IS インフィニット・ストラトス 3番目の兵器と呼ばれた少女 作:DON-KAME
一日の終わりを象徴する夕日。その夕日が地平線へ顔を渦組めていき始めてからまだ間もないそのときに、1年A組の副担任である彼女、山田 真耶は黙々とパソコンに学園のデータベースに保存されるデータを入力していた。次々と打ち込まれていく1人の生徒のプロファイル。
本来ならば担任である千冬がするべき仕事なのだが1年生の寮長、IS委員会の評議員など元ブリュンヒルデである故に
クラスに関わる仕事の優先順位が必然的に下がってしまい、どうしても手が回らなくなってしまう。
そのため、真耶は自分から進んで千冬の手伝いを行っているのだ。1人の職員である彼女でもクラスに関わる仕事なら担任を補佐するという名目で手伝うこともできる。
名前:Sun=Evalense
身長:167cm
体重:53kg
血液型:AB+
出身国地名:アメリカ合衆国ケンタッキー州XX市△△通
国籍:アメリカ合衆国
所属企業:New America Global Armaments
本人が入学の際に提示した個人情報とNAGA社から提供された情報を照らし合わせては、慣れた手つきでキーボードを軽やかにたたいていく。
(民間軍事企業から送られてくると聞いたので一体どんな子かと思いましたが、本人も年相応に可愛らしくて、それにいい子ですし安心しました。今でもあの緊張した、口をきゅっと閉めた顔が思い浮かびます。ふふ。
それにしても
そんなことを思いながらもキーボードを叩く指は止めないあたり、優秀な職員であることが伺える。
そんな調子で滞り無く情報の入力を終えた彼女が休憩がてらに背を伸ばすと、その驚愕的とも言える大きさを誇る胸がますます窮屈そうに服へ抗い、強調される。
放課後の職員室では決して少なくはない、というよりはクラスの担任を受け持つ教師のほとんどが彼女と同じように己の業務をこなしていた。
本日の事後処理から明日、明後日、そのさらに先への備え、さらにはそう遠くない「クラス対抗戦」と言われる各クラスの代表同士がISを使用した試合を行うという行事に備えての準備も少しずつではあるが始まっていた。
今のところ世界で唯一のISに関する人材を輩出するための教育機関であるIS学園は、その行事の特殊さでも有名であり、「クラス対抗戦」も新たに入学した生徒の歓迎式ともいえる。
ISは世間一般ではまさに雲の上のような存在だ。
だが、そんな雲の上の存在によって繰り広げられる戦闘を観戦し、身近な同じ学年どうしで競わせる。
それによって「インフィニット・ストラトス」という存在に慣れさせようという目的も含まれている。
統一されたオリジナリティ溢れる”制服”。
”行事”の特殊性とその多さ。
学園の本来の目的でもある”イフィニット・ストラトス”の専門的な知識の会得。
これらの特殊な要素こそがIS学園の入学志望の桁外れとも言える倍率を生み出しているのは、言うまでもない。
話を戻そう
いざ彼女がこれまで入力したデータに目を通そうとしたその時、職員室の扉が唐突に開かれる。そこに立っていたのは1年A組の担任である織斑千冬ではないか。
その黒いスーツが後ろで一つに纏められた黒髪、そして威厳を感じさせる鋭い目つきと相まってその美しさを助長させている。
「山田先生。少し見せて欲しいものがあるんだが、いいか?」
世界を騒がせた1人の青年、織斑一夏の姉であり、かつてブリュンヒルデという名で呼ばれた彼女はハイヒールの靴音と挨拶の声を職員室に響かせつつ真耶の席へと歩いていく。
「ええ、いいですよ。何を見せればいいんでしょうか」
「1年A組のサン=エヴァレンスなんだが、少しデータを見せてもらえないか」
「あ、ちょうどよかったです」
ちょうど今できたところなんですよ。と真耶が見やすいように向きを変えた空中へ投影されたホログラフィックディスプレイを千冬は見つめる。正確には、ディスプレイに表示された1人の少女の個人情報なのだが。
「いやあ、ついに
「ああ・・・そうだな」
そう言う真耶だが、千冬はなぜかデスクトップをじっと見つめたままあやふや気味に返事をする。
その様子にどこか不安を覚え始める真耶。
不思議に思った彼女が千冬の視線を追ってデスクトップを見つめても、そこにはサン=エヴァレンスの名前と顔写真、そして名前の上に表示されたNAGA社のロゴマーク。別にこれといった問題は無いはずなのだが、こうも凝視されていてはだんだんと不安に駆られてしまう。
もっとも、その目に見つめられては緊張を通り越して恐怖にも近い物を覚えてしまうのもしかたがない。
「あのぉ〜・・・どこか間違っていますかね」
恐る恐る真耶が訪ねてみても画面を凝視しているばかり。
一瞬日頃の疲れが溜まったせいで勘違いをしてしまっているのではないかと考えるも、別に疲れた様子も無いためますます不安に駆られてしまう真耶。
「いや、なんでもない。手間をかけたな、すまない」
