IS インフィニット・ストラトス 3番目の兵器と呼ばれた少女   作:DON-KAME

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前回よりは、良くなっているといいのですが・・・


第2話 コミュニケーションの基本は目を見て話せ、だ

体内時計に従い、いつも通りの時間に目が覚める。

少女は念のため傍らに置いてある腕時計を確認するが、時刻は予想通り5時を示していた。

 

学園に入学したからといってトレーニングを怠るわけにはいかない。

 

隣のベッドで熟睡しているルームメイト(セシリア)を起こさないように、寝間着であるTシャツから吸水性の良い服装に着替え、静かに部屋を出ようとする

だが、ルームメイトに注意を払っていたせいか、ついうっかり机の上にあったティーカップに引っかかってしまう。

カタカタと音を立てたことにより少女はしまったと思うも既に遅い。

 

音に反応したルームメイトの上半身がゆっくりと起き上がる。

 

「ふぇ・・・? ん・・・むぅ」

その目は虚ろでまだ寝ぼけているようだ。

普段からは想像もできない姿に苦笑しながら少女はあやすかのように二度寝を勧める。

 

「ま、まあまあ、もう少し寝てろって・・・」

 

「んんぅ・・・」

ルームメイトはたいした抵抗も無く、ゆっくりと倒れるかのように再びベッドに身を委ねて寝息を立て始める。

そのことに安堵し、少女は今度こそ音を立てないようゆっくりと部屋を後にした・・・

 

 

 

 

 

 

IS学園は世界で唯一のISを扱う学園であるだけあってか、その広さは通常の学園を軽く上回っている。

そう、彼らが敷地内をバンで移動することができるくらいの広さだ。

校舎はもちろんのこと、学園に通う全生徒と教員を収容できるだけの寮、そしてISのメンテナンスや生徒による研究を行う建物を始めとする数多くの建物が敷地内に建っている。

 

豪華リゾートホテルなのではないかと思ってしまうほど大きな寮、その生徒用玄関からサンが出てくる。

 

時間が時間だけに、芝生を整理する職員や部活のための体力作りを行っている生徒達を除き、出歩いている人はいない。サンは深呼吸をし早朝のさわやかな空気を肺に取り入れると、その広い敷地を迷う様子も無く歩き始めた。

 

 

「Good mornning!! オッサン達」

軽口を飛ばしながら私が挨拶をしたのは先日、一緒に現地入りしたチームの4人。

皆、私と同じようにハーフパンツや吸水性に優れたTシャツなどを身につけ、初春の寒さを気にしないといわんばかりの運動しやすい格好をしている。

 

イギリス系アメリカ人である隊長が声に気が付き、こちらを見つける。

彼は既に50代を感じさせる顔つきだが白髪はそこまで生えておらず、黒髪も未だに豊かだ。

加えて、その鍛え上げられた肉体といいまったく老いを感じさせない。

まぶたを上下に通過したような傷跡もまた透き通ったようなグリーンの瞳も相まって、彼の男性としての魅力を引き出している。

 

隊長に続き、ほかの隊員もこっちに気がつき挨拶を返してくる。

だが、どうやら話の途中だったらしい。

 

挨拶の次は恒例の毒の吐き合いが始まる。

 

「っへ、朝から調子のいいじゃじゃ馬だことで。どうやら、ここでの任務は楽しくなりそうだな」

「Mark、あんまり女の子に気を取られてコケるなよ?」

「うるせえなOdd、だから言ってんだろ。

なあSun聞いてくれよ、こいつらみんなして俺のこと変態呼ばわりするんだぜ。 俺は紳士だって言っているのによ」

「そいつはどうやら?」

「Echoまでかよ!?ああもうちきしょう・・・Sun、お前は俺の味方だよな?」

「ロリコンMark、早く行くぞ」

「オーマイゴッド、オォーマイゴット!」

 

いつものように賑やかな空気を纏い、彼らは隊長を先頭に走り始める。

 

 

 

学園の敷地内には小川の流れる公園まであるため、このように早朝からトレーニングをする人にとっては非常にありがたい環境となっている。

 

その公園に差し掛かったあたりで、隊長は静かな表情で言った。

顔は先ほどまでとは異なり、部下を束ねる責任と作戦の行方を担う1人の男の顔だ。

「Sun、昨日のあれはなんだ」

突然聞かれた私も無表情となりつつも、答えた。

「・・・なんだよ、知ってたのか。あのときは目標に及んだ危害を排除しただけだ」

 

「ふざけるな、相手もお前と同じまだ幼い少女だぞ・・・あんな脅迫紛いなやつが作戦だぁ? ふざけるな、やっていることはそこら辺のギャングと同じだろ」

普段からは想像もできない、怒りを含んだ声で淡々と吐き捨てるかの様に言う。

おお、怖え。

 

こちらの正当性を訴える反論は続く。

「それでもターゲットは護った」

「Sun、お前忘れたのか?

