「はじめまして! ひめかわだいき 1さいです! きょうはよろしくおねがいします」
目をキラキラ(ビカビカではない)させた黒髪に天使の輪がきれいに輝く子供がペコリと頭を下げた。
現場の人間に刺さる音が聞こえた。
「うわー、とってもかわいい! 挨拶できて偉いね~。もしかして姫川愛梨さんの子供?」
「はい! おかーさんのこどもです!」
ぺかーと笑顔を浮かべる。
ここは現場。ドラマの撮影現場である。
目ざとい人は気づいたかもしれないが、芸名、姫川大輝である。
戸籍的には上原大輝なのだが、今回は芸名ということで姫川の姓を名乗っている。
そもそも、子役は小さければ小さいほど本名を使うケースが多いらしい。
まあ、子供からしてもあんまり違う名前で呼ばれてもどっちが本当の名前!? ってなるだろうし、使い分けに神経をつかいそうだ。
じゃあなんで姓を変えてるんだよ、といえば、母が現場では姫川の姓のまま仕事をしているからだ。
息子の芸能界での成功に父ほど熱意のない母としては普段と同じ方がいいんじゃない? という意見だったが、父としては母のネームバリューも味方にできる姫川のほうがいいだろうとのことだった。
「大輝はお前のほうが似てるしな。ま、中身は俺の方に似てると思うが」
「ハイハイ。まあ、ララライで舞台役者やるときになってから上原を名乗ってもいいしね」
とのことである。
子役事務所も母と関係のある人物の紹介で決めたということもあり、こちらで名乗ることにした。
原作では多数の才能ある美人に手を出していた、と原作大輝には嫌われて姫川を名乗っていたが、最近は家への帰りも早く、他人の香水の匂いをさせることもなくなった。そもそもいうほど浮気性ではなかったのかもしれない。
そもそも、子供の記憶の話なのだ。
元々悪い人ではなかったのかも。
さて、輝ける初めての姫川大輝の現場であるが──
主人公はシングルマザーの母親で浮気で離婚した旦那にバイバイしたが、子育て仕事と忙しくしている中、職場の新人と先輩に挟まれて……という三角関係ドラマだ。
新人はドジだが一心に主人公に尊敬と思いを抱いていて子供にも好かれている……が頼りない。
先輩はクールで仕事もできるが愛を知らない男で子供が苦手。
だが話が進むうちに先輩の過去や子供が苦手というよりは接したことがない、そして自分自身も子供でいられなかった背景が見えてくるのだ。
……。
…………。
ちなみに、肝心の役は主人公の友達の子供である。モブ。
ひげダンディの夫とうまくやっている良きアドバイザーで俺は適当なところで『まあまあー!?』と声を上げたりして話を終わらせたり、主人公にうまく関係がいってるところを見せて、自分の家庭について悩ませる対比に使われる役どころである。
お相手の母はできる女感のあるお姉さんなので、胸元にきゅっと抱き上げられると少しドキッとするものがある。
だいきおおきなおむねすきー!
──スマヌ、母! これは浮気ではない!
しかし──
子役の現場というのは面白いものである。
例えばだが、子供を怒鳴りつけるシーンがあるとする。
大人から怒鳴られれば普通のこどもだったら泣いてしまう。
ビイビイ泣きまくって、それこそ明日から現場に行きたくないと言い出すくらい悲しんでしまうだろう。
ではどうやって撮影するか。
「ダイキくん、これからお兄さん変な顔するからね。口を閉じたらセリフ言ってもらっていい?」
「うん。任せて!」
「お、偉いな。じゃあ行くぞ」
サングラスをしたお兄さんがカメラに視線を送ると撮影が始まる。
「────────―!」
するとお兄さんは突然口をパクパクさせ始めた。
顔は怒っているが、その様子がおかしくて全く怖くない
「そっちこそ! なかせたくせにあやまれないなんてこどもだってできるもん!」
カット! 声が響く。
「おー! うまくセリフ言えて豪かったな! 一発合格だ。偉いぞ―」
よしよしと頭を撫でられた。
『────────―!』
だが、口パクだけで音は何も出ていないが、
「子供になにがわかる!」
というセリフだった。
先輩さんが関係者皆のパーティの中、子供のいたずらに怒鳴ってしまい、主人公は「見損ないました!」と涙を流してしまうのだ。
ただその悪戯の対象だった時計は先輩の亡き妻の最後の贈り物で彼の過去につながるのだが──まあ、それはさておき。
子供相手の怒鳴ったりするようなシーンはセリフは別撮りなのである。
簡単に機嫌の変わる子供の扱いは結構慎重で割りと丁寧に扱われるようだ。
背景のキャラならそこまではされないが、何度も登場シーンのある演技をする子役は扱いがだいぶ丁寧だ。
「大輝くんとっても上手にできたわね!」
演技で親子のせいか、母親役の女優は特に優しくしてくれるのでもう大好きである。
(あー、芸能界楽しいな!)
こうして俺の子役ライフは順調に始まりだしたのである。
そろそろ原作キャラが必要ですね!
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