「というわけでですね。このまま子役を続けるのは無理でしょう」
「そうか、で、どうする?」
「どうするったって……」
未来を含めて面倒を見る覚悟を決めた以上カナちゃん家族を含めて話をしようとしたらこれである。
一般会社員のパパさんはどうやらカナちゃんママをすでに見限っているようで、机には離婚用紙が記載済みで置いてある。
他にある資料はどうやらいろいろな証拠であるようだ。
つまりはもう詰んでいたようだ。
カナちゃんの役者としての人生方針について家族に相談させてもらいに来たのに、一体何でこうなった……。
「俺はお前の不貞の証拠を押さえている。有責で離婚が可能だ。だが俺も子供は可愛い。子どもの未来を考えられない母親の下にいて幸せになれると思えない。君ではカナにタカるくらいしかできない。娘の親権をくれるなら君に
「私は、その……」
「言い訳を聞く気はない。かなの力を自分の力だって態度ばかり大きくなるお前を止めなかったのは俺だ。だがそれが醜くて……いやそれはいい。そもそもだが、子役の給与は子どものものだ。親権がお前のものになるにせよ、この子には自分の未来のために貯めるように指導するつもりだ」
「それじゃあ私はこれからどうすればいいの!」
「だから
ど、ドロドロしている。
この場にカナちゃんがいないことだけが救いである。
話し合いで芸能界のことはろくに知らないから一緒に立ち会ってほしいと今ここにいる。
「俺はかなの夢を応援するよ。劇団ララライ、いいところじゃないか。下積みの役者の給料なんてろくにないだろうが、それでもいいだろう。そもそもまだ親が養育すべき年齢の子供なんだからな」
そう、俺の提案プランは俺と一緒に劇団ララライで役者をやろう、である。
劇役者は当然テレビやドラマに出るような役者より給料が低い。
売上の基本が見る人間が劇に来た人間と限定される以上それはそうだ。
下積みとなればそれ以上である。
だが、売れない元天才子役にはならず、きっとカナならそのまま天才役者として羽ばたくだろう。
実力さえ発揮してくれればあとはあかねのようにテレビやドラマにも出ればよい。
いうなれば子役終了時点で刀剣ブレイド出演後のカナちゃんにしてしまおうという企みである。
正直、刀剣後の羽ばたき具合でカナちゃんはあかねに差をつけられている。
だが、これはアイドルの制約も大きいように見える。
個々で活躍できなかったり、恋愛関係の制限など。
特に苺プロはルビー贔屓のプロダクションである。
カナはあくまでルビーのための人員だった。
旧B小町のときと比べればだいぶ個々に寄ってはいるが、カナちゃんの役者としてもやっていきたいという思いは基本汲み取ってもらえているようには思えない。
刀剣もあくまで今日あまにでたことの延長線で苺プロの活動のおかげとは言い難い。
あかねはそのへんうまく花開いて魅せている。
「で、でも!! 何年も役者なんてやってたらそのうちカナなんて忘れられてしまうわ! 大きくなってからじゃうまくいかないかもしれない!」
「それも人生だろ? そうなってから初めて改めて道を選べばいい。幸いかなは学校の成績だって悪くない」
「こ、子役なら間違いないわ! できるだけ続けましょう! 私、また現場について行ってもっと出番をくれるように頼むつもりよ」
そこに、バーンと勢いよくドアを開けてカナちゃんがやってきた。
聞き耳を立てていたのか涙目である。
「ママ! カナ、役者をやりたいの! 将来もずっと! だから子役を辞めるけど、応援してほしいっ!」
その様子を見て、カナちゃんママは大きなため息をついた。
諦めた、と言えるかもしれない。
何を諦めたのだろうか。それは……
「カナ。私、売れてるカナが好きだったの……」
カナちゃんママはカナちゃんの目を見て言った。
まっすぐ見て言ったのだ。
「え……ママ?」
「カナ、きっと売れるようになるわ。将来ね。でも、今のカナ嫌いよ……別れましょう。私、田舎に戻るわ」
「好きにしろ」
「ママ……?」
「大輝くん、今までずっと迷惑かけたわね。でもね、浮気してたのは私だけど、ろくに世話してないのはあっちも一緒よ。本当に大切にしてくれてるのは世界中であなたくらい。義務もないから好きにすればいいけど、できればそのまま好きでいてあげてね」
「ママ!」
「理想の母親になれるはずだったのにどうしてこうなっちゃったのかしら……うまくいかないわね……」
10秒で泣く天才子役ではなくカナとして涙をこぼし続けた。
……うまくいかない。
ドラマでは両親の心に訴えて再び一つにしたことがあるカナちゃんの叫びはけれど実の母親には伝わらなかった。