狭くて、暗い通路。
その先にあったのは、汚い部屋だった。
そしてその中に、何人もの子供たちがいた。
「あっ、す、すみません、エウスさん!」
子供達の中、一番年上のお姉さんが前に出て謝ってくる。
発育のいい、・・・・・・まあ胸の大いい女性が、服を乱れさせ疲れた状態で息を切らしながら。
ここは、まるで、
「キミたち、まったく、」
——きゃっ、
——あ、エウスだー!!
——きゃー、きょーもかっこいー!
——おしごとおわったのー?
——遊べるー??
「またこんなに部屋を散らして、彼女を困らせてはいけないよ?」
————わー、わー、ごめんなさ〜い、
清潔感のある明るい一室、だけどもそこら中におもちゃが散らかっていて汚いな。
まとめ役のお姉ちゃんも疲れ切ってるし、なんというか子供のパワーってすごい。
これが幼稚園、いや保育園? 何が違うの??
まあともかく、そんな場所だった。
「それじゃあ部屋を片してくれるかい? その後は、おやつにしよう、」
手に持った、プリンの入った箱を覗かせる。
また子供たちは騒がしくなりながらも、その言葉に従って部屋を綺麗にしていく。
手際がいいな、来るたび同じ事してるのか、どっちも手慣れた感じだ。
「あれー、そっちの、おねー、おにー? さんはー??」
「ああ、こっちのプリンセスはね、」
「・・・・・・・・・・・・今、男装すらしてないんだが??」
おら見ろ、スカート履いてるだろうが!?
というか、胸のサイズはそっちの王子様も大して・・・・・・、いや潰してるだけで結構あるんだった、ちくしょう。
「もー、ダメですよー。すみません、失礼なことを、。エウスさんも、悪ノリしちゃダメです!」
「あはは、すまないねネエさん。キミと久しぶりに会えて、興奮してしまったようだ、」
「もう。別に、毎日来てるでしょう?」
うーん親しげ、しかし僕を放っておくなよ。
なんの説明もなくここに連れてこられて、どうしろと。
こんな子供だらけの状態で、僕一人放っておかれたら、
「ねー、おにーさん?」
「おねーさんだよプリンスじゃないよー、」
「おねーちゃん!!」
「よしよしいい子だ、プリンをあげよう。というか持つの疲れた」
「わーい」「いいのー?」「お名前はー?」「ほんとに女の子?」「あそぼー?」「どっから来たのー?」「え、エウスさんとのご関係は、」「いつものおねーちゃんはー?」「わーい、おかしー!!」「・・・・・・ご兄弟?」「なんでそんなにおっぱい小さいのー?」
ははは、ほらほら、プリンだよー、
みんなで食べて落ち着いて群がってこないで捌ききれない。
質問は一人ずつでお願いします。
あと最後の、本当にやめてくれない??
「あはは、ほらエウスサン? あなたもさっさとプリン配ってください??」
「おっと、すまないねお嬢様。随分と打ち解けていたようだから、」
「そう見えますかあ? ほら早くこっち手伝ってえ?」
全く、僕は子供の面倒見るとか、死ぬほど似合ってないんだから。
そんな資格というか、ともかく保母さんって大変な仕事なんだぞ!?
「あはは、普段はもっと大人しいんだけどね。お祭りもあって今は休暇中だから、元気が余っているのかな?」
「なら外出してあげなよ、」
「うーん。明日からならともかく、今日のはまだ少し荒々しいからね、」
そう思うならなんでこんな大会って、まあ言ってもしょうがないから。
しかし確かに明日からは多少なりとも精錬されるとはいえ、強いドラゴンちゃんとかも出るんだぞ。そう子供に見せられるものになるかねえ、
「ええきっと、このお祭りの主役になるのは、最も華やかな存在でしょうから、」
「そうかな、そうでしょうか?」
少なくとも僕はっと、
——なんの話してるのー、
——やっやっぱり、秘密の関係?
——どっちがねこさんですかーー??
