「あいつ妹とどうなるつもりなのよ……」
キャンキャン騒がしいアイドルのルビーが帰ったので有馬かなは一人ため息を吐く。
姫川大輝は家族というものに並々ならぬ感情を抱いている。
赤ん坊の頃からの付き合いの姫川大輝だが、彼は両親のことをとても大事に思っている。
たまにでてくる両親の思い出話は本当に大切なものを思う気持ちが漏れているからだ。
だが、両親は彼が本当に小さい頃に心中しているのだ。
どっちがどうだの何だのは詳しく知らないが、それこそが彼の【結婚へのトラウマ】になっていることはわかる。
彼が性欲が強いことも理由だが一人を強く愛することを避けている。
家族について傷があるのは自分も同じだ。
両親の離婚、稼げるようになっての一人暮らしで父親とも現在はほぼ没交渉。
いつの間にか父は再婚もしており、義母は悪い人ではないようだが、私のような複雑な大きな娘にはうまく関われていない。
そもそもろくに会っていないし、最近は子供もできたらしいので本格的に家族外の位置にいるといえる。
そんな中、彼は赤ちゃんのときから一緒にいてくれた愛する家族である。
だからこそ、結婚したい。
夫婦になりたい。
世間からも家族だと認められたい。
そんな気持ちがある。
いつだかに彼には30までに結婚したいというような事を言ったことがあるが、実際どうだろうか。
自分が30歳になった日に彼に尋ねて彼が結婚してくれなかったとして。
彼と別れて新しく家族を探すことが自分にできる気がしない。
きっと別れたくせにみっともなくチラチラ相手を見ながら同じ現場を希望したりして近くに寄れることを喜んで生きるのだ。
それくらいならいっそ割り切るほうが自分らしいのではないだろうか。
でも、家族になりたい……。
カナちゃんは家族だよと言われたとしても、なりたいのだ。
第一、血のつながっているらしい二人への態度を考えれば血の繋がっていない自分としては、なにか繋がりが欲しくなって仕方がないというのもわかるだろう。
彼は、愛が強いのだ。きっと一人では溢れるくらいにあるのだろう。
そして、執着が強くなるのが怖いのかもしれない。
もしかしたら
だから一人に愛を注ぐんじゃなくてたくさんの人に与えているのかもしれない。
ベストは大人になって落ち着いた彼と結婚することだ。けど、大きくなり体ができ、より強くなる性欲や行為、注がれる気持ちにこれは30歳までに本当に落ち着くだろうかと思っている。
そんな自分の第二の戦略、それが大奥作戦である。
要は彼の愛を十分受け止められ、私から彼を奪おうとするもののいない環境を作ることである。
あかねのような自分を大輝から離そうとしない相手だけを彼の恋人として増やすこと。
すでに彼と関係のある女性何人かとは仲良くやっている。
お互いスケジュールを共有し合いながらうまく彼女たちに機会を割り当てている。
忙しい身ではあるので、完璧とは言えないが、将来に向けてもなかなか悪くないのではないだろうか。
そんな今の計画の爆弾がアクアとルビーだ。
正直同性のせいかアクアのほうが脅威度を感じるが、ルビーも危ない。
どう見ても恋をしている。お前妹だろと言いたい。
知らないようだが、兄に恋をするなよと。
大輝の方は女ではなく妹としてみているようだが、彼の家族への思いを考えると、むしろ妹の方が安心ができない。
なにせ妹はどう考えても家族枠内だろうからだ。
むしろ抱かれて女になってくれたほうが妹より強敵ではなくなるのではないかとも思える。
そもそも、妹なら結婚できないわけであるし。
ブーンとメッセージの着信を伝える音がなる。
相手は大輝で、デートのお誘いだった。
あってはいたものの、ドラマなどの仕事の範囲内が多くて、ここのところ放置され気味だったことのお詫びなのは明白だった。
が、デート先が半年前位にちらりとこぼしただけの気になるイベントについてのもので、他愛のない一言だったのにしっかり頭に残して追いかけてくれていたことがわかった。嬉しい気持ちがじわじわと胸に溢れてくる。
ああ、楽しみ。取ろうと思ってすぐに手に入るイベントチケットではないのでよりそう思う。
「ま、刺されてもいいけど、死なないでよね、大くん」
役者なんて変人揃いだ。
普通に生きてないんだから普通に育つわけがない人たちばかりだからだ。
私も彼も普通じゃない。
でも、普通の幸せを追い求めても悪いことじゃないはずだ。