IS インフィニット・ストラトス 3番目の兵器と呼ばれた少女   作:DON-KAME

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つい衝動で書いてしまいました・・・
反省はしている、だが後悔はしていない。

プロット有り、だが時間がない。
こんな絶望的な状態で始めてしまいましたが、皆様の暇つぶしにでもなれれば幸いです。


プロローグ これまでの流れ

 空を切る音とともに振り抜かれた拳、まともに受ければ歯の一本は折られるほどの破壊力を持っているが、訓練されたその少女に取っては避けるのは容易い。

体をずらすように避けた自分は、残った力を振り絞って拳を繰り出した男の右腕の二の腕に躊躇することなくナイフを突き刺す。

「右腕もらったぞ」

 

ナイフを腕に刺された男は痛みを食いしばり、壁に背を預ける形でその場に座り込む。

渾身の一撃を避けられた男にはすでに勝機はない。

 

満身創痍の男の目線に合わせるように腰を落とした無傷の少女は、太ももに装着されたもう一本のナイフを男の首に沿わせた。

男が少しでも変な素振りを見せればその頸動脈をいつでも切り刻むことができる。人を殺すということに疑問を感じないならなおさらだ。

 

「もう一度聞くぞクソッタレのテロリスト野郎、次の狙いはなんだ?」

男は黙りを決めようと今にも情報を吐いてしまいそうな口を震えながらも、必死に塞ごうと勇気を振り絞っているかのように見える。

 

だが、ふと前を見ると目の前に並ぶ二つの深海のような深い蒼の色をした目がそこにあった。

 

恐怖

これまで多くの目を見てきた彼でも見たことのないような、深い 計り知れない 光沢を失った 獲物を狩らんとする猛獣のような鋭さと、焦点の合っていないような そんな少女の目に吸い込まれるような恐怖を感じた。

恐怖に飲まれそうになった彼が下した決断はすぐに下された。

 

「言う、言うから命だけは助けてくれ」

 

少女の目から鋭さが薄らぎ、代わりに舐めるように、また同時に楽しむような雰囲気を持ち始めた。

 

「テメエらの次の標的は・・・何だ」

少女は男の耳元で同じことを聞き、男は部屋に転がってぴくりとも動かない男達にも聞こえないような小声で同じように耳元で答えた。

 

「———————・・・」

 

「本当だな?」

 

「・・・神に誓って」

 

首筋に当てられた大きなナイフは元の場所に戻されたのを見て、男は安堵する。

次に考えたのはこれからのこと、どこの隠れ家を使うか、どうやって国境を越えるか、滞在期間は———

 

「Sun,What does he say?」

 

「Yeah Yeah・・・ I"ll say latter」

 

「OK. Odd,Mark burn out.」

 

「「Yes sir.」」

最新の装備に身を包み、信頼性に満ちた銃を持った白人達、それと少女。突入してから10秒もかからず6人の護衛を全滅させるほどの技術をもっている。男の仲間を一瞬で皆殺しにした男達がどこからともなく取り出したポリタンクで何かを部屋中に撒き始めたではないか。

 

部屋に特異臭が満ち始め、ガソリンが充満しているという警告に気が付く男。彼は思わず疑問を口にしようと腰を上げようとする。

だが、躊躇なく男の眉間に弾丸が叩き込まれ、頭の中身を後ろの壁にこびりつかせる。

ホルスターに拳銃を戻した少女は死体に向けて吐き捨てるかの様に言った。

「何百人も人殺しているテロリスト風情が、仲間売っておきながら助かろうだ? ざけんな」

 

ガソリンを巻き終えた2人の男が少女の言葉に苦笑しながら、少女と隊長の元へと戻ってくる。

 

「サンが不機嫌だ、怖えっす」

と1人がわざとらしい怯える素振りを見せた。

20代後半のまだ若い力を感じさせる顔つきをしている。首筋まで伸びた金髪を一つの纏めてはいるものの、ひげは若干伸び気味、だがそれがまたユーモラスな性格を際立たせているのだ。

 

そんな彼の動作に軽く笑った隊長が仕上げのために確認を始めた。

「Odd、爆薬のセットは」

 

オッドと呼ばれた30代前半の、黒のフリースキャップとサングラスのような黒いアイウェアを身につけた男が返事をする。

「完了しています」

 

「よし、完璧だ。 撤収するぞ」

 

 

 

