IS インフィニット・ストラトス 3番目の兵器と呼ばれた少女 作:DON-KAME
一応プロットは作成可能ですので、楽しみにしている方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
ですが、執筆はエンディングを迎えるまで続けさせていただきますので、どうか気長にお待ち下さい。
また、今話は若干駆け足で書いたのでどこかおかしい箇所があるかもしれませんので、ご指摘なり、感想なり送っていただければ幸いです。
グルカナイフをホルスターからゆっくりと引き抜き、舐めるように眺めると鋭く研がれた刃が私の瞳を映す。
その重みは鉄の重みであり、人の命を奪う道具であることを実感させてくる。
様々な向きを見るように手首を捻り、その芸術的な美しさを堪能する。美しさへの感動と同時にどす黒い、狂気とも言える感情が久しぶりにくつくつとわき上がる。
敵の肉を切り刻む感触。手を染めるヌルヌルとした生暖かい血の感触。
切り刻まれ、切り落とされ、悲鳴を上げる敵を前にしたときの絶対的な優越感。
頸動脈を切り裂いたときに浴びる返り血の独特の咽せるような鉄のような香り。
血に染まった刃に映る他人の血に染まった自分を見た時に感じる罪悪感と自己嫌悪の情、それに混じってくる精神的快感によって混沌とした意識。
人の道を踏み外しているとは分かっていても、人を殺す瞬間の爽快感が私を殺人マシーンという外道へと引きずり込もうとする。
だから、オンとオフをしっかりしないとけない。
このナイフという武器は故障もしなければ暴発することも無い。
刃こぼれと手入れにさえ気をつければ文字通り一心同体、自分の望む通りに動いてくれる。
そして、美しい。装飾することなくただ対象を切り刻むことを目的に機能性を重視して生まれる危険を孕んだ芸術。
手を切らないように手を這わせる。冷たい。
けれどもその冷たさがまた心地よい。
「おいサン、なにやってんだ。さっさと整備を終わらせろ」
「オーライオーライ、あとこれだけだから」
久々の再会を邪魔されたことに舌打ちをしそうになるのをこらえ、渋々
箱には私の体格に合うようにストックを少し縮めたXM8A2に、ククリナイフ。
他にもコンバットナイフとサバイバルナイフ、それとM9銃剣がM10銃剣鞘におさめられている。
皆と走り込みを終えた私は今、突如命令を受け武器の点検をしている最中なのだ。
今日使うことになるかもしれないことを受け、念のためにチームの皆は各々の使う装備の点検を行っている。
私のケースに入っているナイフや武器はどれもNAGA社製であり、ナイフは黒をモチーフとし白く社のロゴがレーザープリントされているたモダンなデザインだ。
それに対し、ククリナイフは形は整っているものの若干クラシカルな感じ。
寮の部屋には一応制服の中に忍び込ませることの出来るポケットホルスターと小型のアメリカ製小型拳銃「P-11」をベッドの下に貼り付けるように隠しているから、今日はそれを制服の下に装備すればいいだろう。
まさか緊急事態だからって言って皆と同じようにXM8A2を持ち歩くわけにも行かないし、それよりも
あの出席簿攻撃だけは食らいたくないしな。
「いい加減そのククリナイフ取り替えたらどうなんだ?かなり古いぞそれ」
M320、40mmグレネードランチャーを装着し、安全のために弾倉を外しているXM8A2を片手に呆れ半分、忠告半分で行ってきたマークに私は素っ気なく応える。
「いいんだよこれ。グルジア兵が使ってきたやつだけどこれがまた切れるんだわ」
ククリナイフの腹にはどこかの言語で書かれた文字が書いており、グリップは強化プラスチック製に取り換えている。
だが刃は鹵獲したものを研いでいるだけだ。
そこらの物には無い使い込まれた雰囲気を醸し出し、無意識のうちに美しさを感じさせる代物。
「それいくらで売ってくれるんだ・・・?」
「100億ドル」
「じゃあ持つだけでも」
「訓練で勝てたらな」
「ポーカーは」
「2回分の借りをまだ返してもらってない」
「・・・ッグ、ロイヤルストレートフラッシュとか反則だろありゃ」
「フルハウスごときでオールインするマークが悪い」
顔を引きつらせたかと思うと、どうしてこんなんになっちゃのかねぇ〜と愚痴をこぼしながらマークが部屋から出て行く。
このククリナイフだけは特別、気安く触ろう物ならそいつには鉄拳制裁が待ち受けている。
今日は私のルームメイトとこの学園で唯一の男が「決闘」をする日。そして同時に、戦闘が行われる日でもある。
イギリスを標的にし唯一神を信じるテロリストども、通称「砂漠の夜明け」。
NAGA社が国連と共有する衛星からの情報からそいつらの活動が活発化し、さらに諜報班からは怪しいヤツらがこの国に来ているという話なのだ。
