これまでほとんど母の描写ばかりだったが、父の清十郎は何をしているかといえば、いまいち何もしていない。
というのも、役職としては役者のようだが、それほど家に帰ってこないし、夜はいないことが多いのだ。
映像畑である母とことなり舞台の人である父の活躍はいまいち劇場に行けない俺には伝わらない。
作中では姫川大輝に売れない役者であるとされていたが、仕事をしていないわけでもないようである。
ただ、アルコールや日々異なる香水の匂いをさせて帰ってくる父はやはりいろんな女に手を出しているらしい。
──正直あまり接触のない父との距離は測りかねてた。
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「え、ダイキ子役やってみたいの?」
「うん。ダメ?」
歩き出したりママ呼びしたりと色々なイベントをこなした。
公園デビューを無事に果たし走ったりジャンプしたりボールを蹴ったりしだしたので子役希望を出してみた。
アクアも一歳で子役をしていたので、それに合わせて希望を出してみたのだ。
「うーん、いい経験にはなるでしょうけど。子役から大きくなって芸能界でうまくやれない子も多いって聞くし、普通に遊ぶ時間もなくなっちゃうし……。どうしたものかしら」
うーん、うーんとだいぶ悩ませてしまったようだが、そこに清十郎が帰ってくる。
「帰ったぞ」
変えるなりそうそうソファーにドサリと座り込むとタバコを咥えて火をつけようとして……こちらにようやく目を向けた。
「どうしたんだ?」
「ああ、聞いてくれる? 清十郎。この子、子役やりたいんですって」
「あん? 子役? なんでだ?」
家で行えなかった以上、情報収集のためには外に出るしかない。
業界で活動すればアイやカミキヒカルの動向を知ることも可能である。
とはいえ、それは裏向きの話なので、表向きの話が必要だ。
そして、母親が反対側なのであれば父親を落とすしかない。
「大きくなったらやくしゃやる!」
「へえ」
「おとうさんみたいに!」
媚って見る。まあ、原作で姫川大輝は劇団ララライのトップスター。
19歳にて月9の主演もしている。
その才能を早くから伸ばすに越したことはないだろうというのもある。
「あら、私みたいにドラマにでたりはしてくれないの?」
「どらまにもでる……!」
「あら」
母親の期待には応えたいところだ。
実際に原作の姫川大輝は演劇だけではなく、映像の世界でも羽ばたいている。
アクアといい、カミキの才能は相当なものだ。
二人の母の影響かもしれないが。
「ふん、役者の世界は厳しいぞ」
腕を組み、立ち上がれるようになったばかりの赤子にそういう父はまるで修行パート前のツンデレ先輩キャラである。
そこから何故か家に寄り付かなかった父はちょいちょい帰ってきては演技の練習をしてくれるようになった。
まだフワフワの幼児なので原作のぴえよんブートキャンプのような猛ダッシュや筋トレを課されることはなかったが、絵本やテレビ、映画を見ては都度その時の感想を求められた。その内容はどう思ったより、どう感じたかを重視しているようで、感情の自覚と発露を重視しているようだった。
感想が終わると、気になったキャラを指定して演技をすることになる。
父が行う演技を後追う形で演じるのである。
一緒に見ていてくれる母がバリムシャに褒めまくるものだからそれだけで嬉しくなってしまい無敵である。
父もやって見せればその通りに演じて見せる息子にご満悦である。なんや、いいオヤジやんけ! タバコと女の香水臭いけど!
母はと言えば発声を鍛えてくれるようで、一緒に歌……お歌を歌っている。
自分のことだろと言う話だが、声変わりしていない子供の声は透き通っていて天使感ある。
母と一緒になってカエルの歌を歌っているその声はなんだか癒やされるものがある。
今このシーンユーチューブにでも上げれば数付きそうだな、なんて思った。
子供がヒーローごっこを楽しむレベルでこの訓練は楽しかった。
やはり褒められるのは心地よい。
スポーツ選手なんかはこの褒められる感覚に努力が苦にならないようになるというが、まさに。
努力ではなく遊びであり、全く苦ではない。
家族としてシングルマザーのような形だった家庭が役者という夢を抱いたことにより俺を通して両親が家族になる。
それがなんだか心を満たし始めていた。
自分が目の前の男のこどもではない、ということを忘れて。
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本誌のメム、アイドルにかける思い、いいですよね……メム好き。
でもアイが死なずルビーが順調にアイドルを目指すと……おやや。