「・・・uh」

転がっている男の1人がうめき声を上げる。

 

だが,

Sunと呼ばれたその少女は素早く拳銃を抜き、その転がっている男の頭部に数発を撃つ、躊躇無しに。

男の頭から血が飛び散り、他の転がっている男達同様に動かなくなった。

 

「おいおいSun、どうせ爆破で死ぬんだ。 弾もったいないぞ」

Oddと呼ばれた男があきれたような口調で行ってくるが、少女はギラギラとした目で言った。

 

「こいつらはちょっと油断しただけでヤバい一発を喰らわせてくる。コレくらいがちょうど良いんだよ。 それにさっき、油断するなっつたのはそっちだろ」

 

男達は血の気の多い少女に軽いため息をついた。

 

 

 

外は草木が一つもないような、埃っぽく乾燥した日差しのきつい砂漠であった。

 

4つの人影が見つからないようにネットを被せて止めておいたバギーにたどり着くと早速水を飲み始める。先ほどまでの切れるような感じではなくどこにでもいそうな明るアットホームな雰囲気だ。その会話の内容は物騒この上ないものではあるが。

 

「そろそろこの辺にしておこう。Mark、お前はもう少しSunを見習って近接戦闘の訓練に励め、いいな。 Odd やれ」

 

「了解」

男が信管を作動させる。

一瞬の輝きの後、300メートルほど離れた場所にある一つの家が文字通り消えてなくなった、その上にそびえ立つ小さなキノコ雲が爆破の威力を物語っている。

 

「ワァーオ、コイツはぶっ飛んだぞ」

 

「弾薬庫に誘爆させたからな、IEDの原料ごと」

 

「よし、諸君よくやった。これで世界はまた一歩平和に近づいたぞ」

 

ふと、隊長が気が付いたように聞く。

「そうだ、Sun。ヤツらの目標は分かったのか?」

 

「ああ、薄々分かってはいたけどよ・・・」

後部座席に座っているMarkが膝の上に置いておいた手を軽く浮かせ、焦らすなと言ってくる。

 

軽くため息をつきながら彼女は言った

 

「イチカ オリムラ だ。 あの日本人のガキ。」

 

全員がため息をつく。

これで3件目だ

 

疲れきったような空気の中、Markが口を開いた。

「それじゃあ、次の目的地はジャパンですか」

 

「こちらテルマーsix-two、ホテル、over?———任務完了、これより帰還する。 Mark、詳細は帰還してからだ。 Odd、出せ」

Oddの運転の下、バギーが猛々しいエンジン音を響かせて動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イチカ オリムラ

世界で唯一「インフィニット・ストラトス」(通称「IS」)を動かすことのできる()

まさに、世界に1人だけってやつだ。

 

当然世界中のテロリスト、いや、世界中の男性がその存在に大きく注目している。

拉致して洗脳、そして兵力にするも良し。

神経の一つ一つを解析して未来の発展に利用するも良し。

男性の地位復活のためのキャンペーンに利用するも良し。

そして、この男を餌にしてテロリストを狩っていくのもまた良し。

 

多くのテロリストに標的にされた少年を考える少女は、どうもこのとき嫌な予感がしていた。

 

 

 

 

 

———10日後

 

3月20日 21:02 日本

 

目標がイチカ オリムラなら当然狙うのは2つにしぼられる。

一つは本人、だがこの国(日本)の警察や政府の人間が護ってくれているらしいのでまだ良いのだが問題と言えば二つ目、そう、彼の専用機となるISを狙うケースだ。当然ISを狙うとなれば相手もISを出して来ないとは限らない。だが専守防衛に勤めている日本にこのような場合に対処することができるISが実質いないといっても良い。

 

だからこそ、実績と安心の自分たちが呼ばれたのだ。

「ッチ、チャイルドソルジャーかよ・・・」

準備に追われる中、私を見る周りの眼は白いものだった。それもしょうがない。こいつらはチャイルドソルジャーに対して良い思い出が無いに違いない。

爆弾を抱えて車列に突っ込まれ、引き金を引くのを躊躇ったコンマ一秒が、昨日まで親しかった友人を少年、少女兵に殺される原因になっちまったんだから。

 