そんな後輩である真耶の心境を悟ったのか、千冬はそう言うとはきびきびとした足取りでと自分の席へと行ってしまう。
1人取り残された彼女は己の未熟さにため息を吐きそうになるも、後悔は非生産的な行いだ。
気を取り直すと改めて自分の方へ向かせたディスプレイを見る。
そこに映し出されているのはエヴァレンスの顔写真と、三角形の形をした自分の尾を噛む青いヘビ、ウロボロスをイメージしたNAGA社のロゴマークだ。
そしてロゴの三角形の中にはN、A、G、Aのアルファベットが隠れているとも言われている不規則に絡み合った線。まるでだまし絵のようにも見えなくもない。
真耶も初めて見た時はただの変わった三角形だと思ったのだが、同僚に解説されると確かにコミック調に描かれた3角形を描くヘビと、4つのアルファベットが確かに3角形に囲まれた部分にあるのを確認し、驚きの声を上げたのはまた別の話である。
企業のロゴというものにはほとんどと行って良いほど”意味”が含まれている。世界中で使用されているインターネット通販会社のロゴには社名の下側をまたがる形で始めの文字のAから途中の文字のzをつなぐ、つまり
しかし、NAGA社のロゴの中から隠された文字や絵を見つけることはできても、永劫回帰の象徴であるウロボロスの表す”意味”は未だに企業から説明が成されていない。
推測が飛び交っているというのが現状である。
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「以上が、オリムラとのファーストコンタクトです。自宅からの通学は学園側からの計らいで寮に移行した模様。さらに、彼は倉持製の”専用機”を手にします」
「そうかそうか、わかったわかった。それにしても・・・まさか向こうからコンタクトを図ってくるとは。参ったよ本当に。日本の
この話し方は慣れたとはいっても、相変わらず違和感に塗れている。常にこちらの腹を探ってくるような、かといって意識しなければ普通に話しかけてくるようにも聞こえる。隙を見せて何度考えている事を引っ張りだされたことか。
「私の目的に対象はまだ気付いておりません。今のところはまだ不確定要素が多いですが・・・脅威レベルは下げても安全かと思われます。私から見たところではまったくの弩素人です」
若干ハスキーな若い男の声が返ってくる。この2年聞き続けていた声だ。
ん?あれ?3年だっけか
「いや、脅威レベルは維持してくれ。年頃の子供は何をするかわかったもんじゃない。
さてと、そんなことはまあさておいてだ。そいつの監視はチームが行うことになったから君は”アレ”の実戦データを採ることに専念してくれ」
つい一週間前には彼、つまりイチカ・オリムラを近くから可能な限り、一挙一動を見る覚悟で監視をしておけって言っていたくせに・・・まあ、仕事はさせる気は満々と言うのも気に食わない。
そんなことを思い、軽く心の中でため息と毒づきをする。こんなことにはもう慣れっこだ。
そう、去年中東に行く途中だった。とつぜん輸送機のハッチが開いたと思うと命令だと言われてヒマラヤ山脈に突き落とされた事があった。まあ、そこで現地の
こいつに抗うのを、山々がみるみる近づいてくる中、私はパラッシュートの自動展開システムが作動するまでの間に諦めた。
「・・・よろしいので?」
「ああ、行動を共にするときくらいで別にいいからね。まあ、ガールフレンドにでもなって一緒にいる時間を作ってもらった方がありがたいけど」
「了解」
「あと、なんだっけ?えーと、セシール?「セシリアです」そうそうその子。その子も一応マークしておいてくれ、監視兼警護もヨロシク!最近その子の周り嗅ぎ回っているやつらがいる、恐らく拉致部隊だ。4ヶ月前の対テロ宣言をした他の英国貴族たちにも部隊は送ろうはしたけど、オメガ社のヤツらに先越されちゃったんだよな。しかもそっちに増援送る余裕ないと事務所の連中に言われるし、
素っ気なく応答をするも、相手は続ける。こんなやりとりが3年も続けられているのだから、もはやこれが普通となっている。仕事の話と命令を聞き、あとはさりげなく愚痴を混ぜてくる話を適当なところで繰り上げる。
簡単だ。こんな私にもできる。
「話は以上で?」
「あとそれと、ちょっと用事でそっち行くことになったから!
いやいやいやぁ、そっちの学園の偉い人に呼ばれちゃってさー、『”お茶会”しませんか』って。こっちはアメリカ西海岸内戦のパワーバランス調整で忙しいってのに。
アジアの半島だって予想よりも早く終わっちゃいそうだしさぁ〜、やっぱり試作のラウンドハンマー(YGF-4地対地ミサイル)あげちゃったのがあれかなーって」
流れるような動きでそのまま通信を終了させるボタンを押そうとすると、慌てたような声が聞こえてきた。
・・・なんだよ、まだあんのか。
「あ!待った待った」
いつもなら報告が済み、愚痴が始まると通信終了のボタンを押すこととなるが今回は違った。
相手は何か思い出したような声を上げたと思うと、通信を切ることなく続けやがった。Damm it.