そして同時に、オリムラに倉持開発というお国の抱える企業のISがIS学園に向け発送される。
そこで、つい最近でも警護の仕事を受け持ったNAGA社に依頼が来たというわけらしい。
日本では
なので、今回重装備で来るであろう”テロリスト”には普段からそいつらとドンパチやっているPMCで抵抗しようという、正しい選択を選んだのだろう。
作戦は、まず配送されるISの奪取をもくろむ敵の部隊を強襲する部隊、ISを警備する部隊、配送されるルートを監視する部隊、IS学園を警備する部隊とに別れ、各々の役割を果たすというものだ。
敵はすでに衛星によって捕捉されており、現在進行形で監視が行われている。
IS学園は私たちの部隊が担当し、ISの警護にはなにやら「私の知り合い」がイタリア製のISを装備してこの学園に来るらしい。
なんでも、私のパートナーとして派遣されるらしいが・・・まあどうせ互いに監視させ合うつもりに違いない。
それにしても、本社はもう一人を学園に滑り込ませるのに一体どれだけの出費をしたのやら・・・
そう思いつつも、装備の収納されたケースを閉じる。
ケースを開くには5桁の暗証番号と指紋認証、それかNAGA社の戦闘要員として登録されている社員の手の甲に印刷された不可視のバーコードを認証させる必要がある。
とはいっても、不可視のバーコードは本社のセキュリティーに申請がされていないと、せっかく認証させてもケースを開くことが出来ないんだけどな。
「0915より状況が開始される。それまで気を抜くことのないように。サンはオルコット嬢とオリムラのそばにいるように。エコーはポイントの警備。マークはオフィスで待機、タナカはモニターの監視と緊急時には無人機の操縦。俺とオッドで巡回。敵と遭遇した際には連絡をし、正当防衛の場合に限って発砲を認めるが、極力生かしておくように」
いつの間にかマークがウッズと一緒に武器管理庫に戻ってくるなり、装備を点検しているチームにそう声を掛ける。
当然私を含む全員の口から迫力のある返事が返される。
咽を壊さないようにしながらも精一杯声を出しても、皆の声にどうしてもかき消されてしまう。
ちきしょう・・・
「なあ箒」
「・・・」
「なあって」
「・・・」
「おーい、聞いてるかー」
「ええい、どうしてお前はそうものんきにしているのだ!少しは緊張というものをだな」
「セシリアとエヴァレンスさんって、なんかいつも2人でいるよな」
「そういうお前は敵を気にする余裕があるのか」
俺が見る先にはなにやら真剣な表情の金髪お嬢様ことセシリアと、苦笑しながらもきちんと話をしているエヴァレンスさんがいる。
どうして急に呼び捨てにしたかって?
そりゃあ決闘をする相手にさん付けで呼んでいたら、戦う気にならないからだろ。
戦うには戦うなりにそういう姿勢を見せないともいけないしな。
そういうことで俺は彼女をセシリアと呼び捨てにすることにしたのだ。
・・・でも、さすがにエヴァレンスさんは呼び捨てにしたら外国人だし嫌がるかもしれない。
まだ親しくもなっていないからこっちの方がいいだろう。
セシリアがエヴァレンスさんの席でなにやら紙に何かを書きながら一生懸命何かをしゃべっては、エヴァレンスさんはその紙に一つか二つ書いて、そして少し考えてはまたオルコットさんが紙に何かを書いているという繰り返しだ。
それはまるで仕事の出来る研究員が何かを開発しているような光景だ。
そういえば中学の時に絵のうまいやつの席で「理想の女性像について」なんてことをあんな感じで弾たちがやっていたな。
「でもよ・・・練習で一回もIS使ってないよな」
「だ、だが使用者本人の鍛練によってISは動くものであってだな」
じぃー・・・
「・・・・・」
なぜ目をそらす
セシリアの戦い方は分からないけど、やれることをやるだけだ。
それに、これで俺が勝てばこのあいだみたいに男を見下すことも無いに違いない。
それに「専用機」ってやつだって今日届くはずだし、なんとかなるさ。
箒も箒なりに俺を鍛えてくれたんだ。この一週間の訓練は決して無駄ではない。
あとは本番で俺なりに成果を出すだけ。
「織斑君って、そういう顔するんだぁ」
「誰か写真!写真!!新聞部に高く売れるわよ!」
なんだか他の女子たちが集まり始めたんだが、ってこら、なに写真撮っているんだ。
俺は二足歩行するレッサーパンダじゃないんだぞ。
そもそれ俺の了承無しっつうか盗撮なんじゃないのか。
・・・まあ、これくらいのことに動揺するのはもう諦めたからもういいか。
最初の頃は一定の距離を保って、『興味津々、ですよ。でもがっつきませんよ』なんて感じであまり近寄ってこなかった女子たちも、だんだんとコンタクトする回数も増えて・・・こうして盗撮も増えていったってわけだ。
『興味津々、もう大丈夫そうですのでいただきます』って俺は魚のエサか!
