下手なことしなければよかった。
現実の夫婦間問題は子どもの心からの訴え程度ではどうにもならない。
二人の関係はすでに破綻しており、あとはいつ終わりをつげるのかという状態だったのだ。
問題のないわけではない母親ではあったが、かなちゃんママは都合が良かったこともあるだろうが、俺に非常に親しくしてくれていた。
ご飯にはよく呼ばれたし、ご飯は美味しくて、母親を少し彼女に感じていた。
両親が死んだときにも彼女なりにあれやこれやと気を使ってくれていた。
確かにかなちゃんを自分の分身のように、その成果を己のもののように味わっていただろうが、カナもそんな褒めてくれる母親を好きだったわけでもあるし、家庭の形はそれぞれでもある。
問題は子役を永遠のものだと思っていて、次の成功まで耐え忍ぶ時期を受け入れることができなかったことだ。
何せかなちゃんは赤ん坊の頃から天才子役として受け入れられていたので、今まで挫折がなかったと言える。
そんな娘の次の成功を信じられなかったのか、それともいつかを夢見るくらいならない方がマシだと見切ってしまったのか。
でも一番の問題はかなちゃんパパとの関係に原因がありそうにも見える。
かなちゃんママがかなちゃんの出演作を見ているときに『現実はこんなふうにうまくいかないわよねえ』とこぼしたことがある。
これだけかなちゃんと一緒に過ごしていて、かなちゃんパパとは今回くらいしか接触がなかったし、娘が親しくしている男子にあれほど興味がないというのもどうなのだろうか。
しかし、かなちゃんの家庭を壊す一押しになってしまった。
死んでないだけ良し、なんてのは勝手な意見だろう。
かなちゃんからすれば家族一緒の世界が壊れてしまったのには違いがないのだ。
そして壊すひと押しを与えたのは俺なのだ。
かなちゃんの未来も背負うのだ、なんて思って行動してこれだ。
自分なんかがかなちゃんを背負うなどおこがましかったのだろうか……。
自分と同じく家族の別れを経験させてしまったことで俺はどこかうまくいかせることができることを前提で動いていたことに気づく。
原作知識を持っているからって人生が上手くいくとは限らない。
むしろ持っているからこそ上手くいかないことも多いのだ。
そんなことを再び思い出した。
「はーっ、疲れた」
ソファーに横になるとそれだけで眠気が襲ってくる。
いつの間にかウトウトしていた。
お腹に温かいものを感じた。
「かなちゃん……」
そこにいたのはかなちゃんだった。
俺が行くことのほうがはるかに多かったが、いつでも家に来ていいとスペアキーを上げていた。
だからここにいたっておかしくはない。
かなちゃんのことは赤ん坊のころから推していたが、だいぶ大きくなったなあ。
小学生高学年になったかなちゃんは見た目は原作のかなちゃんに近いといえばそう見える。
原作よりもっと自信満々で全力で、黒川あかねの愛するかなちゃんなのだろう。
お腹のところで丸まる彼女は大きな猫だった。
可愛いなと思って撫でるとそれで起きてしまったようだ。
「だいき……」
大輝お兄ちゃんと呼んでくれる時期もあったが、最近は大輝呼びである。
女の子の成長のようなものを感じていたが、どことなく縋るような色が見えた。
「なんで会いにこなくなったの……?」
「いやその、忙しくて」
「嘘つき」
気まずくていつもだったら会いに行ける時間があれば会いに行っていたがそうしていないのがバレていたらしい。
まあ、離婚があってから一度も会いに行っていないのだからわかるのも当たり前かもしれない。
「もう会いに来ないの……?」
「いや、そんなことは」
「あんたも……なんだ!」
煮えきらない答えばかりを返すうちにカナちゃんの怒りのボルテージがどんどん上がり始めている。
ホワッとした寝起きの顔からだんだんブチ切れ侍モードである。
「売れなくなってきたからかなから離れるんだ!」
「いやそんなことは……」
「赤ちゃんのときから一緒にいてくれたのに!! ずっと一緒にいてくれるって言ったのに!」
「い、言ったっけ?」
「言った!」
記憶にはないが言っていたらしい。
「責任取ってよっ!」
「か、家族が別れてしまったことは本当に申し訳なく思っているけど、責任はとりようがなくて、その……」
「カナの責任取りなさいよ!」
「カナの責任?」
カナの責任とは?
「一緒にいるって言ったんだからいっしょにいなさいよ! 契約違反でしょ! 訴えるわよ!!」
「エー?」
ぎゅうぎゅうち抱きしめ続けてくるかなちゃんは子供の体のくせに柔らかく温かい。
責任をとれとれいうならそうだな、責任を取らないといけないことをするべきだろうか。
父親とはうまく言ってないし未来不透明だしお母さんいないしその上に大輝もいなくなるしとワーワー言い続けるかなちゃん。
ずっとコアラみたいにしがみつきながら言い続けるものだからなんかそう、柔らかくて暖かくて、子どものミルクっぽい匂いもして。
ムラっとしてしまった。
責任、とるか。
「いいよ、かなちゃんの一生の責任取るから」
「え、うん」
「だからかなちゃんの全部は俺のモノね」
「うん?」
かなちゃんを抱き上げる。成人女性と言うには軽すぎる体をお姫様抱っこで。
連れて行く先は寝室の大きなベッド。
かなちゃんは"元"天才子役になった。
続きはWEBで!(R18注意)
https://syosetu.org/novel/351772/
あと、AIイラストにも手を出してしまいました。
今はすごいですね、いろんなかなちゃんが作れて。
カナちゃんかわいいよかなちゃん。
AIイラストの挿絵ってあったら嬉しいですか?(どんなものかは活動履歴参照で
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