「ところで、学園生活は楽しんでいるかい?」
またコイツはこんなことを聞いてくる。所詮は暇つぶしにしか過ぎないだろうに。
きっとにやけた顔をしながら聞いてきているに違いない。絶対。
「はい、任務の支障を来さない程度に」
どこかからかうようなものを含んだ声に対し、さっさと朝の走り込みを終わらせたい私は怒りを堪えいかぶしげに返事をする。
「そうかそうか。だが、君はあくまで国連によって依頼を受け、NAGAによって派遣された”社員だ”。仲の良い友達つくって、授業を受けて、おしゃべりして・・・実にすばらしいじゃないか!うらやましいくらいだよ本当。
誰かと付き合ってみたらどうだ?良い人生経験になるぞ」
突然コイツは何を・・・
自分の頬が引き攣るのがわかる
私は至って冷静を装って、言葉を紡いだ
「
沈黙
3秒ほどだろうか。息を吸い込む音が聞こえる。
「・・・・・ああ、ええと。うん。まあ、”そういう経験”も大事なんじゃ、ないかな?———」
「・・・・・ッチ」
ごまかしのような置き土産と共に通信がお構いなしに切れる。
取り残された私は舌打ちをし気だるそうにため息をつく。
通信終了と表示された画面を前にパイプイスにもたれ掛かかってバランスをとり、十数秒ほど足を遊ばせる。
今日の予定を頭の中で整理。朝練、朝食、授業、セシリアとの訓練、こちらを監視する目の持ち主の特定・・・スクールライフのスタートを切ってみればそこは山積みとなった問題と忙しさ。
でも、なんだろうか。この忙しさもさほど嫌とは思えない。むしろ自分が充実していくようにも感じられる。
少なくともアドレナリンで充実するよりも健全なのは確かだ。
イスから立ち上がり、デスクトップ型のパソコンの画面をNAGA社のロゴがメインの画面に戻す。
この部屋は近年IS学園が増加を続ける受験者の倍率増加に対応するため、生徒の受入数を増やそうと新たに建築された寮の事務所だ。
けれどもIS学園は国からの援助に依存している。ただでさえ莫大な予算がISを扱う以上必要なせいで、予算を増加させてもらうにはこの国の政治家の御機嫌取りを少なくとも数年間は続ける必要があるらしい。
そこで呼ばれたのが戦争経済によって得た一国の国政予算にも匹敵する資金をその手に握るNAGAってわけだ。
最近は世界の”景気”が澱み始めたらしいから、世界中の企業が協力して準備してきた火種を起爆させるってアイツが言っていたのはこういうことか。
IS学園は独立した資金ルートを。
NAGAは他の企業に先駆けてISに関する開発技術の獲得。
そして宇宙開発の成功による国家と平和に暮らす人々からの
企業連盟から金を吸い取ろうとする国家への抑止力の会得。
つまり、NAGAは世界に名高い平和の象徴でもある「IS学園」でさえ飲み込もうとしているのか・・・
まあとりあえず、この部屋は一時的に使用させてもらっている部隊の宿舎兼派遣事務所でもあるから当然このパソコンは部隊の誰でも使う事ができる。
これでパスワードを入力しなければ”あいつ”と通信することはできない。
パイプイスを机に戻し、コンピューターをスリープモードに。あとはドアノブをひねるだけだ。
部屋を出るとそこには壁に背をもたれていたウッズがいた。
その目は閉じられどこか老いを感じさせる表情を浮かべている。
私が”通信”をしている間はたとえ同じチームであるウッズであろうとも、部屋に入ることは許されていない。
「・・・終わったのか」
ドアが閉まると同時にそうつぶやくウッズ。
「 ああ」
「ほら、行くぞ」
気まずそうに返事をする私を気にすることなく、彼は歩き始めた。その表情は、後ろからでは伺うことができない。
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———
—
話は飛んで放課後。
ア”?もっと可愛い生徒達のにゃんにゃんとか巨乳の先生が見たいだって?
自分の鏡見て我慢してろ。それかアニメのブルーレイでも買って見てろ。
どうだ、嬉しいだろ。小説の書き下ろしもあるぞ?
