す。
そもそも最初からこうしても良かったんだ、ここまで会話を楽しんだのも僕の優しさってね。
まあそんな感情は一ミリだって残ってないけどさ。いやここは科学にちなんで、ゼロビットとでも言ってみるか?
いいや、ノックもせずにこんにちはっと、
「——————っ、やはり、こちらの位置を知ってたか、」
「うん。今から君の顔を見せてもらうんだ、僕も少しくらい見せてやろうかなと思ってね。どうだい、信用は上がったかな、」
ガチャっと、ドアを開ける。
せっかく科学の町なら、もっとこうハイテクな、手をかざしたらウィーンって感じで開いてくれないかな、
普通の民家はこんなもん? あそう、そりゃ残念、なのかな??
「むしろ、下がりそうだ。オマエのそのやり口、あれとそっくりだ、」
「うげ、それって、エウスサン? ・・・・・・ってあれ? 何で嫌だと思ったんだろ、むしろあやかったら少しは成長しそうなのに、」
調子の悪い心臓への装甲値が。
まあその場合、あやかるべきはむしろピンクの乙女ゲー主人公ちゃんかな。
あの子デカかったな、思い返しても恐ろしい。次に会ったらどうしてくれようか、いやそんな事があるかは知らないけど。
多分間に合わないかなー、どうでしょう。
「でも一応、向こう側でない証明はできるつもりだよ、」
「————なんだ。それと待て、まだ来ていいとは、」
トントンと床を足で叩いて入り口を探る。
まあそんな事しなくてもわかってるんだけどね、ここには地下室があってその入り口も入り方も、外にいた時点でね。
でも今ちょっと心臓の調子が合わないし、失敗したら格好悪いし、無駄な行為ではないさ。つまり嘘ではないってね、
「ほら、魔法も使わずに論理的な思考だけで入り口を見つけた。これこそまさに、理論派である証拠だろう?」
ギィーーッ、と、あんまり科学的じゃない原始的な床扉、なかなか綺麗に床と一体化してるね。
鍵かかってるけど、まあピッキング解除済み。
これも魔法を使わない技術、つまり科学的だろ?
「ね? 君と同じ思考、」
「「いやどこがだ!?」」
む、声が重なって聞こえる。
地下室だから、じゃなくて耳元の携帯と地下の先から、
うん。僕じゃなかったらまだわかんない程度だけど、いるね。間違いなく。
果たして携帯の性能のせいか、耳元のスピーカーから聞こえてくる低い男性的な声とは、少し違う声色。
いったい、誰がいるんだろうね。
「じゃ、そろそろ切ってもいいかな、無駄だからね、」
「「・・・・・・っ、ちっ、ああ。好きにしろ」」
うん。小さな声。
ピッと、携帯料を節約してね。
さてとご対面、狭い地下室、その先に、
それは、いた。