情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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76話

 

 闘技大会。

 華やかなサーカスを上から見ていた時とは違って、今度は客を見上げる立場。

 周りもむさいおっさんだらけだし、まあ僕にはこの方が馴染みが深いかな。

 

「・・・・・・レコウ、あれ、いない?」

 

 指定席には。どこだろ、視線を動かさずに収音中。

 前に来た時に比べるとそこまで客は多くない、所詮はまだ予選だしね。

 

 それでも、まあまあにうるさいし、視線がいくつも向けられるのはあまり好きじゃない。

 さっさと誰かに押し付けて、僕は最後の方まで楽させてもらおーっと。

 

「・・・・・・・・・・・・ん、お、あそこか、」

 

 ——はーい、聖女しるしーのーぷるぷるプリンじゃ〜。安くてうまいのじゃ〜〜、

 

 売り子してる、なんで?

 まあいいか、こっち見てないなら好都合だし。

 

「おう。いよいよだな、覚悟はいいか?」

「話しかけんな誰だよおっさん、精々最後の少しになるまで馴れ馴れしくするなよ、」

「え、あ、おお、そうだな!?」

 

 まったく、作戦言い出したの君の方だろ?

 声が大きいんだよ、目立つという意味では悪くないけど、今やる必要はない。

 一旦ほら、離れて、合流は後。

 

 どうだろうね、聞いてた限りそんなに大きな事前協定は無かったけど、目立つと先んじて潰そうとする集団戦心理はあるだろうし。

 とりあえず、残り半分、いやいっそ四人くらいになるまで隠れる。・・・・・・ま、それができたら苦労はしないんだろうけど、

 

 ————プリンー、プリンー・・・・・・、お。始まりそうじゃの。お買い求めの方はー、お早めに〜じゃ〜〜、

 

 ゲートが開く。

 ある程度の等間隔で配置された選手たちが中央に集結する。

 そういや、始まりの合図とか定石とか僕知らないんだけど、まあ観てればわかるか。

 

 ————プォーーーーッ、

 

 大きな角笛のような音に、光。

 花火が上がる、魔法か、豪勢だね。

 

 その華やかさが、あくまでこれは血飛沫を楽しむ殺し合いではなく、剣技を競う楽しげなお祭りなのだと思い出させてくれる、

 

「死ねぇーーーーーーーー!!」

「うわーーー。。」

 

 で、いきなり横合いから斬られかける。

 バタッと、当たったフリしてその場に倒れる。

 

 うん。不意打ち、とも言わないのかな? 弱い奴から狙う的な、

 というか、当たっても死にはしないように調整されてるとはいえ、これは中々に酷くない??

 

「へっ、たわいもな、「お前がなぁ!?」

「ぐはぁ、くそっ、」

「ふんっ、雑魚が「貴様もな!!」

「なにぃっ、ぐふぅ、」

「はっ、コレだからばか「そおい!!」

「がぁーーーーー!?」

 

 

「うわぁ、きゅーーー、」

 

 そして、僕がやり返すまでもなく、その攻撃してきた奴は別の男に殴り倒された。

 んで、その繰り返し。

 

 僕はそのまま倒されたふり、華麗に避けてたら目立っちゃうからね、

 それにこの不毛な連鎖に巻き込まれたくない。

 

 一先ず、このまま視線の下這って、中央行こっと。

 端の方に誰もいない場所に逃げると目立つ、隠れるなら最も激突の激しい戦場が一番さ、

 

「うぉおーー! ここでいいとこ見せて、あの子に声かけてもらうんだぁーー!!」

「おりゃーーー! この戦場で勝ち残って、あの人をデート誘うんだーーー‼︎」

「とぉおーー!? 俺この戦い終わったら、彼女に告白するんだぁ!?!!」

「あぉーーー?!! オレはここで優勝したら結婚する約束したんだぁーーー⁉︎⁉︎」

 

 うん。

 なんかこの集団の近くには行きたくない、

 まとめて死にそう、巻き込まれそう。

 でも、隠れ蓑にはちょうどいいんだよなぁ、むしろこいつらの死亡フラグが僕を引き寄せたのか??

 

「お、おー、僕この戦い終わっても、まあ別に特にないや、」

 

 せめて、少しでも中和してやろ。

 まあいっそここまできたら、むしろ足して裏返るのを期待する方が早いかもしれないけどね。

 裏返った! 死亡フラグが、まあ本戦行けるのが二人までな以上、初めから詰んでるけど。

 

「せめて、安らかに眠れ、」

 

 なむ?

