IS インフィニット・ストラトス 3番目の兵器と呼ばれた少女   作:DON-KAME

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自分の文章力の低さに涙が・・・
アドバイスや改善すべき点などがございましたら、ご指摘御願いします。
また、書き方などの改善点も教えていただければ幸いです。



第1話 あのベッドを一緒に使うのはどうだ

寮の事務所へ来た私は、窓口の呼び出しボタンを押す。

 

静かな空間。生徒の話し声が優しく廊下の向こうから響いている。

そんな穏やかな雰囲気にどこか、懐かしさと若干の不安を覚えてしまい、そわそわしそうになるのをなんとか堪える。

 

少しして呼び出しを聞きつけた職員が窓口にきた。

20代後半の柔らかい雰囲気の女性、日本人らしい。

 

受付で軽い挨拶を交わした後、割り当てられた部屋の番号とその部屋はどこにあるのかということと、注意事項などの簡単な説明を受ける。

 

とっくに頭の中に入っている情報だが、決してもう知っているような素振りは見せない。

知っている情報は寮だけではない、この学園の敷地全体の地形から構造、狙撃ポイント、アンブッシュポイント・・・全てを頭の中に叩き込んでいる。

 

それでも相手の好意を無駄にしないべく、初めて聞くような素振りをする。

いくら言葉遣いが荒くとも人との接し方は荒くはない。

むしろ、仲間に背中を預けなければならないような状況下で生きてきた彼女は義理堅い性格なのだ。

 

説明を聞き終わった私はその職員に礼を言い、上へと向かう。

 

—————

 

———

 

 

 

「えぇっと、確かこの辺に・・・お、あったあった。 ここだなぁ」

部屋を探している間は新顔であるためじろじろ見られると思っていたんだが、今日はまだ学校が始まってから初日。新顔が混ざっていても今日見た新顔の中にまたひとり追加されるだけ。

 

とはいっても、初日の授業に出られなかったのはさすがに痛い。まさか輸送機が足止めを喰らったせいで半日も潰れただなんて・・・

あの堅い警備員め、「国際指名テロリストに似ているから」って私たちを拘束しやがって!

だからこの(日本)の警備員は嫌いなんだ、ケツに弾丸が残ったのが金属探知器に引っかかった時だって———

 

やり場の無い怒りを抑え、ドアをノックする。

時刻は16時前、授業も終わっている時間だからルームメイトはいるに違いない。

 

 

・・・だが返事がない

もう一度、一回目よりも強め目にノックをすると慌てたような気配がドア越しに感じられた。

 

彼女はこのとき、もし3回目に返事がなければ部屋に”強行突入”しようと考えていたので、ルームメイトはあわてて正解だったと言える。

 

「は はい! どなたですか!? ひょっとして謝罪に! 」

出てきたのは金髪のロングヘアーの西洋人。英語の発音からすると英国人か?

そんなことを考えながら、ここに来るまで何度も頭の中で繰り返した自己紹介を言う。短すぎず、かつシンプルに。

「ルームメイトのサン=エヴァンスだ。今日からよろしく頼む」

 

彼女は笑顔で歓迎してくれた。

「セシリア=オルコットです。こちらこそよろしくお願いいたしますわ」

だが、サンは見逃さなかった、開けられた瞬間のセシリアの若干強ばった表情を。

 

「貴族様と寝食を共にするとは、光栄だね」

 

「あら、私のことを知ってらして?」

嬉しそうに彼女の顔がはにかむ。

 

「そりゃあ世界最年少で当主になって、ギネスを記録したんだ。 まあ、こっちが物好きだってこともあるけどな」

 

英国人、オルコット家の生まれであり幼くして当主となった少女。

オルコット家の資産は莫大であり英国でも5本指に入る。テロの犠牲となった両親と死別してからというもの、その資産は減るばかりか今でも増加を続けているという。

自分の所属する民間軍事生産兼傭兵派遣会社『New America GroBal Armaments』への有力な投資者にしたいところだが、どうやら各地の紛争に介入、または意図的に引き起こしては血と金の河を作り出しているというのはあまりお気に召さないらしい。

