「俺の家、来いよ」
「へっ? だ、大輝……く……ん?」
手を引っ張る。
混乱のためかされるがままだが、都合はいい。
俺には秘策があった。
眼の前の彼女ならきっと成功を果たす。
少なくともその資質を持っている。
「あの、あの……!」
「部屋に行くぞ」
「へやって、HEYA!?」
「うるさい。早く」
「あっ♡ ご、強引なんだから……」
彼女を部屋に押し込む。
うひいと情けない声を上げ、なぜかぎゅっと目を瞑っているらしい彼女の肩を叩く。
「見てほしいのはこっちだ」
「へ? ……カメラとマイク?」
「JK配信者、やってみないか?」
「……はえ?」
おら、配信者になるんだよ! メグっ!
配信者はいつ始めていつやめても良い。
機材も俺の家にあり、使っていない部屋が防音性能高めのため、そこに各機材を移し、配信用の部屋を作った。
そして、彼女のちまちま動く猫のような可愛らしさを活かすために髪をショートにさせて色を金髪に染めさせた。
黒髪長髪のせいでやや重ためだった印象が変わる。
「ああ~、アイリスペクトだったのにいー」
「夢のアイドルだったから何にも言わなかったけど、お前にアイは似合わない」
「がーん! ひどいっ!」
「名前も変えるぞ。メグミンってなんか記憶に残らないんだよな」
「私がつけたんじゃないんだけどなー」
せめてめぐみんだろう。爆裂しよう。
いや、可愛さがたりないか。
「え~、じゃあつけたい名前があったんだけどいいかな?」
「どんな?」
「私の名前って
そう、彼女はMEMちょだったのである。
「いいんじゃないか? 世界で一番しっくり来る名前だ」
「本名よりっ!?」
金髪に染める前の彼女はモブさが格段に上がっており、高校生になるまで全く気づかなかった。
アイドルを目指してからはショートになることもなかったし、あの小悪魔? な角もないのだ。
え~? でもMEMちょだってわかるでしょ? と思う人は【夢見る少女 MEMちょ】で検索してみよう。
あ、モブ……という気持ちが溢れるはずだ。
かわいいけど背景だなとか、メインキャラと髪色で埋没させられるやつとかいろんな言葉がよぎるはずである。
作品に出てこない友達の姉なのである。姉のほうが出てたとか知らない以上、見え方が違うのもしょうがないよね。
俺は彼女に似合いそうだと思って買っていた角付カチューシャを取り付ける。
──がしょん。
「完璧だ」
「そうかなー?」
「問題ない」
「……そうかなー?」
彼女はユーチューバーの世界に躍り出たのである!
彼女はきっと成功する。
それは俺だけではなく読者なら皆が知っていることだ。