お祭り、といえば、
「へー、お面ねえ、売れるかしら?」
「仮装パーティーじゃ〜」
「まあ試しに作ってみたから、後は適当に配ってみるよ、」
という名目で、配り散らした適当な顔隠し。
「あ、そういうわけで一戦目はちょっと観客席まわってるから、ごめんね、」
「ええ。いいわよ。どうせワタクシは調整に忙しくて集団戦とか見てらんないから、」
「おー、大変そうじゃのー、」
「レコウちゃん、。手伝ってくれる?」
「え。いや、ちょっと、専門外じゃ、」
うん。みんな意外と余裕なさそう。
ゆっくりお祭り観戦できたら良かったんだけどね、まあ運営側も楽しむしかないさ。
僕は、選手側だけど。一応レコウも、
まあ予定は変えず、特徴のない面をばら撒く。
同じ系列、似たような顔した人をまばらに増やして、怪しい人物の量産化。
そしてそれに紛れた僕は、
「あ、はい。選手登録、よろしくお願いします」
ローブで最低限、後は普通に顔を晒して参加表明。
レコウが見るのは上からだしね、少し影作ればかんたんに顔隠せる。お面つけたまま出場する変な奴はいないでしょ?
後はまあ、正面から見られないよう気をつけてと。
「で、匂い消して、それから、、」
まあもろもろ細工してと。
ようやく始まりましたお祭り騒ぎ。
さてと最初は大乱戦。どう立ち回ろうかな、
乱戦、といってもそれは完全ルール無用の殺し合いではなく、きちんと最低限の秩序がある。
まず、参加者は四つのグループに分けられて、その中の上位二名までが本戦に進める。
次に、これは大会全体のルールだが、一定以上の出力の魔法や魔導具は制限されてる。完全禁止じゃないのは、これが魔法使いの国だからかな。
最後に、一定以上の負荷を受けると自動的に敗北判定になって、それ以上の攻防は禁止される。追撃はもちろん禁止、まあ当然っちゃ当然だけど。
「・・・・・・そしてこれらは全部、一人の魔術によって管理されていると」
レリア、よくこんな複雑で面倒なもの作れたな。
聖女様がいなかったらこの大会、果たしてどうなってたのか。
みんなでワイワイ楽しいお祭りじゃなくて、血肉の踊る舞踏会になってたかもね。
「というわけで敬意を表して、抜け道つくのは最後にしよう」
空間魔法、引っかかるかな、少なくとも普通に使えば誰が使ったかは一発でバレるな。
ま、ある意味いつも通りではあるけど、さてどうしようか。
今の僕の装備は、
「ひのきの剣。・・・・・・いや、檜製かは知らないけど」
木刀一本、なんか会場で貸し出してた。
本戦はともかく、乱闘では一部の武器は危ないから制限かかってるらしい。その代わりの補填だね。
でもまあ、軽くて使いやすいから、最後まで借りてこうか。
「『とりあえず壊れないようにだけしとこ』」
続々と、人が集まっていく。
一つのグループあたり、大体三十人くらい?
わざわざ国外から来てる人もいるのか、それとも全員国民なのか、
魔法と魔術の国に、剣を持った人間が何人も集まる。
・・・・・・・・・・・・いや、人間?
「おい、坊主、」
お、話しかけられた。
気配薄めてたのにな、とはいえ消しすぎると不自然だから、あくまで路傍の石のように見ても気にならない程度にだけど。
なんかこんなのあったよね、あのドラム缶に言えば、何か顔隠せる道具とか持ってたりしたのかも。
「それ、無料で貸し出してるやつだろ? 悪い事は言わねえ、さっさと帰んな、」
見た目のゴツい、傷だらけのおっさん。
顔も怖くて、声も厳つい。普通の少女だったら泣いてしまうだろう。
え〜んと、うん。まあ今は男装してるから泣かないけど。それに、
「・・・・・・・・・・・・どうも。おじさんは、僕と同じものかな?」
「あ? ・・・・・・あー、」
うん。親近感、僕は基本的に大人の男は嫌いだけど、目の前の彼には特に悪感情はない。
いや、正確には彼ら、かな、
「ちっ、まだガキだろ。流石に無茶だ、なに考えてやがる、」
怒りながら、感情を向けられる。
心配、同情、仲間意識。
僕を通り越して、その向こうの誰かを幻視しながら。
・・・・・・・・・・・・悪い気がするな、僕は自分の意思で参加してるのに、勘違いさせちゃった。
まあ立場的には、大体同じだけど。
というか、僕の今の所有権って誰が持ってんだろ。どうせアレン以外に従う気はないけど、実は正式に移ってはなかった気がする。
一応扱い的には、借り物を勝手にアレンが逃したことになるのかな?
だとしたら、やっぱり僕を自由にしてくれた英雄だね。アレン様。
・・・・・・でもアレンの所有物として正式に首輪繋がれるのも、それはそれで良かったなくそぅ、
「おじさんは、誰の意向で?」
「ああ? そりゃ、お前と同じだよ。本戦に出て良い結果を残せば、あの人が買い取ってくれるかも知れねーからな、」
ふむ? てっきり優勝賞金とか名誉狙いかと思ったけど、価値を示して売り上げる為なのか?