 

・・・両親が巻き込まれた脱線事故の際に、警備していたうちの傭兵も10人犠牲になった。

実行犯のテロ集団はいつの間にか存在自体が消えていたのだが、あまり気にしてはいけない話題である。

 

今の状況で重要な情報と言えるのは彼女がイギリスの国家代表候補生であり、また専用機もイギリスの最新技術の塊である第3世代型IS『ブルーティアーズ』のパイロットでもあるということ。

 

プライドが高く、下手にからかわないほうが吉。バストサイズに若干の悩みあり。

だが、親しい人物に対しては非常に友好的であることが確認されている。っと、ん?

 

追記、間違っても彼女の祖国である英国の自虐ネタには触れないでおくこと。(by,女王陛下万歳 Mark)

 

 

 

マークの報告書を思い出しつつも彼女に案内されて部屋に入ると、そこには生半可なホテルとは比べ物にならないような光景が・・・

シンプルでありながらもその贅沢さと気品を兼ね備えたベッド、その4本の足にまで細々としていない美しい彫刻が成されていた。

イスも貴族らしさを感じさせ、どこか懐かしく、安心する雰囲気を部屋全体に醸し出しており、ベッドに掛けられたレースはその美しさと相まって何とも言えない美しさが見て取れる。

 

ベッドのシーツだってそうだ。ここから見ただけで純白の輝きを放ち、触ればどれほどすばらしい手触りを感じられるのかと、つい想像してしまいそうになってしまうほど・・・

 

問題は、だ。

 

なぜこのベッドが一つしか部屋に置かれていないのだということである。

まだ、それは許容範囲としておこう。

 

 

 

 

 

でかい。とにかくでかい。

胸はまあまあなくせに、なぜか2人のベッドスペースの6割を占め、私の”領土”に軽くはみ出してきている。

ベッドの大きさは見るからにして、なんとか2人で寝られるかという程度。

もしコレが堂々としたダブルベッドだったなら自分は即座に廻り右をして食われる(・・・・)前に撤退をしていただろう。

 

そんな貴族様はやんわりとした笑みを浮かべている。

垂れ目がまた可愛らしさを際立たせているではないか。けれども、私は言う。

 

「Hey、オルコットさん」

 

「ん?どうかしましたか」

 

「・・・これは、自分の家具を持ち出してきたのか?」

 

「ええ、イギリスでも有名なデザイナーに作らせたものでして、本当にすばらしい出来映えだと思いませんこと」

などと言い、うっとりとしている彼女は本当に嬉しそうだ。

 

「ああ、本当に今まで見たことのないくらいすごいと思う・・・ところで、一つ聞いていいか」

 

「はい、どうかして?」

 

笑顔の彼女に私は遠慮の無い質問を笑顔でぶつけた。

「私の寝る場所はどこだ」

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

「本当にすばらしいと思いませんこと?」

「Hey、セシリア=オルコット。 もう一度聞く。 私の 寝る 場所は どこだ」

笑みを崩すことなく、聞くサン。

それを聞き、同じく笑みを崩さないセシリアは冷や汗を流す。

 

芸術的なオーラを放つ部屋に沈黙が流れた。そんな沈黙に耐えきれず、彼女はぽつりぽつりと話を始める。

「・・・寸法は確かに測るべきだったのですが・・・その、寸法にミスが生じてしまったらしく・・・」

「つまり、私の寝るスペースはこのでかいベッドとくっついているやつ、ということか」

 

本来ならばベッドとベッドの間は空けられているはずなのだが、サンのベッドとセシリアのベッドは隙間がほとんどなく、無理矢理入れた感じが漂ってしまっている。

 

「申し訳ございませんわ」

そういう彼女は本当に申し訳なさそうな表情で謝罪をしてきた。

 

貴族である彼女は小さい頃から両親の遺産を狙う大人達を疑い、使用人達に支えられながらも、こうしてオルコット家を護り続けてきた。そんな生活を送ってきた彼女が同年代の信頼できる友人ができると思えば、彼女の失敗は必然的だったかもしれない。

