もしもあの日、デンジと出会ったのがマキマだったら   作:純愛の悪魔

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恋・花・チェーン

「ホテルをとったんだ、今日はそこで寝ようか」

 

今日は流石の私も少し疲れた

朝にデンジ君と会って、ハンバーガーを食べて、お風呂に入って、ヤクザ達から助けて…

中々に過密なスケジュールだ……その前にはチェンソーマンと戦って、というのを追加すれば更に

 

「ほてる……??」

 

デンジ君は私の顔を見上げながら上目遣いにこてんと首を傾げる

……そうか、ホテルがわからないのか

 

「大きくて綺麗なフカフカのベッドがあるおウチだよ

今日はそこで一緒に寝よう」

 

一緒に…そう、寝てる間に何かがあってもすぐに対処できるようにだ

今こうして手を繋いで歩くのも、右腕が無くてバランスを取りづらいから杖代わりに使ってるだけ

それ以上でもそれ以下でもない

 

「フカフカ……スゲェ……」

 

デンジ君は目をキラキラさせながら私の手を強く握り返す

楽しみにしてることが一目でわかる

 

「早く行こうぜマキマ!!俺、デッケェベッドに飛び込むのが夢だったんだ!!」

 

夢…そんなのが夢だなんて、本当にくだらない

そんなの、私と一緒ならいくらでもできるのに

 

「あんまり引っ張らないでね、急がなくてもホテルは逃げないよ」

 

 


 

 

『マキマちゃんは…強いね

でも、寂しい強さ……いつか、マキマちゃんの側に居れる誰かが見つかるよ

でもね、その誰かは──きっと、トクベツな誰かじゃなくて

優しくて、普通な──』

 

懐かしい夢を見た

悪魔の私が夢だなんて変な話だけど

きっと、死にかけて滅茶苦茶になった記憶を整理しようとしたのかな

ずっと昔に、飢餓の悪魔から言われた言葉

……私を妹扱いする気狂いの言葉をなぜ今になって思い出したんだろう?

…………意味なんてないか

夢に意味なんて…求める方が不毛だ

 

「マキマ…もう朝だぜ』

 

優しく肩を揺り動かされ、目を開けると眼の前にデンジ君の顔があった

大方、中々起きない私を起こそうとしていたのだろう

 

「腕痺れちまってさ…そろそろ退いて欲しいんだけど」

 

腕が痺れる?退くってどこから…

デンジ君の言葉に起きぬけの脳がゆっくりと回転し始める

………よくよく考えるとデンジ君の顔が近過ぎる

それに、この角度は覗き込んでる角度じゃない…

これだと、私のすぐ横で寝てないと不可能じゃ……

そして、私はようやく…自分の頭の下──厳密にいうと頬の下敷きになっている柔らかくて温かいナニカに気付いた

コレ…なんだろう

あったかいな…柔らかいし……

良い枕だな…あとでフロントに聞いてみよう

よく眠れたのはコレのお陰かも…

少し小さいのが残念だけど

………………ん?

腕が痺れる………退いて欲しい……?

 

「ごっ、ごめん…!私、いつの間に…っ!?」

 

バネ仕掛けのように跳ね起きた私はさっきまで自分の頭があった場所を見てサーッと血の気が引くのを感じた

そこには、私の髪の跡がくっきりとついたデンジ君の小さな左腕があった

……私は、知らぬ間にデンジ君の腕を枕代わりに寝ていたのだ

 

とんだ失態だ…顔から火がでるなんて言うけれど、今なら本当に出せそうなぐらいに顔が熱い

 

「いーよ、俺がやったんだし」 

 

私があわあわと手を振り乱していると、デンジ君は手を握ったりして調子を確かめながら起き上がる

……俺がやった?つまり、私が無意識にデンジ君の腕を枕にした訳じゃない…?

 

「……どうして…こんなことをしたの?」

 

私は自分の失態が消える事を願って一縷の望みに託しデンジ君に問い掛ける

デンジ君は、頬を掻きながら少し照れたように…

 

「その…マキマが寝ながら、泣いてたから……

俺も、わかるんだ……寂しかったり腹ァ減ってたら勝手に涙出てくるの

だから……」

 

「私が……泣いてた…?」

 

そんなこと…ある筈ない

涙なんて…そんな()()私には……

 

「俺、マキマからいっぱい貰ったからさ

俺も……マキマに…その……返してやりたくって…」

 

尻すぼみに小さくなる声

でも、なぜだろう…なぜか、もっと聞きたくなる

なぜか、胸が痛くなる

締めつけるような、喉が痺れて…心臓がそこから出てきそうな程に動いている

わからない……私は、どうしてしまったんだろう

 

「……わっ!?マキマ…?」

 

私は、デンジ君を抱き締めていた

何故こんなことをしているんだろう…?

わからない

でも……こうして強く抱き締めれば抱き締める程に

温かいナニカが全身を巡っていく

まるで、今始めて心臓が動き出したように…

血管の一本一本が手に取るようにわかる

全身に心臓があるみたいに、頭の先からつま先までがどくんどくんと鳴り動いて

うるさいぐらいなのに……なぜか、この心臓の高鳴りが心地良くって

デンジ君の体温が、たまらなく温かい

耳を澄ませば、デンジ君からどくんどくんと心臓の音が聞こえる

デンジ君のにおいがする

鼻のいい私にもわからない…とても良いにおい

昨日は私と同じシャンプーとボディソープを使ったのに…なんでにおいが違うんだろう…

ずっと嗅いでいたい…落ち着くにおい

あぁ…足りないな…

早く右腕を治さないと

片腕だけじゃ足りない…

…………こうしてたら、生えてこないかな…?

生えてくれぱいいのに

 

ぎゅっ、とデンジ君の両腕が私の背中にまわってきた

デンジ君が、抱き締め返してきたらしい

あったかいな

それに……すごく、落ち着く

心臓は痛いぐらいに鳴ってるのに、とっても落ち着く

なんでだろう……

 

 

2時間後、抱き締め合ったまま寝ていた私とデンジ君は急いで着替えて朝食を摂る為に一階のホールへ降りていた

………まさか、二度寝までしてしまうとは…

本当に…なんだったんだろうか

しっかりと起きた頭でも、さっき起こったことが何か理解できない

 

「すっ……すっげぇ……!コレ全部食っていいのかよ!!」

 

「そうだよ、だから欲しい分だけお皿に取って向こうの席でゆっくり食べようね」

 

ただ……少し多めに食べておこう

早く右腕を治さないと

………別に、右腕が無いと人目につくからだ

いちいち能力を使うのも面倒だから…だから早く治したいだけ

それ以上でもそれ以下でもない

でも………

また、私が泣いてたら──

デンジ君は、抱き締めてくれるのかな

 

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