「劇団あじさいから来ました。黒川あかね、中学1年生で13歳です。精一杯がんばりますのでよろしくお願いします」
パチパチパチと劇団員の拍手が響く。
取り囲む劇団員に向かってぺこりと頭を下げる黒髪ショートの女の子。
髪の毛がぼさっとしており、化粧っ気もない。
訓練日の役者には多いが。
しかし、学校か何かの体操着できたのは珍しいんじゃないだろうか。
劇団ララライでの初の挨拶に緊張しているのかちょっと視線があちらこちらへ踊っている。
俺も劇団ララライのメンバーとしてパチパチと手を叩くと嬉しそうにほんのりと笑った。
そう、黒川あかねが劇団ララライに入団してきたのだ。
訓練の休憩中に金田一さんに呼び止められ何だと思いきや彼女が現れたのである。
これが生あかねかァ~。
類まれな推理力を持ち合わせ、アクアの謎を紐解く姿は名探偵のようだが、それがいまいち状況の好転に繋がらない【探偵物の世界に生まれることのできなかった名探偵】という感じである。
探偵物だったら女優探偵とかになって舞台公演ごとに起こる殺人事件を紐解く活躍に恵まれたであろう。
いや、恵まれても嬉しくないな。
素直に舞台公演させてほしいよな。
よかったな黒川あかね。
ちらりと横を見ると垂れ落ちる汗を拭きながらもあかねのことを上から下までじっと見つめるカナちゃんがいた。
原作ではライバルと言っていい関係であったが、やはり意識があるらしい。
「結構あるわね……」
ん? カナちゃん今なにか言った?
「何も言ってませんけど? それより大くんはアイツのことどう思う?」
「劇団あじさいから来てるようだし、実力は結構あるんじゃないか? テレビではあんまり見た覚えないけど」
「……まあ、あの世代は大体私が子役独占してたからね。そっちじゃないけど」
「そっち?」
「まっ、いーわ」
あかねは先輩たちに一人一人に挨拶を交わしながら回っているようで、こちらに近づいてくる。
「カナちゃん、その、よろしく……ね?」
「ん? よろしくね、黒川あかね」
じっとカナちゃんを見つめる……もうちょっとねとついた視線かもしれない。
見入っているような?
不思議そうにカナちゃんが首をかしげたのをきっかけにハッと我に返るとこちらにも挨拶してきた。カナちゃんしか目に入っていなかったらしい。
相当だな。
「あ、姫川さんもよろしくお願いします」
「ああ、よろしくね」
ぷらぷらと手を振っているとぺたりとカナちゃんがくっついてくる。
カナちゃんは体温が高め。それに加えて運動後でだいぶ上がっており、汗もかいている。
ぬっちょり来た!
まあ条件は変わらないのでカナちゃんも俺にぬっちょりきているはずだが。
小さな体ですり寄ってくる可愛らしさを感じつつも、暑いしねちょい。
カナちゃんを見るとふふんと鼻を鳴らしている。
あ、彼女アピール?
牽制みたいな? 嫉妬心育ってきた? かわいがってばかりではなく、カナちゃんからの求める気持ちは可愛らしいものだ。
あかねに見えないようにカナちゃんの腰のあたりをポンポンと2度叩く。
カナちゃんは一気に顔を赤らめながらも俺の横腹に軽く1度だけ拳を当ててきた。
サインはB! ではなく、夜のお誘いサインである。
家庭によって異なるこのサイン。
朝食にウインナーが出るとそのサインだとか、お弁当に仕込まれていたりとか。
メールや電話、口頭では言いづらいアレのサインが我々の間でもいつの間にか決まっていて、そういうやり取りをするようになっていた。
「か、かなちゃんって、姫川さんとお、お付き合いしてるの?」
「まあね!」
「そ、そそそそうなんだ」
そそそそーなんす!
どういう競り合いなのかよくわからなかったが、戦いはカナちゃんの勝ちのようで、あかねは他の先輩に挨拶に行っている。
ふんと鼻を鳴らして勝ち誇るカナちゃん。
「カナちゃん新人いじめちゃだめだぞ」
「ふんッ」
ふんではないが。
まあ、最近はカナちゃんも自分が一番というところは譲らないが、他の役へのリスペクト精神は養われてきているので、なんとかなるだろう。
こういう右枠から画像出てる感じってどういうのがいい感じなんだろうか。
というか、背景作るのすごいむずい。
プクッとするカナちゃんと体操服で練習に来るあかねが