推しの子の異母兄   作:もこもこ@

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103 斎藤壱護の思い

 

「お前ら、やったなあ……」

「すみません」

「ごめんなさい」

「どうして僕まで……」

 

 脳天にピキピキさせているのは苺プロの社長である斎藤壱護である。

 金髪で見た目はチンピラ臭いが、アイを見出したり地下アイドルもどきからドームまで連れて行ったその手腕は本物である。

 アイには迷惑をかけまくられているが、それでも可愛く思ってるほどで、正直なところ娘のように思っているフシがある。

 

 今回はライブ現場で元気にオタ芸をしたことで呼び出しを食らっている。

 オタ芸をしたくらいで呼び出さなくても……というところだが、どうやら他に理由があるようだ。

 

「お前らめちゃくちゃバズってるぞ」

「あ、マジだ」

「うおおい、秀知院学園のだれかが僕の名前出してる!?」

 

 最初は派手なオタ芸が動画で撮られて笑われていただけだが、その正体がアクアとバレて流れが変わった。

 幼児であった頃の赤ちゃんオタのアクア&ルビーに辿り着いてしまい、『かつてのアイドルオタが夢を叶えてアイドルとオタに』『アクアシスコンすぎる』『根っからのアイドルオタだったのか』などと話題になった。

 

 元々ばぶばぶオタ芸は時々バズり直してる息の長いコンテンツだったようだが、それが現在の彼らに紐づいて大爆発したのだ。

 そのせいで連鎖して『あれ、一緒にやってるこいつ姫川大輝では?』『アクアと仲が良いって話はよく聞くけど、オタ友なのか』『もう一人のオタだれだよw こいつも役者?』『元秀知院の会計やってた大学生の陰キャ』『一番オタ芸似合うのに二人のほうがノリノリでつきあわされた感あって笑う』だのなんだのと盛り上がっている。

 

「あちゃー……石上くん申し訳ない……」

「いや、まあ、いいけど……はあ、明日大学で何言われるか……」

「でもまあ、B小町の話題にもなってるな」

 

 スマホを片手にアクアが呟く。

 説教されながらもだいぶ前向きである。

 さすがのシスコン力だ。

 

「まあ、プラスではあるんだが、姫川との繋がりも今後は意識されることになる。会うなとは言わないが、ちゃんと気をつけろよ! マジで!!」

 

 お~? どうやらルビーとの関係に釘を刺しに来たようだ。

 原作だけを見るとアイに脳焼きされている印象があったが、ルビー周りの関係も見えているようだ。

 普通であれば年齢も考えて離す一択だろうに、回答が気をつけろになるのはアイのせいだろうか。

 

「ルビーにもそういう気の使い方教えておいたほうがいいな」

「あ~、雑誌とかでポロッといきそう」

「アイに似て結構迂闊だからなあ」

 

 うちの子、うちの子猫。

 アイも結構口を滑らせていた。

 絶対時間空けて猫どうなのとか聞かれたら答えられなさそう。なんのこと~? 

 

「頭が痛くなること言うんじゃねーよ! まあ、アイドルがこっそり男を作ることくらいよくあるからな。要はバレなきゃいいんだ。作るならバレるな、防げないなら作るな。……時効だからあれだが、ニノにも彼氏いたしな」

「うわ、アイドル界の闇」

「ファンに見せなきゃいいんだ。アイドルは偶像。夢を見させるのが仕事だからな」

 

 やれやれと頭を掻きながら、今のバズの流れを上手く利用するために今後のWEBでの動き方についてあれこれと言われる。

 特に一般人の石上くんへ変に燃えてしまわないように手ほどきをしているようだ。

 

 しかし、ニノの彼氏か。……リョースケと彼女が付き合っていることを社長は知っていたのか。

 そう考えると、謎だった原作での社長の動きに納得がいく。

 

 彼にとってアイを殺した真犯人は【ニノ】だったのだろう。

 グループ間での扱いの恨みが原因だ。

 

 裏側を知らないアクアは【アイとB小町は仲良くないから病院を教えていない】ことを理由に候補から外したが、犯人であるリョースケを知っていた社長からすれば、ニノこそがリョースケに殺人教唆をした真の犯人だと考えてもおかしくないだろう。

 新居を襲ったことから二人以外にも関わりがある人間を想像して父親であるカミキヒカルの存在にたどり着きはするだろうが、社長からすれば犯人がリョースケであることを見てしまえば父親だってニノにたぶらかされた男の一人としか思えないだろう。

 

 社長が事件の後、姿を消した気持ちも想像できる。

 どんな気持ちいればで夢を託していた大切な娘を殺した犯人がいるアイドルグループを応援できるというのだ。

 しかも、もしも社長がニノをリョースケと付き合っていた、犯人と繋がりがあると警察に伝えたらどうなるか。

 

 ファンに殺された悲劇のアイドルはグループ間での三角関係の末に殺された裏切り者の売女に成り下がるのだ。

 

 アイを二度傷つけるようなことはできなくて、それでも芸能事務所の社長としてグループにも接することができないから彼は消えたのだろう。

 アイを殺した人間を殺したときに迷惑をかけないために姿を消したのであれば一人『リョースケとニノが付き合っている』と知っていた割には動きがなさすぎる。

 

 彼が犯人であるニノに手を下した瞬間、アイが世間に傷つけられるから彼は動くことができず、ただ姿を消し、一人釣りをして心を慰める(なにもしないをする)しかなかったのだ。

 

 ルビーを思い『アイの二の舞いは勘弁してくれよお……』と呟く社長を見つめる。

 アイを娘のように思うように、ルビーのことも大切に思っているのが肌から伝わってくる。

 

 彼の大切なものも守ったのだと思うと、何かが軽くなるのを感じた。

 

 




社長にとってアイの敵は【ニノ】だから最終局面でもニノと対峙する役をやったし、ニノさえなんとかしてしまえば一連の事件は終わると思っていた。

”父親”に殺意を沸かす動きも、あくまでアクアが上原を父親だと言い出したアクアに心配したうえで、彼が父親に囚われていることを知って、アイの死の要因であり、アクアが囚われている原因である”父親”をぶっ殺す(と言っても実際はぶん殴って謝罪させるくらいというかチンピラのぶっ殺すレベルの重さというか)だったのではないかなと。

責任を取らない顔も出さない父親をカスだと思っていても真犯人だとは思ってない。
それが原作での彼の行動につながっているのかな~って思っています。
吾郎先生殺しもニノの様子で犯人として察しているかもしれません。
アイドルグループとして子供がいることは死活問題だけど、アイ自体にいなくなってもらってもB小町がやっていけなくなるという中途半端さが先生殺しにつながったのだと思えば社長的には納得いってしまいそう。

原作でニノとリョースケ付き合ってたの知ってた! とニノに訴えるバイト社長に「いやいや、ならもうちょっとなんとかしてくれよ!! 釣りしてる場合じゃないだろ!」と思いましたが、【知ってた上で動けず釣り人になった】のはなぜかなと思うとこうなりました。

ニノのせいでアイが殺されてそんなニノの不満に向き合えなかった自分のせいだとか思ったり憎かったりしたらもうどうしようもなくて消えるしかないかなって。

やったね社長! ハッピーになってるよ!(娘と孫がすごいことになっていることはさておき)
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