推しの子の異母兄   作:もこもこ@

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066 ルビーはドラマを見ている

 

 私の名前は星野瑠美衣(ルビー)

 

 お兄ちゃんのアクアマリンに比べれば可愛い名前だよね。

 世界で一番の完璧で無敵なアイドルアイの子供! 

 

 夢はアイドルでママと同じ12歳でアイドルになりたいって思ってる。

 家はB小町の苺プロだし、B小町のあともいくつかアイドルグループを作って盛り上げてる事務所だからちょうどいいよね。

 

 社長の壱護さんには泣きわめいて駄々をこねてだけどアイドルをやることに納得してもらった。

『まあ、ここらでB小町のようにドームを目指せるアイドル立ち上げたいと思ってたからな!』ってね。

 

 社長ったらさすがー! 

 

 社長は孤児だったママの身元保証人でお父さんみたいなものらしいので、ママの子どもの私からはおじいちゃんみたいなものかな。

 まあ、おじいちゃんっぽくはないけど。

 顔はちょっと下っ端ヤクザっぽいけどいい人だ。

 

 ま、アイドルの夢についてはそんなんだから今はママと一緒に歌や踊りとレッスンを重ねている。

 メンバーが集まったらその子達も含めてグループとしての訓練を行ってアイドルとして活躍開始だ。

 メンバー選定の面接も始まっているし決まるのももうすぐだろう。

 

 もう、楽しみだよね! 

 

 てなもんで、小学校生活は結構忙しくなってきちゃったけど、それでもママの出る番組はできるだけ見たいと思っている。

 今はアクアと医療ドラマを見てるんだけど、……ドラマを見て私は驚いた。

 

 そこにはゴローせんせがいたからだ。

 

 え、なんでせんせがテレビの中に? それもちょっとかっこよくなっているし、若返ってもいる気がする。

 おろろろ? 

 せんせも転生しちゃってたの!? いやいや、転生してたら顔は変わるはずだよね? 私もさりなのときと全然違うし。

 

 ──あ、こら! そこの女、勝手にせんせに抱きつくなっ! 

 

 画面に映る患者の女の子のマリヤがせんせに抱きついたのだ。

 おのれ! 私だって最後の方は体が弱って抱きつけなくなったというのに! 

 先生の体温も意外に体つきがいいところも、クラっとする匂いだってだいぶ、だいぶ昔の記憶になっちゃったのに! 

 やっぱりあの重曹を舐める天才子役は駄目だ! 好きになれない! 

 

 ぐぬぬ。

 

 マリヤもまたさりなと同じく脳腫瘍で入院しているらしくなんだか自分を重ねてしまう。

 でも【彼女の病室には親が持ち込んだだろう品がいくつもあった】

 それだけでなんだか応援する気はなくなってしまう。

 

 あ~あ、いいなあ。

 せんせがいるくせに親も会いにきてくれるなんて。

 

 ぼけっと見ているとあっという間にドラマは終わってしまう。

 せんせを演じたのは……姫川大輝だ。

 

 そう言えば重曹を舐める天才子役の有馬かなと初めてあったときにも一緒にいた気がする。

 仲良しなんだろうか。

 

 ムッとするところも多いが、久しぶりにせんせに会えると思えばなんのその。

 毎週チェックするドラマに決めた。

 

 **

 

 ドラマも後半に入ると段々とマリヤ()は衰弱していく。

 病状は悪化の一途をたどる。私と同じように。

 

 良かった。

 

 私の中の醜い心はそう言葉をこぼす。

 私は治らなかったのにあなただけ治るなんてそんなのない。

 

 せんせが私の前では見せなかった悩み苦しむ顔は私に見せてくれた笑顔の重さを教えてくれていて少しうれしい。

 またひとつせんせのことを知れたみたいで。

 せんせが苦しんでるのにね。私は悪い子だな。

 

 ……しかし、いささかせんせと私の解像度が高くないだろうか? 

 

 正直自分の物語を見ているよう(私がそこにいるみたい)に錯覚する。

 それとも、私とせんせの物語はそれなりにありふれた出会いと別れだったんだろうか。

 いいや、偶然状況が同じにしては色々とかぶる点が大きい。

 

 女の子と男の研修医の先生、病名、先生への態度。

 このへんくらいはいくらでもかぶりそうだけど、患者がアイを推していて布教していたり、被っている帽子だって似たものが選ばれている。

 

 画面の中でマリアは結婚の約束を強請っている。

 せんせならなんていうか。

 鮮明に思い出が蘇る。

 

16歳になったらちゃんと考えてあげるよ(16歳になったら真面目に考えてやるよ)

 

 せんせはシローせんせよりモラリストだったから今すぐの約束なんてしてくれなかった。16歳はあのときの私にとっては永遠のように遠い先だった。

 ちょっといい方は違うけどシロ―せんせもほとんど同じことを言っている。

 シロ―せんせなら約束してくれてもおかしくないのにね。

 

 ──もしかしたら私のことを話した人がいてそれが物語になったとか? 

 

 だとしたらそれはせんせに違いない。

 だって他にはあの場には誰もいなかったんだから。

 

 せんせが今も自分を想っている。

 

 そう思うと自分に重ねているはずなのに、なんだか気に食わないマリヤも可愛く思える気がしてきた。

 あ~あ、せんせ結婚してくれないかなー。

 

 **

 

 ついにこの日が来てしまった。

 

 登場ごとに調子を悪くしていくマリヤ。

 メイクなのだろうがまるで死人のようだ。

 せんせの前ではできるだけ可愛くなるように頑張っていたけど、せんせから見たらこうだったのかな。

 これじゃあ結婚してくれないよ。

 

 病弱の彼女は自分が初めて買った大事なアイのグッズである『アイずっと推し』と書かれたキーホルダーをせんせに渡していた。

 アイグッズは色々でてるが、休止前までは結構よりインパクトが有るようにってことでどんどん単語が強くなっていたのだ。

 私がもっていたのなんて『アイ無限恒久永遠推し』だったしね。

 

『大切にしてね』

 

 せんせは今も大切にしてくれているだろうか。

 きっと彼もせんせくらいに大事にしてくれているよね。

 

 いろんなものがダブってくる相手だった。

 

 でも死んでくれて(同じ結末で)よかった。

 私とそっくりな状況の、でもお母さんがお見舞いに来てくれる私より少しめぐまれた女の子。

 

 なのに、私と違って手術がうまく行って、せんせとも笑顔でまた明日なんて言い合えたら私のなにかが悪いって事になってしまう。

 

 私がいい子じゃないからお母さんがお見舞いに来なくて、私が悪い子だったから病気も治らなかったみたい。

 あんなにいい子になるように頑張った私が馬鹿みたいじゃないか。

 

「あ~あ、姫川大輝くんかっこよかったな―」

「そうか? 大した事ないと思うが」

「お兄ちゃんはママや私で美意識狂っちゃったんだね、これは将来彼女できないね。かわいそー」

「アイはそうかも知れないけど、お前はどうだろう」

「なにおー!」

 

 軽口を叩ける家族(アクア)に大好きな家族(ママ)

 今世は最高だ。

 

「ふたりともご飯できたよー」

「はーい、ママ! ほら、アクアご飯だって!」

 

 前世とは違う健康で何だってできる自分の体を見る。

 

 絶対アイドルになってせんせと結婚するんだ。

 でもまずは見つけるところからだよね。

 

 笑顔になってママの元へと急いだ。

 

 




アクアはゴローが自分だと知っているが、ルビーはせんせが行方不明だと思っているので、ドラマの受け取り方がことなるようですね!
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