対してやることも無く、かといって周りを見渡せば無機質な装甲車や重機関銃の装着された車両ばかり。

欠伸を堪え、無線機能を搭載したイヤーマフで曲を流そうとしたその時だった。

『サン、調子はどうだ』

「ん?ああ、ばっちり」

イヤーマフに接続した音楽プレイヤーを操作する手を止め、指揮車型であるボクサー装輪装甲車の上に寝そべり、足をぶらつかせながら無線に応答する。

『そうか、新たな連絡を待て。アウト』

初春のためかまだ肌寒い。そしてこの国らしく湿っぽい感じもする。まあ、中東の砂埃に比べればまだマシかもしれねえけど。

 

周りで慌ただしく動き回る大人達、戦域情報処理用のタブレット端末を確認しているヤツもいれば5.56ミリ軍用弾の弾倉が顔をのぞかせるベストを着込んだ野郎なんかもいる。対して私の格好と言えばダイビングスーツのような、シャチの色をモチーフにしたデザインのISスーツを着込み、その上にその格好でうろつくなと隊長に言われて渡されたLLサイズのタクティカルジャケットを羽織っているというものだ。

 

その肝心の隊長は装甲車の装甲一枚を挟んだ場所で、各部隊の確認を取っているってわけだ。さっきの通信は”ついで”に確認を取られたとも言える。

 

睡魔を追い払うかのように、90年代のロックを流し始める。

 

—————

 

———

 

 

 

トラックに積まれたコンテナの中には一機のISが佇んでいる。

ただそこにあるだけというのにその美しいフォルムは立っているだけでさながら美術品のような雰囲気を感じさせる。

トラックの周囲にはまだ出発前なのか人1人おらず、文字通り無防備な状態だ。その気になればトラックを奪うことも容易い。

だが、例えトラックを奪ってもすぐに場所を特定され奪還されるのは考えるまでもなく、そんなバカなことをしでかすのはイカれたやつくらいであろう。

 

1人の女が暗闇の中から現れた。迷いのないその歩みはトラックへと向けられている。

 

だが女は気が付いていない。

トラックの決して見つけることのできない場所には数えるのも馬鹿らしくなるほどの爆薬、700メートル先のビルとビルの間を通して対物ライフルを構える狙撃手、遥か彼方に偽装されたミサイルコンテナの口を開き空を仰ぐ地対地ミサイル群、歩兵携帯型対戦車ミサイル「ジャヴェリン」と歩兵携帯型対ISミサイル「クレイモア」の存在を。

そのトラックを目標にした時点で、狙うものはキルゾーンへ突入してしまっているのだ。

 

兵士は念には念を入れ、無線を閉鎖している。

すべては爆薬を起爆させる隊長の指示を待ち、獲物を今か今かと待ち構えているのだ。

 

 

女は無防備に見えるトラックに近づくにつれ、口をゆがめ笑う。

たいしたことない、所詮は日本(平和ボケの国)だと。自らが既に狩り場に入り込んでいることに気付きもせずに。

 

トラックの後ろに到着した女は、躊躇することなくコンテナを開く。

 

「ッハッハッハ。 Booomb」

女の様子を双眼鏡で監視していた隊長は軽く笑いながら信管を起動させる。

一瞬輝き、文字通り桁違いの量の爆薬が化学反応と共に爆発、周囲を文字通り更地にせんと言わんばかりの破壊力で衝撃波が生じるほどだ。

 

『全部隊へ、状況を知らせろ』

 

『こちらフォックストロット、ターゲットは健在 繰り返す、ターゲットは健在 ISを展開している!!』

 

隊長は動揺することなく指示を出す。

『アーロンよりベケット、チャップリン、攻撃を開始しやつを牽制、その場に釘付けにしろ。』

 

『『Yes sir!!』』

クモのような8本のアームを持つISに身を包んだ女はその場に佇んでいた。

同時に、彼女が手に入れようとしていたISは爆発を物ともせずに・・・とはいかず、遥か彼方へと吹き飛んでいってしまった。

 

女は額に青筋を立てて体をふるわせた。

だが、兵士達は動く事なく震える彼女に容赦はしない。

 

四方八方から迫り来るミサイル群、中には当然対ISミサイルも含まれているため一発でも受ければひとたまりもない。

・・・はずだった。

 

8本のアームに展開されたマシンガン、つまり8門は8方に対処することができるため、全てが迎撃されてしまう。

 

『こちらベケット、目標に命中を確認できず!』 『こちらチャップリン、すべて迎撃されました』

 

