推しの子の異母兄   作:もこもこ@

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115 嘘の先のトゥルーエンドへ

 

 

「お腹の子のパパは姫川大輝くんでーす! はくしゅー!」

 

 

 パフパフっ! 

 

 アイの声が明るく響くが、空気は死んでいた。

 アクアとルビーちゃんの表情も死んでた。

 

 二人のこんな表情見たことない。

 

 アイに呼び出されたと思ったらコレである。

 全く何も聞かされておらず、突然の発表である。

 

 まず一対一で伝えてほしかった……。

 

 最近共演の機会があって、ダーツでダブルブルを決めるシーンがあったので、遊びついでにアイとダーツを投げにデートにいった。

 初めてのはずなのに延々とブルを投げ続けて延々とバーストさせていた。

 ゼロワンだから持ち点を0にしたほうが勝ちなんだぞといっても「狙い撃つぜ!」と言っていた。

 

 あれは、伏線だったのだろうか。

 

 いや、演出必要ないだろ。

 

 その時に『二人の誕生日にプレゼントをあげたいんだけど、サプライズで一緒に祝ってほしい』と相談を受けてここにいるのだが、俺もサプライズを受ける側だった……。

 

 受験の応援と高校生になるんだしいいもの持っててもいいよね、と思ってちょっとお高い使いやすいシャーペンとボールペンを二人に用意したが、サプライズの衝撃がすごすぎて、これだと実に空気が読めないプレゼントになってしまった。

 

 深呼吸を一つ。

 

 脳が凍りつきそうだったが、必死にぐるぐると回転させる。

 ここでの一言が今後のすべてを決めるだろう。

 

 まず、妊娠はほんとだろうか。

 ……ホントなんだろうなあ。

 

 家族相手に嘘を嫌うアイがそれこそ偽の妊娠話をするとは思えない。

 つまり真実である。

 

 相手は誰だろうか。

 コレは考えるまでもないだろう、俺である。

 

 アイドルなのに子どもを生んでいるアイではあるが、身持ちは固い。

 元々性欲ではなく愛を求めていたのも理由だろう。

 子どもができ、ルビーとアクアで満たされたので、する必要なくなったのだ。

 実際、初めてしたときの感じから相当間が空いていると思ったものだし、それ以降も他に男を感じる瞬間はなかった。

 

 ゴムしてたのにな……。

 

 そう心のなかで呟いた自分にアイが笑顔で『コンドームしてたって子どもはできるんだよ! 学校で習わなかった?』と言ってくる。

 

 そうですね!! 

 

 いや、二回もあてたアイの言うことじゃないけど!! 言ってないけど!! 

 

 時期的に考えればあのとき(愛してるを教えたとき)に違いなかった。

 いきなり押し倒されたからコンドームをしたのはプレイの途中からであったし、出してはいなかったと思うが、射精せずとも妊娠する(我慢汁)ことはある。

 

 アフターピルを渡してはいたが、そういえば、飲んだところまで見ただろうか。

 思い返せば記憶にはない……? 

 

「アイ……」

 

 結婚、という言葉は頭に浮かんだが、口には出なかった。

 

 今でも両親の心中が胸に刺さっている。

 そして自分は父と同じく愛ゆえに人を殺せる人間だ。

 

 今まで、複数人に愛を抱きつつも好きな人ができたらその門出を祝ってきた。

 離れていくことを応援できたのは好きに愛していたからだ。

 

 でも、結婚して、夫婦になってしまったとき。

 

 その気持が拘束に変わり、愛が憎しみに変わってしまわないかが恐ろしかった。

 離れていくことを裏切りと受け取って縛り付けたり、殺すことが選択肢に上がりかねないのが怖かった。

 愛を複数に分けて溢れてしまわないようにすることが俺の生きていくコツだった。

 

「大輝くん嬉しい?」

「ああ。びっくりしたけど、嬉しいよ」

 

 結局言えたのは相槌のような一言だけだった。

 言われてみれば気づく程度にほんの少し大きくなりだしたアイのお腹を見る。

 

 不思議だったが、自分も喜んでいるのがわかる。

 

 両親をなくし、どこか一人になってしまった気持ちが、暖かく祝福されたようにも感じられた。

 責任が取れないから、結婚できないからと、いままで子供を作らないようにしていたくせに、

 

 ……ほしいと思ってたのか……。

 

 家族が増えることがこんなにも嬉しい。

 

「普通の父親にはなれないけど、二人共愛して幸せにする」

「おー! さすが大輝くんだね! よろしくね!」

 

 ニコニコ笑うアイは嬉しそうだ。

 アイ的には満足の回答だったようだ。

 

 まあ、そもそもアイが神木輝を振ったのは、お互い経済基盤のない子ども同士で、精神的にも潰れそうな相手だったからだ。

 お互い仕事も貯蓄もある状況だとまた違うのだろう。

 

「……アリ? 二人共ダメ?」

 

 二人がいる方を見ればアクアは顔を手で覆っているし、ルビーには目に黒い星が爛々と輝いていた。

 子供ができた、というのはアイだけの問題ではない。

 

「大くん……私は……?」

 

 三人の視線がぐっと集まる。

 

「ルビーちゃん。俺は君への気持ちに嘘はないよ」

 

 ルビーちゃんは知らなかったが、俺は半分血の繋がった妹を抱いたのだ。

 自覚の上である。

 そもそもその前にアイを抱いているのだからなおさらだ。

 重ねるとどう仕様もない男になったものだ。

 それでも愛しているし、幸せになってもらいたいと思っている。

 

「ママを愛してるのに?」

「君も愛してる。絶対幸せにして見せるよ」

「ええ~……ママ?」

「やったね、ルビー! 初恋が実るのはレアなんだゾ☆」

「ええ……なにこれめちゃくちゃ複雑……頭が痛くなってきた……」

 

 よろよろとソファーに座り込むルビーちゃん。

 頭がいたいと片手で頭を押さえている。

 

 ……ルビーちゃんには悪いが、離れていってしまったからとても辛いだろうと思う相手だった。

 幸せにすると目を見て強く伝えるとそれを見ていたアクアが顔を手で覆い言葉を漏らした。

 

「なんだこれ……絶望しかねえよ……」

 

 ポツリとこぼすアクア。

 初めてアイの妊娠を知ったときも脳が壊れそうになっていたが、今もそうなのだろうか。

 

 両手の間から見える顔は頭痛が痛いみたいな顔をしている。

 重い空気が漂う中、手を合わせる音が妙に大きく部屋に響いた。

 

「じゃ! パーティー再開しようか! ケーキ食べよ!!」

「あ、ハイ……」

「いやあ、今年のケーキは去年より美味しい気がするなあ……!」

「そうかな……そうだね、ママ…………」

「ああ、お母さんがいうんだから、美味しいんだろうな……」

 

 その日食べたケーキの味が全く思い出せなかった。

 もしかしたら味なんてなかったかもしれない。

 

 すべてのバッドエンドを回避して、トゥルーエンドを迎えたって人生は続いていく。

 だから、こういうことだってあるのだ。

 




アクアが「絶望しかねえよ」っていう感想をいただいたときからこうしたいと思ってました! すまんなアクア、読者が悪いんだ……!

産まれてくる子供は?

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