機甲人形戦線   作:SML 37mm Frim

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プロローグ:最終課目 歴史

 人類の大半は地上を離れた。空へ浮かぶ揺り籠であり棺桶に移り住み、地上の資源を以てそれらは維持される。

 

 超巨大空中巡航都市プシクラウン。かつて地上を支配していた人間による新たなる生活圏である。

 

 では、今の地上は誰が残っているのか?それは、人間が空へ昇った理由から話さねばならない。

 

 人間の経済活動による環境への負荷は計り知れないものであった。それらは、とうとう限界を迎えたのだろう。度重なる異常気象の末に旧大陸の中央にある砂漠から、赤い月が生まれた。そこから、無数の人ならざるモノの軍勢が現れて人類へ侵攻した。当初はお互いに緩慢であった。国境警備隊の通報を受けた数ヵ国が現地へ調査隊を派遣し、その現状を認識した。

 

 『赤い月、黒きもの共が我らを追ってくる』

 

 ある国の調査隊が遺した言葉。そこから、本土防衛の為に幾つか軍隊が派遣されて鎮圧に向かうと思われていた。しかし、それら全てを乗り越えて、軍勢は拡大を続けていた。人類がようやく団結したのは旧大陸の25%を喪失した時だった。

 

 時既に遅く、人類は後退を続けていた。幸いなことに海を渡る能力の無い奴らは極東の島国や欧州の島々を制圧することは無かったが、溺れ死んだ屍を橋にして侵攻を図る異常行動を認識されてからは陸に近く小さな島々は制圧されていった。

 

 海は潮流と海軍による定期的な掃討により安全が保たれている。人類は一部を残して旧大陸から撤退、新大陸にて体制を立て直そうとしていたが、極地を通じて北部からの侵攻を受けた。これに対応して、北部には絶対防衛線が構築されることになった。

 

 ここまで来て、人類は黒きもの共をネクストと呼ぶようになった。新たなる人類、新たなる支配者。支配層の交代という皮肉を込めた命名であった。

 

 人類も無策ではなかった。1機で1個大隊と同じ火力を求めて作られた汎用機動兵器 アームズギア。それを略してAG。口減らしも兼ねた反攻作戦に旧大陸の難民達を注ぎ込んで時間稼ぎをしている間に量産配備し、人類は新たなる力を手にした。

 

 それでも、人類は多すぎた。アームズギアが配備されて戦線が安定する頃には未だ12億人が残っていた。その為に新天地を文字通りに空に求めた。これは、人類の機能が侵攻によって完全に奪われることを危惧した為であり、複数の超巨大空中巡航都市が建造されて空に昇っていった。

 

 人類が2つの派閥に別れる時、何があるかと問えば対立である。地上の民は、見捨てられたと独立した支配権を宣言した。空の民は自給自足が完全に達成出来ずに、地上から軌道エレベーターにより送られる物資がなければ生活は出来なかった。

 

 地上は生産人口の減少と付き纏う戦死者の問題を解決するべくしてネクストを分析し、罪を犯した。人ならざる人。後にサードと呼ばれる特殊戦術歩兵人形、又はヒューマノイド兵器。それまでに行われた、先天的に戦闘力に優れた人間であるドミナントを光学的、薬学的に生産するデザインド、ドミナントをクローン技術により量産するカルティベイターの統合の結果である。

 

 サードは脳以外を人工物質により構成しており、通常の銃火器では傷付かず、五感のオンオフ切り替えにより例え負傷しても戦闘を継続できる他に、頭部さえ回収できれば新たな身体に搭載してまた戦場へ出られる。空での生活に困窮した人間や軍内の志願者、または死亡して回収された中で状態の良いモノを利用したサードまで生産されるようになっている。

 

 こうして、AGとサードは晴れて地上に隷属する事になった。地上には企業と労働者と軍人が主に残り、同時に地上で小競り合いが起き始めた。

 

 利益、資源、食料。求めるものは多かれど、それらを享受できる人間は少ない。地上には傭兵が息を吹き返し、安定してしまった戦場がそこかしこに作られていた。空から送られて来るサードは北部に送られるか治安維持任務に当てられるか、はたまた極東か欧州にて反攻作戦を行っていた。その戦闘力はAGとも撃ち合えるほどで、企業はその治安維持に手を焼いていた。

 

 さて、長く話しすぎた。傭兵上がりの君なら全部知っていただろうが、士官にはこうした教育が必要でね。さて、これで最後の課目を終わる。これから君には指揮官として着任してもらう。何、君と私の仲だ。これからも少なからず支援してやるさ。

 

 行こうか、指揮官。

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