俺たちは世界で最高の傭兵会社に所属する一番のテロリスト狩り部隊だ。そこらのチンピラと同じことをするようならさっさとこんな会社辞めて、ヤク売っ払う野郎のボディーガードにでもなってろ・・・チームの名前を落とすな。そして二度とあんなことはするな。いいな? お前らもだ!これから何が起きるかわからないからな」

Yes sir.という威勢の良い返事が私と、私の周りから返される。

 

彼らのような行動の一つ一つに重大な結果をもたらしかねない部隊では、ほんのささいな油断と図に乗るだけで途中結果に関わらず、作戦の失敗を引き起こしかねない。

だからこそ、隊長である彼は常に部隊のコンディションをベストな状態に保たなければならない。

油断をしていれば喝を入れ、調子に乗っていればいやでも分からせる。

友人ができたことで少々図に乗っていた私があのような行動をとってくれたおかげで、むしろほんの僅かではあるが緩みそうな雰囲気であった部隊の気を引き締める良い機会を生み出してくれたんだろう。

 

だが、ムチを与えた後はアメも与えなければ、部隊の士気は下がってしまう。

隊長と呼ばれている男、Woodsは悟られないよう軽くため息をつき、声をいつもの明るい調子へと戻す。

「ところでMark」

「なんだ・・・?」

「通信手段としてポケベルを使うというのは良いアイデアだったぞ。良くやった」

「それほどでもないだろ」

 

ポケベルなら傍受されてしまっても、チームの間でしかわからないような意味を含んだ数字だけであり情報の漏洩を防ぐことができる。

例え通信妨害をしようものならば、異変に気づくこともできるし同時にIS学園も異変に気づくことできる。

周囲に聞かれてもアナログな人間だと説明すればそこまで不審に思われることは無い。

 

デジタル化が進むにつれ、皮肉なことにこれまでのアナログが有効な手段となってきているんだ。

 

「それとサン」

「・・・なんだよ?」

「ナイフたくさん持ちたいのは分かるが、ああいう隠し武器はヤバいときまで隠しておけ。むやみに出しちまったら単なるカッコつけになっちまうぞ」

「・・・わかった———アドバイスありがとう」

 

笑みの戻った5人は、走り続ける。

 

その背後に視線を感じ取りながら

 

 

—————

 

———

 

「名前はサン=エヴァレンス。サンと読んでください。 USA、ミズーリ出身。 New America Grobal Armamentsのテストパイロットとしてここにいさせてもらっています。 これからよろしく」

 

私ことサンは今、1人だけ席を立ち上がり自己紹介をしているところだ。

昨日、私だけが輸送機のトラブル(警備員のせい)で出席することができなかったために、1人だけ終わっていなかった自己紹介を一日遅れてするハメになっている。当然ながら、私1人にクラス全員の視線が集まってくる・・・

 

だが、今の自己紹介で必要最低限の課題はこなしたはず。

ミッションクリア、こちらサン、任務の完了を報告!

と、彼女は一刻も早く突き刺さる好奇心の目より抜け出すべく、焦る様子をさとられないよう着席する。

それに続くクラスメイトによる歓迎の拍手が響く。案の定肩に力が入り過ぎ、呂律も危うく、仕舞いには最低限のことしか口にしていないことから、拍手をするクラスメイトは温かい視線を投げ掛けていた。

 

拍手聞いた私はほっと安堵のため息をついて、ノートを書くべくシャープペンを握る。

そう、一時間目の一部を省いてもらって自己紹介の時間を設けてもらっていたのだ。

 

ノート。ココにいる生徒達に取ってはありふれた勉強道具だがこれまで満足に学校へ行ったことの無い私に取っては新鮮な道具であった。

そう、教師が生徒達に見せる授業の内容をノートに書き写すという動作一つでさえ、憧れる動作なのだ。

 

担任であるMs,ヤマダは、若干遅れてしまった授業時間に慌てる様子も無く、花の咲いたような明るい笑顔で授業を始めた。その接しやすさから生徒からの評判は良い。

 

「みなさん、今日はISの基本構造と簡単なメカニズムを扱います。 そもそもISは操縦者の体の一部となるようなものですので、簡単に言うと人の骨格に極めて近い構造となって———」

