芸能界でコネを広げたり、最上家でゲームをして友情を高めたり、かなちゃんを愛でたりしていると時間はあっという間に過ぎる。
今度かなちゃんが出演する映画が『そして誰もいなくなった』であることを聞き、ついにきたか、と思った。
『そして誰もいなくなった』は原作登場の映画で整形しようと山奥の村を訪ねた女性を襲うホラー? な映画である。
なんで山奥に整形しに来るんだろうか。BJ先生がいるんだろうか。
それはすべておいておこう。
弟をひと目見たい。
これから不幸になるばかりの彼が生まれた幸福と母親の愛情を一身に受けて光り輝いているだろう今の彼を見てみたい。
彼の幸せを守るのだと、そう思いたい。
本人には関係ないところで勝手にやることだが、だからこそ、本人に知られずこっそりと見たい。
だが、幸か不幸か俺は今回の出演者ではなく、割り込めるような枠はない。
というより、割り込みをかけると変な話弟の枠が消えることになるだろう。
それでは意味がない。
映画に対する日々やる気で轟々燃えているかなちゃんを応援しながらタイミングを待つ。
ある日、今日のかなちゃんは”コネ”にぷりぷり怒っていた。
コネってよくわからないけど、実力がないのに出演するなんてバス停の割り込みみたいなものってことでしょ! いけないんだからそういうの! とぷうぷう怒っていた。
かわいいね。
芸能界で純粋な実力だけの人間なんてそういない。コネと貸しといろんなもので物事動いている。
ただまあ、それを今のかなちゃんが理解する必要があるかな? とも思う。
どちらかといえばかなちゃんママが勉強するところかもしれない。
成績が良ければいいという学校の勉強とは違うところなのだ。
でもま! 弟がそれで映画に出れるならそれでよい。
ここのところ仕事が重ならないように調整しておいたので、現場が近いのでかなちゃん面倒見ますよとかなちゃんママに連絡すればじゃあまかせたわねと即答である。
……信頼されてるナー。
**
現場に到着。
今日はかなちゃんの付き添いですと現場スタッフに挨拶をしておく。
すでに何度かやっているので受け入れてくれるが、まあ、基本子役の面倒は親がするものである。
よそのそれも子役が子役の面倒を見るものではないし、それを良しとしてなにかおこれば責任は現場なのだから、大分優しくしてもらっている。
監督から次の現場で使いたいんだがと予定の打診をされたので内容と役割を聞く。
手帳を確認すると空いていたのでマネージャーに確認しておきますねと答えているとかなちゃんがいるはずの控室で大きな声が聞こえてくる。
監督はうるさくて悪いなと笑った。
彼らはあそこにいるらしい。
挨拶に行ってきますねと監督に別れを告げる。
「ママぁああ! ママぁああ!! ママのとこがえりだい!! なんでママいないの!!」
耳に響きやすい子どもの鳴き声はうるさい。
だが、その内容に耳を向けた瞬間誰もがぎょっとするに違いない。
「早く帰ってバブりたい! ママの胸でオギャりたいよぉー! 私をオギャバブランドに返してー!!」
……こいつやべえっ!
え、改めて見るとやばいな! どういう人生経路をおくればオギャルを習得するんだろうか。
中身がおっさんではなく中学生くらいの少女だとしてもうえーとなるレベルの見苦しさであった。
本気で泣いてるんだぜ。
後にルビーは私はルビーの演技をしていたとかのたまうがこれを演技でやったと言うなら
という感じである。もっと幼児を観察して!
え、近くにいるのがアクア? ……駄目だな……。
これが俺の妹かあ……
すっと視線を横に逸らすとそこには自分の半身を底冷えする視線で見る一人の少年である。
こちらの視線に気づいたのかどちらさまですかと曖昧な感じで笑顔を返される。
(おお、光サイドのアクアだ……)
陰キャボッチイケメンになる前の、転生主人公味のあるアクアだ。
医者からの転生者のはずなのに疲れたサラリーマンから転生したかのようなアイドルに世話される幼児生活を満喫している彼である。
子供を満喫している幸せさが体から溢れており、全身が輝いてる。
これが俺の弟かあ……!!
オギャバブラーのルビー。
でも、まじで遭遇したときは可愛いとはたして思えるだろうか……?
やばい度のほうが高いと思う。
さらりと流したかなちゃんはオギャルがよくわかってなかったからだと思う。
大きくなったかなちゃんはあの頃を思い出してアレってそういう意味だったのかこいつやべえなと思うのだろうか……