「かなちゃん仕事おわったよ~」
今日の撮影シーンは量が少ないのでらくちんである。
子供の集中力は年齢+1分といわれている。
なので、子役のシーンの撮影はいかに気分が乗ってるときにパパっとるかと、詰まったらすぐに親やスタッフがあれこれちやほやできるかにかかっている。
これを繰り返してまたシーンに臨むのだ。
ただ、現場の回数を重ねることで大輝は現場スタッフからぐずらないうえに指示に従ってくれるというのが伝わっており、割とシーンを連続でとることが多いため撮影が量のわりにすぐ終わる。
今は
ここで
大きな感情にはめちゃくちゃ引きずられてしまう。
学校であくびをした人がいたとき、自分もついついあくびをしたことはないだろうか。
びゃーってなく子供の近くにいるとなんか胸の奥から悲しみが湧いてきて自分もびゃー! ってなるのである。すると現場は死ぬ。
なので離れるのは俺なりの協力なのだ。男友達よりかなちゃんに会いたいからではない。
「かなちゃんはかわうぃーねー☆」
真に可愛いものの前にはあらゆる存在がひれ伏すのである。可愛いは正義。絶対の法則。
赤ん坊コンテンツがバズるのもわかる。だれだって永遠に子供と動物見て癒やされたい。
そんなかなちゃんにデレデレになった俺と俺にきゃいきゃい嬉しそうにしているかなちゃんの様子に安心したのか、ちょっと席を外すわね、とかなちゃんママはこの場を離れてしまう。いいのかい? 俺は親の目がなくなったら遠慮せずにほっぺた触るぜ?
とはいえ、突っついたら可愛そうなので優しく撫でるのみ……っあ、触ろうと近づけたら指が取られた!
し、しかも!
困ります!! 困ります!! お客様!! 困ります!! あーっ!! 困ります!!
お客様!! あーっ!! お客様!! お客様!! お客様困り!! あーっお客様!!
ちっちゃなお口にパクリされたのである。
俺の指はおっぱいじゃないぞかなちゃん!
ほわー!! 温かいしふにふにしてるけどめっちゃよだれが指を伝う!
かなちゃん! いい子だからはなして! めっ! ばっちくはないけどめっ!
「かなちゃん! めっ……くない……」
一瞬歪んだような動きに瞬時に意思は折れる。
負けたぜ、好きにしゃぶれよ……。
アワアワしている俺に気づいたスタッフにより、口から指は離される。
「大輝くん、赤ちゃんはなんでも口に入れちゃうから気をつけなきゃだめだよ?」
「うん」
そう言えばとふと頭に疑問が湧いたので聞いてみる。
「そう言えばもうすぐかなちゃんの撮影だよね」
「そうだね。かなちゃんいい子だからすぐ終わりそう」
「でもさー。ここ、赤ちゃん泣いてるよ? でもかなちゃん泣いてないし、どうするの?」
「心配しなくても赤ちゃんはしょっちゅう泣いてるからね。起きててくれるんならすぐ撮影できると──あ、かなちゃんのお母さん、そろそろシーンですから準備しててください」
席を外していたかなちゃんママにスタッフさんは手をふる。
まあ、たしかに赤ん坊なんて泣くのが仕事とか言うくらいだもんね。いつも泣いてるか(社畜感)
「あら、もう準備いいの?」
「ええ、女優さんも手が空きましたので、泣いたらいつでも撮影は入れます」
「じゃあ泣かすわね」
え? スタッフと一緒に首をかしげるとかなちゃんママは腕をつまんだのである。
まるでそれがスイッチと言わんばかりの鳴き声の絶叫。絶叫。大絶叫。
喉が枯れるほどに、全力である。
えええ……。
若いスタッフさんとともに俺はドン引きだ。
しかし、スタッフさんもさるもの。かなちゃんとかなちゃんママを連れて撮影に。
すごいな……真似したくないけども。
撮影が終わったかなちゃんをかなちゃんママはどうするかと眺めていると、かなちゃんママが笑顔で『いい子だったわね~』と褒めた瞬間にニパッと笑顔に変わった。
やっぱりかなちゃんにはスイッチがあるかも……。
かな「子役忍法『爆音声の術』! 子役忍法『瞬時無音泣き止みの術』!!」
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