あーもう、ほらほら集まってこないの、僕そんな面白いことできないから。
よっと、せいぜいそこら辺に落ちてるボール拾って、片手ジャグリングー、
「それで、ここはなんですか? 僕にここ見せて、なにかいいことが?」
「いえ。・・・・・・見ないでよく回せますね、」
「別に、三個ぐらいなら、おっと、四個ぐらいなら、」
こらこら、投げ入れるんじゃない、
よっ、ほっ、多いな。
あーもう、初めは遠慮してた子までやってきたよ。
部屋中のボール投げるじゃん、そろそろピンとか飛んできそう。
回すのはいいけど、多すぎて単純に腕が疲れそうだ。
「それで、ここがどういう場所かくらいは教えてくれるんですよね?」
「え、ええ。・・・・・・うわぁ、すご、」
「エウスさん?」
「ほえー、本当に大丈夫なんですかそれ??」
確かに、ついには部屋中のピンすら無くなって、重いもの飛んできそう。
刃物がなくて良かったよ、投げる時に怪我したらいけないからね、まあ子供の部屋にそんなもの置いとかないから。
っと、そろそろ止めよ。
「よ。どうしたんですかエウスさん、そんなに呆けて、」
「おお、最後に重ねてタワーに、素晴らしい、」
「おっと、天井ついちゃう、ちょっと失礼しますね、」
ボールを縦に重ねて、そのまま頭に乗せる。エウスの、
おお、流石はサーカスの団長、どこぞのドラム缶と違ってちゃんと耐えてるね。
それじゃあまたタワー作って、そっちの頭のは回収してっと。
「よっと、ほら、また散らかっちゃうよ。このまま立てかけときましょうねー、」
————わー、きゃー、すごーい、ぱちぱちぱち、素敵ですねプリンセス、いえもうクラウンクイーンと呼んでも?
それはお前だエウス、というかしれっとそっち混ざって拍手してんな。
全くもう、なにさせるんだよ。
「いえ失礼。アナタなら、ボクらに混ざれると思いましたが、それ以上でしたね。・・・・・・どうです、本当に我々の一員になってみたり、」
「・・・・・・・・・・・・ウサ耳付けてた服着れる?」
「え、。・・・・・・あー、はい、専用のを作りますよ、」
「では、残念ですけど、」
・・・・・・サイズ合う服すらねえのかよ、チクショウ。
ま、別に、いいもん、別に、もん。
バニー服も着こなすボクっ娘奇術師なんて、キャラ被りってレベルじゃないしね。
いやまあ別に僕はこんな王子様とは似ても似つかなし、胸だけは似ろ。
「・・・・・・本当に残念ですね。っと、重ねて失礼。ついワタシまで熱くなってしまったようです」
「はあ、」
「アナタにボクらの事を見せたかったのに、逆に魅せられちゃいましたね、」
「・・・・・・・・・・・・まあ、貴方達には、先に見せてもらいましたので、」
先日のサーカスでね、って。
・・・・・・よくよく考えると僕、本職相手に突然芸しだして、めっちゃイキってる人だな。恥ずかし。
まったく、君たちが乗せるせいだよ? 物理的にボールを手の上に、まあ僕が拾ってたからだけど。
「やっぱり、お気づきでしたか」
「いやまんまだ、ですし?」
確かに化粧したり仮面つけたりもしてたけど。
流石に全員ではないが、普通にはしゃいでる子供の中にも、凄技の縄渡りとか軟体芸とかしてた子がいる。今もすごい体勢してる。
あっちで子供の面倒見てくれてる優しそうなお姉さんも、先日は扇状的なバニーガール姿で見せ物になってたし、
・・・・・・なんていうか、この裏の素朴な姿を見るとこう謎の罪悪感というか申し訳なさというか、——逆に興奮する?? あそう、ならいいや、
「・・・・・・・・・・・・それでは、こっちもお気づきでしょうか?」
「なにが、でしょうか?」
「いえ。・・・・・・普通に話されても、いやキミのことをもっと教えてくれないかい?」
「はあ。いいけど、」
まあ大方、こんな子供たちがサーカスで働いてる理由かな?
