推しの子の異母兄   作:もこもこ@

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082 すごい!この技できると思って書いてたんですよ!!(難易度HELL)

 

 こちらに焦って向かってくるのは吉祥寺先生である。

 サイン会用なのか、ドラマの時よりラフなカッコであるが、恋愛コミックスの先生としては十分以上に上品だ。

 彼女本人のファンもいるのだろうな、というのが感じられる。

 

 そんな彼女の目当てが隣の彼女だろう。

 

 鮫島アビ子。彼女と一緒にサイン会をしているようだが、うーん、どういう関係だろうか。

 

「あ、あ、先生すみません」

「もう。サイン会は直接ファンと顔を合わせるんだからちゃんとやらないとホントだめよ」

「で、でもこの人が……」

「この人?」

 

 吉祥寺先生から不思議そうな、やや不審なものを見る目でこちらを見ている。

 まあ、心当たりのない男性となると、なにか女性作家につきまとった男みたいに見えてもしょうがないかもしれない。

 仕方がない。

 あとから正体がバレるとことがことである。

 

 帽子を彼女たちが見える範囲であげる。

 

「お久しぶりです、吉祥寺先生。姫川大輝です。ドラマぶりです」

「あ、え!? 姫川大輝さん!? なっ、いや、ふ、ふたりとも知り合いだった……んですか?」

 

 きょろきょろと二人の間を顔を振る先生。

 

「道端で落ちているところを拾ったことがあります」

「は、はは。落ちてたんですかー。アビ子先生?」

 

 しかし、そんなことやってる暇はないとばかりに彼女は逃さないとぎゅっと俺の服を掴む。

 なにやらサイン会を置いてでも求める何かがあるらしく、子猫が必死に噛みつくような力で痛くもないがぎゅうぎゅう締めつけている。

 

「それより! 彼なんです! 彼!」

「え、あー、そうですね。彼ですね。姫川大輝さんですね。テレビ見てたら知ってると思うけど」

「いえ! テレビ見ないので知らなかったです!」

「そ、そう。私のドラマにも出てたんだけどな」

「それは見ました! 別物でわからなかったです!」

「そ、そー」

 

 だめだ、先生たちに会話を任せてると全く何も話が進んでない。

 

「えっと、付き合いますので、場所変えません?」

 

 とこうなった。

 

 **

 

「はー、芸能人ってやっぱりお店選びから違うのね」

「震えてきました」

「まあ、個室が条件になりますからね。必然的に単価も高くなって良いお店にはなります」

 

 サイン会を終える時間を聞き出し、それに合わせて店で合流することになった。

 ただ、まだ学生の身なので、バーはなかなか難しい。

 お店選びは業界人が使っている場所そのままよく使えるとはいかず結構選ぶのが難しくはある。

 雰囲気はよいが女性店員の視線がしっかりとこちらを見てきた上に熱っぽくあまり回数使うと面倒そうなお店になるかもしれない。

 

「えほんっ! それでですね、私、あなた、探してました!」

 

 ダンと非力そうな音を立てながらテーブルに手を打ち立ち上がる鮫島先生。

 

「逃げないので落ち着いて。なんで探してたんですか?」

「あなたの剣の魂を見せてほしいんです!」

 

 ああー。

 

 待っている間彼女の作品、東京ブレイドを読んでみたが、東京を舞台に21本の伝説の刀を巡って、新宿クラスタと渋谷クラスタの2大勢力がバトルを繰り広げる王道少年漫画……という感じだ。恋愛関係が入っているところが珍しいがチームごとの闘争を元にしていた剣客バトルモノで少年雑誌で人気が出始めている作品だった。

 特に主人公のブレイドの剣さばきに見覚えがあり、水の呼吸を源流に描かれているのを感じる。

 実写化するとしたらこの役をやるやつは大変だろう。

 飛天御剣流を本当に撃てと言われてやらされるよりは簡単で現実的な動きをしていると思われるが。

 

 しかし、フム、かっこいいじゃないか……。

 

 憧れの動きに近いものを魅せられるとやはり気持ちが高ぶってくる。彼女に見せたのは間違いではなかった……。

 

 と、そんな時間を挟んでからのお願いだったので、わからないでもない。

 

「先生」

「はい!」

「漫画見せてもらいました。確かに剣の魂が籠もっていた。あなたになら他の呼吸もまた見せてもいいと思ってます」

「ホントですか!! それじゃあ早速私の部屋に……」

「まってまって話が早い早い」

 

 置いてかれている吉祥寺先生に出会いの話から見せた技を話すと半信半疑で聞いてくれる。

 まあ、そうなるわな。

 水の呼吸に関してはカナちゃんもなんか見えてる気がするけどできる気がしないし映像演技じゃ無駄よねと切られて諦められている。

 まあ、星の目の弱点といえばそうかも知れない。

 

「水の呼吸!」

「これです! これ!!」

「うっわ、本当に見える。でも見えない」

 

 近場にあった区営の体育館のような運動場が空いていたので借りて披露である。

 目で見て魅せられ、カメラを見て騙されて見えないことに気づいて吉祥寺先生は不思議そうにしている。

 見えてるのになあ……とブツブツ呟く彼女と反面、鮫島先生は大喜びでぴょんぴょんはねている。

 喜びが体から溢れて勝手に体が動いているという感じだ。

 

 興が乗った俺はいくつか現実で再現できた漫画技を披露するとその日は解散となった。

 

 ──その日から時々剣技披露の催促の連絡が入ることとなる。

 

 

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