情報過多の荷物持ちさん、追放される   作:エム・エタール⁂

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88話

 

 結局のところ、人は竜には勝てない。

 

「よっと、『収納』」

「お、今度はなんじゃ?」

 

 基本的な体力が違いすぎるから、一緒に遊んでるだけでも片方が簡単に折れてしまう。

 

「『疲労物質』っと。うん、なんでもないよ、」

「そうかじゃ?」

 

 まあ僕には関係ないけど。

 体内からなんだっけこれ、乳酸? 乳、違う??

 ともかく名称は知らないけど、自分の体の中の邪魔なものを取り除いて、適当にエネルギーをぶち込む。

 

 他人にやったらどんな悪影響出るかわかんないね、でもまあ自分の体なら把握してるし別に大丈夫。

 よーし、まだまだ遊ぶぞー!

 

「あーー、まだまだ花火が咲き誇っていますね。これはいつまで続くのでしょうか、解説のアウレリアさん」

「そうねぇ、やろうと思えば無限に続くんじゃないかしら。事前に制限時間決めておけば良かったんでしょうけどね主催者さん、」

「・・・・・・・・・・・・どうしましょう、」

 

 外から声が聞こえる。

 

 ・・・・・・あ、時間制限なかったんだ、考えてもなかったけど。

 

 それは好都合、、と言いたいところだけど、逆に引き伸ばしすぎるのも運営に影響出るかもな。時間決まってたら、少なくともそれいっぱいは使っても問題ないって指標になるんだけど。

 というか花火だけの使い回しスクリーンにも限界がある。

 

 ・・・・・・しょうがない、こうしてレコウと遊ぶの自体はまた別の機会にもできる。はず、

 それじゃあそろそろ、

 

「『本気で行くよ、光の剣』」

「お、我の花火が?!」

 

 空間を固定して、剣の形へ、

 ただの空気の方が透明で使いやすけど、それじゃあつまらない。

 カラフルな光を固定して、楽しげなペンライトを振り回す。

 ライトセー、いやまあそれはどちらかというと狭間の剣の方が近いかな、これ硬いだけで単純だし。

 

 でもそれ故に、

 木の剣に、光の剣を添えて二刀流。

 にはおさまらず、あたりいっぱいに散らばった光全てが、意思を持って、ボクの意の元に動き出す。

 

「おーー、綺麗じゃのー、」

「うん、綺麗な花火だったね。思わず無粋だとわかっていても、こうして固執しちゃうくらいにさ、」

「我は、今の方が好きじゃがの」

「・・・・・・・・・・・・そう?」

 

 僕の支配した空間内の物質は、自由に動かせる。

 ・・・・・・とはいえ、せいぜい整理整頓用な程度の低出力、戦闘に使えるものでもないんだけど、

 

 でも、僕の元の筋力程度は出力あるからね。

 この光る応援華、全てが僕の手足だ、

 

「うむ。綺麗じゃ、」

「・・・・・・・・・・・・まあ。自分がやったのよりは、見る余裕があるし?」

「ふふ。まあそういうことにしとくかのー」

 

 現に僕もまあ、流石に余裕はない。

 

 殺到するサイリウムの群れを、一つとして同じ動きがないようにレコウに与え続ける。

 数の利なんてない、ただ雑に集結させても一瞬で叩き落とされるだけ、一つ一つが自分の腕そのものだと思え。

 

「お、っと、ぐるぐる〜じゃー」

「・・・・・・楽しいかな、でも僕もそろそろ、お祭りしたいんだけど、」

「むむ、そうかの?」

 

 レコウの死角を嗅ぎ分けて、そんなものは無い。

 しょうがないので百を千を犠牲に一を通す。

 

 レコウはしばらくクルクルと光に合わせて平和に踊っていたが、やがて

 

 ————べキリと、ペンライトが砕け散る。

 

「お、これもなかなか綺麗じゃの〜」

「そう? まあせっかくの花火なんだから、余韻まで楽しくってね」

 

 レコウが漂う光を砕き壊す。

 元が花火なためには、儚く飛び散り消えるとこまで綺麗だが、あれは絶対に壊せない空間そのものだったはずなんだけどね。

 

 まあ原因は中身か。あれはレリアの魔導具を介したレコウの魔力だから、完全には僕の支配下にない。

 ・・・・・・うん。あんまり硬くしすぎると危ないし、これくらいで丁度いい楽しい強度だっただけだ。

 ・・・・・・・・・・・・まさか、本当に物理で空間壊してるとかは、ない。はず。

 

