もしもあの日、デンジと出会ったのがマキマだったら 作:純愛の悪魔
「デンジ君、学校に行ってみたくない?」
「ガッコォ〜?」
ホテルで朝食を済ませた私とデンジ君は再び部屋に戻ってきた
将来的にはどこかのマンションの一室を借りるのがベストだけど…しばらくはホテルを転々とする方がいい
社会知識の無いデンジ君の教育にもなるし、私もあんまりここら辺の土地勘が無いから生活基盤を整えにくい
そして…早くデンジ君には学校へ行ってもらおう
歳的には小学生ぐらいの筈だ…悪魔の私が言うのも何だけど、学校は集団生活を学ぶ場所
社会知識や単純な学問ぐらいなら私が教えられても、そういうのはやっぱりそういう所で体験するのが一番早いし自然だ
デンジ君は人間なんだから、人間の中で暮らす方がいい
………実を言うと、理由はそれだけじゃない
最近…というよりデンジ君と出会ってから、私は私がわからない
意味もなくデンジ君を抱き締めたり、勝手に涙が流れたり…
私という存在が発生してから初めて起こることばかり
理由は………私がデンジ君をわからない
だから、ほんの少しデンジ君と離れる時間が必要だ
彼と出会った日からおかしくなってしまったのだから…少し距離をおいて、私が私を見つめ直す時間を作ろうと思う
編入手続きとかは、私の能力でどうとでもなるし…幸い今は長期休みの期間からは外れている
デンジ君が首を縦に振るなら明日にでも──
「ガッコって………なんだ…??」
「………そっか、そこから説明しないとだね」
しかし…学校の説明か……
難しいな…複雑な言葉よりもこういうシンプルで簡素な言葉の方が説明し難い
それに、デンジ君の理解できるように……となると……
「デンジ君と同じぐらいの歳の子供が集まって…
集まって……遊んだりご飯を食べたりするところ……?」
本分は教育機関だけど…そっちは私がどうとでも教えられるんだからこれで間違いは無い───はず
「…………なんで?」
デンジ君は訝しげに眉をひそめると小さく呟いた
なんで…?なんで………うーん……
普通ならみんなが行ってるから、とか義務教育だからとかで煙に巻くんだろうけど…
恐らく、デンジ君の言うなんで?は、なぜ学校に行くのかというよりも…もっと大きくなぜ遊んだりご飯を食べられるのか?
を聞きたいんだろう
「私とハンバーガー食べたりホテルに泊まったりしたでしょ?
それと同じだよ」
「………それは、マキマとだったから…
俺は………他ン奴らなんか信用できねェ」
おずおずと伸ばされた手は私のスボンの生地を掴む
カタカタと小さく震える小さな手
…………他の奴らは信用できない、か…私は随分と信用されたみたいだね
というより、基準値が低いのかな?
碌な目にあってこなかったから、周りへの期待が無い
だから、一緒にご飯を食べて寝泊まりした私への評価が相対的に高くなる……とか
…………どちらにせよ、デンジ君には学校に行ってもらう
それは確定事項だ
だから、どうにか説得しないと…
「………そっか…もう学校にはお金を払っちゃったから…
デンジ君が行かないなら無駄になっちゃうね」
……説得、というか汚い手ではある
デンジ君のお金への恐怖心や危機感を煽って無理矢理に話を通す
でも、きっとデンジ君はこう言うと──
「………それって…いくらぐらい……?」
少し目を伏せ気味に怖怖と聞いてきた
さて、どう答えようか…
勿論だけどまだ入学も決めていない学校に払ったお金なんて一銭も無いんだけど…
昨日の夜に烏や鼠達を使って観た学校は私立も公立もあった
確か……私立だと6年間で一千万ぐらい掛かるんだっけ
自分の命の値段を誰よりも知っていた──知らしめられたデンジ君にこの額を言えば、まず間違いなく学校に行くと言うだろう
だから──
「……ふふ、冗談だよ
まだ決めて無いからね……デンジ君が嫌なら、やめようか」
………あれ…?
おかしい…デンジ君を学校へ行かせなければならないのに…
「………マキマは、俺が学校に行った方がいいって思うか…?」
当たり前だ…君とは距離を置かないと
でないと──私は…この気持ちに抑えがおかしくなってしまう
「私は──」
言え、言うんだ…行って欲しいって
私から離れて欲しいって……言って…
マキマは──
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デンジに行って欲しいと伝える
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デンジに行って欲しくないと伝える
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自分の気持ちを自覚する
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愛を求める
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家族を求める