情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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74話

 

 結局、車輪付きのドラム缶は貸してもらえなかった。

 けど、車輪付きの靴は借りられました。

 しかも電動機付き! ハイテクローラーブーツ!! 予備パーツを強引に剥ぎ取ってきただけだけど。

 

「これ便利だな、意外とオフロードでも使える、空間魔法で改造しとこ」

 

 まあそれは置いといて、結局大会の事前受付には間に合い、

 

「え、参加料? ただって話じゃ、」

 

 ましたのかな?

 一般受付、参加料、ついでに身分証明。

 ・・・・・・なるほど、お金払って最初からトーナメントに組み込まれるルートと、それがない代わりにバトルロイヤルの事前予選が必要なルートがあるのね。

 

「わざわざ二種類、これは、」

 

 魔法使いの国、だからかな?

 わざわざ最低ラインの選別試合を一対一でやり続けるわけにもいかないし、見てる方も飽きない楽しめる手段としてバトルロイヤル。

 

 でもそれだと、戦士職が有利で後方支援の魔法使いが活躍できないから、お金を払って実質的なシード枠ってところか。

 

「後はまあ、手札を隠したい人とか向けかな?」

 

 うん。僕はまあ、とりあえず乱戦の方でいっか。

 お金ないし、作ろうと思えばできるけど、いやあえて名乗らない方が面白い事になるかも。

 上手い事レコウに正体隠して、変なこと気にせず祭りを楽しんでもらう、

 それでいざ対面した時にサプライズしてやるのも、うーん、それは流石に難しいか?

 

「印象に残らないのは得意だ、後は隠蔽魔法でも試してみるか? 万象の杖、これでどこまで高性能なの出来るかどうか」

 

 どっちにしろ、これ使ったらレリアにはバレバレになるかな?

 いっそ聖女様に協力してもらえれば確実だけど、聖国の王女様に肩入れしてもらうわけにもいかないからね。

 事情話したら逡巡なく全面協力してくれそうだからこそ、巻き込むわけにもいかないな。

 

「いっそ科学で、なんかないかな?」

 

 いいのない?

 うーん、思い出せない。

 とりあえず変装の定番の男装してみたけど、定番すぎてもはやこっちが普通の格好の気がしてきた。

 

 なんで僕は行くとこ行くとこ男装してるんだろ、しかも微妙に毎回格好変えてるし。

 まあ今回の場合は、自分から変装しに行ってるから文句も言えないけど。

 

「レコウに気にせず楽しんでほしいから、そうなると、早い段階で当たんないようにトーナメント表ずらさなきゃな」

 

 あの純粋ドラゴンちゃんに、八百長させるわけにもいかないからね。

 しかし、となると大会形式とはいえ、あの単純計算で魔王の倍以上の戦闘力ある竜様に勝たなきゃいけないのか。

 ・・・・・・いやまあ、ルール有りでなら、なんとかなるか。

 

「まあいいや。お祭り本番は明日から、予選の乱戦でどれだけ盛り上がるのかは知らないけど、」

 

 レコウ達、見るのかな。上手い事正体隠して、そもそも戦ってる間に抜け出す理由どうしよう?

 ・・・・・・取り敢えず、レリア達と合流しようかな。お仕事、何してるんだろね、

 レコウも連れてかれたってことは、事前に顔合わせでもしてるのかな? だとしたら、あんまり僕は見られないほうがいいかも、

 

 ま、行けばわかるか、ただいまーっと。

 

 

 

 闘技場、裏口からお邪魔します。

 勝手に入っていいかは、多分ダメだけど、一応運営の知り合いってことでなんとか。

 

「さて、どこにいるかな、」

 

 耳を澄ます。

 闘技場の内部、そんなに複雑な作りしてないだろうから、構造が手に取るように、

 

「うわ、なんだこれ、隠蔽? いやそれ以上に、魔術がめちゃくちゃにかかってる、」

 

 流石は魔術の国、なのかな?

 

 なんだこれ、えっと、まずやたらと目につくのは演出用。ほとんど意味のない魔法がいくつもかかっている。なるほど、例のサーカスのため。

 

 そしてこれは、結界? 闘技場の中央を覆うように。ふむ、まだ発動してないけど、観客への被害を防ぐためと、大会での致命傷を避けるための保険ってところかな??

 

 そして後は、なんだろう? 見えない部屋、金庫でも置いてあるのか、ともかく厳重な場所だ。構造的にも微妙にわかりづらい、変な位置で、元々なんのための場所なのか。

 

「形式が違う、どれも高度、特に力がこもってるのが、」

 

 結界、これ、元々あったやつじゃないな。

 外側は厚く、内側は普通に戦闘行為をさせつつ、人死が出ないように精密に作られてる。

 こんな面倒で複雑な、人の命を守るための魔術が使えるのは、

 

「あ、いた、レリアだ。でもまだ仕事中かな?」

 

 思った以上にしっかり運営に関わってたんだね、

 こんなの僕じゃ考えようともしないな、大変そうだ、邪魔しちゃ悪いや。

 レコウもいるけど、流石にそっちだけ呼ぶのもね、

 

「・・・・・・なら、こっちもちょっと、仕事をするかな」

 

 楽しげなお祭りの下準備。

 その裏では、ある計画が動こうとしているらしい。

 新たな英雄、勇者を作る。

 

 そんなことしてなんになるかは知らないけど、許せるものでもないね。

 とはいえまだ聞いただけ、本当にそんなもんあるのかすら、よく分かってないのだ、

 

「エウス。うん、彼女に聞くのが一番てっとり早いんだけど、」

 

 とはいえ、今から事件起こそうとしている犯人かもしれない人に、あなたは何か企んでいますかと尋ねるのもおかしな話だ。

 いやそもそも、別に事件でもないのかもしれないけど。勇者を新しく作り出そうとすることは。

 

 僕が、それとこの町の向こう側が気に入らないだけ。無理に止めたら、それこそこっちが犯人になっちゃうかもね。黒ずくめ。

 

 ——ん、なにそれ、変装? なるほど、全身黒タイツで覆えば正体バレない、その手があったか!