だが、それでも隊長は表情を変えない。

『フォックストロットよりエコーへ、プランBを決行せよ。 ベケット、チャップリン、そのまま撤退しつつ攻撃を続行。グリーンゾーンまで行け。 Shine、着弾と同時に突撃を決行せよ』

 

『エコー了解、これより攻撃を開始する』

 

『Shine了解』

 

遥か彼方にある部隊は無駄のない動きで偽装ネットを取り払い、即座に発射できる姿勢であったため命令を受けてすぐさま地対地ミサイルを惜しげもなく全弾発射した。

そのミサイルの発射時に生じたバックブラストで、昼のようにそこが明るくなったほどだ。

 

空には数えるのも馬鹿らしい数の輝きが空を飛んでいる、その行き先はISを展開した女。

これまでの常識からするとやり過ぎと言えるほどまでの攻撃も、ISを相手取るにはまだ足りないとも言える。

なお、着弾地点の周辺には住宅地が無く、さらに最寄の市町村からも離れているためにこうして心置きなくミサイルを撃てるのだ。それに国連及び日本政府からも正式に許可が与えられているためにクレームが来てもあしらうことができる。

もっとも、彼らの所属する民間軍事企業には国連に認められている数多くの特権があるために、世界中のどこでも現場に合わせての作戦行動も可能でもあるので、いちいち現地政府及び国連からの許可を求めずとも行動は可能であった。だが、あくまでひとつのサービス業を扱う会社でもあるため、そのようなところは可能な限り丁寧に対応をするのが彼らの所属する企業らしいとも言える。

 

エコーからの無線が入る。

『着弾に備えよ 

 

 

 

 

 

 

 

 

shit!全弾迎撃された!!』

 

女がいたであろうコンクリート製の道路は絶え間なく襲いかかる強烈な爆風によって本来の姿である地面と化していた。しかも、女は最初から一歩も動く事なくその場にいた。

 

兵士達は戦慄する。

女のISは8本のアームから発射したマシンガンで、全てのミサイルの信管を正確に撃抜くことで迎撃をしたのだ。

一機のISで軍を、数機のISで国を相手にできる。

ISを使用されれば、男性はものの3時間で女性に制圧される。

その言葉に偽りはないのだと、これだけの兵器を以てしてでもやつにはかすり傷程度しか与えられないのだと。

『ISにはISでしか・・・」

思わず無線でつぶやかれた疑問はすぐに答えられた。

 

これから自分を骨一つのこさず吹き飛ばそうとした兵士達をどう殺さずに痛めつけ、どう絶望させるかを考えていた女は思わず油断していた。周辺にはISの反応がない。こうしてミサイルの雨を降らせることしか能のない男共しかいないのだと。

だから気が付かなかった、ステルスモードをオンにして、息を潜めていた一機のISが、弾丸のようにこちらへ突っ込んでくることに。

 

一機のISが女に突っ込んだのと、女が危機を感じたのはほぼ同時。

時速200キロのショルダータックルを受けた女のISはくの字に体を曲げ吹き飛ばされ、先ほど吹き飛ばされた辛うじて原型を留めるトラックの残骸へと突っ込んだ。

むき出しの地面からは衝撃によってもうもうと土煙が立ちこめ吹き飛ばされた女の姿を隠す。

 

『フォックストロットより全部隊へ、撤退しろ。 あとはShienが引き受ける』

 

遥か遠くで双眼鏡を構えていた隊長はため息をつく。

やはり、彼女とISを使うしかないのだと。

自分たちのあの泥臭い戦いを繰り広げていた時代は本当に過ぎ去ってしまったのだ、と。

その瞳は悲しげに閉じられた。

 

『フォックストロットよりShineへ、死なない程度に叩き潰しとけ。以上』

『こちらShine、了解した! 全力を持って目標を捕獲する!!』

 

吹き飛ばされた女は軽い脳震盪に耐え、今下された命令である撤退をしようとした。

土煙に姿を隠されている今なら逃げるのは容易い。

 

即座にPICで浮遊し、イグニッションブーストで急加速。戦域を抜けようとしたのだが・・・

 

「どこ逃げようってんだ クモ野郎!」

先ほど突っ込んできたISに足を掴まれ、そのまま地面へと引きづり降ろされてしまう。

 

「2段イグニッションブースト!!」

Shineとコードネームで呼ばれたISは自分が踏みつけているクモのようなISに向け、コールしたIS用ショットガン「ISM450 ラリサ」の引き金を引く。それもほぼ零距離から。