「どうかしまして?」
「あぁーいや、なんでもない」
セシリアから声をかけられるも、私は何事もないかのように返事をする。全体的に青い印象を受けるISを身に纏ったセシリアに対してこっちは灰色一色のISだ。
いつも使っている軍用の全身装甲が施されたやつと違ってIS学園で使うのはスポーツバージョン。
腹を覆う装甲と頭部装甲は取り払われ、肋と脇腹に申し分内程度の装甲がある程度だ。
スラスターの出力も控えられている。
そしてなによりも、この体に密着するISスーツもあってか、ボディーラインが丸見えだ。
ISスーツは登場者とISとの接続の障害となる衣服を最小限にするために作られた特殊な繊維で作られたものだ。
衣服などを身に着けている時とISスーツを身に着けている時とでは動きやすさを始め、ISの反応速度も後者を身につけていた方が良い。
加えてカーボンナノチューブの技術を応用した特殊繊維を使用しているからゴムよりも高い伸縮性と耐久性をもち、さらに肌触りも良いし下手な運動着よりも動きやすい。
拳銃弾といった小口径なら弾丸の運動エネルギーは相殺できないものの、弾丸そのものによって身につけている者の肉体が破壊されることを防ぐという防護能力の高さもISスーツの特徴とも言えよう。
こうやって、解明が進まないにもかかわらず、開発だけが進んでいくのがISというものだ。
ちなみにあくまでISは宇宙開発を元に開発、つまり人類の進展を目的とした開発物であるため、ISに関わるものは国際IS機関からの援助で手の届きやすい値段で市場に出回っている。
つまり何が良い言いたいかっていうと、ISスーツの原価は一番チープなものでこの国の単位で250万は少なくともする。
そんな魔法のようなISスーツを開発したのは日本人。
なのに、露出の多いデザインをもう少しマシにできなかったのかって。それだけが言いたかったんだ・・・
この第4アリーナはもっぱら専用機、つまり自分専用のISをもっている優秀な生徒たちがほぼ独占できるアリーナだ。
幸運にも上級生の予約は入っておらず、同学年である4組のもうひとりの名前も見当たらず、空白となっていたこの時間帯に滑り込んだというわけだ。いやあツイてたよ本当に。
おかげで思う存分戦う事が出来るからな。
「そんじゃ始めるとするか。まずは軽くからだな。遠距離戦から中距離線へ、最後に近距離戦に展開していくってのはどうだ?」
「ええ、構いませんわ」
まずは互いの実力を把握する必要がある。そのためにもまずは・・・この方法でいいんだよな?「セシリア=オルコットの練習に付き合っても良いか」ってリーダーに報告したものの、帰ってきたのは好きにしろの一言ときたもんだ。
こりゃ試行錯誤でやるしかない。
今回、ISのメンテナンスはしていないけど1週間のメンテナンス不要っつうテストをしねえといけないから、大丈夫のはずだ。ルームメイトの練習に付き合えて、それでノルマも達成できる。まさに一つの石で2羽の鳥を落とすってやつだ。今んところ注意もされていないからノープロブレム。
楽しい楽しいトレーニングの始まりだ
私がNAGA社製12.7mmアサルトカノン「シャーリー」を右手に、同じくNAGA社製30mmスナイパーカノン「リーズ」を左手にコールすると、セシリアもまたその大きな特殊レーザーライフル「スターライトmkIII」をコールし、こちらに照準を向けてくる。双方共に
———Warning!! Enemy'"Infinite Stratos" change to shooting mode.(警告!敵IS射撃姿勢に移行。)
———Observe enemy's "trigger".(トリガー確認)
———Enemy charge the first enegy bullet.(初弾エネルギー装填)
容赦ないな。
警告音を聞きながらも気持ちを落ち着けるためにゆっくりと息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
これは命を賭けた実戦なんかじゃない。かるいじゃれ合いみたいなもんだ。大丈夫、リラックス。程よく気を抜け。
———よし
一瞬の静寂
閉じられていた視界が色彩にあふれる瞬間、一気に後方のアリーナの壁にまで後退。
動き出した瞬間にセシリアはこちらへレーザーを放つも、左後ろへ下がる形であったために機体を擦る程度で当たることはなかった。
初弾を外してしまったことを気にする暇もなく、セシリアはすかさず私がカウンターとして放ったアサルトカノンとスナイパーカノンの弾丸に対し上下左右へと掴み所の無い3次元的な回避行動を取り始める。
アサルトカノンで回避行動をとらせ、スナイパーカノンで隙を狙い撃つ。基本中の基本の戦法だ。
だが、その基本も戦法であることに変わりはない。油断すれば痛手を負うことになりかねない。
秒速2発というアサルトカノンの連射速度から生じる弾幕の隙間をセシリアは冷静に見つけ出し、なおかつスナイパーカノンが狙っているであろう意図的な弾幕の隙間をスナイパーカノンの銃口の向きから判断し、機体を予測した位置よりずらした場所に移動する。
ISの機動は操縦者のイメージ通りに動く。
