推しの子の異母兄   作:もこもこ@

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080 てにぬ

 

「くらえっ! 疾風の波動弾!」

「ふざけるな」

 

 当たれば命を奪わんとする波動は高速に回転を行い風を切りながら前に進む。

 その速度はまさに疾風! 

 

 だが、それも彼の腕により阻まれた。

 

「まだだ! 黄金の一撃!」

 

 いい加減な返しにぽんと浮かび上がったチャンスをモノにする黄金の一撃を下す。

 太陽をバックにはねたこの一撃はまともに目にいれることができない。

 

「ふざけるなー!!」

 

 ゲームセット!! 

 

 このフィールドは俺のものだ! 

 

 **

 

「人間のやる技じゃない!」

「いや、目の錯覚だぞ」

 

 俺はアクアをつれてにぬに……テニスに励んでいた。

 コート上でラケットとボールを使って争う超次元格闘技の一種であり、通常はアニメ的演出を持って行われるが、技術を高めた役者なら魅る事ができる幻影を持って再現することが可能なのだ。

 今俺の両目は輝きに輝いているが、おかげさまでアクアは実にファンタジックなテニスを体験できたであろう。

 全ては実写化の舞台を勝ち取るためだ。

 俺達兄弟で盤上の客の視線……独り占めしてやろうぜ? 

 

「そんなんできるか」

「できるんだよなあ」

 

 しかし、常にファンタジックテニスではつかれるだろうと普通にポンポンお互いにラリーを続ける。

 年齢差分の身体能力の差があるが、基本的なスペックの傾向が近いのか、俺にできることは将来こいつにもできるだろうな、と感じる素養がある。

 自分ができることをこうやればできると教えてやればできるようになるんだから、アクアほど教えていて楽しい相手はいないのだ。

 本人が何処か天才とやらにコンプレックスを抱いているが、お前だってその部類だろと言ってやりたい。

 

 まあそれはそれとして、体を動かして遊ぶのたのしー! 

 石上先輩はどうしてもインドア派であるし、勝利(ヴィクトリー)くんも家遊びが多い。

 しかしこの体からあふれる高校生力による無限のバイタリティはぶつけ先を求めている。

 下半身だけではなく、上半身もパッションしたいのだ。

 兄弟と汗を流しながらテニスするとか実に青春だよなあ! 

 

 ……しかし、俺達は何処かで選択肢を誤ってしまったらしい。

 

「なんか見てるな」

「なんか見てるね」

 

 知る人ぞ知る……というほどではないが、利用料が高いのであんまり人気のないテニスコートだったのだが、もうファンにバレてしまったか? 

 ファンの嗅覚ってときどきものすごいよなあ。

 まだ決まってもいないドラマ役を祝われたりするし。

 経路もいろんな関係者のツイッターの動きを複合して、とかプロデューサー酔わせて聞いたとか色々……。

 

 せっかくだしファンサしてくか。

 俺はアクアの肩を抱き寄せるとファンの子に向かって小さく手を振った。

 

「何をするんだ!」

「ファンサだよ、ファンサ。まー、同性の共演者同士の関わりできゃいきゃい言ってくれるくらいならかわいいものじゃん」

「い、いや、あれは……」

 

 何か赤い液体を鼻から吹き出して倒れた少女をよく見る。

 

「うちの……妹だ」

 

 ルビーちゃんだった。

 

「ちょっと、何いきなり倒れてんのよ!?」

 

 うちの幼馴染彼女もいた。

 

 **

 

「最近付き合い悪いじゃない?」

「そうだそうだー!」

「そこのそいつとめちゃくちゃ仲いいみたいだし?」

「そうだー! もっとこっちと仲良くしろー!」

「あんなにめちゃくちゃ楽しそうにしてさー!」

「そうだそうだー! 見たことない笑顔だー!」

 

 二人が交互に喋っているがめちゃくちゃうるさい。

 ルビーはぷんすこ手を振り上げているがなんだかそういうの似合うな……。

 ふたりともお出かけ変装セットなのか地味な黒縁メガネのスポーツウェアで偶然なのか色違いの同じブランドの上下セットのせいで不思議と姉妹に見える。

 

「そもそもどうして二人でいるのさ」

 

「「いつの間にかついて来てた!」」

 

 仲良しかよ、ウケる。

 上がったボルテージは己の兄弟に向かったのか我感せずと行った顔で一歩引いてコーヒーに口をつけたアクアへと向かった。

 肩を掴まれぶるっんぶるんと首を揺さぶられまくっている。

 気持ち悪そうだが、それでもコーヒーは一滴もこぼれていない。

 

「ぐえええ、わるかった! わるかったから!」

「何が悪かったか言ってみろー!」

「それはわからないがわるかったー!!」

「わかってないじゃん──ー!!」

 

 あちらはとても温かい家族の時間のようだった。

 

「カナちゃん珍しいな」

「はあ?」

「いや、こういうのに嫉妬するの」

 

 いつもふてぶてしく、自信満々な彼女。

 一番大事な彼女は今まで誰と付き合っていても今ほどの反応はしていないのに、珍しい。

 ただ、すねた様に顔を背ける彼女はとてもかわいい。

 

「あいつ弟なんでしょ?」

「そだね」

 

 ワイワイギャーギャーグフッしている二人はこちらの会話を聞いてないようだ。

 

「あんたにとって家族って特別じゃない? 盗られてないかなって……」

 

 フンとこれ以上曲がらないくらいに顔を背ける彼女。

 カナちゃんだってもう誰とも代えられない家族のつもりなんだけどな。

 

 何にせよ弟にかまけすぎてだいぶ寂しくさせてしまったようだ。

 しっかり埋め合わせをしないとな。

 頭の中でスケジュール帳を広げてカナちゃんとの予定を詰めていく。

 

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