しかもどうどうと俺にもわかるように撮影をする女子もいれば、いったいどんな改造をしているのか一切音を発することなく、そして悟られることなくシャッターを切る女子もいるのだから、慣れないほうがおかしい。
写真の出所は分かっても、どこに流れ着いているのかが分からないってここまで怖いんだな。
まあ、エリートばかりって聞いたし、そこら辺は最低限のモラルを守ってくれていると信じよう。
そして、少しでも早く俺の「専用機」が届いてくれることも一緒に願おう。
・・・カシャ
「追いつめられている織斑君もかっこいい!」
作戦会議を開くってわけで箒と一緒に食堂に来ていた。
他にもオルコットさんとエヴァレンスさんの戦闘を見ていたっていう女子も手伝ってくれくれることになった。
まあ、俺も箒も道場に篭って、竹刀で打ち合っていたから肝心の相手の情報があまりにも少なすぎたしな。
ほんとうにありがたい。
本来なら男の俺に協力してくれる人がいるのは相当運がいいか、相手がそれだけいい人でないとありえないことだ。
まあ、オルコットさんの差別用語連発発言のためか日本人の生徒はもちろん、留学生の中にも俺に味方してくれる人もいる。
おれも期待に応えられるように頑張らないとな。
ワインのような、栗色のような、そんな髪の色をした谷本さんがくるくると指を回しながら講義を始める。
「いい、オルコットさんのISはBT兵装が中心の装備で」
「待ってくれ、びぃーてぃー兵装ってなんだ」
「さっそくかぁ・・・わかりやすく言うと、レーザー。BT兵装に割り当てられたエネルギーの消耗に気を配る必要があるの。実弾と違って着弾までのタイムラグがないから相手の銃口の向きに注意するようにね」
「おう、わかった。あと気をつけることはあるのか」
俺がそういうと、左端に座っていたショートの黒髪の鷹月さんが手を挙げる。ちなみに前髪をピンクのプラスチックピンで留めている。
「う〜ん、織斑君ってISの搭乗時間ってどれくらいかわかる」
「1分だ」
隠すことなく堂々と答えると苦笑いをする鷹月さん。
「まあ・・・そうだよね、うん。ええと、オルコットさんの第3世代ISには『ブルーティアーズ』っていう特殊兵装があって、ビットによる包囲攻撃が可能になっていてね」
「ええと、ビットってなんだ」
するとついさっきまで、他の女子も食べると聞いてむっとしていた箒がとつぜん復活する。おお。他の3人も何を言うのかと注目をしている。まるで退院演説をする社長のようだ。
「ビットというのはこう、びゅんびゅんって来てズババってやってスィーといくハエみたいなやつだ」
「箒・・・すまん、どういうことだ」
「だいだいあっているかなぁ〜」
「のほほんさん、なんだか違う気がするよ」
「あ、噂をすれば」
食堂が混むから授業が終わって早々に食堂のテーブルを占拠した俺たちだったのだが、話しているうちにいつのまにか混んできていた。
その込み合う人の中にいつもオルコットさんといるエヴァレンスさんが歩いているのを、この学園で箒以外に初めて話しかけてきた3人の女子たちが見つける。
ん?今は一人か。
「ねえねえ、思いきってエヴァレンスさんに話聞いてみようか」
「賛〜成〜」
「もう、なるようになれ!」
おお、行動力あるなぁ。
箒はなんだか気が乗らないようだが、まあ、どうせだし俺が行こう。
「よし、俺が行く」
「わ、オリムーアグレッシブ!」
「よ、日本一!」
「大統領!!」
「ま、まて。お前いくのなら私も、ってもうあそこまで・・・」
声援に送られていざエヴァレンスさんのすぐ後ろまでやってきた。
いやいや、エヴァレンスさん歩くの早いだろこれ。
大股で、それも早歩きでようやく追いついた俺。
「なあ、エヴァレンスさ 」
「ッ!?」
「ああ、ええと、驚かせたか」
「あ、いや、問題あるが問題ない。どうした」
肩に手を置くと文字通り弾かれたかのようにこっちに振り向いたことに、つい俺までびっくりしてしまう。すれにしてもすごい早さだったな。
まあ、あえて問題があるのにないということには触れておかないでおこう。
「エヴァレンスさんっていつもオルコットさんと一緒にいるだろ。できれば決闘の時に気をつけることがあれば、なにかアドバイスでもくれればなって・・・やっぱりダメか」
「Look carefully.」
「え」
「目をひん剥いてでもよく見ていろ。私に言えるのはそれだけだ。Good luck.」
「あ、ああ。ありがとな」
エヴァレンスさんがそう言うなり、さっさと行ってしまおうとする。
かろうじて感謝の言葉が間に合うと、エヴァレンスさんはこちらを見ずに手をひらひらさせて行ってしまう。
すげえ、これがハードボイルドってやつか・・・いや、違うか。
「なんだって」
「いや、よく見ていろ。って言われた」
「それ・・・当たり前じゃ」
「オリムー玉砕〜?」
「まあ、アドバイスをもらえただけでもよかったと思えばいいんじゃないかな」
まあ、そうだな。
あとは
「一夏、腹が減っては戦は出来ぬ。今のうちに食べておけ」
箒の言う通りだ。
どうのこうの話し合っても仕方がないしな。
今日の昼食は決闘前という事もあってカツ丼を思いきって注文。
今日はカツ!なんてな。
「一夏・・・お前というやつは」
どうした?箒だけがジト目で俺を見ている・・・っは、欲しいのか!