私もそうだがセシリアを含め、たいていの操縦者は
それ故にそのイメージが乱れてしまえば機体はバランスを崩し、大きな好きが生まれてしまう。しかし迫り来る弾幕を前に呼吸を乱さず、冷静に判断し、なおかつ先読みとスラスターの制御を同時にこなしている様子から、国家代表候補生の名は伊達ではないことを改めて見せつけられる。
いつのまにか隣接する大型のアリーナを共同使用していた生徒達も代表候補生と一大企業から派遣された生徒が訓練をしていると気付き、技術を見、盗み、吸収するために観客席へと集まってきていた。
もはやハイパーセンサーのおかげで死角の存在しない私の”目”には観客の中には上級生もちらほらと写っていた。
たとえ下級生だとしても技術を持っていることには変わりない、自己鍛錬に関しては熱心である彼女達もまだ見ぬ技術を見ようとやってきているんだ。
アリーナ内での録画は原則厳禁であるために、直接己の目で見る必要がある。
映像にはないその場の空気、戦闘から流れてくる”感じ”、それらを得ると得ないとでは精神的な違いも大きくある。
そのせいか噂が噂を呼び、少しずつ観客も増え始めていた。
本来ならば見るべき織斑一夏も幸か不幸か、幼なじみに鍛えられているためにアリーナからは遠い道場で鍛え不足悲鳴を上げている最中。
残念だ。
もしセシリアの実力を見ればすぐにも停戦協定を結べるというのに。
残念だ。
「ック!ここまで当たらないなんて」
弾丸が頬をかすめていく音がさながらやかましいオーケストラのように絶え間なく聞こえるも、冷静に隙を見つけては的確にレーザーを放つセシリア。
こっちもまたアリーナの壁を背にしつつ、セシリアと同じように3次元的な動きで音速を超えて襲いかかるレーザーを回避する。
レーザーライフルは通常の実弾の武装とは異なり、連射が効かないためにサンは射撃に影響を及ばさない必要最低限の動きで回避をしている。
けどそれはあくまで理論上・・・
すぐ隣を音速を超えたレーザーが通り過ぎ、一瞬遅れてやってくる
そのせいで集中力を切らすことなく冷静に射撃を続けないといけない。
狙撃型のレーザーライフルは撃つたびに照準を合わせる必要がある。いや、彼女の性格上無駄弾は撃ちたくないのかもしれない。
まあどちらにせよそのせいでどうしてもセシリアは2、3発の弾丸を受けてしまう。
それもそうだ、ただとりあえずばらまいていれば最低でも1発は当たる。
対して私はかすめるだけで一発も当たりはしない。
このまま進めばこっちの優勢のまま終わるかもしれないが、これはあくまで訓練だ。互いの弱点を把握すらせず終わらせるのでは意味がない。
サンは回避行動をとりつつも「シャーリー」と「リーズ」を投げ捨てると、今度は12.7mmアサルトカノン「ケイ」を両手にコールし、セシリアとの距離を縮めるべく予測不可能なシザース機動を描くようにスラスターを吹かす。
間一髪といえる危うさだが、レーザーは私に命中することない。
まるで当たらないことに対しての抗議をするかのように、地面に命中したレーザーが次々と大きな土ぼこりを作り出していく。
連射はできずとも、その威力は十分すぎるほどを誇る。
サンもまたかすめていくレーザーに冷や汗を流しながらも気を緩めるわけにはいかない。
2人の距離は70メートル。
サンは次の段階に入る。中距離戦闘だ。
「セシリアどうしたぁ!?そんなんじゃテディーベアはもらえねえぞ!」
「そう言えるのも今のうちでしてよ!!」
レーザーの陽炎がかすめていく中、爽快な軽口と共に笑みを浮かべるとセシリアはどこか余裕のある表情でレーザーを言葉とともに返してくる。
セシリアが両手に構えたケイの一連射を不規則な機動で回避したと思うと、私からさらに距離をとり彼女のIS「Blue Tears(ブルー・ティアーズ)」を第三世代型たらしめている兵装を”展開”した。
それは、母機から離れたかと思うと、まるで意志を持っているかのようにその口をこちらに向けてッ!?
「ワオワオワオワオ!?こりゃッヤバいって!!」
これまではスターライトmkIII一門だったのに対し、今度は4機のビット。つまりセシリアの攻撃手段が5門に増えたのだ。
当然降り注ぐレーザーも増えるって話で、上下左右、四方八方。
予測不可能な動きをするピッドが私を取り囲み絶え間なくレーザーを吐き出してくる。
首を捻り辛うじて左上からの一発を避けるも続いて右、左下、真後ろと吐き出されたレーザーに溜まらず背中と左足に被弾してしまう。
続いて空中投影ディスプレイに赤い文字で警告が目の前に表示される。
———Damage "32". (ダメージ32)
———Remaining of shield enegy "656".(シールドエネルギー残量656)
———Substantial damage level "low"(実体ダメージレベル 低)
———Damaged left leg thruster. Level"low".Decrease the power.(左足スラスター損傷”低”。出力低下)
———Damaged main thruster. No problem.(メインスラスター異常なし)
