情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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75話

 

 お祭り、といえば、

 

「へー、お面ねえ、売れるかしら?」

「仮装パーティーじゃ〜」

「まあ試しに作ってみたから、後は適当に配ってみるよ、」

 

 という名目で、配り散らした適当な顔隠し。

 

「あ、そういうわけで一戦目はちょっと観客席まわってるから、ごめんね、」

「ええ。いいわよ。どうせワタクシは調整に忙しくて集団戦とか見てらんないから、」

「おー、大変そうじゃのー、」

「レコウちゃん、。手伝ってくれる?」

「え。いや、ちょっと、専門外じゃ、」

 

 うん。みんな意外と余裕なさそう。

 ゆっくりお祭り観戦できたら良かったんだけどね、まあ運営側も楽しむしかないさ。

 僕は、選手側だけど。一応レコウも、

 

 まあ予定は変えず、特徴のない面をばら撒く。

 同じ系列、似たような顔した人をまばらに増やして、怪しい人物の量産化。

 そしてそれに紛れた僕は、

 

「あ、はい。選手登録、よろしくお願いします」

 

 ローブで最低限、後は普通に顔を晒して参加表明。

 レコウが見るのは上からだしね、少し影作ればかんたんに顔隠せる。お面つけたまま出場する変な奴はいないでしょ?

 後はまあ、正面から見られないよう気をつけてと。

 

「で、匂い消して、それから、、」

 

 まあもろもろ細工してと。

 ようやく始まりましたお祭り騒ぎ。

 さてと最初は大乱戦。どう立ち回ろうかな、

 

 

 

 乱戦、といってもそれは完全ルール無用の殺し合いではなく、きちんと最低限の秩序がある。

 

 まず、参加者は四つのグループに分けられて、その中の上位二名までが本戦に進める。

 次に、これは大会全体のルールだが、一定以上の出力の魔法や魔導具は制限されてる。完全禁止じゃないのは、これが魔法使いの国だからかな。

 最後に、一定以上の負荷を受けると自動的に敗北判定になって、それ以上の攻防は禁止される。追撃はもちろん禁止、まあ当然っちゃ当然だけど。

 

「・・・・・・そしてこれらは全部、一人の魔術によって管理されていると」

 

 レリア、よくこんな複雑で面倒なもの作れたな。

 聖女様がいなかったらこの大会、果たしてどうなってたのか。

 みんなでワイワイ楽しいお祭りじゃなくて、血肉の踊る舞踏会になってたかもね。

 

「というわけで敬意を表して、抜け道つくのは最後にしよう」

 

 空間魔法、引っかかるかな、少なくとも普通に使えば誰が使ったかは一発でバレるな。

 ま、ある意味いつも通りではあるけど、さてどうしようか。

 今の僕の装備は、

 

「ひのきの剣。・・・・・・いや、檜製かは知らないけど」

 

 木刀一本、なんか会場で貸し出してた。

 本戦はともかく、乱闘では一部の武器は危ないから制限かかってるらしい。その代わりの補填だね。

 でもまあ、軽くて使いやすいから、最後まで借りてこうか。

 

「『とりあえず壊れないようにだけしとこ』」

 

 続々と、人が集まっていく。

 一つのグループあたり、大体三十人くらい?

 わざわざ国外から来てる人もいるのか、それとも全員国民なのか、

 魔法と魔術の国に、剣を持った人間が何人も集まる。

 

 ・・・・・・・・・・・・いや、人間?

 

「おい、坊主、」

 

 お、話しかけられた。

 気配薄めてたのにな、とはいえ消しすぎると不自然だから、あくまで路傍の石のように見ても気にならない程度にだけど。

 なんかこんなのあったよね、あのドラム缶に言えば、何か顔隠せる道具とか持ってたりしたのかも。

 

「それ、無料で貸し出してるやつだろ? 悪い事は言わねえ、さっさと帰んな、」

 

 見た目のゴツい、傷だらけのおっさん。

 顔も怖くて、声も厳つい。普通の少女だったら泣いてしまうだろう。

 え〜んと、うん。まあ今は男装してるから泣かないけど。それに、

 

「・・・・・・・・・・・・どうも。おじさんは、僕と同じものかな?」

「あ? ・・・・・・あー、」

 

 うん。親近感、僕は基本的に大人の男は嫌いだけど、目の前の彼には特に悪感情はない。

 いや、正確には彼ら、かな、

 

「ちっ、まだガキだろ。流石に無茶だ、なに考えてやがる、」

 

 怒りながら、感情を向けられる。

 

 心配、同情、仲間意識。

 

 僕を通り越して、その向こうの誰かを幻視しながら。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・悪い気がするな、僕は自分の意思で参加してるのに、勘違いさせちゃった。

 まあ立場的には、大体同じだけど。

 

 というか、僕の今の所有権って誰が持ってんだろ。どうせアレン以外に従う気はないけど、実は正式に移ってはなかった気がする。

 一応扱い的には、借り物を勝手にアレンが逃したことになるのかな?

 だとしたら、やっぱり僕を自由にしてくれた英雄だね。アレン様。

 

 ・・・・・・でもアレンの所有物として正式に首輪繋がれるのも、それはそれで良かったなくそぅ、

 

「おじさんは、誰の意向で?」

「ああ? そりゃ、お前と同じだよ。本戦に出て良い結果を残せば、あの人が買い取ってくれるかも知れねーからな、」

 

 ふむ? てっきり優勝賞金とか名誉狙いかと思ったけど、価値を示して売り上げる為なのか?

