魔力、魔術。
不味い、速すぎる。
なんだこれ、ほとんど力のこもってない、僕の『整理』のような手慣れた予備動作。
つまりどんな事をされるのか、
くそっ、脳の不調、言い訳だな。
完全に油断をしていた、警戒を外された、演劇、既に術中だったか。
だけどまだ、問題ない、
差し込めた、予備動作には一歩及ばずとも、次の一手は譲らない。
初手、これさえ凌げば、
「そんなに警戒なされなくて大丈夫ですよ。ただ少し、想いを馳せるだけです」
記憶、
想起、思い出、電気信号、忘れることはない消えない引き出し。
不快感、引き摺り出される、ぼくの奥、
「遠い果ての世界の、泡沫の夢。きっとアナタにも、覚えがあるはず、」
なに、これ、
なんのことを言ってるの、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なるほど、想起、演劇、そういう魔法か。
頭がぐるぐるする、吐きそう、くそっ、
なんだこれ、僕が、気持ち悪い、懐かしい?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・脳に働きかけるとは乱暴な、いや違うか。これは、一種の暗示のようなものかな。
やめろ、ら、あ、
これ、どうなる、わからない、わからないわからないわからないわからない、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、特に問題のある魔法ではない、か。
「っ、ぐ、」
「大丈夫ですか? ただ受け入れれば良いのですよ、アナタの一部なんですから。ボクは少し、お手伝いしただけだよ、」
うるさいっ、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふむ、確かに好都合か、感謝をした方がいいのかも、
うるさいうるさいっ、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかし、随分と早急なことになってしまった、こっちにも準備があるのに。
うるさいうるさいうるさいっ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあなんだ、君に悪気はないだろうけど、
「・・・・・・よくも余計なことしてくれやがったなクソ野郎、『整理』」
「————、おや、」
っ、口が悪いな、不味いか、
お。ぼくは、そんな口調、いやまあするかうん。
どうせ元なんてない、ならいいじゃないか、いやダメだ、
まったく、本当に、なんてタイミングでしてくれるんだよもう。
「ハハハ、いくら悪意がなくても、そういうの、勝手にやっちゃダメだと思うよ?」
「それは失礼いたしました、ですが、役に立ったでしょう?」
「アハっ、そうだね、じゃあお返し、」
『収納』、疲労物質。
お前は疲れてない様子だけど、それでも普通人が動いたら溜まるものだからね。
そこの彼女、魔法のお礼に、取り除いてあげるよ、
「————っ、コプっ? おや??」
「ちっ、やっぱズレるか、」
出血、目の前の誰かが口から血を流す。
一応悪意は無しで普通にやったんだけどな、やっぱり精度が落ちてる、頭がぐるぐるする、
くそっ、時間がないか。
喜ばしいことだね? いや君にしても、おれにしても、、引き継ぎ無しで渡されても困るか。
仕事でもそうだった、同僚が急になんの連絡もなくばっくれた時は、本当にどうしてくれたんだと思った。
会社が悪いとはいえ文句の一つでも、まあもう会うこともなかったんだが、
ああそう、そりゃ大変だったね、
「はぁ、はぁ、という訳でじゃあね、もう会うこともないといいな、」
「・・・・・・・・・・・・っ、キミは、もしかして、」
顔から血を流す少女を一人残して、部屋を後にする。
まああの程度、死ぬことはないだろう。流石に人が死ぬところを最後に見せるわけにはいかないからね、
いや最初か? 俺はどう思う? ってこれは日本語としておかしいな、ってあん?
まあいいや、多分大丈夫でしょ、なんかふわっとした感じで翻訳されててくれ、
ともかく暗い部屋を出る、お、僕にはともかく、じぶ、君には、ここは似合わないだろうからね、
ちっ、記憶がどのくらい残るかの検証もまだなのに、せめて手紙くらい書けばいいか、いやまだ間に合うか。
「『放出』、紙——って、これお、自分の日記じゃん、まあいいや、」
ふらふらと、倒れ込む。
光の漏れる外の近く、まあこの位置なら迷って変なところに行くこともないだろう。
日記を開く——、アレン、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、大丈夫。あっちの引き継ぎは済ませてあるし。悪いね、じぶんより優先的なんだ。
・・・・・・っと、引き継ぎといえば、あの契約もまあ、でも十分かき回したな。一応連絡送っとくか、強化して、届くかな?
よし、安心しなよ、それ以上はないから、元々二つだけ、
手紙、日本語でいいか、そもそも記憶残るなら意味ないけど。
相変わらずあまり綺麗じゃない、いや綺麗だ、少女の腕してるおかげか?
それじゃあ——にあてて、
「・・・・・・・・・・・・ふぅ。急だったけど、なんとか済んだかな?」
うん。心残りはない、
アレンのことも任せた、自分のことも済んだ。
まあなんだ、色々あったけど、無事におわっ————、
「————セシィ?」
声がする、
こんな声、おれは聞いたことがない。
当たり前だ、僕の友達だもん、
「——なに、レコウ?」
「っ、大丈夫か!? なんか顔色が悪いようじゃが、」
ああ、心配しなくてもいいのに、
むしろやっと解放された気分だよ、これでやっと夢から起きられるってね、
だから、放っといてくれ、
「わ、我がやりすぎちゃったせいか!? す、すまんっ、」
「・・・・・・・・・・・・む、そうなるのか、」
・・・・・・っ、それはだめだ。
しょうがない、頭が痛い、
あと少しだけ、君の体を借りなきゃ、ごめんね。
「違うよ。レコウとは何も関係ない、ただちょっと時間が来ただけ、」
「時間って、なんの、」
「うーん、まあ、朝?」
と、いけないいけない。
もう時間がないんだ、手早く説明しなくちゃ、
レコウには、ちゃんの全て話しておかなくちゃいけないからね。なんでなはまあ、わかんないけど。
「簡単に言うとね、僕は、夢だったんだ、」
「じゃ、じゃあ?」
「初めから見られなかった夢、終わった夢、何もない夢。それが誰かの夢のおかげで、続いて、また終わって、それで今度は僕の夢になった」
「セシィ? 何を言って、」
「僕は初めから死んでいた。んー、いや違うか、生まれてすらいなかったのかな?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
うーん、ちゃんと伝わったかな?
