推しの子の異母兄   作:もこもこ@

70 / 124
070 さりなちゃんとの共演

 

 ドラマ【推しのカルテ】

 

 原作名は御師(ドクター)のカルテだったが、オタ要素の追加でタイトルが改変されている。

 おかげか単に原作者の先生が俺のファンでめっちゃ推してくれているせいか、原作ファンにもコレはコレでありと評判である。

 推しのカルテは想像以上に好評で何シーズンか放送が続いたが、始まりがあれば終りがあるもの。

 ファイナルシーズンの撮影が始まることが決まったのである。

 

 最後の事件についてはオタ医者先生初期からのスポンサーからのオーダーもあり、展開がいじられることになった。

 そもそも、オタ医者なのはドラマ版だけで原作ではそこまでアクの強くない人間なのだから最後もそれに合わせたストーリーにしましょう、というのが原作作家様からのオーダーで、彼が外科医を目指すきっかけである退形成性星細胞腫の少女と今度は主治医として向き合うことになる。

 

 その少女役をやる人間こそがルビーである。

 さりなと少し似たところのあるカナちゃんがさりなちゃんを思わせる道を歩み、さりなちゃん自身でもあるルビーが未来を歩むというのはなかなかに運命的なものを感じる。

 ストーリーとしてはなんだかんだで彼はトラウマであった退形成性星細胞腫の少女を助けられなかった過去を乗り超え、ルビーの手術を成功させる。

 

 元気になった少女はアイドルを目指し、彼の推しであるアイと同じB小町を継いでデビューするという現実とクロスしたエピソードとして完成するのだ。

 既存の旧B小町を扱っているからこそ激熱な展開と言えるだろう。

 ラストのエンディングテーマ、新B小町によるアレンジカバー曲になる『推しに願いを』はドラマを見たものであれば涙が大量に流れてしまうだろう作品となる……予定である。

 

「ルビーちゃん今日からよろしくね」

「せんせ、よろしくおねがいします!」

「お、もう役始まってる?」

 

 作中でカナちゃんが演じた最初の助けられなかった少女マリヤちゃんと彼女が演じる少女だけがシローのことを『センセ』と呼ぶのだ。

 ほかは大体シロー先生と呼ぶのだから、役入りが早いと思ってもおかしくないだろう。

 

「実は姫川大輝さんに聞きたいことがあったんです!」

「お、なになに?」

 

 シローのカッコをしているとアイドルのファン(奴隷)色が強くなるせいかルビーを前にするとちょっとでれっとしてしまう。

 

 やばい、ルビーちゃんちょーかわいい。

 

 おい、妹だぞ! ハッそうだった! 俺は正気に戻った!

 

 役にちょっと引きづられ気味である。

 撮影後はカナちゃんにリフレッシュして貰う必要があるかもしれない。

 

「雨宮吾郎って知ってますか?」

「あまみやごろう……」

 

 お、おうう。そのパンチが来るとは全く思っていなかった。

 

 そうだね、ルビーからすると転生時と同時期に行方不明ということになっている雨宮吾郎先生の人柄や物語を知らないと作れないような話がドラマになっているんだから当然か。

 やっちまったなー。

 実際にはゴロー先生がさりなちゃんのことを語った相手としては他にも看護師がひとりいるがルビーからすれば本人以外いないと考えてもおかしくはない。

 

 やばい、考えろ、考えろ……! 

 はっ! 

 

「……そうだね。雨宮吾郎さんと天童寺さりなちゃんのことは知ってたよ」

「やっぱりそうなんだ! ねっ、ね! センセって今どこにいるの!?」

「あ、いやごめん。12年前の冬以降彼は行方がわからなくなっているんだ。職場先にも何も言わずに今どこにいるかは俺も知らない」

「ええ? で、でも、それじゃあなんでこんなにセンセとわた……さりなのことよく知ってるの!? ゴローセンセが作った話なんじゃないの?」

 

 12年前に行方不明になった医者の話を知っているのは確かに不自然だろう。

 けれど、実はカミキヒカルの調査を行う中でわかったことがあるのだ。

 

