「人生これでいいのかと悩んでるんだ」
「わっ、いきなり大層な悩みが飛んできよった……」
星野アクアは転生者である。
前世の名は雨宮吾郎。
産婦人科医として生きてきた記憶がある。
前世の本当の夢は外科医で正直さりなちゃんのような子を助ける側に回りたいと思っていた。
憧れからの夢だったし、産婦人科医が悪いものだとは思わない。
多くの女性を助けてきたという自負もある。
でも胸にはこびりつき続けていた思いがあったのは確かだ。
なにせ、産婦人科医は母の仕事だ。
雨宮吾郎の母は誰とも知れない……でもないがたちの悪い男と子を作った。
雨宮吾郎出産と合わせて死亡しており、”父親”は顔すら出さず、もしかすると吾郎のことを碌に知りもしない可能性もあるような相手だ。
祖母は吾郎を大事にしてくれたが周りの目という負い目があった。
誰とも知れない男の子どもという負い目が。
だからこそ孝行な子ども、優秀で真面目な子どもとして勉学に励み、医師になる道を目指し……祖母の期待する母と同じ道をゆくことにした。
ある意味、母の間違った道をやり直すことで周りを認めさせたような形だ。
誰かの期待する道をゆく人生だったとも言える。
今はどうだろうか。
自分を愛してくれる母がいて、かつて幸せになってほしいと願った子が妹になっていて、飢えることもなく、やりたいことを応援する家族がいる。
ちょっとばかり二人の愛する男性には思うところがあるが、芸能界一家の割にはまあ、いいのではないだろうか。いやそうかな。どうだろう……。
まあ、笑顔のたえない家庭である。
一応、自分の知識を活かせるようにと外科医になれるだけの勉強は今も続けてはいるが、そもそも、これは星野アクアのやりたいことなのだろうか。
あくまで、雨宮吾郎のやりたいことなんじゃないか。
前世に言われるまま進路を進むのは結局ちゃんと生きてないんじゃないだろうか。
そんな未来についてモヤモヤと悩んではいるが、周りにいる人間がみんなアレすぎてろくな相談相手がいないのである。
アイやルビーに言っても『お医者さん!? いいと思うよ!』とか『きゃーアクア先生!』とかやりたいならやればいいじゃん応援するよになるだけだろう。
そんなわけで相談相手に選んだのが寿みなみだった。
現役グラビアアイドルに相談することではない気がするが、彼女はB小町の中でも特殊な立ち位置にいて、グラビアもバリバリ出すし、高校に入ったら彼氏を作りたいなー恋したいねんと言っても「応援している」「変な男じゃないか俺等がチェックする」「B小町とグラビアやめないで」と妙な歓迎ムードがある。
元々、同グループの妹の兄ということもあり交流はあったし、妹のことを相談する場合は彼女に聞くのが一番ということもあり、なんだかんだで相談相手といえば彼女という刷り込みがあった。
「でも、アクア兄さんって顔もいい、頭もいい、運動もできて、お金もあるんやからなー。周りはみんな何やってもいいよってなるのは当然やない? お金に困ってないって選択する余裕があるってことやもん」
「まあ、贅沢な悩みなのはわかってるよ」
「グラビア仲間、特に小学生からやってるような子って親に言われてやってる子が多いからな~。きわどーいシーンを撮ろうと思ったら撮影現場ではそれ以上に見せてるし……」
「芸能界の闇はお腹いっぱいなんだ……」
「だから好きに選べるならあとはアクア兄さんの意思やない? なにかやりたいことないの? 今の演技の仕事はやめたい?」
元々は妹の動向を探るためにも芸能界に関わった程度の軽い動機ではあったが、アイからの遺伝なのかこの体は演技力がいくらでも湧いてくるし、若くて力も記憶力もある。
アイが喜んでくれるのがとても嬉しい。
母親に喜ばれて褒められるのは麻薬だ。
心に染み入るし幸せになる。
医者になれば喜ぶだろう。芸能界なんて才能の業界、人気次第の世界だ。
いつ何時うまく生きていけなくなるかわからないヤクザな世界ではある。
でも、やめたいかと言うと……
「いや、楽しいと思うしやめたくはない」
これだ。
そうだ、俺は楽しいんだ。
演じるのが、評価されるのが、褒められるのが。
自分じゃない自分になるのも、良い作品を作ったという芸術家のような達成感も。
俺の演技に、俺の言葉に人生を救われたと、憧れてその道を進むことにしましたと、心がこもった手紙を読んだことがある。
何気ない気持ちで返事をしたファンレターが何年も続いている相手が実はいる。
「みなみはどうしてこの業界に?」
「ん~、まあ、最初は友だちに勧められたからってだけやったんやけどね。プロのカメラマンってすごいやん? ほんの一瞬を永遠にするっていうか、100%以上にすんごい瞬間を残すっていうか。今の自分がずっと残るんだって思ったらええやん! ってなって、でも先輩にグラビアだけじゃ生きていけないからちゃんと未来考えておかなきゃだめよ~って言われて試しにって思うて応募したらいつの間にかB小町って感じやな。社長にしっかり色つけてもろうたおかげで好きにやれてるし楽しいわ」
「……まあ、確かにカメラマンすごいよな。ほんとに俺かってなるときあるし」
「せやろ」
ある意味で自分以上の自分になりたい気持ちがアイドルになれている秘訣なのかもしれない。
「役者やっててなにか目標とかないん?」
「目標か……」
確かに向かうべき方向が見えてないからウロウロと悩んでしまうのかもしれない。
いざというときの逃げ道を用意したくなって医者の道を残していた……のかもしれない。
役者として、と思って浮かんできたのは一人の男の姿だった。
最初は妹の想い人として測る気持ちで。
前世の親族であると知って甥として接して。
現場を多く共有して、いろんなことを教わって薄っすらと兄のような気持ちを抱いて。
今は妹と母の相手としてお前どこの立ち位置にいるんだよとなんとも言えない気持ちも抱いている。
一言では言えない相手だが……
「勝ってみたい」
なるほど。
俺の胸には何か熱いものがあるようだった。
「なら、やってみればいいんやない? 高校生になったんやもん」
「そうだな。ありがとうみなみ。今度お礼をする」
「そんなん、きぃせんでええよ、……アクア」
ちょっとした目標が芽生えた瞬間だった。
バーチャルライブ「B小町ライブツアー」行ってきます。
こういうの初めてなので緊張します。
JIFに行った気持ちで楽しんできますね!
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