 

まだ学校が始まってから二日目というだけあり、授業の内容はISの構造と簡単なメカニズムという基礎部分。

IS学園に入学したというだけあって一部を除きクラスのほとんどが余裕を感じさせている。

これくらいは事前の学習で分かりきっているような範囲だから、もはや彼女達にとっては軽い復習のようなものなんだろう。

 

私はこの学園にくるまでに強硬手段(ナノマシン)を使ってISに関する膨大な知識を全て覚えた。

そのおかげでこの先3年間、軽い予習と復習さえすれば十分にやって行けるほどの知識が頭の中につまっているんだが、この方法を行った次の日は一日中頭痛がひどく、また体もだるいというレベルなんてものじゃない状態になってしまうためにある意味、本当の最終手段だった。

 

この席は縦に6個、横に5個机が並んでいる教室の中では1人だけ窓側の前から7番目、つまり飛び出している形である。

確かに、授業開始の数日前に織斑一夏のいる無理矢理1年1組に入ったような形でIS学園に入学したのだ。

学園側としては世界で唯一の男性IS操縦者がただでさえ危険だと言う事態に加え、一機で軍を相手にすることのできると言われるISを所有するテロ組織に狙われていると分かれば、それを一度ではあるものの撃退するだけの力をもつNAGA社の力を借らざるを得ないと判断したらしい。

 

そして、一番の理由が、NAGA社によるIS学園への持続的な投資という餌に釣られたというのだというのはここだけの話だ。

IS学園は基本、国による全額援助に依存しているため緊急時が発生したときへの対処ができない。

さらに近年、経済の緩やかではあるものの悪化によって引き起こされる国民からの反発も後押しする形で、徐々にIS学園の自立性の確保が目指されてきている。

そこでタイミング良く現れた有力な企業による投資、これに食いつかなければチャンスはもうないかもしれない。

だから、生徒1人のごり押しともいえる入学に比べれば今後で得られる利益は大きく、NAGA社からの要請である特殊部隊4人の学園敷地内での駐在も許可したのだ。

そう、どの企業も手を拱いてIS学園を品定めしている中、世界でも発言力のある企業であるNAGA社の投資が始まれば、それに続くように他の企業からの投資も期待できる。

 

だが、こっちにとってそんなことはそれほど重要ではない。

重要なのは、織斑一夏によってくるテロリストをいかにして釣り上げ、刈り取るか。

ついでに、NAGA社が開発した試作ISのプロトタイプである「ピースメーカー」のデータ収集、である。

銀の鉛玉を模様したネックレスとして待機状態の「ピースメーカー」は今、首から制服の中に入れる形で首に掛けている。

 

さて、気を取り直して。

私は山田先生による授業を聞きながらも観察を始める、情報は多いだけ損はしない。

 

教室のちょうど中央最前列のイチカ オリムラはというと・・・必死にノート書いて、次に教科書とにらめっこして、また慌ててノート書いてと、まあ実にヤバそうだ。

世界で唯一の男性IS操縦者への若干の残念感を味わっちまったが、ひとまずエールを送ることにしよう。

 

教室の最前列、窓側の隅にはホウキ シノノノ。

慌てる様子も無く他の生徒達と同様、時折山田先生の問いかけに頷いている様子から彼女は大丈夫そうだ。

 

前に二つ、右に一つずらした先にはルームメイトであるセシリア=オルコット。

さすがエリートの象徴でもある国家代表候補生というだけあってか、実に余裕そうな様子を見せている。

もっとも、ちらちらとオリムラの方を向いていることから、やはり根に持っているらしい。

 

この2人の問題にどう介入すればベストな結果となるか。

面白くなってきたぞ・・・

 

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———

 

 

 

さて休み時間である今の問題は だ。

教室の中央前方部にいる監視対象、イチカ オリムラなのだが、彼に興味を持った女子達に囲まれてしまい、文字通り見ることができない(・・・・・・・・・)のだ。

こうなってしまったらリスクを冒してでもあのハリケーンの目よろしく集団に混ざるしかない。

そう思い、席を立とうとするが、ふと自分の席の前に1人立っていることに気が付く。

 

「わぁ〜、エヴァヴァってNAGAにいるんだねぇ〜」

随分と拍子抜けするような話方をする少女が目の前にぴょんぴょん跳ねていた。

袖は意図的なのかだぼだぼで、目は眠そうにしている。

 

・・・誰?

クラスメイトのリストを思い出す、布仏(ノホトケ) 本音(ホンネ)

生徒会に勤める姉が一人いる。

 

これだけ?

