「こんメムー! はい、今私がどこにいるでしょ~~かっ!」
ばあーんとカメラの前に広がるのは海である。
匂いは伝わらないが、見るだけで潮の香りがしそうだ。
寄せては引く波の音が聞こえてくる。
「記念撮影企画は無人島生活だああ!! ──なんでこんな企画通しちゃったの!? 死んじゃうよ! 生きられないよ!」
機材だけ渡して頑張れと言いたい気持ちもあったが、まあ最初は手伝ってやる必要があるだろうと前世で流行っていたユーチューバー企画をあれこれ投げつけた。
色々あったがメムの人気はかなりのものである。
大変な企画も多かったことからMEMとの仲も深まった気がする。
だいぶ気やすい仲になった気がするが、なんだか無理筋を通してくる馬鹿野郎みたいに扱われてる。
しかしあれだよね。
転生してユーチューバーとかVチューバーで当てる系あるけど、いい企画があろうが、当たるにはやっぱり自分の力が必要だよなあ。
毎日配信の事を考えないといけないし、企画力もだが、雑談力も必要だし、ファンが受け入れてくれるキャラも必要だし。
ただ、斎藤社長からもお墨付きをもらっていた身近に感じて光るアイドル性をメムは持っていた。
アイやルビー、カナちゃんたちと違う大衆のアイドルではなく、俺達のMEM。
ユーチューバーとしてファンとの距離はアイドルのときとは比ではなく近く、それでいて面倒見の良いMEMはファンひとりひとりを大切にした。
お陰で古参のファンは力強く彼女を支えてくれている。
同時にかわいがってもいるが。
『いけるいける』
『日焼け止め塗ったか―?』
『MEMちょって泳げるの?』
『いいなー、休み取って海行きたい……』
MEMは歌が△というかヘタウマなので、クセがあり頭に残るがいい声とは言いづらい。
だが、そのダンス力と持久力、根性はなかなかのものである。
泳ぎは仕込んだし、釣りもできないわけではない。
芸能界で生きていけるのなら、無人島でも生きていける。
バイタリティは十分である。
「最低限の道具はあるけどね、銛とナイフがあるよ。うん。何させたいかわかるね」
『つけって事ですね』
『釣り竿くらい上げればいいのに』
『ボロい釣り竿じゃコイしか釣れないけどな』
『コイはうまいぞ』
「釣り竿は訴えたけどただの釣り番組になるからって却下されましたー! まあ、寝床を確保したら海にいきましょう」
『おー、水着来た!』
『スタイルいいな~』
『プールで泳いでるだけでも視聴者数撮れたんじゃ?』
「だよね? 言ってやって!!」
訴えるようにこちらをみるMEMにプラカードで応える。
【そんなの我々が楽しくないです】
「おのれ! 邪悪な運営!」
『メム虐助かる』
『まあお陰で水着が見られるわけで』
『女性ユーチューバーの中では体張ってるよね~』
その後、いろんな魚を銛で突いたり、ウツボにビビったり、夜寝床にした場所の横までイノシシ急接近に泣きそうになったりした。
フォロワーも視聴者数も上がったようだ。
「何が悔しいって私が採れたての天然塩で魚を食べてる横で! ラーメン食べてるところなんですよね! 虐待の匂い!!」
『まあ、カメラマンに魚取ってる時間はないもんな』
『分けてあげないから……』
『海行ってカップラーメンを食べることになるカメラマンの気持ちにもなってあげてほしい』
「なんでそっちがわなの!?」
メムは今日もいそがしかった。
原作よりファンがついて売れている上に何故か一緒に撮影に参加しているのが姫川大輝なので、ファンからは「もしかしてそういう?」とか思われつつ進展は今のところない模様。
でもそんなんなので、アレ、これ恋愛リアリティショーに参加しねえな! MEMちょ何やってんだ!