時は流れいつの間にか中学を卒業してついには高校生。
この辺で転生ボーナスと言うか背伸び分が切れており、忙しい役者や恋愛の日々に成績が落ちだしていた。
それでも女の子にカッコつけたい気持ちとこの体のスペックのお陰で平均以上ではあるがアクアのような高偏差値とは言い難い。
今から10年仕事しなくてもいいから東大に行けるかと言われたとき、いけらあと答えたとしても、実際に十年を与えられればなんだかんだで色んなことして勉強はある程度、元よりあんまり学力は上がりませんでしたとなるのが落ちではないだろうか。
勉強する時間がないという人は時間があっても勉強しないから勉強する時間がないのだ。
とはいえ、学業は高校まででいいかなと思っていたので問題はないので、都内で芸能科があるということもあり陽東高校を選択することにした。
芸能活動に理解があるが、逆に言えば緩いので大学を視野にいれるなら自身の努力がいる学校だ。
カナちゃんも将来はそこにすると言っている。
もっとも年齢差で彼女が入学する前に卒業してしまうが、一緒に通えなくても同じ学校の記憶を共有できるのは少しうれしいことだ。
今日はかなちゃんと一緒にマネージャーに仕事の確認をしに事務所に来ている。
マネージャーさんとは子供の頃からの間柄ゆえ、信頼できるのでカナちゃんのララライ所属に合わせて仕事全体のマネージメントを彼女の分もお願いしているのだ。
母親のときから才覚を認められているだけあっておかげさまでカナちゃんも仕事が多く、天才子役は天才役者でもあるとすでに評価されだしている。
「大輝くん、今度のドラマの話なんだけど、先方が主役にって言ってきてるの」
「へえ、医療ドラマですか。でも俺で大丈夫ですか?」
マネージャーと予定の話をしていると医療系のドラマで主役をもらえることになった。
最近は高校生役で出演することも増えていたが、医療ドラマとなれば大学生以上ということになる。
少し背伸びした演技が必要になるだろう。
「最初は研修医から始めるそうよ。あなたの成長に合わせてって感じね」
「おー」
「有馬さんも最初のシーズンのヒロインと言うか彼が医者を目指す理由の少女役として打診されてるわ」
「あ、私もなんですね。ぜひ!」
小学生の間をララライで基礎の向上に努めた彼女は劇役者としてもいろいろな役を経験している。
少女役はもちろんとして小柄を活かして少年役もしっかりと務めており、涙だけを生かした彼女のイメージは払拭されただろう。
なにせカナちゃんは実はアクションもうまく客の目を奪うのがうまい。
子役のときにはなかった能力でもある。
ちょっとした映画にも再び舞い戻ったが、少年カナちゃんと主演男性の絡みに怪しい色気を感じた。目覚めたと界隈では人気である。
「ただ、主役の医者のキャラ付けでちょっと困っているらしいの。直接あなたと話をして決めたいって話だからやってくれる?」
「へ? それは珍しい話ですね」
役を演じるから役者である。
アドリブを行って個性を出すことはあるが、役自体を相談することになるとは珍しい。
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「いやあ、久しぶりだねえ。また大きくなった?」
「雷田さん、お久しぶりです」
今回の件の責任者は雷田澄彰さんのようだ。
右を白髪左を黒髪ときれいに分けたカラーリングをしながらカラーの強いサングラスをしており、見た目が印象に強く残る。
会社のためにも記憶に残るようにしてるんだと言っていたがその歌舞いたカッコはおそらく趣味だ。
「いやあ、今回は原作ありなんだけどさ、作家さんが主人公は姫川大輝くん一択です! それ以外なら認めません! なーんて言っちゃってさ。モテるねえこのこの」
「あー、そういう感じなんですね」
「まあ、作品の方は主役の医者自体は個性がそこまでないというか、個性ある患者さんたちにフォーカスあててるからどうにでも料理できるし、姫川大輝くんが活躍できるなら改変OKですと来てるんだけどさ~。君にどんな役を演じさせるのがいいか悩んじゃってね。ズバリどんな医者演じたい!?」
「うわっ、投げてきましたね」
小説としては主人公は語り部に近くそれも素直に状況を受け入れやすいように比較的個性が抑えられているため、実際に実写化して動かそうとすると味付けしないと主役が主役にならないかもしれない。
……とはいえ、医者といえばで思い浮かぶ人はいる。
そう、ゴロー先生だ。
彼のあり方はよく頭に残っている。
「そうですね、アイドルオタの医者とかどうですか?」
「アイドルオタの医者!?」
「患者のためにと言いながら布教するんです」
「患者に布教!?」
「そのためなら自腹でテレビとDVDプレーヤーを病室に設置するくらいで」
「自腹で!?」
キャラを説明して今度は先生に成り切って話してみると『お、おう、別人だね、大輝くん……アイドルオタの医者か……キャラ性はあるよね……』とブツブツ悩みだし、
「それで行こうか」
「おー!」
「となれば彼がそうなった背景だね! なにか考えある?」
ときたので、さりなちゃんをぼかして伝えればOKが出てしまった。
さすがの推しの子の主役のバックボーンである。
「いいね~。推しのアイドルは誰がいいかな? B小町だったアイちゃんとかどう? 彼女全然年取らないしさー。アイドル経験あるし、マルチタレントでしょ? 演技力もある。主役食いかねないけど、推しのアイドルって立ち位置ならむしろそのくらいのほうが推す説得力にちょうどいいしさ」
「あー、いいですねー。あそこの斎藤壱護社長ならつながりありますよ」
「お、助かるー」
こういうわけで、オタ医者の
ようやくアクルビにつながりを持つイベントまで持ってこられたぜ!
原作二巻まで待つと十二年くらいたっちゃいますからね……。