都市伝説は、本当にあったんだねっと。全員がそうかは知らないけど。
「お察しの通り、ここにいるのは親のいなかったり、親もここに所属している子供達です、」
「ふーん、ま、それだけじゃないよね? だったらわざわざこんな暗い奥に住んでないし、」
「ええ、ご聡明なお嬢様。・・・・・・ボクらはみんな、誰かのものだったんですよ、」
暗い感じで言われても、僕には何も言えんな、
だってむしろ、どう答えてくれるのか聞きたい立場だし。
いやまあ、こんな話題、振るのも振られるのも僕は嫌だけどね。
「今は最低限の自由を保障させていますけど、お恥ずかしながらまだ全て買い戻すには足りていません」
「あー、まあここで商売する以上、売り上げは結構持ってかれてるの?」
「人員も場所も、まあおかげさまで借りてるというよりは共同経営者という立場、その中でもトップには立ちましたがね、」
十分では?
しかし、それでもまだ自由にするに足りないのか、
なんか、どこぞな国の聖女とか魔王みたいな立場だな、あくまでこの建物周辺の利権だから規模感小さいけど。
君の世界風にいうなら、代表取締役と株主集団とか? さらになんか規模感縮んだか、
「・・・・・・でもまあ、この国半分の支持得てるんでしょ? ならいけるのでは、」
「ええ。この祭りを成功させて、みんなに魅せつける英雄を・・・・・・、」
・・・・・・そういや、こいつ、勇者作ろうとしてたんだっけ。
それで、なんでこの人、英雄なんて作ろうとしてるんだろう。
「・・・・・・ボクの夢は、世界中に劇を広げることなんです、」
「はあ、つまり旅芸人?」
「ええ。ですが今まだこの国には、ここしか娯楽がありませんので、」
つまり、勇者に見せもの肩代わりさせてこの国出ていく?
それとも、勇者の旅立ちに合わせて一緒についていく?
はたまた、勇者という後ろ盾やその協力者という実績があればこの劇団を、奴隷集団を自由にできる?
・・・・・・わからない、なんというか、まわりくどい?
どう転んでもいいのか、はたまた別の導線があるのか、
いっそ直接本人に聞いてみるか?
その場合はどっからその情報得たかって問題が、マキナ売ってもいいけど、むーん。
「聖国のお嬢様方を呼べた事は幸運でした、」
「・・・・・・まあ、表向き反対だしね、いろいろと、」
「ええ。快く協力者になっていただいて、」
ふむ?
まさか、真なる目的は、聖国の参加者から勇者作り出して忖度することか!?
確かにクソ弱ってるとはいえ、腐り切っても国は国。バックにつけたら、今よりも立場は強くなるだろうけど。
もしかして、そのために八百長とか。
誰がいたかは知らないけど、元の僕らが来る前の参加者に・・・・・・、
あれー? 今の暫定優勝者、聖国側といえば側だけど、特に所属してるわけじゃないドラゴンちゃんなんですが、
もしくは、絶対に勇者とかならないこの君たちと似たようなものとか。
もしそうだとしたら、僕が何かしなくてもこの計画破綻してるんだが??
「・・・・・・いえ、アナタに話す内容ではありませんでしたね。気にせずお祭りを楽しんでください、」
「・・・・・・・・・・・・じゃあ、なんで呼んだし、」
「ただ少し、アナタと話してみたかっただけなんですよ、フロイライン。他の方々とは、仲良くさせてもらっているからね、」
・・・・・・レコウとも運営側で話したのかな、
協力って、まさか本当に勇者になること了承してたりしてね。
流石に、レコウといえどもそんな事・・・・・・、
いやー、まあ、なんか楽しそうじゃからーって?
うーーむ、これは本格的にレコウと対戦したらぺち倒さなきゃかも、
ま、別に八百長じゃなくて普通に勝つ分にはいいよね。
「そう。なら僕も楽しみますよ、お祭り」
「ええ、是非とも、心ゆくまで、」
そしたら、この人の計画がどうなるかは知らないけど。
・・・・・・・・・・・・まあ、全部、僕には関係ない事だしさ。。