あの人、そんなに高値で買ってくれるのか、それともその人に目をつけられる事自体が名誉なのか。
誰か、は、
「ねぇ、僕にも教えてくれない? どうすれば気に入ってもらえるかとか、」
「え、おう? ・・・・・・つっても、あそこは元々子供が多いからな。お前なら、こんなところに出るより直接行ったほうが良いんじゃねえか?」
「どこにいるのさ、」
「ま、そうだわな。それができたら苦労しねーか、」
神出鬼没、子供をたくさん飼ってる、そして闘技場から憧れの的。
このお祭りの関係者で、その条件に当てはまるのは、
「素敵ですよね、王子様、」
「ああ。俺たちの、希望の星だ、」
エウス、サーカスの支配人。
なるほど、やはりあそこにいたのは僕と同じもの。
それでいて、血生臭い底から華やかな舞台へと引き上げられた、僕らの光。
でも当然、その手は無限ではない。
伸ばされた手に捕まりたいなら、少しでも自ら這い上がる必要がある。
・・・・・・・・・・・・うん。いいね、僕好みだ。僕もそうしたから、今があるよ。
お祭り、大会、闘争、
熱意だ。ただ面白おかしいだけじゃない、確かな意志があるからこそ、きっとみんな楽しんでる。
・・・・・・まあ、僕はどこまで行っても、他人事だけど。
「それじゃあ、お互い、頑張りましょう」
「おお。・・・・・・って、本気でその装備で出る気か!?」
・・・・・・・・・・・・肩を掴まれる。
うーん、それでもやっぱりこれは苦手だ。
振り払うほどでは、ないけどね。
「・・・・・・・・・・・・それじゃ、おじさんが、僕と組んでくれるんですか?」
「っ、いや、それは、」
本戦出場者は、上位二名。
つまり、結託するだろうね、普通は。
なんなら、もっと大人数が事前に協定結んでたっておかしくないよ。
その上で、こんな子供に構ってる余裕は、無いだろ?
君は君の人生のためにここに来たんだ。僕みたいに、ただ何となく祭りに参加するためじゃなく。
応援するといった言葉に嘘はないよ、最後に二人組残ったら君じゃない方潰してあげてもいい。お互い本戦に出られる可能性は、まあどうだろね、
「・・・・・・っち、しょうがねえ、」
「うん。それじゃあ、また後で、」
「こうなったら、覚悟を決めろ、」
「・・・・・・・・・・・・うん、。そろそろ離してくれない?」
君割と体格いいからさ、目立つんだよね。
僕はとりあえず人少なくなるまで紛れる作戦だからさ、ここで注目されると面倒臭いんだけど。
「いいか、この俺様が注目を集める、その間にお前は後ろからやれ、」
「あ?」
だからやめろって、あと俺様言うなし、
・・・・・・・・・・・・って、は??
「えっと? なに考えてんですかおじさん??」
「おじさんじゃない、おにいさんと、」
「うるせえおっさん。・・・・・・え、正気?」
・・・・・・うわ、見た目通りの脳筋ですか?
本当に、なに考えてんだ、
それともなに、本気で一人で優勝狙えるほどだと思ってるの? 勇者にでもなりたいの?
そんなのに、僕は、付き合えないよ、
「おっさ、ああ。。考えてみればあそこは子供と大人の合同技が多い、つまりお前連れて本戦あがれりゃ、エウスさんの目に確実に止まれるぜ!」
「えぇ、」
「・・・・・・ま、本音を言えば、お前が女だったら一番都合が良かったんだけどな、」
「うわぁ、」
・・・・・・今からでも、バニー服着てきてやろうか。
無茶か、いやあれは、適度に貧乳な方が多分綺麗だし。・・・・・・・・・・・・限度があるって? うーー、
って、なに勝手なこと言ってんだ、
そんな作戦、僕が目立ってしま、
「・・・・・・・・・・・・つまり、僕はなるべく人に見られないようにすると、」
「あ、あー、いやまあ、本戦にまで残れれば、十分あの人見てもらえるし、話せる機会もあるかもだぜ!!」
「ふむ、」
あれ、それって都合がいいのでは?
・・・・・・いや、こんな初対面の相手を信用して、背中から襲われても特に問題ないけど。
・・・・・・・・・・・・うん? まあこれ以上一人で孤立して注目集めるより、さっさと二人組作って紛れた方が効率的、か?
あー、おーーー、
「しょうがないなぁ、」
「おう。・・・・・・なんでお前が折れた感じなんだ?」
気にしない気にしない、僕らに心なんてないさー、
「あー。改めて、よろしく頼むな。俺は、」
「うん。僕らに名前なんてないよね、」
「え、あ、お、そ、そうだなっ!」
長い付き合いにはならないだろうし、僕の中ではサーカスに憧れるおじさんでいいよ。
・・・・・・この言い方はなんか、変な感じに聞こえるか。でもお兄さんって歳では絶対ないしな。
「それじゃ行こうか、結託してることバレたらまずいでしょ。なるべく目立たず人混みに紛れて、」
「お、おう、?」
「もう、意識しすぎ、もっと自然体にだよ。劇団に入りたいんでしょ? ほら、僕を真似て、」
すーっと、消えるようにではなく、興味をなくすように。
ほら、見失なわないけどなんで見てるか忘れちゃいそうでしょ、そうそうそんな感じ、
「ん、よし、頑張ろうね、」
「ああ・・・・・・・・・・・・。あー、俺、余計なことしたかー・・・・・・?」
ふん。今更逃さないよ。
精々、僕を隠す幕となるがいいさ、ははは。