出会いがあれば別れがある。
そしてこの別れは予定調和であったと言える。
アイとカミキヒカルは別れたようだ。
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カミキヒカルは何が理由なのか分からないが、俺のことを気に入ったようで演技の訓練をつけてくれる。
彼から身につけた技はそれはもう役に立つものでまあ今の躍進の一因ではあると思う。
で、訓練をつけてもらうようになって気づいたのだけれど、ここのところ彼の演技は精彩を欠いていた。
なんというか色がついていないというか感情が載っていない。
動きとしては最適な動きや角度であったが、どこかマネキンにそのポーズをさせたような印象を受けるのだ。
実にうまいのだが。
もしかしたらこれはアイの模倣なのだろうか? そういえば彼女はアクアとルビーのヲタ芸をみてきゃわ~~♥ になるまではアイドルのプロって感じの何処か足りないパフォーマンスだったのだ。
子供を産んでいない彼女のマネならそうなるかな、と思わないでもない。
幸い今の役が主役ではなく主役を立てる脇役だからかうまい演技で足りているようだが、監督はなにか言いたげな目をカミキに送ったあとはカミキの方を見なくなった。
カミキはその監督の表情の変化に気が付かないふりをしていた。
これはアイの真似ではなさそうだ。
……失恋だな!!
カミキとアイの付き合い始めた頃の発情していたピンクっぽい感じは今や灰色。
これは振られたに違いない。
……うーん、正直彼のことを親とは全く思わないが、年上の親戚……兄弟子……先輩……関係を言葉にしづらいが、芸は素晴らしいのだ。
芸術に身を捧げる人間であり、己の上を行く表現者である。
色々な事情を脇に置けば尊敬に値する人間だ。
それに、別れたということはアクアもルビーも誕生が確定した……と言っていいだろう。
であればまあ、女は星の数ほどいるよと慰めの一つくらい送ってやってもいいのではないだろうか。
俺の中にあった『生まれてくる人間を生まれないようにすることは殺すということではないか』という気持ちもこれでクリアである。
弟妹ヤッター! まあ、いつ会えるのかという感じであるが。
「カミキさん」
「おや、どうしたんだい? 大輝くん」
ニコッと微笑んで迎い入れてくれているが、何故か今まで一度も向けられたことのない怒りの色が少しだけよぎる。
さっと隠されてしまったが、なんだか腹を立てているらしい。
「あ、や、何でもないです。疲れてそうなので大丈夫かなって」
「疲れてる? ああ、そうかもね。うん。気をつけるよ」
暖簾に腕押し。しかし、洋風のマンション住まいが増えてる今暖簾に腕押すことはあるだろうか。
アイとうまく行かなかったのはお前の親のせいだ! とか思ってるのかもしれない。
正直アイとうまく付き合ったのはアイと同じく愛してほしい人間同士だからで、アイとうまく行かなかったのは愛を知らない愛してほしい同士だからという感じがするので、この二人のペアは付き合える=別れるという感じの印象がある。
もし彼が愛を知る人間だったらそもそも付き合えもしないし、カミキ自体付き合おうとすらしなかっただろうと思うとなんだか運命的だなと思う。
運命は必ずしもハッピーではない。
でもまあ、目の前で落ち込まれるとあれだな。
アイの思い切りの良さは知ってるので、『別れよう。このまま一緒にいてもお互い愛を知れないと思う』とかサクッとすがる余地なくふったのだろうなーと思った。
今度甘いものを差し入れておこう。
アイは母親を結局は女だったと言っていましたが、きっとカミキも男、あるいは少年のままなので、きっとできたと報告したときに「おろすのか?」とか「じゃあアイドルやめるのか」とか地雷踏み抜いてそうからのゴロー先生への両方やめない宣言してそう。