「でも、やることには変わりないよ、」

「ふふっ、勝負じゃのーー!!」

 

 殺到する光の群れ、散ったなら補充すればいい、無限の閃光。

 とはいえまあ、花火の数には限りがあるから、無駄にはできないけど。

 

 それをレコウは、拳で迎撃する。

 おらおらーっと? 殴った衝撃で、どんどん光が無駄になっていく、

 

 先程まで振り回していた花火な剣すら使わず、己の肉体のみで。

 それは、つまり、

 

「『ちょっとは本気に、なってくれたかな?』」

「そうかもじゃーー!」

 

 砕け散り廻る光の残滓、楽しんではもらえたけど、所詮は傷にもならない夢の跡。

 屠龍の技、完璧な角度で振るわれた光棒の腕は、レコウが少し意識を向けて力を込めただけで簡単にへし折られてしまう。

 なるほど、前の攻防はまだまだ手加減してくれてたらしい。

 

「なら、それを付くのは申し訳ないけど、」

「お、セシィも来るかじゃ! ばっちこーいじゃーー!!」

 

 光の剣を伴って、最後の攻勢。

 もう、後に戻る事は考えない。

 

「いくよ、秘技、竜回し!」

「うおうっ! ダンスじゃ?!」

 

 完璧な手順を廻して、レコウを転ばせる、

 

 当然のように、レコウが復帰する方が早く、こちらを見据える、

 

 そこに光の剣を殺到させて、僕の後隙を強引に潰す、

 

「っ、ダメか、」

「うむぅ、それじゃあ今度は我から行くかのー、」

 

 全て強引に引きちぎられる。

 殺到する剣に隙だらけ、何も考えない単純な前進、それがどうやったって止められない。

 そして、秒にも満たない隙だらけの僕に接近して、

 

「そりゃー、じゃーー、」

 

 殴られたら、果たしてもしかしたら空間魔法貫通して死ぬかも?

 まあそんな事は心配するまでもなかったか、ともかく僕は抱きつかれ、

 

「うぐぅ、相変わらず強引なのに優しいんだから、」

「ふっふっふぅっ、遊覧飛行じゃー、」

 

 空を翔ける。

 当然のようにレコウは翼もないのに空を飛び、いや空気を蹴って掴んで跳び跳ねる。

 いつものように僕を連れ、目指すは、

 

「壁の外、場外勝ち狙いか!」

「さーて、いっくじゃー、」

 

 ・・・・・・いやまあ、会場は全部僕の空間魔法の壁で覆ってるんだけど、

 だから場外負けはない、一先ずレコウが満足するまで抱えられながら、光の剣の補充でも、。

 

 いやまて、会場、そうだここにはレリアの結界もあるんだった。

 別にそれ自体は特に問題ないけど、干渉して壊さないよう色々と配慮してある。

 つまり、普通のものより強度が薄い。

 

 つまり、つまり、

 

「とりゃーー、じゃーー!!」

「ぎゃーーーっ!」

 

 壁が、絶対の空間の断絶が、あっさりと突き破られる。

 ちょっ、レコウ!? それ、外からの視界遮るスクリーンでもあるんだけど?!

 

「おーーっと、長い長い火花の硬直を終え、遂に両選手が飛び出してきましたーっ!」

「あらーぁ、まあどちらにせよ、決着はすぐにつけなきゃでしょうねえ、」

 

 観衆の目、幸いにもド派手な花火の残滓に気を取られ、まだ詳しいとこまで見られてない。

 それこそ、人型が空気を足場に空跳んでるとことか、いやまあレコウなら今さらどんな事やらかしても別にかもだけど。

 

「外じゃーーっ!」

「あーもう、こうなったら!」

 

 流石にそれ以上、天へ上がる気もないらしく、今度はゆっくりと落ちていく。

 しょうがない、こうなったら僕も腹を括ろう。

 会場を覆っていた結界を全て解除して、目指すは外。

 一度レコウを外に放り投げた後、再度今度は完全な壁作ってやる。

 

「おうおう、人間どもの顔がよく見えるのー、」

「何それ、凄い悪者みたい、」

「そうじゃのー!」

 

 ゆっくりと、僕ら二人合わせて軽いとしても、明らかに万有引力に喧嘩を売った速度で地を目指す。

 僕の方でも多少の調整は効くけど、これはレコウがわざとやってるな?