これだけの情報でいかにも自分が苦手なタイプと接しろと!?

と、これまで接したことの無い性格という道への動揺を軽く覚えながらも返事をするサン。

 

「え、ええと。エヴァヴァ・・・?」

 

「う〜ん、そうだよぉ〜」

恐る恐る指を自分の方に向け首を傾げてみると、えへへぇ〜と笑いながら彼女はずいっと顔を近づけてくる。

 

Mark、Odd、みんな・・・help

完全にサンのペースは彼女に掌握されてしまった瞬間である。

 

そうこうしているうちにこのノホトケの積極的(?)アプローチに突破口を見つけたのか、次々と彼女に興味を抱いたクラスメートが来てしまった。

 

「エヴァレンスさんってNAGAに行ってるの? ねえどんな感じ?」

 

「良いコネ教えてぇ〜!」

 

「やっぱり専用機持っているの!?」

 

「NAGAがセクター88持っているって本当?」

 

「本社の地下にエイリアンの標本あるんでしょ!!」

 

「悪の秘密結社と裏でつながっているって噂聞いたんだけどさぁ〜」

 

ただでさえペースを崩されてしまったといのに、更なる動揺と一度にされる多くの質問がペースを取り戻そうとする彼女に止めを刺した。

 

・・・アイ ニード ヘルプ

しかし、彼女の救援要請は誰にもキャッチされることは無かった。

 

 

 

あれからというもの、休み時間の度にNAGA社へ興味、感心、そしてオカルトや都市伝説好きの女子に質問攻めにあっていた。

休むための時間なのに、休めないってのはどういうことだ。というサンの素朴な質問にさえ、残酷な現実は答えてくれない。

パターンは大抵決まって、ノホトケによるアプローチ→女子による突撃→質問タイム→気が付けば次の授業の最中→休み時間・・・これを全部で5セット、つまりその日の授業の終わりまでやっていたということになる。

 

確かにNAGA社は、ISの登場によって職を失った優秀な人材を世界中から集めた為に、今では世界屈指の軍事関係の企業となってしまっている。

軍事関係とはいってもその分野は数えきれないまでの分野にまで進出しているため、ISもその一つであった。

 

NAGA社はISの研究に力を注いだのだ。

参加した研究者は様々な分野からかき集められたために異なる分野同士が刺激し合い、時にはその刺激がきっかけで急速にその技術力を高めていった。

そう、どの企業や研究機関にもない、NAGAならではの方法でこの力を手にしたのだ。

 

そうなれば当然、IS関係の研究職に就きたがる者にとっては能力さえあれば自分のやりたいようにさせてくれるNAGAは憧れの的にもなる。

そうなれば当然そのNAGAとつながりのあるサンは質問攻めにされてもおかしくはない。

 

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終わった、やっと一日が終わった。

 

寮に戻ったらまずISの勉強して・・・ってあの分厚いやつ終わるのか!?一週間で!!

どうしてあのとき電話帳と間違えて捨てちまったんだオレ・・・

 

でもその前にまずやらないといけないことが———

 

そんなことを考えながら、教室から出ようとした時にふと1人の女子が目についた。

確か一日遅れて学校に来たアメリカのなんとかって会社に勤めている人だったはず。

 

オレはこのとき、休み時間の度に質問攻めにあったために、ぐったりとしていたそいつに妙な近親感を覚えた。

 

これはまさしく俺と同じだ!

 

そう、仲間と出会うことのできた感動にも近い喜びを感じた俺は迷うこと無く声をかけることにした。

 

机に突っ伏しているところを見たところ、疲れているようだ。

よし、ここは一言労いの言葉をかけてやろうじゃないか!

 

「よ、お疲れさん!」

 

「Emm? Hhm? ・・・oh no.」

 

英語かよ・・・

でも確かあのとき日本語しゃべっていたから大丈夫なはず

 

「大変だよな人に囲まれるって! オレなんか昨日からパンダみたいに囲まれて ってこの意味分かるか?」

「・・・NO.」

よし、言葉は通じている!

 

「ああ、つまりだ。 見せ物になったみたいで辛かったよなってことだ! これからよろしくな」

そう言ってええっとヨン?だっけか・・・違い違う、サンだ!

