推しの子の異母兄   作:もこもこ@

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105 ヒトリニサセネーヨ

 

「あなたって中身がないよね」

 

 鳴嶋メルトは自分のことを恵まれた人間だと思っている。

 それなりに良い家庭環境、理解のある両親。

 優れた体格とセンスで、小学生の頃始めたバスケではレギュラーだった。

 練習すれば練習するほど上手になって行くのが面白くて、小学生の間は恋愛には興味がなかったが、バスケ部の先輩に見せられたエロDVDで性に目覚めた。とはいえ、それで何かは変わらなかったが、中学生になってからはそういった面にも興味が出ていた。

 

 そもそも、一年からレギュラーになったメルトは見目の良さもあって、バスケ部の美人マネに声をかけられた。

 中学三年の彼女はクラスメイトのつんつるてんとは異なり女性らしい柔らかさと大きな胸があり、メルトは「私達付き合わない?」という言葉に即答で返した。

 数回デートをしてからは彼女の部屋に呼ばれた。

 まあ、最初からそのつもりだったのだろうが、部屋に招かれた瞬間にがっついてしまった。

 年上の彼女はそれをうまくやりながら導いてくれたと思う。

 なにせ、どこにいれるかも正直良くわからないままただただ興奮していた初めてだったから。

 それからはまあ、サルと言ってしまえばそこまでだが、バスケとセックスの日々だった。

 ああ、最高の日々だな! 充実していた。

 そのはずだったのだが、ある日彼女から声をかけられたのがコレである。

 

「あなたって中身がないよね。見た目がかっこよかったから付き合ったけど、見た目だけってダメね。中身も必要だわ。別れましょ」

「は?」

「正直あなたといても楽しくないの」

「いや、いやいや、待ってくれよ! はあ? お、俺が中身がないってどういうことだよ!」

「別れ話されて自分の中身について真っ先に聞くようなやつだから中身がないって言ってるの。なんにせよ、今日から私達他人だから」

 

 そう言って別れを切り出されてしまった。

 まじかよ、まじかよ……。

 初めての彼女との生活はこうして終わりを告げた。

 

 マネが他の誰かと親しくするのを見ると『そいつは俺より中身があるのかよ!』と不満が溢れてしまって連携もできなくなって、そこからはまあ、バスケ部にはなんだかんだでいづらくなってしまってやめた。

 ただ、バスケをやらない自分は本当に彼女が言うように何もないんじゃないかって思えてしまって、不安に襲われて街を遊び歩いてるとモデルにならないかと声をかけられて芸能界に入るようになった。

 

 コレならきっとあいつを見返せるな! 

 

 そうして始めた仕事。モデルは、まあ天職なんだろう。

 カメラマンの言うようにポーズを取ればそれだけでOKがでてお金がもらえる。

 見た目も芸能界で生きてきたカメラマンが、スタイリストが整えてくれたおかげで、顔の良いただのガキから、ちゃんとモデルの顔になっている。

 

(でもコレって結局見た目だけだよな……)

 

 整えられた見た目、言われるままにポーズを取るだけの人形みたいな気持ちになってくる。

 必死になって音楽とか学んでみたい! なんて事務所の社長に言っても、簡単に却下されてしまって、なんだかにっちもさっちもいかない。

 結局俺は中身がないのか……? なんて無力感が漂い出した頃、ある仕事が舞い込んできた。

 

「メルト! 朗報よ! ドラマの仕事が入ったわ!」

「え、マジ? ドラマなんてすげーじゃん! ……でも、俺ドラマなんてやり方分かんねーんだけど」

「まあ、うちメインモデル業だからね。ま、別に主役じゃないし、顔のいいのを集めてる感じだから自然体で行きなさい」

 

 だいじょーぶだいじょーぶと肩をバシバシ叩かれる。

 変なとこ適当なんだよな、この社長……。

 

 なんでも高校ホスト部って名前のドラマで、高校生なのにホストをやるらしい。

 年上役だがまあタッパはあるので、十分高校生には見えるだろうし、モデルもホストも同じようなもんか。

 この見た目があれば大丈夫だろ。

 

 ドラマということで中身が必要とされるんじゃないかとビビったが、見た目が良ければいいならま、なんとでもなるか。

 

「あービビって損した」

 

 ……とメルトは仕事を舐め腐っていた。

 努力を必要とされないことに半ば無気力になりかけていた。

 

 そうして撮影の当日を迎え、現場に立ち入った瞬間……あ、やべ。

 冷や汗が流れ始めた。

 

 そこには姫川大輝と星野アクアがいた。

 

 

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