推しの子の異母兄   作:もこもこ@

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078 ちっ、イケメン爆発しろ

 

(これだから天才は……!)

 

アクアは正直凡才である。

誰に言われた訳では無いが、自分自身こそがそれを理解している。

 

今世で言うなら最初にぶち当たった壁は有馬かなだ。

前世というはるか大量の経験を持つ自分は彼女との勝負に勝ったような形になったが、本人からすれば意図を読んだだけで演じていない。

逆に彼女は生まれて僅かな幼児なのに監督の期待上の演技をしているのだ。

 

監督の意図を読める演者というのはいいように聞こえるが、演出に便利なだけで必須ではないとも言える。

逆に有馬かなのような天才はその作品の顔になれる。

俺ができるのはいい作品だから見るまでで、有馬かなは有馬かなが演じているから見る、だ。

 

ぼうっとカメラより遠くから彼女を見る。

 

ドラマのヒロインだ。

母親に虐げられ、愛を信じられない少女。

そんな彼女はかつてプリンシパル(主役ダンサー)であった女性に出会う。

夢を諦めて日本でOLとなり毎日を過ごす彼女は薄汚れていた少女を見つけ、家に誘う。

放置されていた練習室で戯れにダンスをさせたところ……。

 

というやつだ。

 

【水仙の花】

 

身なりを整えられ、ダンスを踊る少女(愛を知らなかった少女)は鏡に映る別世界のように華やかな自分自身に恋をする。

自分に恋をした少女とそれを取り巻く男たちのドラマだ。

学校では冴えないどころかカースト下位の彼女がライトの下で輝く。

ありがちと言えばそうだが出演キャラがかっこいいということで人気の少女漫画のドラマ化だ。

 

しかし、有馬かなは美しくなった。

 

女性とも少女とも言えない曖昧な年齢の中、怪しく花開き始めた色香がある。

肌の露出なんて僅かなのに匂い立つとはこのことだろうか。

アイ推しでなければ瞳にハートを宿しているところだった。

共演者である男性たちは役柄以上に有馬かなに魅入られているのがわかる。

 

ある意味で原作以上になることは確定しているな。

 

とはいえ、目的は彼女ではない。

本日はなかなか予定のあわない主要キャラを演じる面子が集まっている。

 

(きた)

 

お目当ての相手は姫川大輝だ。

今日は特に撮影がないので普段着のようだがピッと真っ直ぐな背筋、人の目を不思議と引く男だ。

存在感が大きく部屋に入ってきた瞬間に視線が勝手に彼の方を向いた。

 

あれが姫川大輝か。

 

有馬かなとは相変わらず仲が良いらしい。

撮影が終わった有馬かなは真っ先に姫川大輝の方へかけてゆく。

そんな有馬かなの様子に姫川大輝を見ては勝てないとばかりに逸らされる視線。

 

くそっ、有馬かなと仲がいいくせにルビーにちょっかい出しやがって。

 

直接見てみないと判断はできないという気持ちはあったが見てもやっぱり認めにくい。

というかだ、やっぱり甥と言われても納得しづらいぞ。

まじなの? あいつ俺と同じ血入ってるの?

 

確かにちょっと一族の血を感じなくもないが、『雨宮吾郎さんって芸能人で言えば姫川大輝ににてるかも~』って感じの似てるだ。

俺があいつに似てるんじゃなくてあいつが俺に似てるんだよ!

クソ、頭が混乱してきた。

 

……アイドルとイケメン俳優って脳が焼かれる組み合わせだな。

それもさりなちゃんで妹のルビーとか何倍脳が焼かれるんだろう。

 

「久しぶり、アクア」

「あ、はい。覚えていてくれてありがとうございます。姫川大輝さん。苺プロの星野アクアです」

「そんなにかしこまらないでいいぞ。何なら兄弟みたいに接してくれても……」

「いえ、お恐れ多いです姫川大輝先輩」

「フルネーム……」

 

妙にフレンドリーだが、それがルビーに気がある証拠でさらにもやる。

こいつ、まじでぶっ殺したいな。

 

**

 

「くそっ!! めちゃくちゃいいやつじゃねーか!!」

 

撮影を終え、俺は自室に戻るとベッドに飛び乗ってうなだれた。

すべての人間の目を引いてしまうような太陽の演技をする有馬かな。

そんな彼女に合わせるようにより良さを引き出しつつもすべてを受け止めより強く返す姫川大輝。

 

周りもまたその強力な引力に実力以上を引き出されるように演じてしまっていた。

気がつけばどこまでも真剣に役を演じていて、いつの間にかなりきっていた。

演じるのが楽しかった。どこまでも自分の伸びしろを引き出されるようなこの時間が心地よかった。

 

彼は一人の少女を想い合うライバルであり、大切な仲間でもある。

 

世の中には役柄に引っ張られて恋人役から本当に恋人になる人間も多いがその理由もわかろうものだ。

それに撮影以外の場でも姫川大輝は俺に特別優しくそのうえで妙に好みというか趣味が合うようである。

叔父・甥同士なのだから当然かも知れないが、これが血か。

前世とは結構変わったつもりだったが俺もやっぱり雨宮吾郎ということなのかも知れない。

 

いつの間にか話の流れで一緒に遊びに行くことになってしまったし、なぜか楽しみに思っている俺もいる。

 

「これだからイケメンは!」

 

ちょっと理不尽な恨み言が姫川大輝に届いたかはわからない。

だが、これをきっかけに二人はよく遊ぶ間柄になった。

友人と言ってもいいだろう。

 

そしてその裏で一緒に遊べる時間を奪われた有馬かなと妹のルビーにメラメラ嫉妬されていることに彼は全然気づかなかった。

 




最終巻見ました。

大輝さん一人前向きな方向性示されてなくて辛。
フリルと結婚してるとか考えるとまだ? メルトくんとは仲いいみたいだし、元気ではあるのかなあ。ずっと光のない目が辛い。大輝虐つら。つら。
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