そして、彼女は今、これからもっとも親しい関係になるであろうルームメイトにこのようなことをしてしまい、自分を恥じると同時に若干の自分に対する怒りも感じていた。

だからこそ、貴族としてのプレイドも威厳も捨て、1人の人間として謝罪をしたのだ。

 

 

自こめかみに手を当て、軽くため息をつくとサンは言った。

「まあ良いさ」

 

ヒラヤマ山脈での偵察任務じゃ、4日間ずっと雪の中から身動きすることなくテロリストどもの空軍基地を偵察したこともあるし、薄暗く、熱く、狭っ苦しい装甲車の中であいつらとぎゅうぎゅう詰めにされながらも半日過ごしたこともある。

それと比べれば(比べる対象がおかしいが)サンにとってこれくらいどうってことない。

 

むしろ、きちんとしたベッドと屋根のある清潔な部屋、それに加え「砲弾が降って来ない」というだけで彼女は満足している。

だが、サンにとっては平気だとしても彼女にとってはまだ納得がいかないらしい。

「ですが、それでは私が悪いのに、せめてなにかしらの謝罪を」

 

埒があかないと即座に判断したサンは、両手を前でパチンと合わせ、それをセシリアに向ける。

「それじゃあ———たまにセシリアのあのベッドを一緒に使うのはどうだ」

「え、それでもよろしいので・・・って、一緒に?え、でも」

 

「いいな? よし、これでこの件は終わりだ」

セシリアの疑問が言い終わらないうちにサンはぱんぱんと手を叩きながら自分の荷を解き始める。

 

もっとも、この提案にも問題点はあるが後で改善すれば良いのだ。

終わりよければ全て良し。

そう思いながら、サンは装備の詰まったケースを目立たない場所へ気づかれないように置き、手際良くボストンバックの中身を取り出し、整理していく。

 

セシリアはサンの後ろ姿を感謝の気持ちを抱きながら見つめていた。

少し強引なところもありますが、私をあくまで1人の友人として扱ってくれる、そんな彼女で良かったかもしれません、と。

 

だがしかし、このとき2人は気が付いていなかった。

セシリアのベッドは一つ、つまり約束を果たすには2人で身を寄せ合って寝る必要があるのだと・・・

 

—————

 

———

 

 

5分ほどすると、サンの荷造りもだいぶ落ち着いたものとなった。

もともと必要最小限のものしか持ってきていない、その他のものは現地で調達したほうがフットワークを落とすことなく移動することができるからでもある。

荷物を整理している最中に互いの紹介もしたため、2人はすぐに親しい関係となっていた。

2人の性格は正反対と言えるものではあるが、なぜか気が合うのだ。

 

あとは制服を脱ぎ、部屋着になろうとした時だった。

ふと、疑問に思っていたことを思い出し、シャワーを浴びようと脱衣所で制服を脱いでいるセシリアに聞く。

「ところでよ、今日何か嫌なことでもあったのか」

 

そんな何気ない質問にセシリアは軽く動揺を覚えた。彼女の前では一切そんな素振りを見せたつもりはなかった、というより、嫌なことすら思い出せないほど会話が弾んだのだ。

思い当たるとすれば、あの男が誤りにきたのだと勘違いしてドアを開けた瞬間。

あの一瞬で表情を読み取るサンに若干の違和感を感じ始めてしまった。彼女も自分を取り巻く大人達と同じ、相手のささいな表情の変化から情報を読み取り、それを元に心理戦を仕掛けてくる彼らと同じではないのかと。

「ど どうしてそう思いになって?」

若干怯えるような聞き方になってしまったが既に手遅れだ。返答次第ではこれからの付き合いを考えなければならない。

 

「いや〜、だってさ。 こう、なんか感じるんだよね。 嫌なこととかあったヤツってよ、少しだけガチガチしちゃってるからさ」

聞いているセシリアにとって何気ないような返事だが当然嘘だった。

だが、サンは相手に不安と不信感を与えないようになんとなくそう答える。内容からして確かに嘘でもない。

 