「実は俺、【雨宮吾郎】さんの甥っ子なんだよ。俺の親が彼の弟ってこと」

「えっ、えー!? せんせって弟いたの? でもせんせから弟なんて一言も聞いたことないよ?」

 

 まあそうだろうな。推しの子作品内でも出てきていないので、この世界でだけなのか、知られなかったのかはわからない。

 しかし背景を考えれば先生が俺のことを知らなかったのも無理はない話だ。

 

「うーん、これからのこと、ルビーちゃんだけのヒミツにできる?」

「う、うん。誰にも言わない」

 

 アクアが先生だとわかれば話してしまいそうな内緒度であるが、まあ、マスコミにバレるような話し方をしなければOKである。

 

「雨宮吾郎さんのお母さんは産科危機的出血で雨宮吾郎を生んだときに死んでるんだ。それがトラウマになったみたいでね、雨宮吾郎さんのお父さんは雨宮吾郎さんを捨てた。家で内緒で生んだらしいからもしかしたら雨宮吾郎さんのお父さんは子供ができたって知りもしなかったかもしれない。雨宮吾郎さんはお母さんのお母さん、祖母が育ててるんだ」

「知らなかった……」

「雨宮吾郎さんのお母さんは産婦人科医でね。ゴロー先生が産婦人科医になったのも母親の夢を継ぐため、らしいね。地元ではおばあちゃん思いの優しい子って有名だったんだって」

「お父さんは最低だけど、優しいおばあちゃんがいたんだね。うーん、私、センセのこと全然知らなかったんだなー……ファン失格だ」

「俺は色々あって伯父さんってことを知ってどんな人か知りたくてね。何回か宮崎の病院に聞きに行っていて詳しくなったんだ。さりなちゃんのこともそこで働く看護師さんが色々話してくれてね」

 

 実際は雨宮吾郎殺害の証拠を手に入れられないか、遺体を先に発見できないかということだったが、どちらも空振りだった。

 死体も隠されているだろう社も見つからなかった。

 

 先生について一番詳しかったのは婦長さんだったが、なんとなく彼女はゴロー先生に惚れてそうだった。

 もっと素直になっておけばよかったかしら、なんて飲み屋で言っていて彼も罪な男である。

 

「ルビーちゃんももうわかってると思うけど、シローは雨宮吾郎先生がモデルなんだ。彼に自慢できるくらいに最終回はしっかり終わらせたい。もっと解像度を上げてしっかり演じたいんだ。だからどうかな? お互いの知ってる雨宮吾郎先生を教えあわないかい?」

「いいの!?」

 

 めちゃくちゃに目を輝かせている。おー、俺の妹、ちょろいぞ。

 

 普通ならなんで無関係のルビーがこんなに詳しいんだよ、お前が生まれた年に行方不明になってるんだよ、捜索届取り下げるからどこで会ったか教えてくれよとなる。

 のだが、こちとら先生がアクアになっていることを知っているからなー……。

 

 シロー先生の役柄を通してってところが強いが、そもそも異母妹でもあるルビーちゃんを悲しませたくないという気持ちがムクムク湧いてきている。

 ファーストコンタクトは最悪であったが、今は純粋に可愛く思えるのだから不思議なものだ。

 

 お互いに雨宮吾郎先生ファントークを繰り広げる。

 

 特にリアルタイムで病院にいて看護師経由でも情報網があったルビーの情報はとても濃い。

 推しの子ファンとしても舞台裏を覗くようで楽しさもあった。

 

 当時付き合っていた女の人たちが何人いてどんな見た目でなんて言われて付き合って、どう別れたかまで教えてもらってしまった。

 センセーすごいな。普通にドラマやってるよ。

 やっぱり医者ってモテるし遊んでんだな。

 

 この場にアクアがいたら正体がバレるのも恐れずルビーの口を塞いで話を遮ったかも知れない。

 

 推しと共通の推しトークするのは楽しかったが、全ては彼女の不幸を退けるための助けになりたいからだ。

 

 

 せっかくだ、妹のためにも一肌脱いでいこうか。

 




タイトルがあったほうがいいというコメントがあったので【推しのカルテ】になりました。主人公のアイドルオタ化で調整が入りました。

オリジナルの作中策の名称とかめっちゃ悩みますねw
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