推しの子の異母兄   作:もこもこ@

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081 オタ活で再会

 

ゲームは俺の趣味だが、漫画もいくつか趣味として追っている物がある。

例えば今日あまがそうだし、中には気に入りの作家の新作ということで読んだりする。

それが意外なところで仕事につながったりすることもある。

 

そこまで大々的にではないが、元々WEBが”来る”ことがわかっている俺はインターネット上でのアピールもそれなりに行っている。

特段キャラを狙っていると毎日が大変だったので思ったことや見聞きしたことを問題ない範囲で表に出しているだけだがそれでも長く続いているとそれなりに人気にもなるし、俺が興味を持ちそうなイベントや話があるとこっそり教えてくれるネット付き合いのあるファンもいたりする。

 

「吉祥寺先生のサイン会か」

 

今日あまで世話になっている先生でもある。

新作は今のところ年齢層が上の社会人たちだ。

研修医をやっておいてと言えなくもないが、まだどうしても若さがでてしまう。

とはいえ、コミックスが人気になってアニメ化して、ドラマ化が、となればタイミングによってはあるか。

浮かんだ下心はともかく、内容も面白い。

さすが、生徒会のメンバーを号泣させた今日あまの先生である。

暇だしサインを貰いに行こうか。

 

運悪く作家で推している友達とは時間が合わず、一人でサイン会に向かう。

人気作家だけあって、アイドルほどではないが人が多い。

こっそり話せそうな空気だったら挨拶もできたが、これではそうはいかないだろう。

とはいえ、元気そうに笑いながらサインを書く先生は遠目から見てもパワーに溢れている。

これはこの作品も人気になるなと感じられただけ良かったか。

 

「あの」

 

昼食はどこで取ろうか。変装しているからそうそうバレはしないだろうが、今日は雨宮スタイルではなく割と帽子でぼかしているのであんまり人が多いところはちょっと困るか。このへんで個室で美味しそうなところはどこだったかな……。

うーんと頭にいくつか浮かぶ候補に悩んでいると再度声をかけられる。

 

「あのっ!」

 

バレたか? 時々ファンは思いもよらない点で変装を看破してくることがある。

声は割合素で話してしまうとバレることが多い。

『どこかで聞いた覚えのある声だ』がスタートで考え出してしまうのでヒットしやすいのだ。

だが、ここに来てまだ一度も話してはいない。

サインを貰うときにありがとうございますと言った程度でそれも大した声量ではない。

 

過去ビビった正体バレは爪を含めた指、耳の形だ。

お前は探偵か? 名探偵なのか? となってしまうヤバポイントである。

 

とはいえ、時々ただ落とし物をしただけのときもあって、そんなときは有名人ぶってすみませんという気持ちになるので冷静にならなければ。

 

ゆっくりふりかえる。 

 

そこにはどこか見覚えがあるような少女が声をかけてきていた。

 

……はて、誰だ?

 

真っ黒の短い髪。無造作に整えられていないが、目がギラリと光り黒猫のような少女だ。

人の顔を覚えるのはこの業界では必要な能力だ。

特にテレビ系での仕事は有名人ほど自分のことを相手も知っていて当然というスタンスのものは多くて、そういう人間に知りませんと言う顔をするとスタートの印象が最悪になる。

生まれたときから鍛えていたこの体はある意味でチートであり、仕事先の人間を”覚えよう”と思えば忘れることはない。

だから、おそらく仕事で直接挨拶を交わしていない人、か本当にどこかであったことがあるくらいの相手だ。

年齢的にも若いようだがどこか不健康な人間の感じがある。

目に浮かぶ隈や陽に当たる量がたりなさそうな青白さなどだ。

 

「あの、えと、ひさ、ひさりぶりですね……! お、おびょえてますか……あっ、その覚えてますか、私です」

 

誰だよ。

 

めちゃくちゃぎょどっている。まあ、彼女自体引きこもりがちの人間の匂いがするので仕方がないのかもしれない。

着ている服もあまり着慣れていない感じがある。

おろしたてというか、買ったけどあまり着ていない部類の外行きの服という感じだ。

 

……しかし、どこかで見たことはある。

あまりアクティブではなさそうだし、2.5関係か?

 

彼女から向けられる期待や緊張、不安。

新居に落ち着かない猫みたいな子である。

 

ん? 

 

頭にひらめくものがある。

一秒ごとに増えていく情報を持ってふるいをかけていくと、候補が絞られ一人の人物が頭に浮かぶ。

 

「ああ、漫画家志望の黒い子だ!」

「あ、はい。志望というか、ま、漫画家です!!」

「え、それはおめでとう」

「ありがとうございます! ……あれ?」

 

だから来てくれたんじゃない……? と小さく声漏れている。

ちらりと見れば吉祥寺先生以外にも作家のサイン会を同時にやっているようだ。

鮫島アビ子……先生か。

そういえば名前は聞いてないな。

 

「あ~もう、アビ子先生! サイン会抜けてどこに行ってたの?」

 

ふりかえるとそこには今日の目当てである吉祥寺先生がたっていた。

 

 

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