「箒食べるか」
「ば、馬鹿者!いまは集中しろ!!」
なんだよ。
育ち盛りなんだから遠慮するなって。
それに女子はどうしてそんなに食べないんだ。
やっぱり燃費の問題なのか?
・・・まあいいか。確かに箒の言う通りかもしれない。
いただきます!
「オリムー、すごい食べるねぇ!」
「男子はよく食べるって言うし」
「燃費の悪い生き物なのね」
うん、衣はサクサク。卵はふんわりとしていてほくほく。肉も柔らかくてそれで肉汁があふれてくる。たれの味付けがまた絶妙だ。
本当にここの学食は美味しいからな。
今度思いきっておばさんたちに聞いてみようかな。
おお、白菜の塩漬けがうまい。
みそ汁のダシもまた効いていて・・・
おかしい。
「来ないな」
「ああ」
俺と箒は今、本来なら俺に渡される「専用機」がある”はず”のビット搬入口で立ち尽くしていた。
斜面でかみ合うタイプの防壁扉は全てを拒絶する引きこもりの心のように堅く閉ざされている。
なんでも、倉持開発の方で開発とか運搬でトラブルが生じているらしく、今こうして遅れてしまっているらしいのだ。
このままではせっかく6日間箒が俺に剣道の稽古をつけてくれたのに、棄権扱いになってしまう。
それだけはいやだ。それじゃあまるで、俺が逃げたみたいになるじゃないか。
相手を、それも女を前にして男がしっぽを巻いて逃げただなんて言われてみろ。それこそますます女尊男卑の風潮が強まってしまう。
「お、織斑くん織斑くん織斑くんっ!」
大事なことなので3度呼びましたって慌てぶりで山田先生がこっちに走ってくる。
途中でなんどももつれそうになったりして本当に見ていて危なっかしい。
今はさらにもっと危なっかしい。ああ、ほらほらまた転びそうになっている!
「先生まずは落ち着いてください。ほら、深呼吸を。吸ってー」
「はぁ、はぁ・・・はい。すぅーーー」
「吐いてー」
「はぁーー」
「吸ってーー!」
「すぅーーーーーー」「はいそこで止めて!!」
「す・・・・・」
冗談でそう言うと先生は本当に息を止めてしまう。冗談の通じない人だなぁー。
「教師で遊ぶな馬鹿者!目上の人には敬意を払え馬鹿者」
パァンッ!
おうふ。
脳細胞が虐殺された・・・そして2回も馬鹿者呼ばわりされた。
「織斑くん、ま・・・だですか」
「山田先生も真に受けないでください」
「ぷはぁ〜!すみません、織斑先生」
「あ、千冬姉」
パァンッ!!
なぜでしょう。音がこんなに軽やかなのに、ダメージがこんなに重いのは。
ぐっは・・・さっきより痛ぇ!
「何度も言っているはずだ。ここでは織斑先生と呼べ。それともなんだ、お前には学習をするだけの知能がないのか。馬鹿なのか。ついでにこの学園に馬鹿はいらんからな」
俺もう疲れたよ・・・もう、いいかな
アリーナを使用できる時間は限られているんだ。早くしろ」
「え、それって」
「あ、そうなんです!ついさきほど織斑くんの専用機が届いたんです!!今くるはずなので」
え、本当に
突然重々しい機械音が響いたと思うと、堅く閉じられていた防壁扉がゆっくりと開いていく。
広がっていく隙間からはコンテナらしき物が見え、それが同時に開いていくのが見える。
一つのISと、搭乗者・・・あれ?
誰?