そして、自由奔放な雰囲気を持つサンならあり得ると思ったセシリアは制服を一枚脱いだYシャツ姿でサンの前に姿を現す。

彼女のような人物ならそのような感覚が研ぎすまされているかもしれないのだと安心し、ふともう一度相手の顔が見たくなったのだ。

 

「え、ええ わかります? 実は、今日オリムラという殿方にお会いしたのですが、なんとまあその方の礼儀のなさと言ったらさすがの私でも気を荒げてしまうほどでしたのよ!」

いつもの貴族としてのプライドを持つセシリアになり、あつく語り始める。そして、サンはきちんと相づちをうち話を聞く。

 

 

 

その時間15分

 

 

 

「———たった1人の男性IS操縦者だからと思ってはいたのですが、まさかあんな無知で失礼で残念な方とは思いませんでしたわ!!そもそも男性がISに乗れるという時点で私としては———」

 

「まあまあ、とりあえずそのなんとかって野郎は、ありえねえヤツってことなんだな」

 

話を区切られたことでセシリアは冷静さを若干取り戻しふと時計を見て、申し訳なさそうな表情に早変わりした。

「私としたら! ああもう、今日はあなたに迷惑ばかりお掛けしてしまって・・・」

 

サンは苦笑いをしながら、ベッドに腰掛けるセシリアの隣に腰を下ろす。

その包み込まれそうなるベッドの柔らかさに頬を緩ませそうになるが、そこはどうにか耐える。

 

「いや良いさ、それほどセシリアはその男に腹が立ったんだろ。それなら決闘でぼこぼこにしちまえばそいつも誰に喧嘩を売ったかわかるだろうさ」

 

話の内容を要約すると、親切心で声をかけたセシリアに対しそのオリムラという無知な男(実際自分たちの監視対象だ)は彼女曰く非常に失礼な態度で受け答えをし、さらには彼女の祖国、イギリスを侮辱したらしいのだ。

 

・・・無茶しやがって

だが当然サンはどちらにも就くつもりはない、アクシデントというものはどちらが悪いかではなく、かならず両方に問題点があり、それらが干渉し合うことで起こるのだ。

冷静に物事を見極めることで常に状況を把握し、優位に立つことができる。

 

それにセシリアの主張には本人は気づいていないであろう若干の主観性が見え隠れしてしまっている。ここで下手に彼女のいうことを全て鵜呑みにしてしまっては取り返しのつかない事態になりかねない。

なら、相手の方にも聞き込みにいけば早い話だ。

ちょうど表向きとしてはその男の護衛、護衛として挨拶にでもいく理由でそいつの部屋に行けば良いだけの話だし。なにもそこまでしなくとも良いのかもしれないが、なにせ自分の監視対象に関わる事態だ。

それ加え、サンには少々オリムラの部屋に行く用事があるため、そのついで感覚で話を聞こうと思ったところだったしな。

もっと器用な方法があるかもしれないけど、なにせ私は不器用なのだ。ダイレクトに行動することくらいしか人間関係を知ることができない。

 

 

「よし、それじゃあちょっくら見てくるかな、そのオリムラとやらを」

床から立ち上がり、力強くそう言うと当然、セシリアから遠慮の返事が来る。

「え、いいですわ! 友人にそんなスパイみたいなことをさせるだなんて」

 

そんな、笑顔で行かなくて良いと言ってくるセシリアにサンはぐいっと顔を柄づけた。

「でも、気になるだろ? っつうか、こっちが気になるんだ。 いや、セシリア言わなくても分かる。 今あっちが反省しているのなら仲直りしたいんだろ!? まかせろまかせろ これは私の有名な男を見たいっつう自己満足でもあるんだ! まあ、紅茶でも用意して待っていてくれよ」

 

呆気にとられるセシリアを置いて、素早く道具の入ったポーチを回収し部屋からでていく。

ドアが閉まる際にセシリアの声が聞こえた気がしなくもないが。まあ、空耳だろう。

 

そう思いながらさっそく記憶しているオリムラの元へと向かおうと部屋の位置を思い出そうとする。

 

