やはろー! 日々を芸能界のコネ増やしと毎日を狂人じみたカミキヒカルの叫びから情報拾いをしながら、人を破滅させてやると日々を生きる姫川大輝だ。
……やさぐれそうな日々である。
時間というものは止めようとしても流れるもので、ドームライブ時8歳の小学2年生だった俺だが、9歳の小学3年生になった。
だからどうした。
その気持わかる。
三年生になったからなんだというのだ。
なんだというのだろうか。
……クラスに男女差が生まれだしているのである。
「大輝は私の!」
「ヤダーー!! 僕のっ!」
「私が一番前から仲良しだったのっ!」
うーん、小学校1、2年の間はみんなカルガモみたいに笑って仲良く後ろをついてきてくれたのに、最近は女の子は女の子だし、男子は男子だ。
芸能界の仕事でしょっちゅういなくなる大輝に男子とやや距離ができているし、おかげで仲良くする相手は女子が多かった。
きっかけは何だっただろうか。
とある女子がブラジャーをつけてきて、男子の一人がそれをからかったのだ。
クラスで身長が高めで成長も早く、子どもの頃からすでに顔立ちの整っている彼女はクラスで人気がある。
「え~? そんなに気にするなんてもしかして太郎くんって華のこと好きなの~?」
「ば、ばっおれがこん『華は大輝のこと好きだからやめてよね』こん、こんなやつすきじゃねーし……」
クラスに壁が生まれた瞬間である。
その声に異議申し立てりと声を上げたものがいた。
「私も大輝くんすきだもんっ!」
対抗馬は亜由美ちゃんだった。漢字が違うが読みは小さくなった高校生の小学生ヒロイン?である。
彼女自身なんだかそれを運命的に感じており、親に歩美ちゃんルックを頼んでいるせいか、割と本人である。
行動力はパワフル。
その声にさらなる伏兵が立ち上がった。
「僕だって!」
もう一人はサッカー少女で、だからこそ大輝のテレビの中の姿に憧れて仲良くなりに来た。
リフティングやシュートを見せてみるとキラキラ目を光らせてきたので仲良くなった。
半年前位は彼女たちもまた仲良しカルガモだったのに……!
半泣きになりながら両方に手を引っ張られているがこのままだと千切れそうである。
それどころか背中から肩を掴まれて三方である。
ところで君たち、こんな話を知っているか?
『その子の腕を一本ずつ持ち、それを引っ張り合いなさい。勝った方を母親と認めよう』
あ、まって、引っ張らないで。
で、だね、『痛いと言った子供に片方が手を離してしまうんだけども、本当の親なら、子が痛いと叫んでいる行為を続けられるはずがない、って離したほうが母親だ』というんだ。どう思う?
「私大輝くんのおかーさんじゃなくて彼女になりたいもん!」
「あっ、ずるい!!」
「というか、二人のじゃない!! わたしだってほしいっ!!」
引っ張り合いは激化した。
一体何が悪かったのだろうか?
もはや俺の意思は彼女たちには関係なく、ただ勝ち取るという魂の闘争だけがあった。
――俺は仕事を増やした。
**
「モテるなー」
「笑い事じゃなくない?」
「そう?」
勝利くんのお宅で愚痴っているとこれである。
多重結婚術を行使していた彼はどうなのかといえば、なぜか大人しく棲み分けをしているらしい。
『朝起こす彼女』『学校で過ごす彼女』『部活で過ごす彼女』『塾で過ごす彼女』がいた。
まじかよ。
彼はもしかしたらラブコメの主人公かもしれない。
推しの子はかぐや様は告らせたいとつながっているらしいので、もしかしたら別にそういった世界とつながっていてもおかしくない。
だとしたら俺は芸能界にも理解のあるけれど女の趣味が重ならなくて競合にならない系友達……!?
……ないな。
そもそも、小学3年の段階でモテすぎである。
今はメインヒロイン二、三人と将来の約束とか取り付けるターンだろう。
恋愛者は高校生からである。それまでにもてて席が埋まってはいけないのだ。
だからこそ、『高校生までお前なにしてたの?』と幼馴染枠が負けるわけだが。
付き合ったら物語が終わりなのである。
……いや、どうだろう? アクアは普通に付き合ったしね、利用するためでもあるけど。
「どうでもいいけど、告白はちゃんと断らないとあとに響くぜ?」
「何だその貫禄」
実際、性に目覚めだしたのは同級生だけではない。
むしろ上級生にこそ多く、とりあえず送ってみる感じのラブレターが結構届いている。
まあ、身近にいる有名人としてひとまず恋愛ゴッコを楽しんで見るにはちょうどいい位置かもしれない。
……しかし、
「無記名やめろ! あと当日呼び出すな、持ち帰ってから読んだらどうすればいいんだ! あとあぶり出しはなんのつもりだ!」
役柄のせいで暗号で送ってくるのはどうなんだろうか。
解けねーよ。
メールアドレスや連絡先を書いていてくれるのはセーフだが、本当に連絡先も名前も抜けていたりするものがあり、そうなれば推理の仕様もない。
「そういうのはな~、クラスの情報通の女の子に聞くと今日告白するって言ってたから◯ちゃんだと思うよ、って教えてくれたぞ」
「そんな相手いねえ!」
学校の違う友達とつるんでるくらいである。
学校で遊ぶ相手はいてもその先に繋がらなかった。
遊ぶ時間自体がないのもあるが、ボッチのままなのである。
同性に友だちができないというのもある。
俺のゲンタとミツヒコはどこにいるんだろうか。
「ていうか、ねーちゃんあたりを身代わりに使えばいいじゃん。小学生のおこちゃまが中学生に勝てるはずないし」
「んー、メグは最近アイドルに本気みたいだし、そういう邪魔するのはなー」
中学生になったんだからアイドル活動認めてよ、みたいなやり取りが家であり、勉学と両立できるならと実績を魅せること13歳になったメグは地下アイドルっぽいことを始めているらしい。
コネを使うこともできたが、自分でやりたいと彼女は毎日努力を重ねている。
正直芸能界で培った目で見るとメグはどこか地味だった。
少なくてもわかりやすい輝きがない以上努力が必要だ。
それに人がどこで輝くかはわからない。
ルビーがゴロー先生の死を知って覚醒と言ってもいい様な芽生えを迎えたようにメグにも一皮むけるようなイベントが来るかもしれない。
「まー、でもアイドルに夢見るのあんまりおすすめしないしね……」
不安定な人気商売だ。アイだってあれほど才覚に恵まれてもグループで売ってるうちは貧乏だったし、マルチタレントやりだして固定の番組を持つようになり、CMに出るようになって初めて個人としては売れだした感じである。
グループ売りとしてはAKB48から始まった『これだけたくさんいれば誰かは好きになるだろう』戦略は輝く一番星がいなくても大きく人を集める戦略としてあたっていたが、同時に個人として浮き出るにはかなりの力がいる世界にも変わっているし、アイのようにグループすべてがアイのための舞台装置にとして人気が一点に集まってしまうグループだと他がろくに見てもらえない。
ただ、お金がほしいからアイドルになるのではなく、アイドルになりたいからアイドルになるのであればなればいいじゃないかとも思うのだ。
アイドルとしてではなくとも、日々努力しているメグは輝いていた。
「地下アイドルの評判調べておこうかな……?」
「うわ、クソ過保護ー!」
いつかのアクアの気持ちがわかってしまった。
親が「え? 大輝くん? いいじゃんいいじゃん頑張ってみちゃいなよ―」と発破をかけたりしている。
男子はテレビで出るたびに比べられてちょっとマイナス感情抱きだしてたりする。