「ご依頼頂きました時間に遅れてしまい誠に申し訳ございません。この度倉持技術研究所より『白式』の警備を依頼されましたNew America Global Armaments所属フランチェスカ=フィルナンデスと申します。今回の延滞につきましては後ほど詳細をご報告させていただくことになっておりまして、お手間をおかけしますが」
「「「「そ れ は 後 で!!」」」」
俺たちの息の合った声に顔をしょぼーんとさせると、フランシェスカと名乗った若干日に焼けたような健康的な肌色のISの搭乗者は地面からわずかに浮かんでいる灰色のISをまるで滑るようにコンテナの横にずれる。
なんだかすまないことしたなぁ・・・
「「「は や く!」」」
あ、そうだそうだ。
改めて見てみると、コンテナの中から施設と連結したレールに沿ってそれが現れた。
白い
それがまず思ったことだった。
飾られることはなくとも、その無とも言える白さが美しさを感じさせる。
空気の抜ける音と共に装甲を解放し、搭乗者・・・俺を歓迎していた。
「・・・すげぇ」
「一夏、まず座るように体を預けろ。あとは自動で機体がやってくれる」
千冬姉が言った通りに、体を開かれた装甲の中に沈めていくとまるでもとからそうだったかのように、カシュ、カシュと空気の抜けるような音と共に装甲が閉じて俺の体に装着される。
馴染む
理解できる
わかる、コイツが
まるで生まれたときから一緒だったみたいに
”あの時”みたいな、電流が流れるような感覚もなく、なんだか拍子抜けしてしまう。
まあ、ないだけいいんだけどな。
「次に腕と足を動かしてみろ。違和感があっても動かし続けるんだ。違和感がなくなったあとも動かし続けるんだ」
言われた通りにきたい動かしてみると最初はほんの少し抵抗があったものの、すぐに生身の時と変わらないように
滑らかに動かすことが出来るようになった。
視界もそうだ。
少しちらついていた視界が、抵抗がなくなると同時にクリアになっていく。
そして膨大な料の文字と記号、数字があちこちから表れては視界の端に流れていったと思うと機体のありとあらゆる状態を示す数値が簡素に表示される。
表面の装甲に量子化された装甲が少しずつ形成されていっては、俺の、正確には男性の体格に合わせて変化していく。
これも”わかる”。
上下左右すべてが、解像度を一気に上げたようにクリアに見える。
これがハイパーセンサーか。
体を少し傾けると機体が浮かび上がって、ピットゲート(正確には電磁カタパルト)に向けてゆるやかに前進する。
思っていたよりも簡単だな。
「ハイパーセンサーは機能しているようだな」
「すごい、本当に動かせるだなんて」
「今ゲートを解放しますのでって、うそ」
「一夏・・・」
俺を囲む異性の反応は皆ばらばらだ。
5メートル先にあるカタパルトに機体を連結させようと動かすと、驚きの表情になるのは共通だったけど。
でも、俺の姉は違った。
いつもにまして真剣な表情で千冬姉は言った。
「一夏、この障害を乗り越えろ。でなければ」
「わかっている」
いつもなら会話を途切らせようものなら出席簿アタックが飛んでくるが、今回は違った。
ハイパーセンサーで千冬姉の声が震えているのが分かったから。
俺は姉に心配をさせないようにするために。
「千冬姉、行ってくる」
「・・・ふぅ。織斑先生と呼べと言ったはずだ。帰ったら覚悟しておけ」
「ああ」
まだ声は震えているものの、いつもの調子が戻ったのか不敵な笑みを浮かべる千冬姉。
はは、墓穴掘ったなこりゃ。
「一夏」
「箒?」
俺はISを装着して若干浮かんでいて見下ろす形になっている。
そのせいか、箒はうつむいていて表情が分からない。
「男なら これくらいの障害を 乗り越えてみせろ!」
「当たり前だ!」
箒が顔を上げる。
なんだよ、箒も心配してくれていたのか。
相手が代表候補生、だから俺は恥をさらすなんてこと考えてるわけじゃないだろうな。
「箒」
「な、なんだ」
「行ってくる」
「あ、ああ・・・行ってこい」
俺なりにとびきりの笑みを浮かべて、頷く。
「織斑くん、いつでもどうぞ!箒さん、離れてください」
「は、はい」
「はい!お願いします!」
箒が離れたのを確認し、山田先生の声に返事をすると、カタパルトが起動する。
操縦者保護機能のおかげで、一瞬で時速80キロまで加速される電磁カタパルトに引っ張られる俺の体は慣性の法則によって生まれる苦しみを感じずに済んでいるのだ。
すさまじい速度で過ぎる視界の後、アリーナの上空に放り出された俺の前に対面したのは、セシリア=オルコット。
主席入学。
・・・下手なジェットコースターよりこれは怖いぞ。
なんだかこう、地面に足がつかないって感じでそわそわするし。
「ついてっきり恐れをなして隠れていたのかと思いましたが、ようやく出てきたのですね」
「ああきてやったぞ。それに、人を嘗めるのもいい加減にしろよ」
「あら、聞き違いでしょうか。期待していた言葉とは違うようですが」
ふざけやがって。
おまけに俺よりも高い場所から見下ろしてきてやがる。
俺とセシリアが言葉の応酬をしている間にカウントがすでに始まっていた。
3
「謝罪をするというのなら」
2
「お前こそ、日本を屈辱したことを誤れ」
1
「・・・まあ、考えておきますわ」
ーーー警告!初段装填を確認。射線より退避してください。
っ!!?
背筋がひやりとした瞬間、俺は思わず左へと避けていた。
「あら、避けましたのね。褒めて差し上げますわ。でも」
「っく!」
急下降をすると、上からレーザーが通過する音が聞こえていた。
「このまま逃げ続けるおつもりでして?」
「っかは」
ボディーブローを食らったような衝撃と痛み、そして苦しさが俺の頭を真っ白にする。
いくらISの装甲や
あのとき確かに避けたはず。
セシリアは上にいる。
なのに
ーーーどうして下からレーザーが飛んできたんだ!?
「さあ、猿は猿らしく踊りなさい!私とBlue Tearsの奏でる円舞曲《ワルツ》で!!」
これが、ビット。
横にもいる!