だが・・・思い出す必要もなかった。

廊下はにぎやかになっており、露出を気にすることのないラフな格好の寮生たちがたくさんいた。もしこれをうちの男どもが見たら歓喜に包まれるだろうに・・・すまん、違った。1人だけだった。

 

途切れ途切れに聞こえてくる女子達の会話から判断するに、どうやらオリムラになにかがあったらしい。

悲鳴が聞こえないことから大丈夫そうだが、念のため急いだ方が良いかもしれない。

本人が油断力が落ち、疲れている授業初日なら接触はしやすい。

そこを狙われたのかもしれない。

 

若干の不安を覚えつつ、人混みをくぐり抜けていく。

 

それにしても少なくとも6人程度軽く見たところ、皆顔が整っておりまた健康的な体つきをしているのがそのラフな格好より確認できる。

それに比べ自分の体は古傷だらけ。

いくら医療が発達したと言っても治しきれないものは治しきれないのだ。

 

風呂に入る時は注意しないといけないかもしれない・・・

 

そう思いながらも、美女達の合間を縫っていくとそいつはいた。

特別にオーダーメイドで作られた男子用のIS学園の制服を身に包み自分の部屋のドアを背にしてへたれ込んでいる。

そうとう慌てていたのか肩で息をしている程だ。

その背にしている木製のドアはどころどころこぶし大の穴ができて・・・

 

何があった?

 

オリムラは肩で息をしながらも誰かに助けを求めようとしたのか周囲に目を泳がせる。

だが、どこを見ても普段目にすることのない女性の絹のような肌ばかり、目が完全に行き場を失い泳いでいるだけだ。

そして、こっちを向いた・・・ッハ?

 

どうやら自分がまだ露出の少ない制服姿(しかもズボンだから足も直視できる!)のため、面と向かって見ることのできるこっちに視線が固定されてしまっているらしい。そして一秒も掛からないうちに直感した。

「あ、助けてくれって言ってくるぞ。」と

 

ヤツがなにかを言おうとした瞬間、ヤツが背にしていた穴だらけのドアが開く。

そこには・・・ええと、浴衣?の白いヤツを身に纏い、手には木刀を持っている巨乳の大和撫子が現れたではないか。髪を後ろで纏めており、それがまた凛とした容姿と相まって様になっている。

 

「入れ」

低く、美しい声で彼女は言う。

すると、その日本人の言う通りにオリムラは部屋に入っていく。

・・・まったく状況が把握できない。

襲われているのならそのまま逃げ出せば良いのに・・・なぜ逃げない。

 

扉が閉められた後、記憶を探るとどこかで見たことのある巨乳の日本人が思い当たった。

 

ホウキ シノノノ(隊のメンバーのほとんどが名前を噛んでいたためにモップとあだ名されていた)

今現在世界で最も有名な人物の1人である「タバネ シノノノ」の妹。

「イチカ オリムラ」とは幼なじみであり、小さい頃には共にシノノノの家にて剣道を習っていた模様。

しかし、『白騎士事件』以降、2人は離れ離れとなり、彼女は政府の保護プログラムの元で渡り鳥のようにせわしない生活を送ってきていた。

IS適性はB判定、しかし、剣道の扱いに長けており、その実力は全国大会で優勝するほど。だが所詮はスポーツの剣道、実戦ではどこまで役に立つのやら・・・

姉に対して抵抗感があり、同時に巨乳であることにコンプレックスを持っている模様。

 

たしかに、動き回るには大きすぎるサイズだ。

事実、体のラインを強調しないあの服の上からでもどれほどの大きさかが分かるほどのインパクトを兼ね備えていた。

やはり、動き回るには自分のようにバストが小さい方が助かる、決して負けたという感情はない。

 

決して。

 

そんなことを考えながら壁に背を預け、事態の収拾を待つことにした。

今日は一度に多くのことが起こりすぎている。少しは頭の頭の整理をする時間が欲しい。

目を閉じ耳神経を集中、2人の入っていった部屋から微かに音が聞こえてくる。

女の声。

そして、それに続く男の声。

軽く走り回るような騒がしさの後、軽い悲鳴にも近い驚いたような女の声が聞こえた。

ほんの微かに男のつぶやくような声・・・

 

突然鈍い音!?