 あの人、そんなに高値で買ってくれるのか、それともその人に目をつけられる事自体が名誉なのか。

 誰か、は、

 

「ねぇ、僕にも教えてくれない? どうすれば気に入ってもらえるかとか、」

「え、おう? ・・・・・・つっても、あそこは元々子供が多いからな。お前なら、こんなところに出るより直接行ったほうが良いんじゃねえか?」

「どこにいるのさ、」

「ま、そうだわな。それができたら苦労しねーか、」

 

 神出鬼没、子供をたくさん飼ってる、そして闘技場から憧れの的。

 このお祭りの関係者で、その条件に当てはまるのは、

 

「素敵ですよね、王子様、」

「ああ。俺たちの、希望の星だ、」

 

 エウス、サーカスの支配人。

 なるほど、やはりあそこにいたのは僕と同じもの。

 それでいて、血生臭い底から華やかな舞台へと引き上げられた、僕らの光。

 

 でも当然、その手は無限ではない。

 伸ばされた手に捕まりたいなら、少しでも自ら這い上がる必要がある。

 

 ・・・・・・・・・・・・うん。いいね、僕好みだ。僕もそうしたから、今があるよ。

 お祭り、大会、闘争、

 熱意だ。ただ面白おかしいだけじゃない、確かな意志があるからこそ、きっとみんな楽しんでる。

 

 ・・・・・・まあ、僕はどこまで行っても、他人事だけど。

 

「それじゃあ、お互い、頑張りましょう」

「おお。・・・・・・って、本気でその装備で出る気か!?」

 

 ・・・・・・・・・・・・肩を掴まれる。

 うーん、それでもやっぱりこれは苦手だ。

 振り払うほどでは、ないけどね。

 

「・・・・・・・・・・・・それじゃ、おじさんが、僕と組んでくれるんですか?」

「っ、いや、それは、」

 

 本戦出場者は、上位二名。

 つまり、結託するだろうね、普通は。

 なんなら、もっと大人数が事前に協定結んでたっておかしくないよ。

 

 その上で、こんな子供に構ってる余裕は、無いだろ?

 君は君の人生のためにここに来たんだ。僕みたいに、ただ何となく祭りに参加するためじゃなく。

 応援するといった言葉に嘘はないよ、最後に二人組残ったら君じゃない方潰してあげてもいい。お互い本戦に出られる可能性は、まあどうだろね、

 

「・・・・・・っち、しょうがねえ、」

「うん。それじゃあ、また後で、」

「こうなったら、覚悟を決めろ、」

「・・・・・・・・・・・・うん、。そろそろ離してくれない?」

 

 君割と体格いいからさ、目立つんだよね。

 僕はとりあえず人少なくなるまで紛れる作戦だからさ、ここで注目されると面倒臭いんだけど。

 

「いいか、この俺様が注目を集める、その間にお前は後ろからやれ、」

「あ?」

 

 だからやめろって、あと俺様言うなし、

 

 ・・・・・・・・・・・・って、は??

 

「えっと? なに考えてんですかおじさん??」

「おじさんじゃない、おにいさんと、」

「うるせえおっさん。・・・・・・え、正気?」

 

 ・・・・・・うわ、見た目通りの脳筋ですか?

 本当に、なに考えてんだ、

 

 それともなに、本気で一人で優勝狙えるほどだと思ってるの? 勇者にでもなりたいの?

 そんなのに、僕は、付き合えないよ、

 

「おっさ、ああ。。考えてみればあそこは子供と大人の合同技が多い、つまりお前連れて本戦あがれりゃ、エウスさんの目に確実に止まれるぜ!」

「えぇ、」

「・・・・・・ま、本音を言えば、お前が女だったら一番都合が良かったんだけどな、」

「うわぁ、」

 

 ・・・・・・今からでも、バニー服着てきてやろうか。

 無茶か、いやあれは、適度に貧乳な方が多分綺麗だし。・・・・・・・・・・・・限度があるって? うーー、

 

 って、なに勝手なこと言ってんだ、

 そんな作戦、僕が目立ってしま、

 

「・・・・・・・・・・・・つまり、僕はなるべく人に見られないようにすると、」

「あ、あー、いやまあ、本戦にまで残れれば、十分あの人見てもらえるし、話せる機会もあるかもだぜ!!」

「ふむ、」

 

 あれ、それって都合がいいのでは?

 ・・・・・・いや、こんな初対面の相手を信用して、背中から襲われても特に問題ないけど。

 

 ・・・・・・・・・・・・うん? まあこれ以上一人で孤立して注目集めるより、さっさと二人組作って紛れた方が効率的、か?

 

 あー、おーーー、

 

「しょうがないなぁ、」

「おう。・・・・・・なんでお前が折れた感じなんだ?」

 

 気にしない気にしない、僕らに心なんてないさー、

 

「あー。改めて、よろしく頼むな。俺は、」

「うん。僕らに名前なんてないよね、」

「え、あ、お、そ、そうだなっ!」

 

 長い付き合いにはならないだろうし、僕の中ではサーカスに憧れるおじさんでいいよ。

 ・・・・・・この言い方はなんか、変な感じに聞こえるか。でもお兄さんって歳では絶対ないしな。

 

「それじゃ行こうか、結託してることバレたらまずいでしょ。なるべく目立たず人混みに紛れて、」

「お、おう、?」

「もう、意識しすぎ、もっと自然体にだよ。劇団に入りたいんでしょ? ほら、僕を真似て、」

 

 すーっと、消えるようにではなく、興味をなくすように。

 ほら、見失なわないけどなんで見てるか忘れちゃいそうでしょ、そうそうそんな感じ、

 

「ん、よし、頑張ろうね、」

「ああ・・・・・・・・・・・・。あー、俺、余計なことしたかー・・・・・・?」

 

 ふん。今更逃さないよ。

 精々、僕を隠す幕となるがいいさ、ははは。

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