 

 さてと、僕のメインシールドのおじさんはと。

 はたして上手いこと適度に戦いながら体力温存できてるか、バトルロイヤルの基本は大切に。

 あんまり器用そうには見えなかったけど、劇団に憧れてるなら少しくらいは期待してもいいのかなっ、

 

「おらー!! 俺こそは、この闘技場の花、元「うるさいっ、」——ゴスっ、

 

 人が飛ぶ、四人ほど、やはり死亡フラグだったか。

 そしてそれをやった、僕の目の前にいる大きな声をあげる、屈強な男、

 

 サーカスの、いや所属希望のおじさん。

 うん。なにしてんのよ? 思わず物理的に口塞いじゃったが??

 

「がっ、おま!?」

「僕の視線避けが吹っ飛んだんだけど?」

 

 早いよ、まだ結構残ってるよ!?

 確かに意外と序盤から潰し合い起きてたけど、もう少しいけるって、

 

「だが、囲まれて、」

「だからいいんでしょっ、あーもうしゃーない、予定変更!」

 

 視線集まっちゃったよ、流石にここから隠れるのは、僕一人なら余裕だけど。

 でもそうだね、せっかくいいツッコミ入れたんだ、利用しよう、

 

「今から君は敵だ! 精々僕ら二人が残るまで、倒されるんじゃないぞ!!」

「お、あ、おお!?」

 

 適当にペチペチ当てながら、距離を取る。

 うん。無駄だけど無駄のない劇調な動き、ちょっと真似させてもらおう。

 あえて余裕を無くして余裕を持って剣を受ければ、たちまちやられかけの二人の出来上がりさ、

 

「うわ、おい、だいじょ、」

 

 ——おま、ほんとに黙れ、

 

「お、おお。・・・・・・がはは、次に飛ばされたい奴は誰だぁ!?」

 

 ・・・・・・ま、予定とは違ったけど、結果的に同じようにはなったかな。

 倒れ込んだ僕に近づいてきた相手をこっそり締め上げながら、これもみんなの視線が大っきいデコイに向いてるおかげだね。

 それじゃ、裏から静かに減らしていくか、

 

「くっ、まずはあいつからやれー、」

「きっ、彼女のためにーー!!」

「うん。そうだねーー、」

「がっ、貴様、今そんな場合じゃ、」

 

 視線誘導、観客からすら僕がなにしてるかわからないように。

 うーん面倒臭い、わかりやすいヘイトタンク君がいてこれだもんね、僕は演劇を一から作るのは無理そうだな。

 

「いけーー、奴をあの子へ捧げる花にするんだぁ!!」

「うおーー、負けてたまるかーー、付き合ってもらうんだぁーー!」

「おおーーー! オレはあの瞳にー、っ、がぁ??」

「あおーーー、っと、ほいもう一人、」

 

 そして死亡旗を掲げながら突っ込んでった人たちは、まとめて薙ぎ払われた。

 うん、弱い、まあそりゃそうか。

 

 さてと、馬鹿正直に突っ込む奴は大体片付

いたな、

 つまり、残っているのは、初めから全体の様子を窺っていた強者たち。

 

「ふふ。これは、我が愛しの姫に捧げる聖歌さ、『吹き荒れろ、空の漣、我が手の元で、豪風』」

 

 魔法、てっきり集団戦には戦士タイプしか参戦してないと思ったけど。

 なんだろうね、受付弾かれたのか、それともただのバトルジャンキーか、はたまた誰かへのアピールのためか、

 

 そよ風が吹き荒れる、まあ自信満々に詠唱してただけあって、僕がくらったらまあまあダメージ受けるかもね。

 うん。正直寝てても直撃する方が難しいけど、

 

「なんだぁー!? そのなまっちょろい風わぁ!!」

「なっ、バカな!! 正面からだと!?」

「うん。馬鹿だと思う、なんで真正面から受け止めたし、」

「ああ、まったく、、っ、だれ——、」

 

 ほいっと、

 膝カックン的に剣でついて転ばせて、そのま頭からゲシッと。

 聖女様の結界あるからね、多少雑に強めにいっても問題ないから気が楽だよ。ま、別に無くても大して気にしてなかったけど。

 

「ふん、馬鹿どもめ、優勝し彼女を手に入れるのは私だ! 『燃え散る業火、爆え「『おっと』、それは危ないな、」ん?!ー』」

 

 ————ぼかーーん。

 

 目の前で唱えられてた無駄に魔力の高い魔術を、横から干渉して暴走させる。

 流石に目の前で長々と詠唱されちゃね、隙だらけ過ぎて手を加えない方が失礼ってものだ。

 

 それに、無駄に判明したが、あのおじさん芸風がプロレスタイプだ。

 あえて敵の攻撃を真正面から受け止めて反撃する奴。バトルロイヤルどころか、多分トーナメントにすらあってないよ。

 しょうがないから、火力高めなやつだけ先に潰しといたろ。メイン盾に先に落ちられちゃう困るもんね。そうだろ?