蜘蛛型のISはショットガンの攻撃に耐えつつも8本のアームを近接戦闘用に変更し、自分を足で踏みつけている相手を囲むように刺さんとするも、すぐに上空へと避けられてしまった。

 

そのISは暗く、また動き回っているせいでよく見えないがこれまで見たことのないような機体だ。

全体的に灰色の印象を感じさせ、普通なら見える操縦者も全身装甲のため見ることができない。ヘルメットのこめかみの両側から前でつながっている部分まで続くラインが不気味にぼんやりと赤く光る。

 

「ッざけやガって!」

無線からは撤退をするよう言ってくるが、ただでさえ作戦が破綻し、挙げ句の果てには踏みつけられたことでプライドが傷つけられ、頭に血が上った彼女の耳には届いていない。

 

「調子に乗りやがってよぉ・・・野郎ぶっ殺してやらぁ」

 

8本のアームからマシンガンの弾幕を張り当てようとするも、3次元的、且つ予測不可能な素早い動きで避ける相手にはかする程度しか当たらない。

 

そのひらりひらりとかわす様子にさらにヒートアップしそうになるも、彼女も素人ではない。深呼吸とともに冷静になり撤退の判断を下す。

このような場所でプライド云々言っていては元も子もない。それに、こいつは避けるばかりで攻撃を控えている。時間を稼いで無駄玉を撃たせ、抵抗力をなくしてから増援を呼んでこっちを押さえつけるつもりなのだろう。

こいつらにISがあると分かっただけで儲け物だ。

 

 

「ッハ! お前、名前は」

射撃の手を止め、回避を続けていた相手に突然名前を聞く。

 

「Ms.Xだクソ野郎」

まじめに答える気のないコードネームShineはおちょくるように言う。だが、すでに冷静になった女に挑発はすでに効かない。

 

「『オータム』だ! いつかてめえを八つ裂きにするヤツの名前だ。 覚えておけ・・・」

血も凍るような低く、あらん限りの殺意を含んだ声でそう言うと、射撃を再会・・・すると見せかけてイグニッションブーストで戦域離脱を謀る女。

 

フェイントに引っかかってしまったShineは即座にその後を追おうとする。だが、行動は先読みされてしまっていた。

慌てて追おうとしたがために、動きが直線的になってしまっていたのだ。

そこを狙ったのか、アームを後ろ向きにした相手の一斉掃射をモロに受けてしまい、イグニッションブーストをするタイミングが僅かに遅れる。

イグニッションブーストは時速に換算すると軽く百キロは越える速度。

その一瞬は女がもう手の届かない場所まで行かせるには十分すぎる時間であった・・・

 

たった数分、いやもっと短いかもしれない。

これだけの戦闘だが、得られたものは大きい。

 

「・・・ファック!」

遠ざかっていく敵のブースとの輝きを、フルフェイス状マスクの赤い輝きは睨みつけるように見つめる。

 

———オータム か。 ・・・お前なら、殺せるか?

 

 

『汚い言葉を使うなSun、ほら、さっさと戻ってこい』

隊長の指示に従いShineというコードネームとSunという名前でよばれたその少女は自分に対する怒りと、仲間が懸命に戦ったのにも関わらず作戦を失敗に終わらせてしまったという申し訳のない、複雑な気持ちでたった数秒の加速で遠ざかったいた仲間の元へと戻っていく。

 

 

 

 

 

———2日前

 

薄暗いブリーフィングルームには空中投影ディスプレイが浮かんでいる。

そこには作戦に関する情報が見やすいように表示されている。

 

作戦地域の風土、建物の構造、作戦目標、参加人数、想定される敵の情報・・・

 

 

「つうわけだ。俺たちはイチカ オリムラがいるIS学園の警備をすることとなった」

 

イチカ オリムラがいる限り、テロリスト達からの接触はあるに違いない。ならば、その日本人の少年を餌にし獲物を狩り場に誘い込めば良いだけの話だ。IS学園へ入るにはまず厳重なセキュリティと四方を囲む湖という自然のセキュリティを抜ける必要があるので、たどり着けるのはかなりの大物に違いない。

学園に入ろうとし、湖に面した街で手を拱くであろう雑魚は別の部隊が”狩り”をする。もちろん、表の世界には知られないようにしてだ。

 

 

 

即座にMarkが食いつく。

「隊長それ本当ですか!?あそこってカワイ子ちゃんの花園ですよッ!!」

 

