推しの子の異母兄   作:もこもこ@

127 / 127
127 IF:アクア再誕

 

 ●ケース1

 

 死が

 

 冷たい死が俺を覆ったはずだった。

 苦しい二度目の終わりは最後脳が見せた優しい夢に浸って心地よい気持ちだった。

 そのまま、人生を終えたはずだった。

 

 なのに、まだ続けろというのは神はあまりにも慈悲がない。

 あのクソ疫病神の同類だけある。

 

 今俺を抱いている女性は記憶の中にあるアイから少し成長しているアイだった。

 その美貌は衰えていないが、どこか大人らしい色気がある。

 年齢は……よくわからない。

 アイは俺達を生んでも完璧なアイドルだったが母親としてもだいぶ手慣れているように感じる。

 

 正直、前世に疲れ切っていた俺は何もする気になれなかった。

 体を動かしたくない。

 だからされるがままだった。

 本能のまま、反射的に生きていて、腹が減っては泣き、寒くても熱くても泣いた。

 下だって垂れ流しだ。

 動物のようなものだ、考えるのが辛かった。

 

 周囲の状況がわかればわかるほどに何も考えたくなくなる。

 アイが生きていて、ルビーがアイドルをやっていて、もう一人アクアがいて、なんだか能天気そうな表情を浮かべていて。

 話し方や態度で彼らが俺と同じくアクア(雨宮吾郎)ルビー(さりなちゃん)であることは感じ取れた。

 

 ああ、いいよな。お前は。

 こんなにうまくいってる世界で生きれて。

 そんな気の抜けた表情、俺はしたことなかったよ。

 

 いや、アイが死ぬ前の俺はこんな顔だったのかもしれない。

 推しの、さりなちゃんの代わりに推してて、そのうち心から応援していたアイドルのアイを母親として持てて。

 全身で愛してるを教えてくれていた最高のアイだったんだから。

 

 この世界の差異が何でできているかはすぐ判明した。

 

「それで、二人はどうなんだ(…………)?」

 

 この世界の(アクア)が姫川大輝にこういった。

 アイはもうひとりの双子を連れてこの部屋からいなくなっているから俺は残されたまま。

 そこで彼らは内緒話を始めたんだ。

 

「今のところは転生者ではなさそう、という感じかな。名前にもそれっぽい反応もないし、アイや俺に抱かれる様子も特に変な反応なし。演技にしたってそうかも知れないと思って見る目をごまかすのは難しいだろうし。そもそも、体を完全に預けてくれてるし……」

 

 コイツラは俺が考えることをやめていたおかげで転生者であることに気づかなかったようだ。

 ……前世、姫川大輝は転生者ではなかった。

 

 あいつの中身が誰かはわからないが、俺と同じ転生者ならもしかしたらカミキに殺された誰かだったのかもしれない。

 きっとだから知っていて、『なんとかした』んだろう。

 

 姫川大輝を知っている。

 この世界の星野アクアを見た。

 

 だからわかる。

 親に愛されなかった姫川大輝とは別の形でかけている。

 こいつも俺と同じように人殺しで解決した人間だと。

 

 ……やるじゃないか。人殺し。

 

 同じ人殺し同士だな。仲良くしようぜ。

 でも、こいつはうまくやったんだよな。

 

 俺は何一つうまくいかなかったのに。

 人生すべてを差し出して、ただ今以上に不幸になるのを止めただけ。

 

『アイが死ぬ前に行動すべきだった』『お前のせいでアイの未来をうばったんだ』『あんなにみんなが幸せに生きる未来があったのに』

 

 雨宮吾郎と子どもの星野アクアと大人になったアクアが俺を責める。

 

 どうすればよかったんだよ。

 ああ、俺は馬鹿だったよ。

 アイと幸せな生活に浮かれてたよ。

 

 でも子どもの俺に何ができたんだよ! 

 

『でもあいつはうまくやったみたいじゃないか』

 

 なら、あいつがいれば俺はもういらないだろ! 

 

『そうだよ、お前はせっかくみんなが掴んだ幸せを壊すかもしれない』『壊す前になんとかしなきゃな』

 

 そうだ、俺は……今がフコウになるマエにケツダンしなきゃいけないんだ……

 

 その日の朝、アイが目を覚ますと……

 

 

 バッドエンドだこれ!! 

 

 

 

 

 ●ケース2

 

「みんなー!! 赤ちゃんの中身がアクアだった!」

「どうでもしてくれ」

 

 遠くにいるアイを見てブツブツ言い出したので、アイと子どもたちが寝ているところに盗聴器を仕掛けてみたのである。

 

 独り言の内容からおそらく原作アクアであることが判明。

 こっそりベッドから抱き上げてアクアルビーと一緒にエメ(原作アクア)くんを連れてきたのである。

 

「これホントに俺か?」

「……んーでも、ゴローせんせの匂いがする気がする! ミルキー!」

「嗅ぐな、嗅ぐな」

 

 神か神の使いらしいツクヨミに見せてもらった未来のアクアであるということと、その結末を伝えるとアクアはだいぶ不憫そうな目でエメを見ている。

 

「苦労したんだな……よし、俺はお前がアイのおっぱいを飲んでいても何も言わない」

「そういえばエメ、ママのおっぱい飲んでたね! エッチになっちゃった? このこのーおちんちんつんつーん」

「おい、やめて差し上げろ」

「どうなってるんだ!! この世界の俺とルビーは」

 

 妹……姉? にツンツンされるのは流石に恥ずかしいようでなんだか真っ白になっていたエメに感情の色が宿る。

 

「あ、おっきくなった! この年でも勃起するんだね! お兄ちゃん!」

「赤ん坊だって勃起するんだ。ちょっとの刺激で大きくなる。……おしっこのときにだって大きくなったりするから真っすぐ飛んで困ったりするんだぞ」

「そうだったんだ。知らなかったな。小さくしてあげたほうがいい? 全然エッチな気持ちにならないし、このお兄ちゃんなら介護気分でやれそう」

 

『『やめろ』』

 

「というか、どういう教育しているんだ、アクア!」

「いや、こいつが色ボケになったのは俺のせいじゃない。そいつのせいだ」

 

 ビシッと探偵のように指を刺されても困る。

 

「全部お前のせいじゃないか!!」

「お前じゃなくて、パパって呼んで、エメ」

「はあ!? お前アイの夫のくせにルビーに手を出してんの!?」

「むしろルビーと仲良かったからアイに手を出されたんだけども」

「どういうこと!?」

 

 永遠に突っ込み続けるエメはあまりにも疲れすぎていて、わめき続けたあと、スイッチが切れたように眠りについてしまった。

 寝ながらもなんだか怒っている彼はなんだかプンプンしている。

 プンプンしているが赤ちゃんなのでただただ可愛いだけである。

 

 みんなで眺めて和んでいたらアイオと二人で戻ってきたアイにずるいと怒られてしまった。

 

 悩むのも気力がわかないのも仕方がないが、父親として、『同じカミキヒカル殺し(人殺し)』として幸せになるコツを教えてあげなければ。

 たくさんの家族に囲まれ、悩む暇もないくらいに振り回してやろう。

 

 

 幸せになることまで含めて復讐の完結なのだから。

 





続きません

出番が多いと嬉しいキャラは?

  • 星野アイ
  • 星野ルビー
  • 星野アクア
  • 有馬かな
  • 黒川あかね
  • MEMちょ
  • 寿みなみ
  • 不知火フリル
  • 鮫島アビ子
  • 吉祥寺頼子
  • ツクヨミ
  • かぐや様のキャラ
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