———Warning. Amount of left arm and right arm armo is 80% now.(警告。現在左腕及び右腕残弾80%)
———Warning! We were damaged! Take a (警告!直ちに )
「うっせんだよ!回避なら今してっからッ! だあああもう!」
パニックを誘発しそうな文字列が視界の隅に申し訳なさそうに表示された事に文句を言っても、意味の無い事は自分でもわかっている。
再び襲いかかってきた左上からのレーザーを右方向に急加速することで回避するも、今度は右水平方向からの待ち伏せ。
体を捻り込むことでこれも辛うじて避け、一瞬の後にくる衝撃波に顔をしかめる。
こうしている間にも次、そしてまたその次を予測し、回避としないといけない。
文字通り四方八方より襲いかかるレーザーの雨に、たまらず地面へと逃げるしかない。
地面付近ならば雨宿りはなくとも、下からの攻撃はなくなる。
急降下をする私を逃さまいと放たれた3発のレーザーをスラスターを微妙に吹かす事で回避。
命中したアリーナの地面より土埃を巻き起こし、その土煙の中へと私は突っ込んでいく。
ビット
そう、セシリアのIS「ブルー・ティアーズ」と同じ名を冠した兵装である。操縦者の意思や命令を脳波よりキャッチすることで操縦者自らがわざわざ引き金を引かずとも、文字通り思った通りの場所から望むタイミングで攻撃をすることができる武装だ。
有事の際、世界に467機しかないISはその限られた機体数の上で効率的に戦闘を行わなければならない。そこで現在世界で開発が進んでいる「ビットシステム」。一機のISに数機のビットを装備させることによって、複数のISとの戦闘を可能にするという半ば卓上の理論に近いものをイギリスは採用したのだ。
操縦者は全てのビットを1つずつ制御する必要があり、熟練した技術と経験が大きく必要とされるのに加え、戦略の幅も広く盛り合わせる必要がある。そしてなによりも、味方との連携が難しい。
だが、少数精鋭という形に必然的となるISならば、その点において理にかなっていると言えるのかもしれない。
ちなみに彼女、セシリアが身に纏っているIS「ブルー・ティアーズ」の他にもイギリス本土には射撃能力に加えてシールドを展開することができという、攻守に優れた『シールドビット』機能を搭載している「
ちなみに未だにロールアウトすらされていないために名称が不明なので、最後の一機はこの名前が付けられた。
地面を這うようにフェイントも混ぜた素早い機動で辛うじてレーザーの雨を躱していくと、すぐ近くでアリーナの地面が爆発し、次々と土煙を生み出してく。
当然ながら反撃なんか暇もない。
無意識のうちに撃ち返そうとするも、そこはなんとかこらえる。
こっちは土煙に
せいぜい、スモークでこっちの姿を見えなくするくらいだな。
ふと、ビットによる攻撃の手が止む。
ビットのエネルギー切れかと考えるが、全てのビットのエネルギーを同時に使い果たすようでは国家代表候補生にはなり得ない。
却下。
「審判の日まで踊り続けるおつもりでして?エヴァレンスさん」
上等だ
土煙のドームから上昇してセシリアと目線が合うようにする。距離は10メートル。
どこか悪戯っぽい色を兼ね備えた瞳。
その瞳を見た私は口の端が歪むのを感じる。
そうだ。この感じだ。
今まで感じた事のないこの感じ。
どうしてかわからないけど、どきどきする。
これが、心が踊るってやつなのか?
まあ、どうでもいい。
「ちょうどいい準備運動さ。そっちこそ、バテるんじゃねえぞ!」
肺に溜まった空気を一旦吐き出しながらも、砂などが機関部に入り込んでいないか、レーザーに当たって銃身が溶けていないかと両手に構えたケイの状態を確認する。
セシリアもまたこっちが踊るハメとなっていたビットを呼び戻し、エネルギーを補充する。
確認が済み、互いを見たのは同時であった。
視線を交わらせると、戦闘によって高揚した野性的な笑みを浮かべる。
今この時、私は充実していた。
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———
—
「セシリアはなぁ・・・中距離から遠距離戦闘じゃ強くても近距離戦が苦手だってことか」
「う”・・・」
私が試合の様子を思い出しながらそう言うと、セシリアが気まずそうな声を出す。
訓練が終わった後2人はアリーナの使用が済んだことを職員に告げ、録画された訓練の様子を分析するためモニター室へとやってきていた。
該当するアリーナによって部屋が分けられており、なおかつ防音が施されているため、スパイなどに見られる危険性はない。まあ、隠しカメラや盗聴器の一つや二つはあるだろうけどな。
オリムラの部屋のやつはIS学園公認の下で撤去したものの、ここのヤツは下手にいじると国家間の争いにまで発展しかねないから放っておいている。
けど、話す内容には気をつけねえと。
「じゃあまずセシリアのIS『ブルー・ティアーズ』は中〜遠距離対応狙撃型の第三世代型ISなんだな」
「ええ、装備されているBT兵装も試作型ですわ」