ブリーフィング室の何人かが呆れと同時に、彼の一言に同感する。

IS学園は世界で一つしかないとある分野を扱う学園であるだけあって、世界中から志の高い少女(・・)が集まってくる。それに、その学力の高さより皆優秀だ。

そしてなによりも、皆美人ということもある。

 

「安心しろMark、てめえなんか見られただけで逃げられちまうさ」

と、190センチはあろうアイスランド系の大男がからかう。

皆からはDJと呼ばれており、なんでもこの仕事を始める前はDJをやっていたらしい。まさに、文字通りだ。

それが今では、このチームでは屈指の爆薬の使い手である。

 

「おいDJ、型だけが取り柄の酔っぱらいアイスランド人には言われたくねえよ」

と、Markが返すも別に本気ではない。皆長い付き合いだからこそこういうことを言い合えるのだ。

「ロンドンのスモッグ恋しくなって頭逝かれたのかと思ってよ」

 

だが、そんなやり取りはお構いなしに隊長は続ける。

 

「ブリーフィングはまだ続いているぞお前ら。やるなら後でやれ。 メンバーは俺たちと第7対テロリスト駆逐小隊を連れて行く。 Sun、お前は学園に現地入りしてイチカ オリムラを監視しろ。 ひょっとしたらやつらからのコンタクトがあるかもしれない。貴重な餌だ、死なせるなよ」

 

「Yes sir.」

 

「さてここからは別の話だ、連れて行くのは20人、学園の警備は5人だけだ・・・そのうち1人はすでに俺が入っているから実質は4人、あとは勝手にお前らが決めておけ」

 

「ああ、ええっと・・・隊長それずるくないっすか」

 

「常識的に考えろSledgehammer、隊長である私が現地入りするのは当然だ。 それよりも残ったポストを早く決めておけ、それ以上文句言うとロリコンハンマーと呼ぶぞ」

 

「待ってくださいよ、俺はそんなつもりで———」

 

 

ブリーフィングルームのイスにもたれかかり笑い声の絶えないブリーフィング室で思考に耽る少女がいた。

 

この間ISに乗っていたあの少女だ。

年はまだ子供らしさの残る16歳になろうという辺りなのだが、頬に傷跡が残っている。

ブロンドのセミロングの髪を乱れるのを気にせずワシャワシャとし始めた。

 

深海のような、蒼色の目はどこか悲しげだ。

 

 

 

学園か・・・

 

どうもああいう場所は苦手だ、友達と仲良くし、バカやって、恋愛して・・・絆を深め合って

 

 

———俺たちは、チームだ。互いを信頼し合い家族だと思え!良いな!?

 

 

———危なかったな、大丈夫か。ほら、手を掴め。 よし良いぞ。

 

 

———お前、好きなヤツとかいるのか?

 

 

———誰か、誰か助け、来るなてめえら。 こっちに来るな!撃つぞ!!

 

 

———どうして?

 

 

———ふん、所詮は作られた兵器、いや(チャイルドソルジャー)

 

 

———なにやってるんだてめえ 

 

 

———どうしてかって?正解平和のため、さ。

 

 

———Sun・・・お前はまだ若い。命を大事にするんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———生きろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ックソ!

・・・嫌なこと思い出しちまった

 

 

「———だ。いいな、解散。 便のチケットは出発前に配るから荷造りだけやっておけ。 今回は長くなるぞ。

それとSun、後で来い。制服のサイズを合わせる、ちなみに改造は良いらしいからお前の好きなようにして良いぞ」

 

彼女はあわてて返事をしようとしたのだが、ふととある人物2人が思い出され冷や汗が流れ始めた。

「・・・隊長、ところでRoseとカマ野郎は?なんか見当たらねえんだけど」

 

「喜べ、あいつらはコーディネートしてやるってコーディネートルームに籠りっぱなしでいる。張り切っていたぞ」

 

「だぁああああああちっきしょぉおお!!」

 

悲鳴はそれをみていた隊員達の笑い声にかき消された・・・

 

 

 

 

———現在 

 

日は既に落ちかけており、美しいオレンジ色の空が広がっていた。

 

目の前にはIS学園がそびえ立っている。

その広さはこれまで見たことのある最も大きい軍事基地に値するほどであり、呆気にとられそうになりそうだ。

そしてなによりも・・・迷いそうであり、ターゲットを監視するのに苦労しそうなことに軽い目眩を覚える。

 

