「それじゃあ行くわよ!」
「うん。いつでもどうぞ、」
一番強いやつを決める野蛮な大会。
そんな世界に似つかわしくない可憐な聖女様、と思いきや喧嘩も強い光の女王様。
宣言と共に構えたのは、
「『天象の杖』」
「うわぁ、でっかい杖!?」
いつの間にやら彼女の手に握られた、先端に宝石のついた大きな杖。いかにも魔法使いの装備って感じ、
いったいどっから取り出したってか、観客席から呼び寄せたな。やっぱずる〜い!
そしてそこから放たれるは、
「『聖光散華!』」
「はっや、ちょっとキツイかも、」
光の散弾、
拡散し、華開いた綺光の破片は、その一つ一つが簡単に大地を抉りとる。
もはや光というかただの爆発だね、
でもって触れただけで炸裂するのが同時に何発も、流石にこれは逸らすだけじゃ厳しいか、
「『万象の杖、鏡面』」
「『あら、嬉しいわねえ、』」
「『でーも、私の魔術に私の魔導具じゃ、対抗できないわよ♪』」
咄嗟に作り出した鏡の壁を、光が蹂躙し破壊し尽くす、
ダメか、まあ結果的に光速が本当に飛んでくるよりはマシかな、それでも少なくとも銃弾なんかよりはよっぽど速いけど。
それを同時に何発も、ショットガンかな?
そしてあれは魔導具だ、本人の魔力が尽きない限り何桁発だって連射してくるだろう。
うーんこれはやっぱり、銃なんて所詮はおもちゃだね、
「でもそうねぇ、予告しとくわ。その杖じゃ、今度のは間に合わないわよ、」
「おっと、いい出来なのにな、」
「『今考えると、あなたに渡すにしてはお恥ずかしい品だったわあ。——聖光終俗』」
魔力が集まる。
・・・・・・やっば、これ、マジで光速飛んでくるかも、
撃つ前にモーションあるだけマシかな、いやそれもあえて残してるのか。
しょうがない、二択だ。
右に避けるか左に避けるか撃たれる前に。
ここまで速いと純粋な動き読むだけじゃどうしようもないね、頭の中まで予測しないと、
それは、僕の領分じゃないんだけどな。
・・・・・・っ、えーいままよ!
「右だ!」
「っ、もう、またそうやって、『次!』」
正解は、あえてのど真ん中!?
やるねえ、甘えは許さないってわけか。
そして予想通りに、この速度の攻撃は連射できないなんてことも無いみたい、
だろうね、廉価版の僕の杖ですらそうなんだ、あの大きい本気仕様ならもっとエゲツないことも可能だろう。
それこそ、レコウがやってたみたいに連なったレーザーを、一本一本が線に見えるほどのそれでやってくるとか。
・・・・・・そう考えるとその杖、僕のよりレコウにくれたやつの方が似てるかも?
「『あ、しまったわ!』」
「左、っ、」
距離を詰めようと走り出した僕の元に届く一線、
今度こそケチのつけようのない光速、撃たれてからでは対応できない絶対速度。
決め打ちで避けた左、そして僕の目の前まで迫る光。
うん、完全に読まれてたね、さすがは聖女様。心の中の読み合いは、君に一日の長があるようだ。
それとも僕が読まれやすすぎる?