会話に合わせてセシリアが操作するモニターに表示されたのは、先ほど私と戦闘訓練を行ったイギリス製第三世代型IS「ブルー・ティアーズ」。
レーザー兵装、つまりBT兵装を中心とする種類のものだ。
名前にもある通りデザインは青を中心とした機体であり、騎士のような風貌を兼ね備えている。
どこかクラシックな雰囲気ではあるものの、ブルーとブラックのシンプルなカラーリングと最新鋭のISというだけあってモダンな雰囲気もまた良い感じにマッチしている。
「エヴァレンスさんのISは・・・データが少ないですわね」
「NAGA社製第三世代型IS『
ほれ、これが特殊兵器『
イスに座りパネルを操作するセシリアの横に体を滑り込ませ、片手でテンポ良くモニターを操作する。
地肌のぬくもりが伝わるほどまでに近いこの感じはなんだか妙だ。
なんだか妙ですわ。ルームメイトであるサンの顔を見たときにセシリアオルコットはそう思った。
どこか近代的な時代に、ジェンダーなどといった拘束に縛られる事なく生きる少女とはズレた雰囲気。
鋭い目つきと自分とは違う若干くすんだブロンドのセミロングヘアー。
この違和感とも何とも言えないむず痒いような感じ。
ふと、セシリアの視線を感じたのか顔をこちらに向けるサン、近距離で目が合ってしまった。
深海のような深く美しいブルーの瞳。
それなのに、諦め、苦悩、悲しみ、怒り、狂い、バイオレンス、タフネス、陽気さ。
カオスであった。
その瞳孔は全てを吸い込むかの如くどこまでも黒かった。
底知れぬ黒の瞳孔。
思わず引きずり込まれてしまいそうになる。
目が離せない。
「Hallo~? お〜い、セシリアー?」
「ひ、ひゃぁ!ど、どこを触ってッ!!」
「セーシーリーア〜 アーユーオーケ〜?・・・hmm,この柔らかさはなかなか・・・」
「や、やめてください!」
(うん、少し寂しいような気もしなくはないが、悪くない。
あるのと無いのとでは、あった方がマジだしな。ソレに対してどうだよ私のは・・・東洋人にも負けるかもしれないぞこりゃ。
ってやばいな。
この目は明らかに怒っている。
まあ顔を赤めらせて、睨まれてもそんなに怖くはないな。
オーケイ、話を続けよう)
ある意味、胸フェチであるサンはどこか上の空のような思考で続ける。
「それにしても、中距離の射撃はなかなかすごかったぞ。あのビットの連携なんか気を抜いたらあっという間に穴空きチーズになっちまってたよ」
「ありがとうございます。ですが、あそこまで回避するエヴァレンスさんもなかなかでしてよ?」
そう言いながらも、いつのまにやら中距離戦闘の場面を再生するセシリア。
褒められた事で胸を触られた事に関してはチャラにしたのか。それともただ単に甘いのか。
そんなことには構わずに、画面は2分割されセシリアの視点に近い映像が流れる。
レーザーを吐き出して襲いかかるビット、そしてそのレーザーを地面を這うようなシザース機動で回避するサン。
「それにしても、ビットの操作中は棒立ちになっちまってるな」
しかし、サンの言った通りセシリアはスターライトmkIIIを撃つこと無くその場で回避し続ける私を見続けているだけだ。
「ビットの制御は結構難しいことでして・・・今は4機を制御するのに手一杯ですわ」
どこか恥ずかしそうにそう言うセシリア。
それも仕方が無い、ビットを4機同時に制御しろと言われるのは4つのことを同時にこなせと言われることに等しいのだから。
さらにビットは機動制御から射撃制御、安定制御、エネルギー残量の考慮とさらに複雑だ。
「そうは言ってもな、隙を見て相手が強烈な一撃を出してきたらって場合もあるしな・・・」
「ん〜・・どうしたものですかね」
そう言ってうなる2人。
5秒ほど沈黙が訪れるも結局今ここでどうこうできるわけでもないため、話題を変えることにした。
「問題は、格闘戦だ!」
「ヒィッ!」
サンにまさにビシッという効果音が似合いそうな勢いでディスプレイに指を突きつけると、セシリアはセシリアで何かに突かれたような反応をする。
サンがいつの間にか展開した空中に浮かび上がったディスプレイに『逆転裁断!』という文字がほぼ一方的に近接戦闘で圧されるセシリアの映像と共に表示される。
おまけにサンはサンでどこからともなく取り出した伊達眼鏡を掛けているではないか。
正確には空中投影ディスプレイと平行して使用するための補助機のようなものなのだが。
「ここを見ると分かるだろ・・・セシリア!近接戦用装備はどうしたんだ!?」
サンがIS用
反応が遅れてしまい3回斬りつけられてしまうセシリア。
すぐに距離をとり再びビットで包囲攻撃を加えようとするも、同様の成果正確さを失ったレーザーの防衛網をかいくぐり再び接近を許してしまったサンに斬りつけられていく。
スターライトmkIIIを盾にして右上段からの撫でるような切り込みを防ぐも、がら空きの左手により腹辺りを左右を往復するように2回切られてしまう。
真下からのレーザーを一旦セシリアから離れて回避するサン。
その隙にセシリアは右手を掲げ、何かを言おうとするも投げつけられた一本のベヨネッタにそれを中断させられる。
あとはこういう繰り返しだ。