これじゃあんな事を言われているのに、馬鹿にされているのに、何もできない。
「くっそぉぉぉお!!」
ーーーーー
ーーー
ー
「口の割には、対したことないですのね」
「間に合わ」
回避が間に合わず、左肩にビットのレーザーが当たり、左肩から手先にかけて痺れと痛みを感じる。
それによって俺の左肩の装甲がぼろぼろに黒く漕げ、痛々しさ30%増しとなった。
うん、これはあまりうれしくないな。
勘とも言える、”感覚”でこのISを操縦しているものの、さすが代表候補生と呼ばれるだけあって確実に当ててくる。
セシリアの構えているそれはハイパーセンサーに「スターライトmkIII」と表示される。
弾速や飛躍距離における弾道、威力を始めとするさまざまなデータが表示されるんだが、正直邪魔だったから適当に空中に投影されたディスプレイのいろんなボタンを押して消したばかりだ。
おかげで視界は機体のエネルギーやスラスターのステータスなど、最低限の表示のおかげでクリアになるんだが同時に、”こいつら”を自分で識別しなくちゃならないってことだ。
ええい、ちょこまかと!
本当にハエみたいに厄介だ。
最悪なことに、俺の手持ちの装備といえば「
飛び道具があればなにか違ったかもしれないが、泣いても笑ってもこれしかない。
対してセシリアのIS「ブルー・ティアーズ」は中〜遠距離型の機体。
いくらなんでも相性が悪すぎる!
それに、俺の周りをうろついてはレーザーを撃ってくるビットにだって、対応することが出来ない。
でも、それでも。
俺は見た。
2機のビットがもう2つの別のビットと入れ違っていたことに。
そして、セシリアの方へ向かったビットが、セシリアのISと連結したことにも。
今俺を駆り立てているビットは2機。
ーーービットというのはこう、びゅんびゅんって来てズババってやってスィーといくやつだ
この3分でわかったことが、セシリアのビットは明らかに俺の油断している方に回り込んで、確実に当ててこようとしていることだ。
ハイパーセンサーがあれば確かに全方位を”視る”ことができる。
でも、それは同時に全部の方向へ気を配らないといけないってことだ。
だから、脳をいじったりしない限り、ISを身に付けていたとしても”死角”はできてしまう。
タイミングさえ合えばこのブレードで壊すことも出来る。
でも、後2つ残っているってことは作戦を変えてその2つで戦ってくることもあり得るからな。
この戦いで博打を打つのにはあまりにも負けるというリスクが高すぎる。
ーーーまあ・・・そうだよね、うん。ええと、オルコットさんの第3世代ISには『ブルーティアーズ』っていう特殊兵装があって、ビットによる包囲攻撃が可能になっていて
ーーー衣はサクサク。卵はふんわりとしていてほくほく。肉も柔らかくてそれで肉汁があふれてくる。たれの味付けがまた絶妙。
あれ?
なんで今こんなこと思い出しているんだ俺。
ああでもあのカツ丼は最高だった・・・五反田食堂のカツ丼も食いてえなぁ。
受験前に親父さんがサービスでくれたんだよな。
ーーーオリムー、すごい食べるねぇ!
ーーー男子はよく食べるって言うし
ーーー燃費の悪い生き物なのね
ーーー燃費の悪い生き物なのね
ーーー目をひん剥いてでもよく見ていろ
そうだ、よく見ろ俺
落ち着くんだ
ピットは2つ、あと2つはISと連結している。
どうして連携する必要が?
一斉に4つ解放してしまえばいい話じゃないか。
ゆっくりじっくり、あぶるように倒すため?
そもそもここのアリーナはもう時間がないはず。
あの真面目なそうな性格のセシリアは教師に迷惑をかけてまでそんなことをするのか。
燃費
レーザー
エネルギー
ーーーBT兵装に割り当てられたエネルギーの消耗に気を配る必要があるの
はは、なんだ。
そういうことか
「おい金髪ドリル!代表候補生のくせにこんなに時間がかかってるじゃないか。本当に代表候補生なのか?」
「き、金髪・・・ドリルですってぇ!?この髪形をば、馬鹿にするだなんてっ!今度こそ許さない!」
はは、怖い。
ですわ口調がなくなってるし・・・
そして、ビットに囲まれているし。
あ、そうか。
これが俺の狙いだったんだ!
「せっかく話しかけた私をあしらって!」
レーザーライフルを避け
「さらには突然部屋に入ってきたと思うと裸を見て!!」
撃ってきたビットに突っ込むようにすれ違い、切り裂いて。
「そして謝罪もせずに逃げて!」
「それは誤ったし、悪かった!あぁ、ええと、ミロのヴィーナスみたいに綺麗だった!!」
まずできるだけ褒めようと思って言った一言・・・本当にあの彫刻綺麗だったんだよな。
あのくびれとか、健康的な体つきとか。
やっぱりあまり痩せるとか太るとか気にしていちゃだめなんだよ女子は。
頭を狙ってきたレーザーを接近しつつも首を捻って避け、撃ってきたビットを一刀両断。
これであと2つ!
「き、綺麗だっただなんて、それも・・・ヴィーナス像だなんて。ななな何を突然!?」
「初めて会ったとき、嫌な思いをさせたんだったら悪かった!!」
連射してきたビットを蹴り飛ばしてアリーナの壁に激突させる。
あと1つ!