 なら乗ってあげよう、光の剣を呼び寄せて、僕らの周りに漂わせる、

 

「それじゃあ相撲といこうか、」

「おう! ・・・・・・何かは知らんがの、」

「簡単だよ、この輪から出た方が負け!」

 

 視界いっぱいを光で覆い尽くし、その内側でダンスを踊る。

 クルクルと、至近距離、もう逃げ場はない。

 

 剣で回す、くるりと楽しげにステップを踏んだレコウが、よくわからないなりに今度は僕のことを回して外へ置く。

 回避不能、僕が一手を打つ前に、レコウは十手くらい打ててしまう、後出しの絶対行動。

 

 ならどうするか、単純だ、僕がレコウの十倍の一手を打てばいい。

 

「くるっと、」

「おー、くるくる〜、——っと! 危ない、外に出ちゃうとこだったじゃ、」

 

 これは相撲だからね、レコウが十手で詰めた距離を、一手でひっくり返して線の外へ、

 それでも圧倒的に手数の多いレコウには、簡単に戻る猶予を与えてしまうが、そうしたらまた一手で今度は逆へ。

 

「ぐるぐるぐむーっ、すもーとは、なかなか難しいじゃ、」

「そうだね、ほら今度はこっち、」

 

 クラクラ手を取り合って、今度は上下。

 あ、そういや転んじゃダメってルール伝えてないな、まあいいか。

 縦に一回転させてもそのまま元の姿勢に戻っちゃうし、転ばせるのとか外に押し出すより無理げー? だ。

 そもそも一応落下中だし。

 

「ふむふむうむーっ、でもだんだん、わかってきたじゃ!」

「それは楽しそう、ほら、ばっちこーい、」

 

 レコウが攻める。

 十手の攻めを、一手で返して、そして反撃の暇はない。

 それでもそこから勝てる可能性があるのが、ルールのある競技の面白いところだ。

 

 くるぐると、お互い思う存分周りあって、

 目を回して、足を廻して、最後に立っていたのは。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふう、流石に疲れた、」

「楽しかったじゃーー!」

 

 レコウが、高い位置に立って僕を見下ろしている。

 長くて一瞬だった楽しい時間は遂に終わりを告げて、僕は地面に足をつける。

 

 低く、敗者に相応しい地の底。

 光の中から追い出され、誰が見たって明らかな勝敗。

 

「おめでとう。相撲はレコウの勝ちだよ、」

「やったーじゃーー!」

 

 まあ、いくら僕の方が手馴れていても、ドラゴンに相撲で勝つとか無謀だ。というか僕も別に、こんなこと初めてやったし。

 だからまあ、この結果は、想定通りかな。

 

 ちょっと、悔しいけど。

 

 

 

「それで、レコウ。楽しんでくれた?」

「おう! もちろんじゃ!!」

 

 あはは、ならこのお祭りは大成功だ、僕も頑張った甲斐はあるよ。

 

「良かったね。それじゃあ、この先のお祭りも引き続き楽しんで、」

「うむ。セシィも、」

「うん。僕もまだ試合があるからね、そこで見ててよ、」

「もちろん・・・・・・・・・・・・じゃ?」

 

 試合を終えて、光の剣が晴れていく。

 そこに残ったのは、地に伏したものと、未だ無傷で上に立ち尽くしているもの。

 どの観客が見たって、勝敗はわかってしまうだろう。

 

「・・・・・・あー、えっとー、これはー、試合としてどうなんでしょうか、」

「そんなもの、見ればわかるでしょう? レコウちゃんには悪いけど、決着よ、」

 

 ゆっくりと、立ち上がる。

 まあなんやかんや僕も無傷だしね、ブーイングあるかな?

 

「・・・・・・・・・・・・あれ、ここ、もしかして、観客席・・・・・・、じゃ??」

 

 ふう、ここに来るまで大変だった。

 光で視界を封じで、匂いや音も違和感がないよう偽装して、

 何よりそれだけじゃ最初に閉じた方角でわかるからね、兎にも角にもぐるぐる回して投げまくって、方向感覚を狂わせる必要があった。

 

 ・・・・・・まあこの場合はどちらかというと、レコウが相撲に夢中になって本来の試合のこと忘れてたのが勝因かな?

 ともかくどちらにせよ、僕の作戦勝ちってね、

 

「うん。レコウの、場外負け、」

「じゃーーーーーー!? やられたのじゃーー!!」

 

 けっちゃーーく!!

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