 

「へっ、バカな魔術師どもだ、隙だらけだぜっ、」

「ああ、知らしめてやろう、私たちこそがこの国の真の姿だとなっ、」

「ね、応援してるよ、」

 

 息を潜めてた二人組、まあ戦いのない空間ができてたからバレバレだけどね。

 これはまあ、僕よりじゃなくて、あっちのあの。僕の部下よりの人たちかな、

 

「・・・・・・っ、誰だ!?」

「————な、私たちに気づかれず、ここまで、」

「それよりほら、もう目の前に敵が来てるよ!」

 

 意識を逸らして、自然に誘導。

 その先にいるのは、もうすでに何人も吹き飛ばしてる強いおじさん。

 

「おら、もうふた、三人だな!?」

 

 あらら、自分たちが隠れてるからって油断したね、まとめて吹き飛ばされちゃった。

 まったく、本当にここまで残れる人が気づいてない訳ないでしょ、あえて泳がされてたんだよ。そもそも弱そうだからこそ、ここまで見逃されてたんだしね、

 ま、僕みたいに、それを利用するのもいるけどさ、

 

「うーんいい腕、でももっとギリギリでも良かったよ、」

「・・・・・・お、おう。・・・・・・・・・・・・当てないようにはしたが、普通ここまで信用するか?」

 

 ははは、これがあわよくば僕まで落とそうとしてる気持ちが少しでもあるなら、まあそれでも最後まで利用してやるけど。

 むしろそれでも良かったのにね、なにせ、もうほとんど残ってないよ。演技の必要も、まあせっかくならいけるとこまで行ってみるか。

 

「それじゃ、とりゃーっと、」

「お、おう?」

「うーんだめ、もっと本気になれ、」

 

 剣をかざして、大振りの一撃を引き込む。

 ここまできたら、最後まで結託してたことすらわからないくらいにしてやろうぜ、

 

「ほらほら、ざーこ、よわよわけんぎ、おとなのくせにその程度もあてらんないのー♡」

「うぐっ、すげぇやりずれぇ、」

「う〜ん♡ 僕も、思ったより精神的に疲れるなこれ、」

 

 まあいま男の格好してるしね。

 オスガキ、コレはコレで需要があるのかしら、男の君に聞いても分からないね。

 

 こういう演技が出来るのが、多分サーカスの主演の才能なんだろうな。

 僕は僕に出来ることするしかないか、

 

「ぐはぁ、やーらーれーたー、」

「なっ、おい、だいじょ、、ふんっ、次の相手は誰だー!!」

 

 お、流石に学習したね。

 うん。僕は攻撃を受けてる演技は得意なんだよ。

 事情知ってる本人ですら、まるで本当に切ったかのような感触しかなかっただろ? 相手に気持ちよく殴られる技術は、重点的に学んだからね。

 

 さてと倒れたふり、だけどもう殆ど意味ないな。

 何せこんなことしている間にも選手が減って、残っているのは、

 

 後、三人。

 

 ・・・・・・ん、あ、試合終わんない時点でこっそり生き残ってる奴いるのバレバレじゃん??

 マジで意味ねー、

 

「ははは! やはりあの娘に相応しいのはオレだ!! 死ねぇ!!」

「うぉ! 本気で殺しにくるんじゃねえよ!?」

 

 ハイテンションの一人、鋭い刃物を振り回してそれなりに強そう。

 まあでもこの試合のルール的に、結界で減衰されちゃうから、重い金属振り回した方が効果的なんだけどね。

 にしても一人か、途中で相方やられたか、それとも最初から孤高の猛者か。

 

「ま、いいや、」

 

 そこら辺の石を拾い込んで、倒れたまま、誰にもバレないように。

 膝の裏にでも軽く遠当て? 本人すら気づけないよう自然に転ばせて、

 

「うわ!?」

「おらぁ!!」

 

 決着。

 後は、今気づきましたって感じで起き上がって、

 

「あ、あれ、終わってる? やったーー、」

 

 ——っと。

 

 うん。それじゃ、本戦も頑張ろっか。

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