「それに、それに、ええと、昨日ショッピングモールでも助けて・・・って、あれ?」
「セシリアたちが無事で良かったと思ってる!!」
目の前には方向をこちらに突きつけてきているビット。
乱射したせいかエネルギーが切れ、ただぷかぷかと浮かぶビットにブレードを突き刺しては、すぐに抜く。
『イギリス製ビットの刺し身、硝煙の香りと共に』うん、やっぱりイギリスってつくだけでまずそうだ。
「あとは、お前だけだぁ!」
見たところ、セシリアの装備はあの大きなレーザーライフルだけ。
近接戦闘用の装備も見当たらない。
あんだけ大きければレーザーライフルをこちらに向けるのにもわずかに時間がかかるはず。
俺はブレードを上段から振りかぶり、セシリアに向け振りかざす。
だがセシリアはレーザーライフルを盾にしてブレードを食い止める。
すかさずレーザーライフルを削りつつブレードを引くと、レーザーライフルにブレードを突き刺す。
これでもう高威力の装備はないはず!
ハイパーセンサーがなくても分かるほど、セシリアは息を乱している。
俺も見え始めてきた勝機を前に鼓動が早まり、息も荒くなりつつある。
「な、待て!」
しかし、セシリアはレーザーライフルの爆発と共に俺を蹴り飛ばし、再び距離をとってしまう。
いや、これならまだ間に合うか!?
「まだ、2機ありましてよ!!」
「まさかっ!」
俺がセシリアに向けて一気に間合いを詰めようとした瞬間だった。
セシリアのISの腰部より広がるスカート装甲の突起物が突然こちらを向いて
◇◇◇
第3アリーナのモニター室。
ここではアリーナの様子が終始記録されており、一夏とセシリアの戦闘もまた貴重な男性IS操縦者の戦闘記録として保存されていた。
「織斑くんすごいですね。本当に初めてとは思えない動きです!」
そんなことをモニターを見つめ興奮気味にそう言うのは、山田であった。
その後ろには今にも泣き出しそうな表情をしている箒と、目を細め真剣な顔つきでモニターを睨むように見ている千冬の姿がある。
本来ISというのは基礎的な知識はもちろん、
しかし、今アリーナで戦っているのはそのような訓練を一切受けたことのない男だ。
ISとのリンクと同期が完了するなり早速そのPICを、まるで以前使ったことがあるかのような自然な動きですでに制御していた。
その様子を見ていた3人が驚いたというのは言うまでもない。
なにせ、自分が苦労してやっと会得した基礎的な機動をその場ですぐに行ってしまったのだから。
(オルコットは戦法を変えたようだな)
コーヒーの注がれたカップを片手に千冬はふと思う。
今は安易な挑発によってかつての、4機のレーザー発射型のビットを全て展開し、短期決戦で相手を圧倒するという戦法をとっているが、先程までは2機ずつ交代で制御する戦法をとっていた。
確かにその方が火力は低下するものの、相手に隙を与えることなく持続的に攻撃を与えることも出来る。
加えて、制御するビットの数が半減するため操縦者自身も回避機動もでき、手に持つ武器で攻撃を加えることが出来る。
万が一接近を許してしまってもミサイル型のビットともう2機のレーザー発射型のビットで迎撃を行うことも出来るため、急な近接戦闘を苦手とするセシリアにはまさにうってつけとも言える戦法だ。
もっとも、燃費の悪い第3世代機であるためにそれだけ確実に攻撃を命中させる必要もあるのだが。
「オルコットめ、あんな挑発にのるとはな」
思わずつぶやく千冬。
モニターには冷静に欠けた制御によって次々と破壊されていくビットが映し出され、同時に聞こえてくる2人の叫び。
思わずマグカップを掴んでいないほうの手で、こめかみに手を当ててしまう。
「あの馬鹿者。浮かれているな」
「え、どうして分かるんですか」
「あいつの手を見ろ。開いたり閉じたりしているだろ。あいつは昔からあれをするときはくだらないミスをする」
「へえぇぇ・・・!やっぱり姉弟だから分かるんですね!」
「まあ、当然と言えば当然」
ふと出されかけた言葉と動きが止まる。
「やっぱり弟のことですし、心配なんですよね」
「山田先生、根拠もなしにそのようなことを言わないでください」
「あ、照れてるんですか?照れてるんですねー!だってほら、塩と砂糖を間違えてってイタタタタタタ!」
モニターから顔を赤らめさせているであろう千冬の顔を見ようと振り向いた瞬間、視界を今から己の頭部を鷲掴みにしようかとする手のひらに埋め尽くされる。
俗にいうヘッドロックだ。
「先生、私はからかわれるのが嫌いだ。ましてや、目上の人間にそのようなことをするのはいかがなものかと」
「すみません許してくださいなんでもしますからぁ!」
ぎゃあぎゃあと悲鳴を上げる山田と実力行使を行っている千冬には目もくれず、ただモニターに映る想い人を見つめる少女、箒がいた。
彼女は堂々と祈るような性分ではないため、ただ心の中で少年の無事と勝利を祈ることしかできない。
(・・・勝て、一夏)
そんなやり取りの中、状況は確実に進行していた。