うーん、どうだろ。
僕は誰からも目立たないようにしてるつもりだけど、それはつまり不自然に痕跡消し過ぎもしない自然体。
だから初めから僕のこと注視してる変な人には、全部丸見えなのかな、なんて、
「でも、この二択には勝ったよ、」
「『むーー、まだまだよ!!』」
それでも二択。
上か下か、
予測射撃には見事に引っかかったけど、僕にはまだ細身の剣という盾がある。
今回は上、というよりは体の中心ら辺に当たったな、事前に構えといた木製絶対物質に弾かれた。
完全な光なだけあって、重さはないね、体で直接受けなけりゃ問題なさそう。
さて次は、右か左か、頭か足元か、
この剣じゃどれだけ半身になってあたり判定減らしても、全身は防ぎきれない。上半身の判定は狭いけどくそう。
それでも僕の方が有利、なのはまあ、
「試行回数三回までならね、」
「『聖光、万散界』」
何発も続けて放たれるレーザーに、さっきの拡散弾まで混ぜてくる。
まあそれでも起点はあくまで杖の先端、どうせ飛んでくるのが光速ならば、近づけば近づくほど僕の有利になる、
「・・・・・・うーん眩しい、レリアはちゃんと僕のこと見えてる?」
「『ええ、せっかくのあなたとの楽しい時間、一秒だって見逃しはしないわ、』」
「ははは、僕もだよ、」
近づくほどに、必要な調整角度が広がっていく。
単純な左右二択じゃなくて、加減速で位置を変えて無限に選択肢が広がってく。
心理戦では面白いように僕の動きを先読みして飛ばしてくるけど、これなら僕の方がズルできるね、
まあこれが細い光の線じゃなくて、極太な大レーザーだったら話は変わってたんだけど、セーフ。
あと君が僕の顔を見てくるから僕も真似してみたけど、結構レリアは撃つ方向見ちゃってるね。
正確には撃つ方向に常にいる僕の顔を、
うん、先読みの先読みというか、何で僕が動き出すより早く僕のこと目で追ってるの?
おかげで少なくとも、君が当てるのか外すのかだけは先にわかるよ。
そしてほぼ全弾当たる軌道、なんで??
「そしてこれは散弾の合図っと、」
「『あらぁ、そんなにじっと観察されたら恥ずかしいわ〜』」
「見せかけて、何だこれ?」
『聖光終結』
百発百中だった光の玉が、何故か急に僕を避けるよう周囲に飛んでって、
軌道を変えて、今までのまっすぐな線から、なるほど誘導弾か!
なんでここまで溜め込んで、僕が近づくまで、そんなの、
「遅い、」
「『あらぁ、』」
「からこそっ、」
怖い。
なにを狙っている。
この距離でそんなん撃っても僕が彼女の元に辿りつく方が早い。
判断ミスか? いや違う、
レリアは心理戦においては、常に今の僕を上回ってきた。
これはいったい何の目的か、わからない、
僕の目には、これは非合理な失敗にしか認識できない。
それ故に、いくら警戒したってしたりない!
「それでも前に出るっ!」
「『うふふ、セシィの方から私に飛び込んできてくれるなんて、嬉しいわー♡』」
『聖壁』
レリアの目の前には壁、簡易結界、銃弾なんか軽く弾く物理障壁。
でもそんなもの見え透いてる、得意分野だろうしね。
剣で一振り、弱いところに捩じ込んで、剣の耐久性に合わせてバリバリと、
あっさりと、拍子抜けなくらいに軽く、聖女の結界は破られて、
「——っ、」
「『うふふ、それじゃあ次はこれ、一度体験してみたかったのよ。聖創剣』」
杖の先から光の剣、
なにそれライトセーバー!?
いいなーカッコいい、後で僕の杖でもできるか試してみよーっと、
じゃなくて。
何だこれ、不合理だ、さっきからずっとなにを狙っている。
剣同士がぶつかり合う、
光の剣のくせに、質量を持ったみたいに重なり合って、押し合いを演出している。
・・・・・・意外とレリアも筋力高いんだね、僕が低すぎるだけだけど、
普通にやったら負けるな、それじゃあ投げるけど、本当になにを狙ってるの?
「『きゃー〜、本当にすごいわねこれ、くらってみても魔法のようだわ!』」
「・・・・・・それ、さっきから魔術、自分にも結界かけてるのかな?」
「『ええ。うっかり事故で終わってしまったら、もったいないですから♪』」
単純な物理障壁、に、収まらないな。
魔法阻害はもちろん、あれは多分、オートで受け身まで取るし、何なら頭から落ちて脳にダメージ行っても即座に治す、何重もの防御策の塊だな。
なんで複雑で面倒な、よくそれずっと維持できるね、なるほど木の剣じゃあ突破は無理か。
どうりでその前の壁もペラッペラだったわけだ、むしろあれで測って精度上げた? どうだろ、そんな感じもしなかったけど、
「『わかったかしら、』」
「うん。やるねぇ、」
「『それじゃあ、そろそろ使ってくれるわよねえ』」
「・・・・・・、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、なにを??
わからない、レリアの目的が、ってあれー?
ん? あ、んん??
えっと、あー、いや、あ、あれね!?