続いて人が倒れる音

 

頭が急に冴えていき、戦闘態勢となる。

ナノマシンがアドレナリンの分泌を確認し、感情を戦闘にあわせられるよう薬品を分泌してくるのだ。

そのせいで興奮にも近い好戦的な感情を覚えるが、もう慣れてしまったためやり過ごす。

まずは状況を把握しなければならないが、時間のない今は部屋の中に入って行くのがベストだ。

 

「ちょっとあなた!?」

偶然通りかかった生徒の1人が他人の部屋にノック無しで入ろうとする私に声をかけてくるも聞き流す。

ドアにカギが掛けられていなかったため蹴りやらずに済んだものの、1秒でさえ惜しい状況。

ここでアイツに死なれてしまっては、テロリストを一掃する機会が失われ、テロリズムに怯える世界に逆戻りしてしまう。それだけは防がなければ!

 

たとえ幼なじみという親しい関係だとしても殺すかもしれないというのに!もっと警戒しておくべきだった!!

 

ドアを開ける際、廊下の女子から驚きの声が上がるも、それを気にすることなく素早くドアを開け部屋に突入。

早速これを使うハメになっちまうとは・・・

意識を集中させると、体内のナノマシンが脳波をキャッチし起動する。

 

《Stasis System ON》

時間の流れは変わらない、そう全てに対して平等だ。違うのはそれをどう過ごすか。

時間の流れの中で脳が確実に、早く、優位に動くという体感速度を飛躍的に跳ね上げるドイツの代物だが、本当に使える・・・使い終わった後はとんでもない空腹感に教われるのはしょうがない。

 

ドアを開けると同時に滑るように突入するサン。

その動きに無駄はなく、その洗練された動きより多くの経験を積んできたことが読み取れる。

 

蒼色の両目が機会的な機械的な金色に輝き、室内を素早く見回し状況を把握する。

 

オリムラ!倒れている!!

そしてとなりにいるシノノノ、木刀を持っている。

木刀も鈍器だ。その気になれば人も殺せる、彼女の剣術なら尚更!!

ヤツがこっちに気が付き、恐ろしい速度で迫り来る自分に対し反射的に木刀をふるってくる。

その迷いのない筋は良し、速度も十分、これを直に受ければ対速度の関係もあり下手すれば頭蓋骨骨折になりかねない・・・

 

まっすぐシノノノへ突進していく最中、改造を施した制服の両袖から仕込みナイフを落とし、それをそれぞれの手で掴む。

そして自分を狙い、上段の構えより振り下ろされた木刀を体を捻るように回避し、そのまま彼女の斜め後ろ回り込むと流れるように素早く拘束。

 

首に回した右腕には引っ掛けるように右手のナイフを首筋に、互いの左腕を絡めその手に握られたナイフは相手の左手首を捕らえる。

下手に拘束を解こうとすれば自分から切ってしまう体位となっている。

左手に握られた木刀では取り回しにくく、抵抗しようにもむしろ自分の動きを制限してしまっているのだ。

 

今度はこのシステムを切るように集中する。

このシステムは体内のナノマシンに血液中のエネルギーを変換し送ることで作動させているのだが、その消費する量が半端ではない。

あまりに長く使うと栄養失調か空腹で倒れてしまう。

これの元となったものは燃費も良く、長時間の仕様が可能らしいが幾分制御が難しいという。

だが、基本的な性能はNAGA社がドイツより研究者を引き抜き、莫大な研究費を与え作らせたこちらのバージョンが上という事実は変わらない。

その事実とは、以前ドイツで行われたドイツとNAGA社の特殊部隊同士の合同訓練で証明されたのだが、詳しくは後の機会にさせてもらおう。

 

《Stasis System OFF》

体感速度がしだいに早まっていき、元通りとなる。

極限状態とはまた異なる感じはやはり何度やっても慣れることはできない。

今はほんの数秒だけだったのでそこまでエネルギーの消費は押さえられているはず。

 