俺は机に突っ伏しているサンを励ますように、肩を軽く叩いてやる。

肩を置いてもサンの突っ伏した姿勢は一切変わらない。

こうも反応がないと、昨日今日とほとんどが返すばかりの会話だったオレは、もっと反応が見たいというコミュニケーション欲に駆られる。

 

さらに話題を振ろうとかと考えていると、突然サンは顔を上げてこちらを見てきた。

奇麗な深いブルーの瞳がこちらを見てくる。

けれども、俺はその輝きに欠けた瞳になんともいえない不気味さを感じてしまう。

 

俺が何かと思っていると、真顔でこう言ってくる。

「なあ、お前セシリア=オルコットとなにかあったのか?」

「セシリアって同じクラスのセシリアか?」

俺がそう聞くと、サンは突っ伏した姿勢を崩さず器用に顔だけをこちらに向けて言った。

・・・なんだかこわいぞ

 

「そうだ、金髪のロング、前の部分がドリル状になっている。そのセシリア=オルコットだ」

 

ドリルと言われ若干吹き出しそうになるが、まじめに話しているサンの顔を見て俺はすぐに顔を引き締める。

サンなら分かってくれそうな気がする。

初めて話したばかりだけど、なんだかそう思えた。

 

「ああ、いきなり話しかけてきたと思ったら急に怒り始めたんだよ。挙げ句の果てには俺たちのことを猿だのサーカスだの言い始めたからいい加減腹が立って言い返したんだ。そうすると今度は決闘を申し込んできたから、俺は 」

「引き受けた。と」

「ああ」

サンは突っ伏した姿勢から起き上がったと思うと、頬の部分を覆い隠すように右手を顔に当てて少し考えていた。

その切れ目といい、妙に様になっている。

やっぱり、外国人ってこういうポーズが似合うんだろうか?

昨日のあのセシリアってやつの胸を張るポーズだって妙に様になっていたし・・・

そういえば胸もなかなか大きかった気がっていかいかん。

 

俺がそんなことを考えている間にサンは考え終わったらしく、フレンドリーな笑みを浮かべた表情で話しかけてきた。

・・・っていうか、日本語うまいな

 

「なあ、オリムラ。お前はあくまで普通に接したんだな」

そうだ、俺は普通に接した。

 

「ああ、そうだ」

「そしてセシリアが突然怒ってしまったと」

 

俺の返事を聞いたサンは再び考え始める。

と思いきや、なにかわかったらしい。

突然表情を変え恐る恐る質問をしてきた。

「いや・・・待てよ。オリムラ、お前まさか・・・ちょっとそのときを再現してもらっていいか」

「? 別にいいぞ」

 

サンは席を立ち、俺を自分の席に行くよう顔で促してくる。

なんか探偵みたいに本格的だな。

 

おれが席に座ると、サンは質問してきた。

「そのとき、セシリアはどう近づいてきたんだ?」

 

「ええと、確か・・・」

 

——————

 

———

 

 

「・・・ああ、そう言われれば目を合わせる前に返事をしちまった気が」

 

つい深いため息をつく。

謎は大体解けた、「文化摩擦」ってやつだ。

 

国際力に今だに乏しいこいつのために、分かりやすいよう説明を始めようじゃないか。

「なあオリムラ、もし緊張したお前が勇気を出して相手に話しかけたとしよう。

相手は外国人、それも自分は今見知らぬ土地にいるんだ」

「ああ」

きょとんとしたオリムラは、なにもまだ分かっていない表情だ。

 

「仮にだ、そいつがお前に適当な返事をしたとしよう。お前は不愉快を感じるだろ」

「まあ、確かに。でもよ、あの後ちゃんと話をしたぞ」

 

ため息をこらえ、続ける。

「そこだ。外国語って言うのは結局意味(・・)が同じだけであって、それが含んでいるニュアンスとか雰囲気までその場では再現しきれないんだ。 お前は初対面のセシリアに対して何気なく返事をしたんだよな。 そしたら、しっかりとしたコミュニケーションを重視する西洋人はそれが適当にあしらわれているようにも感じちまうんだ」

「そうういうものなのか?」

「ほらそれだ。今のは思い込みの激しいやつのパターンだと『俺そんなの知らなかったんだ、わるいな。でもここは日本だからわからなくても仕方ないだろ』って風にも感じちまう。

それに・・・相手は歴史ある貴族だ。平民の俺たちは普通に接するにしても最低限、目はあわせないとだめだ。される方からしてみると嫌われているんじゃないかって思っちまう」

「ああ、そうか」

「そうか、じゃねえだろ!途中経過はどうであれ根本としてはお前が悪いんだ。

 

ちゃんと目を合わせて謝ってこい!」

 

自分のしでかしたことの重大さに気が付いていないこの男に若干の苛立ちを覚えちまう。

それもそうだ、国家代表候補生、それもイギリスの女王陛下が一目置く貴族となれば分が悪すぎる。

 