「じ、実は・・・近接戦闘が苦手でして。私も努力はしているのですが、どうしても近接戦用の装備は、その・・・」
「まさか、近接戦用の装備は呼び出すのに時間がかかると・・・」
冷や汗を流しながらも視線をサンからさりげなく反らすセシリア。
代表候補生と呼ばれるにあたって武装のコールは瞬きをする間よりも早く済ませなければならない。
だが、映像を見る限り明らかにも近接装備をコールするのに、もたついてしまっている。
「
「ッヒィ!?」
突然のサンの張りのある声に思わず体をビクッとさせてしまうセシリア。
「まずは近接戦闘対策・ビットの制御対策。この二つのうちどっちをやっておかないと、最悪引き分けになっちまうぞ?」
それを聞いたセシリアは顔をふと驚いた表情から不適に笑いへと変え、どこか余裕のある表情を浮かべる。
ため息。
そして言った。
「私があのような殿方ごときに負けるはずがありませんわ。授業にも緑についてこれないのでは、私に勝利するなど夢のまた夢でしてよ」
ダメダこりゃ。言っちゃ悪いが、これは一旦痛い目を見ないと将来が不安だな。
事前情報と第一印象で相手を判断するのは愚の骨頂に近い。一族の当主たる者がいくら良くない印象を抱く相手をこうも見下しているようじゃ上手くやっていけるかどうかすら不安だ。そう、若気の至りだとしてもだ。
だからこそ、若い今のうちに失敗を体験して自分を見直す機会が必要かもしれない。同い年(生まれた年月さえ不確定な私には正確に分からないが)の自分が言うのもあれだが。
そう判断したサンは右手を顔に当ててどこか悩むような表情を浮かべている。
「そうか。セシリアがそう思うんだったら勝てるかもな」
「ええ、伊達に国家代表候補生は勤めておりませんことでしてよ」
自信に満ちた表情で胸を張り、手を胸に合わせるポーズをとる。
サンとは異なる、流れるような美しいブロンドヘアーがまたその様を助長させている。
「っと、もうこんな時間か。次2年生来るから早めに行くか」
セシリアもまた壁にかけられている時計を見て、貸し出し時間の終了まで8分前なのだと気がつく。
いままでモニターに集中していたためか、背伸びをして息を吐き出す。骨の鳴る音が心地よく響く。
アリーナとこのモニター室は基本セットで生徒に貸し出されるため、自分自身で時間を調整する必要があるのだ。
現にちらほらといた他の生徒達も2人と同じように個室から出て行き始めている。
自分たちが使っていた個室のロックが掛かったことを確認し、廊下を歩き始める2人。
靴音だけが廊下に響き渡る。
「今日はいろいろと感謝しますわ。やはり、
彼女はそう言って飾り気の無いやんわりとした笑みを向けてくる。
柔らかい笑みの魅力を引き出すのはその垂れたブルーの瞳。
「まあ、こっちも
「え?ええ・・・ええぇ!?」
最初は理解できない様子で何となく返事をするセシリア。
上品な笑みのセシリアに対し、私がにやりと笑いながら手をわきわきとし始めるとその
「揉ぉーまーせぇーろー!!」
「ひ!ヒィィィー!!」
可愛らしい悲鳴とそれを追いかける爽快な笑い声。
夕日の差し込む廊下に胸を庇う影とそれを追う影が夕日に見つめられ放課後の黄昏を謳歌するかのように。
『えぇ、問題ありません。計画通りに運んでおります。はい。それでは。親愛なるスコール』
クラス代表決定戦まで残り5日。
「足跡を追ってはいるんですが、なにせ国連のおじ樣方が邪魔をしてくるんですよ。これってつまり、更識家と対立する博打を打ってでも、国連、というよりは世界が隠そうとする事があるということなんですかねぇ」
「ハハハ、そうやって年上に物事を言わせるのもあまりよくありませんよ。・・・ですがまあ、考えている事はあながち間違いではないかもしれませんよ。ささ、お茶が冷めないうちに。今日はちょっといい葉なんですよ」
すでに、歯車は動き始めていた。
「箒ぃ・・・あと何回振ればいいんだぁ・・・」
「あ、あと34回だ!男ならそれくらい耐えてみせろ!!」
「ひぃぃ〜!!」
とある暇人たちの茶番
「今回俺たちが使用する装備はコレDA☆」
「おぉーーー!」
「H&K社製アサルトライフルをNAGA社とH&K社で共同改良した『XM8A2』。本当はいつもの『G36A1』を使いところだったんだが、学生の目につきやすい学園敷地内で使用することを考慮し、親しみやすいデザインのコイツに決定した。
レールシステムを使わないときにはカバーを取り付けることで刺々しさをなくすこともできる。
そして、対IS用兵装が『50mm歩兵携帯型特殊徹甲弾電磁式発射装置』。所謂レールガンがこのケースの中に入っている。なんでも理論上じゃ2発で戦車の装甲をバターのように穴を開けられるらしい。ちなみに重さは25キログラム」
「・・・見せないのか?」
「まだ試作段階だ。技術研究班からパク おっと!わがまま言ってなんとか持たせてもらったんだ。緊急事態以外の使用を許可しない」
「それ使うくらいなら支援要請で
「それか
「この前のクモ女を見ただろ。今までの兵器じゃISには勝てない。オートミールになるのがオチだ」
「・・・ま、一発も撃たない事態が望ましいんだがな」
「まったくだ」