 

 

 

私は迫り来る何かを感じた生存本能の警告に従い、自分でも信じられないほど鋭い一撃を放った。そして、さらに信じられないことに、避けられしまった。

 

・・・気が付くと拘束されていた。

 

とにかく混乱した状態ながらも口を開いた。

「ッぐ!! 貴様いきなり何を!?」

帰ってきたのは低く、恐ろしい声であった。

「この男に危害を加えた理由を簡潔に答えろ、じゃねえと刺身にすっぞ」

「ッ!?」

 

私はこれまで感じてきた中でも恐ろしい威圧感を、私は背中に密着している同年代であろう女から感じ取っていた。

これまで剣道の大会でも、強敵と出会ったときは体のすくむようなものを感じたのだが、今感じているこれ(・・)は明らかに別の次元。

 

そう、力も何も感じさせない。

単なる殺意。

これはすくみもしないし足も震えそうにもならない。ただ、殺意しか感じられない。

「答えろ・・・何をどうしたらこうなるんだ?」

「私はただ———」

 

 

 

コレまでの経緯、一夏との再会、それがシャワー上がりのときだったこと。

再会できた嬉しさと同時に恥ずかしさから手を上げてしまったこと。

せっかく部屋にもう一度入れたのにまた恥ずかしさから手を上げてしまったこと。

止めは明らかに向こうの「下着、つけるようになったんだな」という一言が悪いこと・・・

洗いざらい、自分の心情を自分で言う恥ずかしさも堪えて話した。

 

最後まで言い終わらないうちに、私は拘束が解けていることに気が付いた、首と手首に感じていたあの鋭くて冷たいナイフの感覚もない。

 

見ると、彼女は倒れている一夏を担いでベッドに横たえさせていた。

こちらを見ることなく彼女は言う。

「・・・オーライ、つまり照れ隠しってやつだな」

先ほどの声とは全く異なる、クールで軽く冗談を含んだ声。って、照れ隠し!?

 

「て 照れてなど! ———」

すぐに反論をしようとするも、またあの感じが襲ってきたから、私はしぶしぶ口を閉じた。

 

明らかに怒りを含んだ声だ。

「黙って聞け、照れ隠しをするのは勝手にしろ。だけどな、今度コイツに死ぬようなことしたら・・・殺すぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

このシノノノってやつからは殺意を感じらないし、情報処理班が作ってくれたプロファイルのおかげですぐに照れ隠しだと分かることができた。

本当にうちの情報部門は頼りになる・・・まあ、世界各国の情報機関でクビになったり左官された優秀なヤツを雇っているんだ。

高い給料に見合うだけの働きをするのは当たり前かもしれない。

 

それにしても、照れ隠しで大切な()を殺されてしまっては溜まったものではない。

この作戦が失敗すればせっかく知り合ったセシリアとも数時間でお別れなんてことも起こりかねないのだ。

それに、この作戦のために様々な準備を重ねて来てくれたヤツらにも申し訳が立たない。

 

・・・一応このツンデレ野郎には釘を刺しておいたから良いし、任務を始めるとするか。

 

 

部屋から出て行ったサンが廊下に置いてきたポーチから持ってきたのは金属探知器、それもNAGA技術課お手製の特殊仕様のものである。

 

早速機動させ、手当り次第に部屋のあちこちに先端の輪になっている部分を近づけていくと、空港で良く聞くあのモルモットの鳴き声のような音が聞こえてくる。

 

ビンゴ!