それに加え、NAGA社の表向きは護衛している男とイギリスの名門貴族の当主との仲が悪くなられてしまっては、NAGA社に投資を行っている他の貴族へのイメージが悪くなってしまう恐れもある。

 

なによりも、この男は世界で1人だけ(・・・・・・・)ということの責任にも気が付いていないし、こいつのとる行動によっては、世界の男性と女性の平等化がまた一歩遠のきかねない。

 

「だけどよ、セシリアは日本人を!」

「あ や ま っ て こ い」

「・・・分かったよ」

 

 

 

 

「・・・ほら行くぞ」

さて、私も仲介役のためについて行くか。

そう思い教室から出ようとした矢先、後ろについてきていたオリムラがあっと何かに気が付く。

「なんだ、どうかしたのか」

「セシリアって・・・本当に貴族だったんだな」

 

私はそのとき、人生で初めて”ずっこける”というものを体験した。

 

——————

 

———

 

 

「へえ、以外と近かったんだな・・・」

「そりゃあ同じ寮の中で同じクラスなんだ、近くて当然だ」

2人の目の前にはサンと、セシリアの部屋の扉がある。

ただの扉だが、一夏にとっては越えなければならない関所の様に思えてしまう。

 

この扉の向こうにはあのセシリアがいる。

互いに干渉しなければ互いに何も傷つかずに済むのだが、それは同時に決定的な何かが足りなくなってしまうかもしれない。

確かに一夏は再びセシリアと対峙することに若干の抵抗を感じるも、その一度だけの対峙で互いを許し良い関係を築けると考えれば些細なものだ。

 

サンは様々な思惑と同時に、ただ純粋にこの2人には仲直りをしてもらえれば。

そう思い一夏に声をかける。

「ついたぞ。いいか、ちゃんと相手の目を見てコミュニケーションをしろ、そして感情的になるな」

「わ、わかった」

改めてコミュニケーションについて意識をするとさすがの一夏も緊張を感じるらしい。

だが、一夏の気が変わる前に仲直りさせなければ・・・

 

「セシリア、入るぞ。 って・・・まじかよ!?」

サンはこの状況が最悪すぎるあまりに逃げ出したくなりそうだった。

 

部屋に入る前にノックをしたのはまだ良かった。

だが、バスタオル姿のセシリアがそこにいた。

 

美しいブロンドの長く伸ばされた髪からは艶めかしく水が滴っており、その体の前を隠すかのように手に持ったバスタオルの隙間から僅かに見える体はほどよく引き締まっているようにも見える。

その一糸纏わぬ姿は彫刻が動き出したかのような芸術性を感じさせ、見る者を惹き付ける魅力がある。

 

このとき、セシリアはうっかり部屋のテーブルに置いてきてしまったブラシを取りにシャワー室から出てきてしまったのだ。

そしてはしたないと知りながらも慌ててシャワールームに戻ろうとしたちょうどそのときに、2人が部屋に来てしまった・・・

 

一夏はまじまじとそのバスタオル越しの裸体を見そうになるが、なんとか理性で視線をセシリアの瞳に固定しようとする。

視線の先には抗議するかのように羞恥心と怒りを含むブルーの瞳がそこにあった。

 

女性の裸体を前にし、一夏は軽くパニックのあまり頭の中で出来上がっていたセリフを言い始める。

「よ、よう。 き 昨日はわるかったな。 仲直りでもさせてもらえれば・・・と・・・思いまして」

一夏はしっかりとセシリアの美しいブルーの瞳を見つめて謝った。

 

これが予定通りであればどれだけ良かったことか・・・

 

セシリアの驚きに見開かれた瞳は次第に涙を潤ませ、恨めしそうに一夏を睨みつける。

 

「うー・・・ううー!」

威嚇するかのようにうなり始めたセシリアに危機感を感じ取ったサンは即座に判断を下す。

「オリムラ、悪いことは言わない、さっさと逃げろ」

そして、一夏は待ってましたと言わんばかりに即答する。

「喜んで逃げさせていただきます!あ、それとセシリア、できれば今度こそ仲直りを」

「早く行けっての!!」

 

さて、脱兎のごとく駆け出していった一夏の次はセシリアをどうにかしないといけない・・・

涙をいっぱいにためた目でこちらをにらんでくるが、その垂れ目と美貌も相まってか全然怖くはない。

むしろ、この小動物が必死に威嚇をするかのような必死さに、もっといじめたくなるような気持ちが湧いてきてしまう。

 