バンには私と隊長、「第4回:最強は誰だ!?グランプリ」(上位四人にはIS学園警備のポスト)の4人の勝者、運転手としてこの学園の事務員が乗っており、軽い最終確認をしている最中だ。

とは言っても、ほとんどは軽い雑談程度の内容とも言える。やれ、日常品はどこで買う、やれ、汚い言葉は可能な限り使うな。

 

分かっている。

 

だが、確かに「友達作り」には若干の不安があるんだよな。

これまで過ごしてきたのは緑に同年代の若者がたくさんいる空間とは程遠い、硝煙と血に塗れた世界だったからだ。

 

「そろそろ着きますよ、皆さん。とは言っても降りるのはお嬢さんだけですよね」

流暢な英語、IS学園に勤める以上国際的言語である英語は当然話せなければならないのだ。もっとも、優秀な学園の生徒達の大概は現地の言葉である日本語でコミュニケーションをしているらしい。

 

運転手の声に反応し隊長は短く返事をする。

私は寮で自分の部屋を確認するために降りる。他の5人は自分たちの寝床の確認、どうやら職員の寮の空き部屋に泊まることになっているらしい。

 

私はというと、あくまで一般の生徒として編入することもあり、一般の生徒と共に過ごさなければならない。

むしろそっちの方が護衛対象である「イチカ オリムラ」と距離が近いため、緊急事態などに関しては都合が良いともいえるんだけどな。

もっとも、その緊急事態は教員や世界各地で戦ってきた歴戦の5人にとっては些細なトラブルに過ぎないのだが。

 

それに今回の任務は単に護衛だけではない。

たった今首にネックレスとして掛けられているこいつ。銀の銃弾として待機している「ピースメーカー」の試験パイロットとしても、条件の良いIS学園に入学することでもある。

IS学園には世界各国のISが集まるため、それらの情報収集と共に様々な条件の元で多くの実戦データも集められるし、この学園内では無償(血税)でISのメンテナンスや調整をすることができる。

まさに、IS関係にとっては聖地と言っても良いほどの場所だ。

 

だが、保護者のような存在でもあるチームの皆が、自分に学園という空間で少しでも若さを感じて欲しいという願いも含まれているってのは薄々気付いている。

 

全く、本当に余計なお世話だ。

こんな兵器として育てられた自分に、いつ本部の命令に従って自分たちを殺すかもしれない自分に、そんな優しさを持つだなんて・・・

本当に、最高に、優しくてお人好しな仲間達だ。

 

 

「着きましたよ」

 

バンのスライドを開け、出て行こうとする私に肩を置く隊長。

「・・・頑張ってこい」

 

「楽しんでこい」

 

「気をつけてな」

 

「イチカオリムラには気をつけろ、コイツのプロフィールを見る限り ってOdd!オレの前に出るな」

 

「・・・・・」

 

どれに反応すれば良いか分からないが・・・私はできる限りの笑顔を見せた。

「ああ、行ってくる!」

 

 

 

バンが閉められ、Sunはボストンバックと装備の詰まったケースを担いで寮の入り口へと入っていく・・・

その表情は見ることができないが、おそらく清々しい表情をしているだろう。

 

バンが発進し少しすると、グレネーダー担当、イギリス人のMarkによって沈黙が破られた。

 

「はぁー・・・これが親の気持ちってやつか」

その顔は何かをやりきったような、そしてどこか寂しげな表情だ。

 

ライフルマン兼狙撃手のイタリア人であるエコーが苦笑する。

「うまくやれるか、アイツ」

 

爆破物処理担当、東洋人の色黒のOddはどこか確信したような表情で、Sunと共に過ごしたこれまでを思い出していた。

「まあ、アイツに任せよう、きっとうまくやっていくさ」

 

情報処理担当の日本人であるTanakaは相変わらず目を覚まそうとしない。

 

「大丈夫ですよ、うちの生徒は皆良い子たちですので」

運転手の声に皆が安堵の気持ちを強くする。

 

 

1人を除いて

 

そう、隊長だ。

どこかいろいろと不安そうな表情で苦笑いをする。

「おいお前ら。気付いてないのか・・・ありゃあ、”狩り”の時の笑い方だったぞ・・・」

 

「What!?」

 

遠のいて行く寮を振り返り、男達はこれから先に憂いを感じ始めていた。

 

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