う、うんわかるよ。そりゃそんなそっちがこんなに僕の心呼んでくれるのに、僕がわからないわけないじゃないかーあははー、
そのー、あのー、んーーーー、か、簡単に言ったら、味気ないし??
・・・・・・・・・・・・あ、『これか?!』。
今頃戻ってきた光の玉を、反対にした同じ魔術で打ち消して、
「・・・・・・ほら、宴会芸、まあこれ使うのは非効率的だけどー・・・・・・、」
「『もう! 魔法よ魔法!! いつものかっこいいやつよ!!!』」
「あー・・・・・・、え?」
いつものって、空間魔法??
「『そうよそれそれ! せっかくこんなにお膳立てしてるのに!!』」
「・・・・・・・・・・・・あー、」
・・・・・・・・・・・・はぁ、レリアは何を言ってるんだ。
まったく、そんなに気軽に言ってくれちゃって、
「・・・・・・・・・・・・レリアー?」
「『なによ?』」
「僕説明したよね、空間魔法、」
「『そうね、言われてもまあ、理解はできなかったけど、』」
「そうだよ、それくらい難しいんだよ!?」
あれクソ精密で、正直普通に対処できるものなら普通の魔法使った方がよっぽど効率的だからね!?
今まではそもそも選択肢なかったから考えなかったけどさ、君にもらった杖とかめちゃくちゃ便利だったんだからね!!
それをこんなまあ、対策かは知らないけど、こんな何重にも結界張ったところで使えって、
「あれは、少しでもズレがあれば簡単に大事故引き起こす魔法なの! それを僕の大切な友達相手に、簡単に使えるわけないでしょ!!」
僕があれを気軽にひょいひょい人に向かって使うのは、最悪失敗してもどうでもいい相手の時だけだ、
友達に使うのはきちんと周囲も自分も万全な状態か、よっぽどな緊急時だけだよ!
「えっ、た、大切って、」
「もーー! そんなくだらないこと考えてるなら、こうだ!!」
一気に距離を詰めて、レリアを抱きしめる。
どんな強烈な攻撃も防ぐ結界は、あっさりとその軽くて力のこもってない行動を通過させる。
まあレリアが僕から抱きつきにきて拒むわけないからね、じゃなくて、
結界の性質だ、これはどんな敵意からもその身を守るが、逆にいうと脅威のない攻撃には一切反応しない。
はは、今までのお返しだ!
「むぎゅう、せ、セシィちゃん!? こんな、みんな見てる中で、」
「もう、今だけ特別だ!」
「きゃあ、胸当たってる、柔らかい、」
「え、マジで!?」
お世辞かな、でもちょっと嬉しい。
お返しに、僕も全力でやってあげよう。
何重にも魔術を使って働いている聖女様の頭を、優しく抱き寄せて、耳元で、
「はーいよしよし、おやすみ〜」
「ちょっ、こんな手段で・・・・・・・・・・・・、」
「ねんねんいいこ〜♪」
「あっ、お胸が・・・・・・、。あれっ、ちょっとま、」
「ぎゅ〜〜〜〜、」
「・・・・・・・・・・・・ばぶー、」
すやーー、
よし、寝たな。
ふふふ、これぞ必殺、羊の催眠歌だ。
前にもレリアがこれくらってたの確認したし、それにどこぞの子にも同じことしたし、
まっ、疲れてたからね。
ただでさえ激務に、今も複雑な魔術を廻しまくってたから、そりゃ脳は休息を求めるさ。
後はそれにつけ込むだけってねー、
・・・・・・だからまあ、別に僕のこのうっすい壁に安心を感じたからとかじゃ、って誰が壁だ。
「よっと、それじゃあ僕の勝ちだね、お嬢様」
ひょいっと、お姫様抱っこ。
・・・・・・・・・・・・あ、やべ、僕の筋力だとちょっとキツイかも。気絶してる人を運ぶのは協力してる人を運ぶ労力の何倍だっけ、
変な事せずにもっと効率いいの選べばよかったかな、いやそれじゃあ起きちゃうかもかしょうがない。
僕に空間魔法使ってなんとか無理やり筋力上げて、
ん、おっと、なんかレリアの方から抱きついてきたな、こりゃ楽だ。
・・・・・・・・・・・・ぬ。あれ、これ本当に寝てる??
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま、いっか。
けっちゃーく。