このままセシリアを攻めてみたいという誘惑と、友人として慰めるという選択肢に迷っていると、涙を浮かべたセシリアはぽつりとつぶやいた・・・

「絶対に・・ない ・・・絶・に・・・」

 

セシリアの異変に気が付いたサンが焦点のあわない瞳でぶつぶつつぶやいているセシリアに耳を近づける。

 

「———ない・・・絶対に許さない 絶対に叩きのめす 絶対に許さない 絶対に叩きのめす 絶対に(以下略)」

 

口調でさえ変わってしまったセシリアに恐怖を感じるサン。

そして同時に、水だと思って注いだものが油であったことに頭を悩ませる・・・どうしてこうなった。

まずは、このセシリアをどうにかしないと。

 

「おーい、セシリアー? おーい。 Hello〜? ってうわ!」

顔の前で手を振るなりして反応を待っていると、突然顔を上げたセシリアは顔を上げてくる。

同時に顔の前で振っていた手を握られ、驚きの声を上げるサン。

だが、セシリアは何かを決意した目でサンの瞳を見つめる。

青と蒼の瞳が交差した。

 

「私、決意いたしました!」

「お、おう」

「あの殿方を完膚なきまでに叩き潰すためにも、訓練に付き合ってくださいませんか!?」

 

サンは熱くなってしまっているルームメイトを見て冷や汗を流した。

まずい、このままではセシリア側に就くことになっちまう。

だが幸い「ピースメーカー」はまだ整備環境が整っていないから、セシリアの依頼を仕方なく(・・・・)断ることができる!

けど・・・マネージャー程度のことはしても大丈夫だろ。

 

「セシリア、悪いけど・・・って今度はなんだ!? セシリア悪い、ちょっと着信が」

そのことを言おうとサンが口を開くと同時にポケベルのバイブレーションが応答を急かしてくる。

 

断りを入れながら、握られていない方の手でポケベルを確認すると、「ちょっとこっちにこい。できれば早く」という旨を表す数字が表示されていた。

一度に多くのことが起きることに軽く舌打ちをしそうになるのを耐え、もう片方の手でセシリアの手をぎゅっと握り返す。

「悪ぃ、ちょっと呼び出しくらったからよ。 少し待ってくれないか」

するとセシリアは表情を和らげ、やんわりと微笑む。

どうやらいつの間にか怒りは収まったようだ。

さすが当主というあってか、感情のコントロールはきちんとできているらしい。

「ええ、お茶を淹れておまちしておりますわ」

 

それに返すようにサンは少年のような笑みを浮かべて言った。

「ありがとな・・・それと、セシリア」

「どうしまして」

「どうやったらそんなにプロポーション良くなるんだ」

 

セシリアはサンの視線を追い自分の体を見る。

 

そこには一糸纏わぬ、精美の取れた絹のように美しい己の裸体があった

 

あまりに興奮しすぎていつの間にかタオルを落としていたことに気が付かなかったのだ。

 

セシリアが両手で己の体を隠すと同時に、サンは部屋を飛び出していく。

部屋に取り残されたのは口をぱくぱくとさせる英国淑女だけであった・・・

 

—————

 

———

 

 

「おう、来たな」

待ち合わせ場所である、学園敷地内の公園の入り口にサンとウッズはいた。

 

「なんの用だよ、こっちはいろいろと忙しいんだよ」

走っていたのか、サンの呼吸は若干荒めだ。

そんな彼女にお構いなしに隊長は公園の中を歩き始める。

「まあそう荒れるなや。良いニュースと悪いニュースがある」

サンは歩幅を合わせ、隊長の横に並んで歩く。

「悪いニュースから」

「1人、編入してくる。 中国人だ」

サンはよくわからないという顔で、夕日に照らされた隊長の横顔を見る。

別に1人編入してくるだけで、影響はないはずだ。

 

「それも国家代表候補おまけに専用機持ち。

名前は(ファン) 鈴音(リンイン)、陸軍の幹部である叔父を持ち、そのコネでIS学園に編入する模様。

両親がSum(一夏)の近所でレストランをしていたため、彼女とSumは互いに面識があると推測される。

さて、ここからが本題だぞ」

一息入れる間に、サンとウッズの顔は1人の兵士のものと変わった。

 

「母親である(ファン) (リン)は中華人民民主国国家安全部 第18局 国外重要人物情報収集部隊(狐隊)に所属。

定かではないが、中国人と日本人のハーフらしい。

現在は国内で極秘指名手配中だが38歳で夫と離婚後、その後は行方不明。

諜報班が情報を集めているものの、生死すらわからない。

だが、功績を見る限りそいつは生きているに違いないだろうよ、なんせCIAのパラミリ《実力行使部隊》とロシアのSVRの特殊部隊、挙げ句の果てにはイスラエルのモサドとまでやり合う度胸の持ち主だ。