「一夏!!」
食いつくようんモニターを見ていた箒から悲鳴ともいえる声が発せられる。
モニターに映るのは懸命に己に向かって飛来するミサイルを回避しようとしたものの、直撃を受け黒煙に包まれるアリーナの上空。
そしてエネルギーが尽きて無様な姿を晒しているであろう黒煙に包まれた場所を勝ち誇った表情で見つめるセシリア。
それもそうだ、セシリアはまだエネルギーの1割も減っておらず、対して一夏はセシリアの減ったダメージの分だけしかエネルギーが残っていない、つまり1割を切っていたのだから。
「・・・決まった?」
「そんな」
呆気なさに某然とするいつの間にか拘束を解かれた山田と思わず己の手に力を込めていた箒。
しかし、千冬だけは冷静な表情を崩さなかった。
「ふん、機体に救われたようだな。あの馬鹿者め」
その顔にわずかに笑みを浮かべて。
◇◇◇
「おあいにく様、ブルー・ティアーズは6機ありましてよ!!」
「しまっ」
あれはレーザーじゃない、「
急いで期待を逆上がりをするように反転させ、一刻も早く迫り来るミサイルから逃げようとする。
しかしミサイルは映画なんかと違ってしつこく追いかけてくる。
宙で円を描くように、そして急降下とみせかけてすかさず上昇して一気に加速。
おもわず振り返った瞬間、ミサイルの目のようなカメラが目の前に
・・・あれ
おかしい
まだ飛んでいる
聞こえるのはハイパーセンサーが捉えた観客席にいる女性たちのささやき声。
俺を心配する声もあれば、やっぱりかなどというあきらめの声もある。
視界は黒煙に包まれ、何も見ることができない。
思わず煙越しでも周囲を見ることができる
ーーーフォーマットとフィッティングが完了しました。確認ボタンを押してください。
思わず目の前に表示された確認ボタンを押すと、さっきとは比べ物にならないくらいの文字列の波が流れていく。
そうか、整理しているんだな。
どうしてかわからないけど、直感でそう感じた。
我が身であるISの装甲も輝きながらその形を変えていくのがわかる。
それに、俺にとどめを刺そうとしたミサイルは今じゃ無防備な俺を守ってくれる黒煙を作ってくれたんだ。
キィィィィィィィン
輝きが強まり、文字列も装甲の形成もよりいっそう早まっていく。
刹那、俺を包み込んでいた光を帯びた粒子がはじけ、ISの姿を露にする。
純白
濁り一つない白だ
それもさっきまでよりもよりいっそうその白さを感じさせる美しさ
「ま、まさか・・・
輝きから推測したのか、セシリアの驚愕に満ちた声が響いて来た。
はは、ハイパーセンサー無しでも聞こえるくらいだ。
そうか、つまり、このISはとうとう俺専用になった。
改めて、まだうっすらと輝きを発する機体を見てみると、今でのいかにもロボット感を表していた無駄な凹凸は消え流れるようなフォルムとなっていた。
それはまるで、中世の騎士の鎧だった。
そして何よりも、武器が変わっていた。
近接特化ブレード「
まるで日本刀のような形状のブレードは刀自身よりも反りがあり、太刀と呼ぶに等しい。
鎬にはわずかに溝があり、わずかに光が漏れている。
そのブレードは美しくも機械的な印象を感じさせ、明らかにそれがISの装備であることがわかる。
でも、俺は特別驚きは感じなかった。
見たことがあるから
以前千冬姉がISで戦っているのを何度も見たから
その姿に憧れていたから
その千冬姉が使っていた、まさに”それ”だから
でも、今は感動に浸っている暇なんかじゃない。
まずは、目の前の敵を倒さねえと。
俺個人はおろか、全ての男性、この日本を馬鹿にしたやつを。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「な、イ、インターセプ っ!?」
黒煙が晴れないうちに俺はセシリアが先ほどまでいた場所に向けて、スラスターを前回にして突っ込む。
案の定、位置を変えることなく目を見開いたセシリアはそこにいた。
近接戦闘の装備を呼び出そうにも間に合わず、おれはすかさず薙ぎ払うかのようにブレードを振るう。
バターを切るかのような、抵抗とも呼べない何かをブレード越しに感じ、思わずセシリアを見ようとするも、すかさず逃げられてしまう。
でも、もう一回だ
「インターセプターッ! 調子に乗るものいい加減に!」
ブレードとショートブレードがぶつかり、火花を散らす。
だが、勝機はまだこちらにある!
いける!
「まさか・・・それは!そんな、あり得ない!!」
「勝たせてもら」
『試合終了!勝者、セシリア=オルコット!!』
「私とて、負けるわけには・・・ってあれ?」
「あれ?え?なんだ?」
試合の終了を知らせるブザーとともに、俺とセシリアの声が重なる。
「嘘だろ・・・まだいけるのに!」
混乱する俺の視界の端には、輝きを失い普通のブレードと変わらない輝きを発する「雪片弐型」が映っていた。
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