 

—————

 

———

 

 

すっかり私に抵抗感を感じてしまい、黙って見ているしかできなかった箒も今は別の意味で黙っている。

その視線の先には黒い機械的な何かがゴロゴロと転がっていた。

 

「な なんだこれは」

 

恐る恐る聞いてくる箒に、部屋にある3つ目の照明から何かを取り外している私が返事をする。

「ああ、知らない方が良いぞ。 知ったら多分失神するから」

 

「そ、そうか」

渋々引き下がる箒。

確かに興味心が強く聞くよう促してくるが、先ほどの殺気といい、目にも留まらぬ早さにも関わらず性格に自分を拘束したこの女の「知らない方が良い」は、本当に知らない方が良いのだと思わせてくれる。

知らぬが仏・・・とも言うしな。

そう箒は自分に言い聞かせて興味心をなんとかしまい込んだようだ。

 

「あとは・・・大丈夫だな」

そう言って私は黒い何かを手際良く回収していく。

 

よくもまぁ、こんな部屋に24個も巧くしかけるもんだ。風呂にも2個しかけるなんて・・・

幸い風呂に仕掛けられていた機種は一定の時間になれば録画を中止、その後にワイヤレス方式で一旦保存したデータ送信するタイプだからあの巨乳は秘密のベールに包まれたまま・・・のはずだ。

 

「それじゃあ、オレはこの辺で失礼させてもらうぞ」

探知器と回収したものをなんとかぎゅうぎゅう詰めにしてポーチにつめていくサン、箒はそれを複雑な心境で見ていた。

彼女は一体何者なのか。なぜ一夏を護ろうとするのか。なぜ部屋中に仕掛けられた何かを回収していったのか。 そして恥ずかしいという感情で流されそうになった己の未熟さに痛感を感じていた。結局一言も聞けないまま・・・人見知りの性格がこうも悪く出るとは。と。

 

 

邪魔(・・)したな」

そう言って部屋から出て行く私を、ただ箒は見送る。

おっと、一つ忘れていた。

「ところでよ!」

にょきっと突然ドアから出てきた私の顔に心臓が止まりそうになりながらも箒は返事をする。

 

「な、なんだ」

「そこのオリムラとイギリスの代表候補生のセシリアってなんかあったのか?」

 

箒は思い出したくないような表情をする。

それもそうである、突然話しかけてきたと思えば突然一夏を侮辱し始め、終いには日本をバカにしてきたのだ。

「ああ、あいつのことか。向こうが突然一夏に絡んで、勝手に怒っただけだ。 悪いのは向こうだと思うぞ」

 

ふぅんと、私は軽く唸る。

「今度こそ邪魔したな」

私の首は引っ込んでいった・・・

 

 

 

部屋を出たサンは端末をいじり、今日の早朝に終わらせるはずであった任務の完了を隊長率いる別働隊に伝える。

 

オリムラとのコンタクトは失敗に終わったが、むしろオリムラに気づかれることなくこの盗聴器と盗撮カメラを撤去できたのは不幸中の幸いと言えるかもしれない。

シノノノに関しては誰かに言うような性格でもない、というより言う相手がいるとは思えない。

それに一つ気になることがある、回収したこれらの機材が全部、最新でありながらも民間人でも作れるような物だったのだ。

 

予想では軍や情報機関が使うような型を使われると思っていたサンは、不可解に思った。

 

・・・とりあえずこのことは情報処理班に任せることにしよう、まずはティータイムだ。

サンは紅茶の香りが漂っているであろう自分の部屋へと足早に歩みを進めて行った。

その背後を見つめる視線に気づくこと無く———




(後書き)

「うまいなこの紅茶!!それにこの茶菓子も!」
「でしょう!イギリスの老舗より取り寄せておりまして、茶菓子のクッキーも有名パティシエの工房から取り寄せておりますの」
「うん、本当にこの先、普通のものが食べれるか不安だ。でもうまいからしょうがない!」
「そう言ってもらえるとうれしいですわ」
「・・・そうえいえばさセシリア」
「なんでして」
「バスト、気にしてるんだろ」
「・・・ええ、多少」
「知ってるか、カフェインは体の脂肪を燃焼させる作用があるんだ」
「ええ、しっておりますが」
「あまりとりすぎると、とらなくてもいい場所からも脂肪燃焼させちまうらしいぜ。うん、紅茶御代わり!」
「・・・・・ック!(プルプル)」

貧しい者はもう失うものはない、だが豊かに持っている者は失う物がある。
それは邪魔であり、同時に必要な物
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