「ざっ! けんなー!」
4歳になった姫川大輝である。
ファンレターも日々届くようになり、母親に読み聞かせられるその時間が好きだった。
膝上にのせてくれながら一通一通嬉しそうに聞かせてくれるのだ。
今日もよく頑張ったなと頭を撫でてくれる父親が好きだ。
しかし、今日二人に言えない秘密ができてしまった。
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今日も今日とて日々仕事である。
ただ、同じように体もまた成長しているせいか、昨日より今日が前より同じことをしても疲れない様になってきた。
移動時間中に体を休めるONOFFを身につけてしまえば、ほとんどの時間が休み時間だ。
セリフを覚えなければいけないので完全に何もしないでいい時間は短いがないわけではない。
睡眠時間は法が確保してくれるので失われることはないし、なんとでもなる。
実際、働きすぎではというところについては父の方が熱心で、裏には一緒に訓練する時間がほしいみたいなところもありそうであったが、経験に繋がらない仕事を捺せたくないようであった。母は単純に子供のうちから働きすぎでは? というところのようであるが。
それをついつい止めてしまったのは俺のやる気である。
色んな作品にでて、『いよっ! 待ってました』と褒め称えられる。これが麻薬である。
ファンレターでお褒めの言葉をいただき、君の演技に人生を変えてもらったと言われて。
疲れはするものの、俺にとっては労働ではなかったのだ。
今日の現場はアイドルに憧れる少年。女装してアイドルになるという話で、主役はそんな子に振り回されながらも星を感じるマネージャーだ。
うーん、業が深くない?
アイドルとして出演する中にちょい役だがB小町がいる。
どうやら今日の収録で一緒にいるようだ。
「あ、そうだ。大輝くん、ちょっと相談があるんだけどさあ」
「え、はい」
ワンシーン取り終え、次はと台本をめくり、さっきの演技を元にいくつか想定していたものから角度を変えたほうがいいなとメモを取ろうとしたところで見覚えのない現場スタッフさんに声をかけられた。なんやろ?
後ろをついていくと仮設の荷物置き倉庫に呼ばれる。
こんなとこで何だ? と思っていると、さっきのシーンに文句があるらしい。
稀にいるんだよなあ。監督はいいと言っているのにああしたほうがいいと先輩面で指導してくれるやつが。
最初は参考にしていたが、監督の思っていたのと違うとNG出されてから監督の気持ちを読み取っているだろう助言以外は程々に聞くようにしているのだ。
「あのシーンはね、こうしたほうがいいと思ったんだよ」
子役であるせいなのだろうか、稀に口ではなく直接体を取ってこうしてほしいと言われることがある。
背中に回ったおっさんのスタッフは俺の両手を取って人形を操るように動く。
ペッタリと体を合わせてそうするので背中とお腹が触れ合うし、いや……むしろ……なんかこするみたいに触れてくんな。
うーん? なんかあたってねえ? アレ……げっ。
でも子供の体を考慮してもそんなに大きくない気がするので別に大きくはなってないのかもしれない。
いや、でも硬いってことはなってるってこと?
このあたりでようやくなんかおかしくない? と思う(遅い)
「でね、しっかりお尻に力をいれて……ね?」
「はわっ!?」
手を離したかと思ったら、両手で尻をさすりあげてきたのである。
悪寒がビビビと駆け上がる。
「おやー、もうそういうのわかる年? 大きくなった?」
さわさわとズボン越しに男のあれを撫でだしたのだ! きっしょ!
「ざっ! けんなー!」
お返しに振り返りながら鉄拳一発。
行き先はお返しなのだからあそこである。手が汚れた。
「ぎゃわ──ー!!」
アホみたいな声を出して体を丸めながら倒れるスタッフ。
でもそもそもあいつ撮影のときにいたっけ。なんのスタッフだ?
挨拶した相手はそれなりに覚えている自信があったが思い当たらない。
ダッシュで倉庫から逃げると、真っ先に目についた信頼できそうな大人の元へと駆けていく。
「変態だ! 襲われそうだった! 助けて!」
「は、はあああ!? まじかよ、お嬢ちゃん!!」
眼の前にいるのは金髪グラサン。
そう、いちごプロ社長の佐藤……斎藤……いややっぱり佐藤? だっけ? な社長である。
ちなみに今の俺はアイドル衣装を着ている。要は女装である、
ごめん、男なんだ。俺。