 ・・・・・・でもめちゃくちゃ怪しくない? あ、本当に着てるわけじゃないのね、なーんだ。

 

「それで、肝心の彼女はと、」

 

 いないな、てっきりレリアのところにいると思ったけど、

 まあ一番の取締役だろうし、忙しいのかな。

 

 ・・・・・・その割には、姿が見えないけど、

 

「というか聞こえない。建物内、いないのか?」

 

 神出鬼没で居どころが掴めない人らしいけど、自分が開催する祭り期間中にそれはどうなんだ?

 

 いや内部のものは知ってるのかな、それこそ運営側、レリアに聞けばどこに行ったかわかるのか、

 しかし、わざわざ聞くのも、そもそも裏の目的が本当にあるのかすらわからないんだ。事を大きくするのもまずい。

 先に本人に探ってることバレるのも、それに僕がやってるって知られたら迷惑かけちゃうな。

 

「一応既に変装してるけど、でももっとこう、お面でもつけてみるか?」

 

 うん。探しておこう。

 ついでに建物内をもっと詳しく。

 向こうも変装、いや演技してる可能性があるからな。流石に僕が見逃すかは、でもその可能性すらある程の見事な演技力だったし。

 

 探知、女性、少女。

 流石に僕よりは大きいけど、身長がね? でもあの性格と存在感に比べて意外と小柄、それもいい隠れ蓑なのかな。

 さてさて、もしかしてあの見えないの部屋の中の可能性も、ある程度近づけば覗く事はできるだろうけど、

 

 うん。外にいたらどうしようもないけど、一応この建物の近くでは見かけてないし、今のところ他に手掛かりもないしね。

 

「入り組んだ、地下にある、人気の少ない、」

 

 見つかったら言い訳できないかも、僕が先に見つかることはそうそう無いとは思いたいけど。

 耳を澄ませる、トクトク、心臓の音。

 僕の内側から。・・・・・・うーん、やっぱ音量大きいな。まあいいや、

 

 それよりも、

 

「・・・・・・声、この先、誰かいる、」

 

 ————ぁあ。順調だよ、

 

 これは、

 話し声、かな?

 僕みたいにわざわざ独り言残してないなら、普通はそうだろう。何も無いところで一人ぶつぶつ状況話す奴は、頭おかしい。

 

 と、僕が聞こえるってことは向こうも聞こえる可能性が、まあ一応ある。

 悪いね、一先ず記録しておくのはやめて、聞くことに集中しよう。

 

 ————祭りのエキストラも、無事に集まったね。キミも協力してくれたんだろう?

 

 芝居がかった自然な声。

 矛盾する、だけどその絵本の中の理想の声が、飾ってない本物だと説得感のある確かな声色。

 少なくとも僕は、こんな話し方する奴は一人しか知らない、

 

 絵本の中って意味でいえば、他にも心当たりがない事もないけど。甘い奴。

 でもこの白馬の王子様の声は、間違いなく彼女のものだろう。

 

 ————ん、ああ、一般の方々ってこと。つまり、盛り上げてくれる大事な観客さ。

 

 エウス、裏でも変わらない声、いや表なのか?

 前は裏方としての姿も見たが、結局これが本質なのか、それともどちらでも無いもっと深い何かなのか。

 判別は、少なくとも一度面と向かって話してなお、わからなかったな。

 

 ————ふふ、酷なことを聞くね。そうだよ、初めからわかっていただろう?

 

 楽しそうに、会話をしている。

 しかし普段からこのテンション感の声色だから、感情の読み取りが当てにならないな。

 いっそ、何も写さない金属のドラムの方が、まだ分かりやすいかもしれないね。

 

 ————うん。だからキミとの出会いは運命さ、素敵な劇にしようじゃないか。

 

 そして、会話、だ。

 確実に、誰かと話している。

 ハッキリとした、声が聞こえる。

 確かに距離も離れてるし、壁もあるし、隠蔽魔法らしきものもある。

 

 なのに、なんで、相手の声が聞こえない?

 あんなに楽しげなのが独り言だったとしたら、もう単純に怖い。

 それこそ二重人格とか内側に誰か別の人がいるとかでも無いと、だとしても口に出して会話するのはおかしいと思うけど。

 隠蔽魔法、わざわざ一人だけ隠れる? そんな事、いや他にこんな変な状態を作り出す方法は・・・・・・、

 

 ————約束するよ、聖女に勇者、新たな劇場の開幕をね、

 

 ・・・・・・・・・・・・勇者、

 その単語は、聞き逃せない。

 おかしな点はいくつもある。

 でもそれ以上に、確定した。

 こいつは、何か企んでいる。

 

 何をする気だ、誰とする気だ、

 でも、もはやそんな事は関係ない。

 もし勇者の名を勝手に使うなら、アレンの名にケチをつける気なら。

 何があろうと、許す気はない、

 

 ————————。

 

 ・・・・・・・・・・・・ん、会話が終わった。

 動き出す音、こっちに来るか?

 見つかるとまずいな、行こう。

 

 

 ・・・・・・祭りが始まる。

 さて、盛大に引っ掻き回して、大いに面白くしてやろう。

 僕らにとって、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言葉を、ポケットにしまう。

 そして歩き出す。

 

 ————ああ、見ていてくれ、ボクのフェルントラウム。そして聞かせてくれ、キミの、声を、

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