レコウにもお手紙、書いておけば良かったね、
「だから、それが元に戻るだけ。なにも、気に留める必要はないよ、」
見終わった夢を、一々覚えておく人なんていないでしょ?
仮に印象に残ったとしても、現実を生きている内にすっかり忘れてしまう。
そんなものさ、
「・・・・・・つまり、セシィはどうなる、んじゃ?」
「うーん、消える? というのもおかしいか、夢になる、。——まあ多分、忘れていくんじゃない? 肉体の記憶として技術くらいは残る算段だけど、」
「っ、は。え?」
うーーん?
まあ僕の様子を見れば解るでしょ?
そんな深刻なことじゃない、別に肉体的に死ぬことはないはずだよ、
なにも変わらない、レコウのことも、どうだろ。多分覚えてはいるんじゃない?
「そんなの——、、嫌じゃ! なんでそんな急に、」
「急ってほどでもないよ、最近増えてたんだ。相変わらず返事はしてくれなかったけど、自分の記憶がふらっと蘇ることがね、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・なんで、そんな、こと、」
「んーー、まあ強いていうなら、レコウのおかげ? 元々僕は逃避的な別人格に近かった存在だろうからね、だから最近楽しかったから、こうして戻ったみたいな?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「っ、我の、、せい?」
「多分ね。だからありがとう、レコウ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・セシィは、それで、いいのかじゃ、」
「なにが?」
「そんな、勝手に、死ぬだなんて、」
「死ぬって、大袈裟だな。ただちょっと中身が変わるだけ、どうせ僕は何でもなかったんだから、ちょっとイメチェー、気分が変わる程度だよ、」
「そんなわけないじゃろ! 中身が変わるって、我のことは、」
「あー、うん。まあ他人にはなるだろうけど。でも良かったら目覚めの挨拶くらいはしてくれたら嬉しいな。きっと可愛いドラゴンに起こされるなんて、彼にとっても楽しい夢の始めになるだろうから」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「嫌だ、そんな、知らない誰かのために、」
「うーん、そりゃそうか、しょうがない、」
「セシィがいなくなるなんて、絶対嫌じゃ!! なんとかならないのか!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
「そんなこと言われても、これは自然なことなんだよ、レコウ。ようやく僕が夢の見られる普通の人間に戻るだけ。ちょっと紆余曲折というか、まあいろいろ特殊なことはあったけどさ、」
「僕は所詮、ただ生きるために体を動かしてた、夢も見れないただの残骸。生きてすらない。それが、無事に夢の見られる誰かにこうして全部返せるんだから、祝福されることだよ、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「わかってくれた?」
「ああわかった、なるほど、つまりそういうことだな、」
「うん。いや本当にね、急で悪いとは思うんだけど、でも早いことはいいことだからさ、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。
・・・・・・・・・・・・うん、よかった、
「つまり、そいつを殺せば、またセシィが帰ってくるってことで、いいんじゃな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、本気?」
「ああ。安心しろ、体さえ無事ならいいんじゃろ? なら、得意じゃ、」
「・・・・・・やめてよ、なんでレコウがそんな事するの。レコウには関係ないじゃん、」
「そんなわけないじゃろ! 我にとってはセシィはたった一人の親友なんじゃぞ!?」
「——っ、僕もだよ! でも彼にはそんなの関係ないの、だからもう、放っといてよ!!」
「知らん! なんで我がそんな人の体を奪うような奴を尊重しなきゃいけないんじゃ!!」
「やめてよっ! やめて、。——違うの、君は、そんな人じゃないの。僕にとって大切な、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、、、、
「・・・・・・・・・・・・なら、そいつも、こんな事、望んでないじゃろ、」
「・・・・・・・・・・・・わかんないじゃん。君は、なにも、答えてくれないんだよ?」
「だとしても、」
「でもね! 最近やっと少しだけ思い出してきたてたんだよ! ようやく、僕は、僕の存在理由を、僕は生きてていいって、」
「っ、ならなんで、そんな。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・なんで、だって?
・・・・・・それを、レコウが、聞いちゃうんだ、
あーあ、
「だって、僕はもう、十分幸せだったから、」
「・・・・・・・・・・・・、」
「僕は、もう、十分満喫した。あの時死んでたはずだった少女が、ここまで生きられた。なら、それで、いいじゃん、」
「・・・・・・・・・・・・言いたいことはそれだけか? なら、我は、普通にそいつを殺すぞ、」
「やめろ、」
「セシィが我の言うこと聞いてくれないんじゃからな、我が言うこと聞く理由もなーし、じゃ。」
「やめて、」
「どうするんじゃ? まあ我はどっちでもいいぞ。どうせ、する事に変わりはないからの、」
「僕は、」
目が合う。
至近距離、
ただじっと見つめ合うだけ。
レコウが少し本気になれば、僕なんて一瞬で何もできずに組み伏せられちゃうような距離。
君の安全を考えるなら、レコウは、
今、ここで、
『』