人気が爆発した。
名探偵の劇の公演が終わり、DVD販売に合わせてテレビニュースで取り上げられた。
そこから天才名探偵、天才子役と言われるようになり……役と同じく体は子供、中身は大人と言われるようになった。
劇にドラマにひっきりなしに呼ばれることになり、同時に動き出していた実写映画版名探偵モノにもオファーが来た。
一度出ればおそらく小学生低学年のうちはずっとオファーが来るだろう。
原作のアニメ映画ほどの顧客はいないだろうが、それでも数年に一本狙えるだろうことを考えると二本か三本映画出演が決まったようなものだ。
……この辺がサザエさん時空と呼ばれる、何年放送されても作中では一年立たない仕掛けと現実でのリンクの難しさである。
名探偵は年を取らないが、役者は年を取るのだ。
一番わかり易いのはハリーポッターだろうか。
登場人物のハリーたちは役者と同じように年を取っていっている。
どうやっても作品を作るたびに年をとってしまうのだ。
撮影の時期や事情。諸々のズレも生じる。
【17歳のハリー】を演じる【20歳のハリー役者】だとかだ。
俺の今の年齢は3歳。
原作と同じ小学生1年生までなら3年、小学低学年として3年くらいまで見てくれるなら6年。
映画自体作成に時間が掛かるし、そうでなくても何本も同じ作品の映画を出し続けても売れるものではない。
売れるとわかっているアニメ映画でも年一くらい。
頻繁にやって飽きられても、というのもあるのだろうが……。
2年程度に一度公開してくれるなら2~3回出演できる、と言える。
逆に言えばそれくらいごとにいい子役を必要とするんだから、シリーズ物の実写映画の重要な役に継続して演じる子役が配置されない理由もわかろうものだ。
まあともかく、原作でかなちゃんが【ちゃんとした作品にしたければ私レベルの子役がその時代にいなきゃいけない】と語っていたがまさにそういうことである。
そして逆に言えば今は【子役がいるうちに撮っておきたい作品】……言い方を変えると、【子役が主役であるせいで普段は稼げない作品】の企画が通るようになる。
『ああ、有馬かなちゃんが主役なの? あの子なら視聴率いいだろうしいいんじゃない?』である。
五反田監督のいうところ、看板役者になってきたのかもしれない。
……そんなわけで毎日勤労している。
一日のうちに3本以上仕事を受け、それどころかレクリエーションの名目で訓練も受けている。
俺は……社畜である!
年少者の労働時間の制限というものがある。
児童を労働者として使用することは基本として禁じられている。
ただし、いくつかの条件で許可されている。
【満13歳以上の場合】だ。
こちらは一部の重労働を除いた「児童の健康及び福祉に有害でなく、労働が軽易なもの」という制限があるが、労働できる。
労働基準監督署長の許可が必要だが許可される内容なら大丈夫で、中学生が学校に届けを出して行うアルバイトとかだろうか。
じゃあ三歳のお前はどうして働いてるんだよ。
そういう話になるが……ここに例外が決められている。
演劇子役
……すなわち、映画や演劇などについては満13歳に満たない児童についても同様に就学時間外に使用することが認められているのだ。
ただし、15歳以下の児童の場合、就学時間+労働時間(稽古や衣装替えを含む)が1週間に40時間、1日7時間を超えてはならないとされている。
ちなみに俺は就学してないので1日7時間働ける。
働けるのだ……。
まあ、小学校で毎日5時間授業を受けていたことを思えば……である。
逆に言えば学校に通っていると平日は二時間そこそこということになる。
だがまあ、この辺はいくらでもやりようがある。
要は訓練は自宅での自由時間で行い、労働可能時間をほぼ撮影時間に使えばいいということだ。
大人はずるい。
厳しい環境ではある。
だが、心は大人であるお陰で文句も言わず楽しんでやっている。
とはいえ、ミスでのNGを殆ど出さないこともあり、撮影自体はすぐ終わる。
ぱっと撮ってまた次の現場に行く。
すると労働時間はごくわずかで、移動時間が主に占めるため、オーバーにならないのだ。
やばいな! 最近通帳の金額がうなりを上げ始めている。
俺もかなちゃんと同じく優秀な納税者になれるぜ。
そういえば。
マネージャーさんが送ってくれる車の中でうとうとしながら思った。
アイから電話番号聞いておけばよかった。
……いや、ナンパかよ。無理だわ。また寝た。
売れっ子の子役ってハードだなと思いました。
給食が楽しみでのほほんと学校に行っていた自分とは別世界に生きてるな……。
かなちゃんの移動中は目を瞑ってるだけでもそれなりに疲れは取れる、というのが長い子役生活のノウハウなんでしょうねえ。