残りの情報はあとで見ておけ」

緑にサンを見ることなく悪いニュースを伝え、そのまま封筒を渡す。

 

サンは重要な情報を全てを覚え、続けるよう促す。

「それで、良いニュースは」

 

それを聞いたウッズはにんまりと笑ったかと思うと、不意に自分の影になっているサンの方を向いて言った。

「なんと、「6日後だったはずの予定が繰り上がりましたぁ〜」なぁんて、巨乳の可愛らしい女性が教えにきてくれたんだぜ」

「・・・なあ、それってまさか」

サンの脳裏をよぎったいやな予感、そしてどうか外れてくれと彼女は祈った。

だが、ウッズはそんな彼女の心境を知らずしてか、こう言い放った。

「喜べ、「ピースメーカー」の整備スペースが確保できた。 これで思いっきり飛び回れるぞ・・・どうした、嬉しくないのか?」

 

サンは入学してから立て続けに起こるハプニングに、目眩を覚えそうになる。

そう、これでセシリアの練習に付き合うことが可能となってしまったのだ・・・

「ああ、タイミングの最高さに涙が出そうだ」

 

ウッズは死んだ魚のような目になったサンに深く言及はせず、2、3度軽く頭を叩いてやる。

普段なら問題があれば迷わず相談してくるサンだが、今回は自分で解決しようとしているのを悟った彼は、彼女が抱えているであろう個人の問題を任せることにしたのだ。

 

後はとりとめも無い会話を数分していたものの、間もなくして2人は別れることにした。

 

 

サンは帰る途中にて、道場の出入り口で疲れ果てた姿でいる一夏となにやら不満そうな表情をした箒を見たものの、関係ないと言わんばかりに2人と鉢合わせにならないルートを選ぶ。

 

もうすでに避けられないと判断し、彼女はセシリアの側に着くことにした瞬間でもあった。

もっとも、友人の裸を見たこともあるし、ISの開発者である姉を持つ箒の指導という大きなハンデもあるのだ。

 

 

吹き抜けた肌寒い風に肌をふるわせ、少女は帰路を急いだ。

 

 

とある部屋の窓から己を見つめる視線に気が付くことなく




少し前、男達の事務室にて
山「失礼します」
W「Hmm? Come in. Oh、これはMs.山田、ようこそ。 どうかなさいましたかな」
山「あ、Mr.Woods。 ひとつ学園よりお伝えすることがございまして」
W「?ほうほう、それとミスターなんてよしください、コイツらと同じようにWoodsと呼んでください」
コイツら「「「(珍しく敬語だ・・・)」」」
山「できませんよ私には・・・目上の方を呼び捨てにするだなんて」
W「・・・まあ、どうぞ好きに呼んでください。それで、話とは」
山「あ、実は申請されていたNAGA社専用のISの整備スペースが予定よりも早く確保できそうなので、その旨をお伝えに伺いました」
W「おお!それは良いことだ。 具体的にはいつ確保できるので?」
山「ええと、遅くとも明日の学校終了時には使えるはずです」
W「それはそれは・・・随分と早いことで(本部め・・・圧力かけやがったな)、電話で呼んでくだされば、こちらから出向いたものを。わざわざ出向かせてしまいましたな」
山「あ、気にしないでください。これも仕事ですので! それでは失礼しました(体大きくて怖かったぁ)」
・・・・・
W「Echo、どう思う」
E「隊長、あれはいかんせん、でかすぎる気がする。俺はあんなの見たことねえ。MarkとOddは?」
M&O「「同じく」」
E「それにしても・・・」
W&M&O「「「???」」」
E「日本人は仕事熱心で、それも丁寧だ。 サンもあんなんだったら・・・俺はつい、そう思っちまう」
W「じゃあ、あんな風に胸でかくて、よく懐いてきて、それでもって丁寧な言葉遣いのアイツ(Sun)なんて想像できるか?Hey,Guys!?」
Guys「「「NO!!!」」」
W「そもそも、巨乳なSunを想像したことあるか!?」
Hentai「「「Never!!Never!!Never!!」」」
W「よし、Sunにこのことを伝えるとするかな(ポケベル入力中)」
Guys「「「ッッッッッ!!??」」」
W「ッハッハッハ! ポチットな」

Sun「セシリア、悪いけど・・・って今度はなんだ!? セシリア悪い、ちょっと着信が」
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